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「ハイレゾ音源大賞2016」発表を受けて考える、ハイレゾを楽しむ習慣の加速

「ハイレゾ音源大賞2016」発表を受けて考える、ハイレゾを楽しむ習慣の加速

2008年5月のこと、アメリカのロック・バンド、ナイン・インチ・ネイルズが「プレゼント」と言い放ち無料配信した8thアルバム『ザ・スリップ』はmp3バージョン、FLACバージョンなどあったが、その中でも見慣れぬ形式だったのが、96kHz/24bitのハイレゾ音源だった。その時は、再現できる機材がなかったので、アメリカの友人に借りて聴いた覚えがある。和音、倍音、シャウト、ギターの歪み、小さなノイズ、ドラムのキレ、それらがすべてライブに近い形で再現され、度肝を抜かれた。2013年がハイレゾ元年とも言われているが、このころから音源の増加、そしてハイレゾ対応機器が続々登場した。アーティストにとってはよりリアルな生に近い「表現」、そしてそれを享受したリスナーはより五感が刺激される臨場感溢れる音像を体験できる環境が加速度的に整ってきている。

ハイレゾとはCDやmp3などには収録できずカットしていた音を体感できるというもの。数値化すると、CDは高音域の領域や音の細かさの数値が44.1kHz/16bitで、ハイレゾは96kHz/24bit、さらに高い域になると192kHz/24bitにもなる。一概に数値が高いから良いというわけではないけれど、CDと聞き分けてみると、音の抜け、音の質感、それらの生の感覚が手に取るようにわかる。

日本では、05年ごろより配信が開始、急速に普及が進み、「ハイレゾ音源大賞」なるものまで登場した。2016年9月から開始され、ハイレゾ音源配信4サイト「e-onkyo music」「mora」「OTOTOY」「VICTOR STUDIO HD-Music」(アルファベット順)の共同企画としてスタート。各ストアがその月にリリースしたハイレゾ作品を1つ推薦し、選評者に最も印象的な作品を選んでもらうというもの。過去の選評者は、作曲家・坂本龍一、ナタリー前編集長・大山卓也、音楽評論家・小野島大といった錚々たるメンバーが名を連ねる。

回を重ね、昨年末の12月には、ハイレゾ音源大賞2016グランプリの発表があった。選評者に選ばれたのは、『情報プレゼンター とくダネ!』(フジテレビ 月~金 8:00~)でMCを務め、自宅にリスニングルームを構えるほどのオーディオマニアとしても有名な小倉智昭氏。小倉氏には、各サイトが推薦した48作品をリスニングし、それぞれの賞が決まった。栄えあるハイレゾ音源大賞2016グランプリは、Eric Clapton『I Still Do』(Universal Music LLC)。コメントで「録音面でも、定位感がものすごくいいし、音の抜けも良くて。昔のクラプトンの音作りに比べると、ハイレゾになってかなり良くなってるのかなと感じました」というように、1曲目「Alabama Woman Blues」のオープニングのダルなスライドギターのグルーヴ感がたまらない。ドラムのスネアはルーズなのにそれでいてシャープな音を叩きだしている。40年代のアメリカの生き生きしたブルースの世界にタイムスリップしてしまった感覚を覚える。世界3大ギタリストの面目躍如である。

現在、アメリカは空前のLPブームに沸いている。13年は610万枚を売上げたが、14年は920万枚に到達するほど驚異的な人気だ。16年には、ストリーミングサービスの売上よりもLPの売上が上回っているという。日本国内を見てみると、「ハイレゾ音源大賞」にも参加している音楽配信サービスmoraの2016年間ハイレゾランキングは、単曲で1位が宇多田ヒカル「花束を君に」、2位RADWIMPS「前前前世(movie ver.)」、3位宇多田ヒカル「真夏の通り雨」。まとめ買い(アルバム単位)の1位は宇多田ヒカル「Fantome」となっており、アーティストの新作をハイレゾで入手する層の増加もうかがえる。ライブ感、音の質感にこだわるリスナーが、新作をハイレゾで買う習慣化の進行は今後も増えていくであろう。

文 / 竹下力

「ハイレゾ音源大賞2016」公式サイト


小倉さん
<小倉智昭氏コメント>
今回の企画を通して、アーティストやレコーディング・ディレクターの意図も伝わってきて、そこまで考えながら腰を据えてじっくり聴くことってなかなかないんで、そういう意味ではすごく楽しかった。
ハイレゾも出始めのころからずっと聴いてますけど、始めは疑心暗鬼な部分もありました。でもこれだけ個性のあるものが揃うと面白いです。楽器によっても違って、ドラムスの音のキレとかはハイレゾの方が全然いいですね。
エリック・クラプトンの『I Still Do』は録音面でも、定位感がものすごくいいし、音の抜けも良くて。昔のクラプトンの音作りに比べると、ハイレゾになってかなり良くなってるのかなと感じました。この作品はCDも聴いてましたけど、やはりハイレゾが良かったですね。

<ハイレゾ音源大賞2016グランプリ>

mora5月Eric Clapton
タイトル:I Still Do
アーティスト:Eric Clapton
レーベル:Universal Music LLC

エリック・クラプトン

1945年3月30日イングランド出身。ジェフ・ベック、ジミー・ペイジと並ぶ世界3大ロック・ギタリストの一人。ヤードバーズ、クリームなどのバンドでギタリストとして活動。2004年11月3日、イギリス政府より、ナイトの爵位に次ぐ「大英帝国勲章 CBE」が授与された。主な作品に「ヤードバーズ」「クリームの素晴らしき世界」「スーパー・ジャイアンツ」「デレク・アンド・ザ・ドミノス」「いとしのレイラ」「クラプトン」「アイ・スティル・ドゥ」など。

<ハイレゾ音源大賞2016ユーザー賞>

mora1月NakamuraEmi
タイトル:NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST
アーティスト:NakamuraEmi
レーベル:COLUMBIA
OTOTOY5月
タイトル:ティー・フォー・スリー
アーティスト:Negicco
レーベル:T-Palette Records
Print
タイトル:誰にもわからない~何が幸せ?~
アーティスト:丸本莉子
レーベル:Victor Entertainment, Inc. /AndRec

<ハイレゾ音源大賞2016 ストア賞>

e-onkyo music賞
渡辺香津美
タイトル:ギター・イズ・ビューティフル KW45
アーティスト:渡辺香津美
レーベル:ワーナーミュージック・ジャパン
mora賞
mora7月_涼宮ハルヒ
タイトル:涼宮ハルヒの完奏 ~コンプリートサウンドトラック~
アーティスト:V.A.
レーベル:Lantis
OTOTOY賞
OTOTOY8月DANCE TO YOU
タイトル:DANCE TO YOU
アーティスト:サニーデイ・サービス
レーベル:ROSE RECORDS
VICTOR STUDIO HD-Music.賞
VICL-18227_600
タイトル:Today’s Girl
アーティスト:小泉 今日子
レーベル:Victor Entertainment, Inc.
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