2017年期待するフレッシュな音楽&アーティスト  vol. 4

Column

サンフランシスコで確信した無名の少女たちの限りない可能性~Little Glee Monster

サンフランシスコで確信した無名の少女たちの限りない可能性~Little Glee Monster

2017年はどんなエンタメが流行る?どんなコンテンツに注目する?どんな新しい世界を期待する?
エンタメステーションの執筆陣が今年の活躍に期待をよせるアーティストを紹介します。

佐藤剛が2017年に期待するアーティスト

初めてリトル・グリー・モンスターのライブを見たのは、2014年11月のことだった。そのときはすでにデビュー・シングルをリリースしていたらしいが、ぼくはそれを知らなかった。中高生のヴォーカル・グループという以外、何の情報もないまま、何の予備知識もなく、何はともあれ渋谷のライブハウスに出向くことにした。
というのは、ライブを観てほしいと知人から連絡をもらった時、ヴォーカル・グループという言葉に何となく、胸騒ぎのようなものを感じたからだ。中高生の女子だけの6人組、しかも名前がリトル・グリー・モンスター、どこかに何か引っかかるものがあった。
先入観を持たずにまっさらな気持ちで彼女たちと対峙したい、そう思って出かけてみたら胸騒ぎの予感は的中した。これまでのバンドやヴォーカル・グループにない何か、具体的ではなかったが未知の可能性を感じたのだ。

それから半年後の4月19日、ぼくはふたたび渋谷のライブハウスに足を運んだ。成長したであろう彼女たちに出会うためだった。そして1時間半後、満員の観衆が求めるアンコールの声を聞きながら、その昔、音楽ジャーナリストだったジョン・ランダウが、ブルース・スプリングスティーンのライブをニューヨークで初めて見た後で、その感動を記した文章に自分の気持ちを重ねていた。

ぼくは渋谷のライブハウスで、ロックン・ロールに出会って以来の自分の過去が、一瞬のうちに目の前を通り過ぎていくのを見た。
そう、ぼくは見たのだ。
特別な何かに出会ったのだ。
その名は、リトル・グリー・モンスター!

ライブの余韻が醒めていない数日後、国際交流基金の知人からの電話で、8月に開催するJ-POPサミットの出演者について、ふさわしい人がいないかという相談があった。絶好のタイミングだったので、「日本でもまったく無名だけれど、いずれは世界の舞台さえ夢ではない中高生の新人グループに出会った。もしも条件にかなうならば、自信を持ってその子たちを推薦したい」と答えた。夏休み期間中だったこともあって、スケジュールをふくむ諸条件がすべてクリアになったのは幸運だった。よく言われる言葉だが、まさに運も実力のうちなのだ。その運をつかめるのかどうか、そこからがほんとうの勝負になる。

こうして8月7日と8日の二日間、サンフランシスコでのライブが行なわれることになった。推薦者として一緒に渡米したのは、無名の少女たちのライブがアメリカで通用するのかどうか、それを自分の目で確かめたかったからだ。
J-POPサミットは日本の文化に関心のある若者たちが集まる場なので、ある程度しか参考にはならないと思っていた。だが観光の拠点となるユニオンスクエアでのフリーライブは、何のごまかしもきかない野外空間だ。そこで通りすがりの観光客や地元の人たちの前で、彼女たちがどういう反応を得られるのか、ぼくはそれを見逃したくないと思った。

しかし8月7日の午前中にサウンドチェックとリハーサルを始めた時点で、もう答えが出たように感じてしまった。シスコの街に彼女たちの澄んだ歌声が響きわたり、晴れわたる空に溶けていっただけで「もう心配はいらない」と思えた。リトル・グリー・モンスターは何の違和感もなく、数多の音楽とニュー・カルチャーを生んだシスコで、街の空気と自然に馴染んでいたのである。

そして2ステージの本番が終わった後でわかったのは、アメリカ人が知っている楽曲をカヴァーするよりも、日本語のオリジナル曲のほうが好反応だったという事実だ。つまり彼女たちのピュアな心と歌声は、言語や国境や人種を超えて届くということを、ぼくは確信したのだった。

J-POPサミットの会場で行われた現地メディアとのインタビューでも、ものおじしない彼女たちの素直な声に、将来への可能性をいっそう感じることになった。特に中学生だったmanaka(まなか)が誰かからの影響というわけではなく、ネットで音楽収集しているうちにビートルズに出会って、アルバム『ハード・デイズ・ナイト』が好きになったという発言には、まさにインターネット世代らしいと驚かされた。いつかはジョン・レノンのアルバム『ロックン・ロール』のような、カヴァー・アルバムを自分で作りたいと話す言葉に、「たのもしいぞ」と期待が膨らんだのを覚えている。

帰国後の9月23日、リトル・グリー・モンスターはTBS系列ドラマ『表参道高校合唱部!』の主題歌、「好きだ。」を4枚目のシングルとしてリリースした。それがオリコンのチャートで最高位6位を記録、初のTOP10入りを果たしてYouTubeの動画再生回数は1000万回を超えた。2016年1月6日には1stアルバム『Colorful Monster』をリリース、オリコンチャート4位を記録し、彼女たちも少しは知られる存在になっていった。そして、それぞれに英語を少しずつ学び始めたという。

それから1年が過ぎた2017年1月6日、2ndアルバム『Joyful Monster』をリリースした彼女たちは、その2日後に最初の目標だった日本武道館公演に臨んだ。
冷たい雨のなかで入場の列にぎっしり並んでいる人たちを見て思ったのは、以前よりも女性の観客が大幅に増えていることだった。入場すると場内のBGMは武道館らしく、すべて初期のビートルズで統一されていた。そう、武道館をロックの殿堂にしたのは、1966年に来日公演を行ったビートルズだった。

そんなことに想いを馳せていると、ビートルズとの対比ではリトル・グリー・モンスターはまだ、『WITH THE BEATLES』の段階なのだと微笑ましくなった。ぼくは本番の幕が開くのを客席で待ちながら、4日前のラジオ番組でmanaka(まなか)がビートルズの好きな点について、「その時その時、違う音楽をやっていっているところ」と答えていたのを思い出していた。

Little Glee Monster 芹奈

芹奈

Little Glee Monster アサヒ

アサヒ

Little Glee Monster 麻珠

麻珠

Little Glee Monster MAYU

MAYU

Little Glee Monster かれん

かれん

Little Glee Monster manaka

manaka

Little Glee Monster Live in 武道館 ~はじまりのうた~

Little Glee Monster Live in 武道館 ~はじまりのうた~

その日のコンサートは「全員が高校生のうちに武道館に立ちたい」と公言してきた6人が、見事な歌とパフォーマンスで夢を叶えて、1万3000人の観客を魅了する祝祭的な空間となった。6人が織りなすハーモニーとアンサンブルの魅力、そこから自立した個人の個性が自然な形で伝わってきた。それは天性の才能と不断の努力によるものだった。背伸びしすぎることなく、自分を正直に出しているという意味で、彼女たちを支えている音楽への純潔さが感じられた。

そしてコンサートの最後にメンバーを代表して、最年少のmanaka(まなか)が発した言葉には、その時その時の真っ正直なメッセージが込められていた。

「ここの舞台に、今日、私たち6人で立てているのは、本当にいろんな人の支えがあって、毎日、本当にみんなの助けがあったから、ここまでたどり着けているんだなっていうのをあらためてすごく感じています。
13歳のころに、洗濯機の回し方も分からなかった私を、東京に1人で上京させてくれた家族と、私たち……。涙も、笑いも、全部分かち合って、大好きな、今までずっと戦ってきたメンバーと、右も左も分からなかったころから陰でずっとサポートしてくださっているスタッフの皆さんと、私たち6人に本当に一番大きな愛情をいつもいつも注いでくれる、ファンのみんなのおかげです。ありがとう!」

そしてリトル・グリー・モンスターは武道館が通過点であり、世界で活躍する日本人アーティストになるのが夢だと、きっぱりと宣言したのである。

「私たち、武道館に立ったことは本当に通過点で、2020年の東京オリンピックで歌いたい、世界で活躍する日本人アーティストになる、とか、まだまだ大きな山の夢がたくさん目の前にあるんですけど、でもそんな道の中で、皆さんが私たちについて来てくれる限り、絶対にみんなの手を離さないような、そんな歌を歌い続けていきます。武道館を最初に目標に決めた時は、武道館の先のことなんて全く見えなかったんですけど、今日ここに立ってわかりました。リトル・グリー・モンスターは、絶対に、もっとすてきな景色をみんなに見せていけると思います。みんな、ついてきてくれますか!?」

2017年の初頭にひとつ、日本の音楽の未来に希望の光が灯った。縁があってその場に立ち会えたことを、ぼくは音楽の神様に感謝したいと思った。

文 / 佐藤剛

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