2017年期待するフレッシュな音楽&アーティスト  vol. 3

Column

ピアノロックバンドSHE'Sをはじめ才能に溢れた若きバンドたち

ピアノロックバンドSHE'Sをはじめ才能に溢れた若きバンドたち

2017年はどんなエンタメが流行る? どんなコンテンツに注目する?どんな新しい世界を期待する?
エンタメステーションの執筆陣が今年の活躍に期待をよせるアーティストを紹介します。

森朋之が2017年に期待するアーティスト

 宇多田ヒカル「Fantôme」、星野源「YELLOW DANCER」、RADWIMPS「君の名は。」「人間開花」、BABYMETAL「METAL RESISTANCE」など、ポピュラリティ、オリジナリティ、クオリティを兼ね備えた素晴らしいアルバムが数多くリリースされた2016年。CDセールスの低下、音楽不況が常態化して久しいが、はっきり言って、日本のポップミュージックの質はまったく落ちていない。世界のマーケットと比較してガラパゴス化が進行している懸念はあるが(ボン・イヴェールをはじめ、2016年はUSインディー・ミュージックを中心に数多くの傑作が生まれたのだが、日本では驚くほど浸透していない)、この国特有の音楽は確かに進化と変化を続けているのだ。そこで本稿では、バンドシーン、ヒップホップ・シーンを中心に筆者が“2017年にブレイクしてほしい”と願っているアーティストを紹介したいと思う。

 おそらくROCK IN JAPANが4日間開催となった2014年あたりだと思うが、ここ数年、日本のロックフェスは完全に飽和状態になった。フェスのオーディエンスを意識するあまり盛り上がりやすい4つ打ちの曲ばかりが量産されたり、“7月〜8月にかけて毎週のようにフェスに出演、秋からツアー”という活動スケジュールが固定されてしまう(そのためライブ会場の確保が難しくなる)という問題も生まれたわけだが、ここにきて“フェスで知名度を上げて活動を軌道に乗せる”以外のスタンスを感じさせるバンドが確実に増えている。音楽的なことで言えば、高揚的なダンスビートに頼らず、楽曲の質の高さ、歌の表現力で勝負するバンドということになるのだが、その筆頭とも言えるのが2016年にメジャーデビューを果たしたSHE’Sだろう。

 SHE’Sはソングライターの井上竜馬(Vo&Key)を中心に結成され、「閃光ライオット2012」で注目を集めたピアノロックバンド。幼少の頃からベートーヴェン、モーツァルトなどのクラシックに親しんでいた井上は、ELLEGARDENを入り口にして、海外のポップパンク、エモ系のバンドに傾倒。地元・大阪のライブハウスで出会った服部栞太(G)、広瀬臣吾(Ba)、木村雅人(Dr)とともに洋楽と邦楽をバランスよく融合させた楽曲を生み出してきた。その最初の集大成とも言えるのが、メジャー1stフルアルバム「プルーストと花束」。ダイナミックかつドラマティックなメロディライン、そして、エモ、ギターポップ、ハードロックなどを融合させたバンドサウンドは、まだ20代前半とは思えないほどの完成度を実現している。“プルースト効果”をテーマにした歌詞の豊かなストーリー性もきわめて魅力的だ。

SHE’Sの楽曲はこちらから!

 その他、エレクトロ、EDMなどの幅広い音楽性、アイドルファンにもアピールできそうなビジュアルを備えたHOWL BE QUIET、歌を伝えることにフォーカスしたオーセンティックなギターロックバンドHalo at 四畳半、松本大の骨太なボーカルを軸にしたLAMP IN TERRENなどにもぜひ注目してほしい。これらのバンドに共通しているのは(偉そうな物言いで申し訳ないが)“質の高い曲が書ける”ということだ。4つ打ちのダンスビートが前面に押し出されると、メロディの魅力はどうしても伝わりづらいし、フェス好きのオーディエンス以外にはなかなか浸透しない。そんな閉鎖感を打ち破り、より幅広いリスナーに訴求する“歌”を持っているのが、上記のバンドなのだ。

 もうひとつの注目はヒップホップ。テレビ番組「フリースタイルダンジョン」のヒットによってR-指定(Creepy Nuts)、DOTAMA般若といった実力派アーティストの知名度が上がり、フリースタイル・ラップがお茶の間レベルにまで浸透。さらに雑誌「ユリイカ」「SWITCH」が日本語ラップ特集を組むなど、2016年はヒップホップというカルチャーに久しぶりに注目が集まった年でもあったのだ。

ぼくのりりっくぼうよみ

ぼくのりりっくのぼうよみ

 そんな状況を受け、宇多田ヒカル「Fantôme」に参加したKOHH、アルバム「Good Mornin」が音楽専門誌、音楽サイトなどでも高い評価を得たSALU、MC、DJ、トラックメイカーからなるヒップホップ・クルー“KANDYTOWN”がメジャーデビューを果たすなど若手のヒップホップ・アーティストにもフォーカスが当てられた。日本のヒップホップにとっては完全に追い風状態なのだが、これを一時のブームに終わらせず、完全に定着できるかどうかは2017年が大きな分岐点となるはず。その最初のポイントとなるのが、SKY-HI「OLIVE」(1月18日リリース)、ぼくのりりっくのぼうよみ「Noah’s Ark」(1月25日リリース)という2枚の新作だ。

年齢、出自、ルーツ、音楽性はまったく異なる両者だが、ポップであることを恐れず、ジャンルを超えた幅広い音楽ファンに向かって自らのスタイルをまっすぐに打ち出そうとする姿勢は完全に一致している。2017年の最初の傑作と称すべきこの2作、ヒップホップに興味がないリスナーにこそ手に取ってほしいと思う。

文 / 森朋之

ぼくのりりっくのぼうよみの楽曲はこちらから!
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