『FFXV』が提供する新時代のゲーム体験  vol. 1

Review

現実と幻想の入り混じった新しい『ファイナルファンタジー』

現実と幻想の入り混じった新しい『ファイナルファンタジー』

2016年11月29日に世界各国で同時にリリースされ、発売初日にパッケージ版の初回出荷本数とダウンロード版の販売本数が合計500万本を突破し、現時点で600万本を達成した『ファイナルファンタジーXV』(以下、『FFXV』)。言わずと知れた『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)シリーズの最新作だ。ナンバリングタイトルでありながら、日本では珍しいオープンワールド形式を採用するという挑戦的な作品となっており、海外からも高い評価を受けている。本稿では、『FFXV』が見せるゲームとしての挑戦的とも言える新しさに着目し、テーマごとに追求していく。ヒット作のご多分にもれず賛否両論が飛び交っているが、本作をプレイしている人も、まだプレイしていない人も、本稿を通して『FFXV』の評価すべきポイントを改めて見つめてほしい。また、記事の最後には『FFXV』開発チームを直撃したインタビューも掲載しているので、こちらも要注目だ。

取材・文 / 村田征二朗


“現実的ファンタジー”とも呼べる世界

 『FF』と言えばその名の通りファンタジー要素に満ちた世界が魅力的なシリーズですが、『FFXV』の世界は従来の作品とはまた違った切り込み方をした世界となっています。『FF』シリーズの過去作品においても“ファンタジーよりもリアル寄り”な作品はありましたが、本作で描かれる世界はさらに“リアルさ”を構築しており、シリーズのなかでもある種の異色作と言っても過言ではありません。

 まずは見た目であるグラフィックですが、こちらはまさに一目瞭然。風景や人物、果ては車から料理に至るまで、ハイレベルなCGによって生み出されるゲーム世界の視覚的“リアリティ”はシリーズ作品の中でも随一でしょう。

▲キャラクターの髪や肌の質感といった細かな表現、衣服や小物、背景などの描写の細かさを見れば、開発が長きに渡ったことにも得心がいきます

▲キャラクターの髪や肌の質感といった細かな表現、衣服や小物、背景などの描写の細かさを見れば、開発が長きに渡ったことにも得心がいきます

▲食欲をそそる料理のグラフィックはまさにセルフ飯テロ。深夜のプレイではプレイヤーの食欲がエラいことになります

▲食欲をそそる料理のグラフィックはまさにセルフ飯テロ。深夜のプレイではプレイヤーの食欲がエラいことになります

 単純にグラフィックが綺麗というだけではなく、『FFXV』で目にする世界にはもちろん別のリアリティもあります。主人公たちが旅をする舞台はアメリカのどこかのような雰囲気があり、“かつて見たことのあるような景色”がちらほらとあるのです。その極めつけとも言えるのが、各地に存在するガソリンスタンド。映画やCMなどで海外(というかアメリカ)のガソリンスタンドが映るシーンを見ると、『FFXV』プレイヤーはかなりの既視感を覚えるのでないか、というほどに現実感があるのです。

▲アメリカに行ったことのない筆者もどこかアメリカっぽさを感じるガソリンスタンド

▲アメリカに行ったことのない筆者もどこかアメリカっぽさを感じるガソリンスタンド

 ゲーム内に点在するガソリンスタンドには当然ガソリンを給油しに立ち寄る訳ですが、そもそもロールプレイングゲーム(RPG)で車を運転してガソリンが切れたらスタンドに入る、という行為自体が相当に斬新。しかもそれを超大作であり、ファンタジーRPGの代名詞的存在である『FF』のナンバリングタイトルで敢行したというのがまた挑戦的です。

▲ゲーム中に給油シーンを眺める日が来るとは誰が予想したでしょうか

▲ゲーム中に給油シーンを眺める日が来るとは誰が予想したでしょうか

 車だけでなく作中にはスマートフォンも登場し、登場人物たちの会話からスマートフォン向けのゲームアプリの存在も伺えるなど、現実世界における当たり前のことがゲーム内の世界でも当たり前のこととして描かれており、今回は従来の『FF』とはひと味違うぞ、という驚きと、プレイヤーが暮らす世界との親和性によるなじみやすさが同居しているのです。

▲車の運転は基本的にオートで行うため事故の心配はありませんが、ほかの車やガードレールにぶつけると傷が増えていくという細かい設定もあります

▲車の運転は基本的にオートで行うため事故の心配はありませんが、ほかの車やガードレールにぶつけると傷が増えていくという細かい設定もあります

▲運転中にコーヒーを飲むなど、旅をしているキャラクターの生活感が垣間見えることも

▲運転中にコーヒーを飲むなど、旅をしているキャラクターの生活感が垣間見えることも

 また、ゲーム内では日清食品のカップヌードルやキャンプ用品メーカーのコールマンの製品など、現実世界に登場する商品やメーカーが登場します。メインストーリーにおいて重要な役割を果たすわけではありませんが、身近な製品が『FF』の世界に登場するというのはニヤリとさせられるものがあります。

▲現実溢れる世界とは言え、『FF』にリアルなカップラーメンが登場するのは、なかなかに強いインパクトです

▲現実溢れる世界とは言え、『FF』にリアルなカップラーメンが登場するのは、なかなかに強いインパクトです

現実と幻想のハイブリッド

 そんなリアリティが詰め込まれた『FFXV』ですが、そこは『ファイナル“ファンタジー”』、当然のことながら魔法やチョコボ、召喚獣といったおなじみのファンタジー要素もしっかりと登場します。RPGではもはや当たり前の魔法ですが、『FFXV』におけるそれは一般にイメージされるものとは少々違っています。本作では魔法を“習得”するのではなく、各地で手に入る炎、冷気、雷のエレメントを使った“精製”によって入手できます。

▲使用までの手間はかかるものの、魔法は威力抜群、迫力満点です!

▲使用までの手間はかかるものの、魔法は威力抜群、迫力満点です!

 魔法でありながら装備して使用する、一定回数使用すると再度精製する必要がある、など従来の魔法とは大きく異なり最初は戸惑いますが、密集した敵に対しては猛威を振るうため、慣れてみれば非常に頼りになります。

▲魔法を精製する際にアイテムを追加することでHP回復や経験値取得などの追加効果も発生

▲魔法を精製する際にアイテムを追加することでHP回復や経験値取得などの追加効果も発生

 また、『FF』シリーズのマスコット的存在であるチョコボは、シリーズ他作品同様に車では進むことができない草原や沼地などのエリアをスピーディに探索できる移動手段として登場します。車での旅も味があるものですが、チョコボでの移動は疾走感が数段高く、自転車を初めて手にした小学生よろしく、自由に移動できる世界が広がったかのような感覚が味わえます。とくに、チョコボのスタミナを消費して移動速度を一定時間上昇させる全力疾走を行ったときのスピード感は非常に気持ちよく、マップを走り回るだけでもちょっとした楽しみになります。

▲走っているとチョコボのレベルが上がってスタミナや最高速度が上昇するのも地味にうれしいポイント

▲走っているとチョコボのレベルが上がってスタミナや最高速度が上昇するのも地味にうれしいポイント

 さらに『FFXV』のファンタジー色を補強しているのが召喚獣の存在です。これまたシリーズ作品とは少し違い、MPを消費してでの召喚ではなく、戦闘中に条件を満たすことで召喚可能となっています。この召喚獣がとてつもなくデカく、そのスケール感は『FF』シリーズ随一と言っても過言ではありません。シリーズでも類を見ない迫力となっています。ド派手な演出も衝撃的ですが、大部分の敵を一撃で全滅させるというとてつもない破壊力にも驚かされます。

 召喚獣は“六神”と呼ばれる存在として神話の時代から人々に語り継がれており、ストーリー上でも重要なポジションに位置しています。その存在感の大きさが、車やガソリンスタンドの存在、そして実写と見間違えるほどの料理グラフィックなどによって現実に寄り添っている『FFXV』の世界でも確かなファンタジーとして感じさせてくれるのです。しかも、ストーリーを進めると条件を満たすことで戦闘中に召喚獣を呼び出して敵を攻撃できるようになるのですが、これがとんでもない威力なのです。過去シリーズでは魔法の上位版といったようなイメージでしたが、『FFXV』における召喚獣の強さはまさに桁違い。強敵との戦いではこれまでにないほど頼りになります。

▲戦闘中の時間経過や、主人公や仲間が追い詰められるといった条件や確率が関係するため、毎回の戦闘では使えないものの、発動すればほぼ即勝利となる驚異の召喚術

▲戦闘中の時間経過や、主人公や仲間が追い詰められるといった条件や確率が関係するため、毎回の戦闘では使えないものの、発動すればほぼ即勝利となる驚異の召喚術

 車やスマートフォンが登場する現実的世界の中に、このようなファンタジー要素が色濃く存在することで、ハイブリッドともいえる『FFXV』だけの独特な世界ができあがっています。歴史のひと幕や現代社会などをそのまま舞台にした作品や、純粋なファンタジー世界に生きる作品は数多くありますが、文明の利器と神話が同じレベルで人々の生活に溶け込んでいる様子がここまでリアルに描かれている作品はなかなかないのではないでしょうか。それゆえ、『FFXV』では、『FF』でないようで『FF』らしさがあるという、なんとも独特な、唯一無二とも言える冒険、旅を体験できるのです。

 “化物”ではなく“生き物”として存在するモンスター

 そして、『FFXV』が現実と幻想のハイブリッドであることを示す最たるものがモンスターの存在でしょう。モンスターといえばある意味ファンタジーの代名詞的存在ではありますが、『FFXV』に登場するモンスターたちは、単純な“化物”というよりも一種の“生き物”として描かれているものが多く、一括りにファンタジー的存在であるとは言えません。

 多くのモンスターたちは現実の動物をモンスター調にアレンジしたようなデザインになっているのが印象的です。ファンタジーらしい姿のものもありますが、一部のモンスターは深海や未開の地にいる生物と言われれば、「ひょっとするといるかもしれない」と思えてしまう外見になっています。

▲現実の蟹そっくりなモンスター、サイズがこれだけでかくなれば戦闘もど迫力に!

▲現実の蟹そっくりなモンスター、サイズがこれだけでかくなれば戦闘もど迫力に!

▲『FF』では半魚人的イメージのある“サハギン”系のモンスターもご覧の通り、ワニの超凶悪版といった姿に

▲『FF』では半魚人的イメージのある“サハギン”系のモンスターもご覧の通り、ワニの超凶悪版といった姿に

 こう書くと、『FF』のファンタジーらしさを演出していたモンスターたちがすべてリアルなデザインになっているのではないかと危惧する方もいるかも知れませんが、“ボム”や“トンベリ”などの『FF』を象徴するモンスターたちはおなじみの姿のまま登場するので、その点においては心配ご無用です。

 モンスターたちのリアルさは外見だけではなく、主人公たちが車で移動していると同じ種類のモンスターたちが群れを成して移動していたり、マップを探索していると種族の異なるモンスター同士が争っていたりと、モンスターたちの生態系の対立や食物連鎖の存在を伺わせるような演出がされているというのもユニークです。こういったモンスターの描写はRPG作品としては比較的珍しく、普段そこまでゲームをしない人のみならず、年に10本以上のソフトをクリアーするようなゲーム好きの人にも、その演出は目新しく映ることでしょう。

 『FF』シリーズとしてだけならず、ゲーム以外の映画や小説、コミックなども含めたフィクションという枠組みの中でも非常に独特な世界を持った『FFXV』、PlayStation® StoreやXboxストアでゲーム序盤を遊ぶことが可能な体験版をダウンロードできます。興味はあるけど買おうかどうか迷っているという人は、ぜひ体験版を遊んでみてはいかがでしょうか? 体験版では『FFXV』の美麗かつ迫真のグラフィックを堪能できるのはもちろん、ゲーム序盤でのモンスター討伐クエストやマップ探索など、本作を特徴付けるさまざまな要素に触れることができます。体験版が気に入ったのであれば、ゲーム本編もきっと楽しめることでしょう。

 本稿では『FFXV』の世界についてご紹介しましたが、オープンワールドゲームの醍醐味といえば各種ミッション、モンスター討伐といったクエスト、広大な世界に点在するダンジョン探索、さらには釣りなど、本筋以外の寄り道の豊富さです。別の機会では、この現実と幻想のハイブリッドな世界で体験することのできる、種類豊富な寄り道、そしてそこで得ることのできるメインストーリーとはまったく異なったゲーム体験について語らせていただこうと思います。


『FFXV』ディレクター・田畑端さん直撃! 一問一答!

 『FFXV』に関するさまざまな疑問をディレクターである田畑端さんに訊くこのコーナー。本稿では、今後のアップデートなどの展開予定、カップヌードルとのコラボの経緯などを伺うことができました。


長い開発期間を経て、ついに『ファイナルファンタジーXV』がリリースとなりましたが、発売後の手応えはいかがでしょうか?

年末年始を経て、発売した実感が湧きました。じっくり遊んでいるプレイヤーの方は、とても満足してくれている印象です。開発して良かったと思えています。

 アップデートのその他の内容に“フォントを拡大表示して、メッセージを読みやすくする”というものがありますが、具体的にはどのような変更を行う予定でしょうか?

現在の表示領域の中で、なるべく大きくフォントを表示するという対応を行います。多くの言語に対応している理由からレイアウトを変更することが難しく、まずは現レイアウトで最大限の視認性を目指します。

モンスターの弱点やドロップするアイテムなどの情報が確認できるモンスター図鑑のようなアイテムを登場させる予定はありますか?

計画はあります。時期については続報をお待ちください。

 カップヌードルとのコラボは衝撃的で、CMでも大きな反響を呼びましたが、そもそもカップヌードルが登場することになった経緯を教えてください。

『FFXV』の開発をスタートさせる段階で“旅”という体験テーマを決めました。我々自身がカップヌードルが好きなこともあって、旅する中でキャンプするなら、やっぱりカップヌードルが必要だろうという思いが募りました。その後、日清食品さんとお話しする機会があり、我々のゲームにカップヌードルを登場させたいという思いを伝えさせてもらい、実現しました。

 旅の道中でプロンプトが撮影した写真をSNSでシェアできるのも本作の大きな特徴ですが、写真コンテストのようなSNSを使ったキャンペーンを開催される予定はありますか?

あります。すでにたくさんのプレイヤーの方からそういった要望を頂いていますので、企画策定を進めています。

 オープンワールド形式からいわゆる一本道のリニア形式へと変化するのは珍しい気もしますが、どういった経緯でこのようなスタイルとなったのでしょうか?

今作の世界をすべてオープンワールドで表現すると、2倍の開発期間がかかることがわかっていました。そこで“旅”という体験テーマを達成し、なおかつ物語を描けて、さらに現実的に発売できる限界のボリュームにするという、いくつかの課題を同時に満たす必要がありました。単に際限なく理想を追うだけ、または単に期日に完成させるだけの開発ではなく、制約の中であっても最高の体験を提供することを目標としました。そのため限界ギリギリを攻めた開発をするという方針を立て、新たなゲームスタイルに挑戦する道を選択しました。


 モンスター図鑑のようなアイテムや写真コンテストなど、多くのプレイヤーが期待する要素については将来的に追加、開催される予定ということで、続報が気になるところです。とくに写真コンテストについては、SNSでもクールなものからコミカルな1枚まで、バリエーション豊かな写真がシェアされているだけに、どのようなコンテストとなるのか、その内容にも注目ですね。

 また、話題を呼んだカップヌードルとのコラボが“旅”というテーマ、そして開発チームの好みという、ある意味“リアル”な理由から生まれたという興味深い話を訊けました。なお、開発チームのカップヌードル愛は、ゲーム中でもとあるクエストで確認できます。主人公たちが真顔でカップヌードルについて語るという、ほかのゲームではなかなかお目にかかることのないシュールな会話は必見です!

ファイナルファンタジーXV公式サイトhttp://www.jp.square-enix.com/ff15/

© 2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
MAIN CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA

vol.1
vol.2

編集部のおすすめ