POP UP GIRLS!  vol. 15

Interview

「歌をやめない」宣言した西恵利香の新作に見る新機軸

「歌をやめない」宣言した西恵利香の新作に見る新機軸

伸びやかな歌声、広い声域、そしてそれらを巧みにコントロールし、緩急を付けながら描き出す情感。ファンキーなビートに身を委ねながらグルーヴィーに旋律を舞い踊らせ、染み入るバラードではデュナーミクを的確に施しながら聴き手を包み込んでいく。その惚れ惚れするような歌いっぷりは、つんく♂や字多丸(ライムスター)も太鼓判を押すほどだ。
西恵利香。モデルや女優として芸能活動を始め、2011年~14年には4人組アイドルグループ、AeLL.のリーダーとして活躍した後、本格的にソロ活動を開始。アイドルが出自であるゆえに、現在もアイドル/ガールポップ系イベントを主戦場とするが、その佇まいは、そして何より実力は、アーティストのそれと言っても過言ではない。
そんな彼女の5枚目となる作品。MISIAや東京女子流などを手掛けてきたことで知られる 松井寛をプロデューサーに迎えたミニアルバム『penetration』は、西恵利香の新機軸を打ち出す意欲作だ。作曲陣にはHIROKI SAGAWA、阿久津健太郎、清貴/KI-YOを、そして演奏陣には、Awsome City Clubのギタリスト、モリシーや、世界的に活躍するフルート奏者、赤木りえらを迎え、実に味わい深い一枚を作り上げた。
28歳の誕生日当日に行われたバースデーライブの翌日。その余韻も冷めやらぬ中、新作についてなど伺った。

取材・文 / 石川真男 撮影 / 荻原大志


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私生まれてきて良かったな、ってホントに思いました。

昨日のバースデーライブを終えて、今の率直なご感想は?

MCでも言ったんですけど、最初チケット予約の数がなかなか伸びなくて…

感動的なライブだったんですが、そういう話から入りますか(笑)。

ハハハ(笑)。いや、ホントにものすごく不安になって。ツイッターなどでも必死に煽ってて、ちょっと“必死感”出て恥ずかしいなとか思いながらも、後悔するのも嫌だったので、告知だけは頑張りました。まあ、そうやって頑張った結果なのか、平日にも拘らず代官山LOOPさんを埋めることができたので良かったなぁ、と。やっと集客から解放されたっていう気分です。

「昨夜の感想」として、まずはそれが頭に浮かんだわけですね(笑)。

いや~まあでも、なんですかねぇ…。ステージ上でしみじみ感じたんですが、私のファンの方ってホントにあったかいな、と。大袈裟なことを言うと、私生まれてきて良かったな、ってホントに思いました。

そういう話をお願いします(笑)。

たぶん、今後はもうそんなことは無いと思いますけど(笑)。

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ハハハ(笑)。昨夜は、西さんの歌の上手さに改めて感服したのは言うまでもないですが、MCも絶品でした。西さんの心地好い歌声を聴くと心が浄化されていくのに、その合間に西さんは「お金」の話ばかりしていた、っていう…(笑)。

いやホントに、会場代もそうですし、チケット代がどれぐらい入ってくるかとか。ドリンクをたくさん飲んでいただくとライブハウスにも還元できるし、物販も新しいグッズを作ったけど、これが売れなかったら次は出せないな、とか。お金のことはすごい考えて、つい、あんなことを…ホント良くないなと…。

まあ、それはある意味、ビジネス的な観点をお持ちだということで(笑)。で、「決して音を外さない」イメージの西さんですが、昨日は「Morning Sun」で感極まってしまい、歌も“ボロボロ”でしたね(笑)。

そうですね~。全然泣くつもり無かったんですけどね。なので、マスカラもウォータープルーフにしていかず、泣いた瞬間に顔がマスカラでぐちゃぐちゃになる、っていうすごい恥ずかしいところを見せてしまったんですよね。

あと、最後に「歌をやめない」宣言をしましたよね。

そうですね。なんか、周りでは「引退します」とか「辞めます」というのが最近相次いでいるような気がして…。生き残るのって大変だし、続けていくことってすごい難しいから、辞めたいっていう気持ちもすごい分かるんですけどね。私も「LOOPを埋められなかったら2017年は続けられないかもしれない」ぐらいまで思って昨日のライブに臨んだので、それが終わりに近づいた時に「私これからも歌ってていいんだな」と思って泣いちゃったんですよ。で、そこで「歌をやめたくないです」っていうのをみんなに言っちゃいました。ぜんぜんそんなMCをするつもりはなかったんですけど…。AeLL.が活動休止した時に、ホントにたくさんの方を悲しませちゃったので、できれば今来てくれているファンにはそういう思いをさせたくないな、と。なので「私はやめないですよ」と言って、ファンの方を安心させたかったんだと思います。

本音を言うと、皆さんがどっちに捉えてくれるのか、すごい不安で。

新作についてお聞きします。どんな作品になりましたか?

前作のリミックス・アルバム『re:LISTEN UP』から関わってくださっている松井寛さんに全プロデュースをお願いしたので、“松井節”が炸裂している作品なのかな、って感じですね。これまでにはないストレートなバラードも入っているので、今までの私が好きだった人には新鮮に感じてもらえるんじゃないかと思います。

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新機軸を打ち出されているな、というのはすごい感じるんですが、西さんにとってもこの作品は“挑戦”というべきものですか?

このアルバムを作る話は2016年初頭ぐらいから出ていたんですよ。まあ、リミックス・アルバムが先に出ることになったんですが、それぐらい長い期間を経て取り組んだ作品だったんです。今回は仮歌も全部自分で録ったんですよ。初めてMacのパソコンが役に立ちましたね。松井さんに教えてもらって、機材を揃えて、自分でレコーディングできる環境を整えて、曲が来たら歌を入れて返して、っていうのを繰り返してやったので、そういった意味でも挑戦であり、すごい勉強になりましたね。

かなり“制作”に関わったわけですね。

そうですね~。詞も初めて書いたりしたので。
「モノクロ」の2番以降も実は私が詞を書いたんです。1番はSagawaさんが書いてくださったんですけど、それに倣って2番は私がつけたので、そういう意味でもすごい今までとは全然違いますね。

この作品の制作を始める時、「どんな感じでいこう」とか「ちょっと新しいことにチャレンジしてみようか」とか、そういった話し合いみたいなのはあったんですか?

そうですね。松井さんたちと何度か打ち合わせをさせていただきましたね。松井さんの中に「西恵利香をこうしたい」というのがあって…。「マスに刺さるようなものにしたい」みたいなことを言ってくださいました。

個人的な感想なんですが、「MUSICを止めないで」って西さんの代表作とも言うべきナンバーすよね。で、次の作品は、“第2の「MUSICを止めないで」”を出しちゃえば一番簡単なんじゃないか、と思っていたんですよ。ですが、その路線では来なかった、と。代わりに「モノクロ」という極めてチャレンジングな曲で来ました。

そうなんですよね。本音を言うと、皆さんがどっちに捉えてくれるのか、すごい不安で。でも、この作品は松井さんのサウンド色が強くて、私のファンにはそういった音が好きな方も多いので、そんな方たちからはすごく評判がいいですね。

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それにしても「モノクロ」って難曲ですよね。

難しいですね~。1番だけならまだしも、2番に詞をつけたのは自分だから、なんでこんな言葉を詰め込んでしまったんだろう、って。作ってくださったSagawaさんも「すいません、スゲェ難しいの作っちゃいました」っていう感じだったので(笑)。

でも、最初は「難しい曲だなぁ」という印象だったんですが、昨夜歌われた時、「MUSICを止めないで」系のダンサブルな曲の合間にこういう曲を持ってくるとものすごく映えるし、ライブにもとてもいい変化がつけられるな、と感じました。

そうですね。いいスパイスになっているかもしれません。でも、歌いこなすにはもうちょっと時間が掛かるかな、って思ってます。まだ歌うのに必死なんで。余裕をもって歌えるようになるにはもうちょっと時間が掛かりそうだなと。ライブを何回か積み重ねていくともっとよくなっていると思うので、ぜひライブに来て聴いていただきたいです(笑)。

阿久津健太郎さん作曲の「情熱アンドゥ」。こちらは「MUSICを止めないで」系のファンク路線ですが、でも、重い情感が歌われているマイナー調で、またちょっと雰囲気が違います。で、これもまた難しい曲ですよね。

なんでこのキーにしちゃったんだろう、って思ってるんです(笑)。音が高くてなかなか当たらなかったりする箇所があって。まあ、この曲に関しては声を張ったほうがいいと思うので、ちょっと苦しいぐらいがカッコいいのかもしれないですが…。ライブのたびに「下げときゃよかったな」とは思ってますけどね(笑)。

でも、“歌い上げてる”って感じでカッコいいですよね。続きまして「あなたへのエール」。これまでの西さんのイメージとはちょっと違った“ロック”系バラードですよね。

最初いただいた時はびっくりしました。作者の清貴さんが一度ライブを観に来てくださって、「イメージが湧いた」って言っていただいて…。まさかこういう曲をいただけるとは思ってなかったです。作詞に関しては、私はかつてAeLL.(エール)というグループにいたので、AeLL.のファンだった方には刺さるんじゃないかと思いますね。あと、卒業シーズンにも合うんじゃないかな、なんて思います。

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なるほど。そして松井寛さん作曲の「夕日」ですが、西さんが作詞に関わってらしゃいます。曲調も他の3曲とはまたひと味違いますよね。なんかレイドバックした緩い感じで、でもサビに向かってテンションが上がっていく感じで…。

そうですね。今思うと、もうちょっといい詞が書けたんじゃないかな、と思ってるんですけどね。ストーリーがあからさまになっちゃってて…。私、本を読むのが大好きなので、これも小説みたいになっちゃった感じがするんですよ。次もし作詞をやらせていただける機会があれば、もうちょっと言葉を抜いて、聴き手に想像させるような歌詞を書けるようになりたいな、と。流れではなくて、単語ひとつひとつに意味があるような。

主催ライブを復活させたいと思っています

そろそろまとめに入らなければいけないんですが、最後に「西会」のことも言っておきましょうよ。先日“活動”されたんですよね?

はい、やりました!年末に忘年会をやって、WHY@DOLLとFaint☆Starが来てくれたんです。その時、星野みちるちゃんとか、フィロソフィーのダンスの奥津マリリちゃんとかにも 声を掛けたんですけど、スケジュールが合わず.…..。で、結局5人で。その時「2017年はもうちょっとやりたいな」って言ったら、Faint☆Starには拒否されました(笑)。

(笑)。奥津マリリさんも西会なんですか?

マリリとは個人的に仲良くて。すごい慕ってくれるんですよ。で「西会に入りたい」とは言ってくれているんですけど、そもそも「西会」って何なのか、私も分かってないので(笑)。まあ単なる「ご飯食べよう会」なんですけどね(笑)。今年は以前にやっていた主催ライブを復活させたいと思っているので、いつか西会のライブができればと思っています。以前やった主催ライブにフィロソフィーのダンスも出演して頂いたことがあるんですけど、こんなに売れてくる前だったんですよ。ちょうど“見つかりだした”頃で、その後 にドーンと来て……。「西会に入ると売れる」みたいなジンクス作っていきたいですね!まあ、本人が一番売れなきゃいけないんですけど(笑)。

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西 恵利香

1989年1月11日生まれ、埼玉県出身の女性歌手/タレント。2011年1月より篠崎愛らとアイドルグループのAeLL.を結成、リーダーを務める。2013年にErika.名義でカヴァーアルバム「unjuor」を発表。2014年9月にAeLL.の無期限活動休止により、ソロ活動を開始。2015年1月ミニアルバム「Prologue」で西恵利香としてソロデビューを果たす。2015年8月に1stシングル「MUSICを止めないで/サマーパーティー」、同年12月に「LISTENUP」を発表。2016年9月にリミックスアルバム「re:LISTENUP」をリリース。2017年 1月18日には5thアルバム「penetration」発売。
オフィシャルブログhttp://ameblo.jp/erika-nishi/

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