Interview

B'z の稲葉浩志とスティーヴィー・サラスが挑んだ、はかり知れないグルーヴ感(前編)

B'z の稲葉浩志とスティーヴィー・サラスが挑んだ、はかり知れないグルーヴ感(前編)

意味を超えた言葉の意義っていうか、そういうところの入口がちょっと見えたような気がして

稲葉さんはスティーヴィーの曲に言葉を乗せていく初期段階で、乗せにくいなと思う曲はなかった?

INABA それはあんまり。やっぱり曲先で歌詞を乗せる作業はもうずっとやっていることなので、それ自体はベーシックで大変ではないですけど。むしろ難しいメロディが来てそれに乗せるのは面白かったりするので。でも、それを聴いた感じをどう感じるかっていうのは、聴感上「そんな、思ってるのと違う、これ」みたいなところはいっぱいあとからどんどん出てくるので。

ビックリしますよねえ。

INABA 自分がいいなと思ってやっていても、そこがグルーヴに合っていなかったりとか、彼の持っているフローというか流れに沿ってないんでしょうね。だから違和感を訴えてくるわけですよ。で、たぶんその言葉の響きとかが曲によっては、自分が感じてるその曲のフィーリングとか雰囲気とか気持ち、曲を聴いているときの気持ちを邪魔する響きなのかもしれないし。それはだから、もし歌詞命で、歌詞の意味命で、僕が詩人みたいな歌詞を書いてやってたら、「俺の詞を冒涜してるのか」って言うかもしれないけど(笑)、まあ僕は幸いそうじゃないし。レコーディングのときに考えたんですけど、言葉の響きが聞こえたときに、それがたとえばポジティブな響きだったりとか、メランコリックな響きだったり、それとその言葉が持つ、何語にかかわらず、もっとさらに根源的なところ(笑)、意味を超えた言葉の意義っていうか、そういうところの入口がちょっと見えたような気がして。実際はそんな大袈裟なことじゃないんだけどね。ふだん違う文化で違う言葉を話してる人が聴いてこういうリクエストをしてくるっていうことが、僕をそこまで考えさせました(笑)。

トランスレートしてないのに、響きとかそういったもので「違和感がある」ってスティーヴィーが言ってくるのはすごいなと思いました。

INABA だから、切り口が全然違うから。でも、言葉ってたまに、違う国の言葉でも同じ意味で似たような発音の言葉があったりするじゃないですか。だから表記してる言葉としてのスタイルと、聞こえ方、――

文字列としての言葉と。

INABA ええ、音としての言葉の世界の共通項みたいなのも何かしらたぶんあるのかなっていう感じが。

すごい大前提というか共通項みたいなね。

INABA そうそう、「遡ること」みたいな(笑)。

面白い(笑)。

SALAS 言葉はわからなくても、相手が怒ってるなとか悲しんでるなっていうのはわかりますよね。そういうところかなと。訳がなかったことの良かったこととしては、結局「この歌詞がダメだ」って言ってることじゃないっていうのをわかってもらってたっていうことがあります。「歌詞を侮辱してるっていうことではない」っていうのをわかってもらえてたっていうのが良かったと思います。

なるほどね。

SALAS でもそれは意地悪で言っているわけではなくて、そのおかげでより良いライターになれたっていうところはあるんですけれどもね。心配としては、自分が敢えて「変えて」って言っているところが実は日本のファンが一番好きなところかもしれない。だからそれを取り除いてしまったらどんなことになってしまうんだろうっていうのはありました。

INABA そういう話もしてて、でも、そっちは僕がテイクケアしますからっていう話をして(笑)。

SALAS すごくそこは意識してました。自分の手でKOSHIの日本でのキャリアとかいろんな持ってるものを傷付けたらどうしようっていうところはすごくありました。「自分がやっちゃったら」って(苦笑)。

冗談だけど、ボブ・ディランに「このフレーズがダメ」って言う人はいるんですかね。

SALAS あまりにも有名になったりあまりにも素晴らしいアーティストになってしまうと、ダメ出しをする人がいなくなってしまうっていうのが問題なんですよね。だからときどき自分もレコーディングに呼ばれて演奏して「ああ、今のは最低だったな」って思ってるのに、パッと見渡すと「最高だねえ!」って言われると、「違いもわかんないんだったら、これでいいや」みたいな、「じゃあ金くれ!」って言って、そういう気持ちになっちゃうんですけれども(笑)。

自分を形成してるものに疑問符を投げかける人がいると、――

SALAS 信用する人が必要かもしれないですね。あと、常に自分の考え方が正しいわけじゃないので、安心して信頼できる人がいるかどうか、で、同じことをやってもダメ出ししたり「それは最高だ」って言ったんじゃ何の参考にもならないんですけれども、ちゃんと一定した意見を与えてくれる人っていうのは大事ですよね。

電話越しじゃちょっと無理ですよね。相手を感じないと

今回東京以外にハワイ、ロサンゼルス、オースティン、ナッシュビル、トロントまで行ってますが、これは一緒にプレイしたいミュージシャンに会いに行くっていうのがあって、いろいろレコーディング・プレイスが変わっていったんですか?

SALAS そうです。やっぱり各地に、特定のミュージシャン、参加してもらいたい、この人じゃなきゃいけない、みたいな人がいたので。でも大元としてはKOSHIが「新しい環境で新鮮なもの、新規が欲しい」っていうことだったので始めたんですけど、蓋を開けてみたら半分ぐらいはKOSHI抜きの自分ひとりだけで各地をレコーディングで転々と回ってたっていう(苦笑)。

(一同笑い)

INABA 彼がいろんなところのミュージシャンを知ってるし、僕もちょっと知らない街に行って、知らないミュージシャンに会って一緒に仕事をしたいなあっていうのは、これをやる前に思ってて、で、始めたら――もちろんいろいろ行ったんですけども、それ以外にもスケジュールが許せば行かなきゃいけない場所もあったりしたんですけど、自分が行けないところはスティーヴィーだけ行ってもらったりとか。基本的に録音するときはとにかくそこに一緒にいてほしいっていうのが彼の希望なので。

何をするわけでもなく?

INABA プログラミングだろうがダビングだろうが他の人とのセッションだろうが、基本的には一緒にいてやりたいっていうのが希望なので。

SALAS 最近のアルバムの多くがあまり良くないっていうのもそういうところなんじゃないかなって思っていて。やっぱりその人がいて一緒に作っているからっていうので、その中から素晴らしい作品というのが今までできてきたので、電話越しじゃちょっと無理ですよね。相手を感じないと。

アナログ時代だと、1チャンネル残して、そこにスタジオの空気だけを無音なんだけど録音したっていう話もあるぐらいで、それで雰囲気を――。だから今スティーヴィーの発言を聞いてて、人間っていうのも付帯しているものがあるじゃないですか、空気を。

SALAS 実際に自分がレコーディングをし始めた頃っていうのは本当にそうしていて。でもエンジニアとかプロデューサーも、さらに特定のスタジオの音が欲しいということで、「パワーステーションの空気をレコーディングする」っていうのがあった(笑)。

INABA でもバンドでやるときなんかホントに音が被るのを気にしないですからね。

そう。あと音が(スタジオ内で)回るところあるじゃない?

INABA ええ、それも全部録っちゃいます。

SALAS 実際にバンド形式でやってたら、同じ街で同じメンバーで毎日スタジオに行って、っていう、それが一番いい録り方だと思うんですけど、でもこの時代だとやっぱりそれは難しい。

でも何か、「be there」ってスティーヴィーは今言ってたけど、「人がいないとまずダメだ」っていうのは基本思想のような気がするね。

INABA 「何かやるときはそこにいてくれ」って言われましたけどね。「いなきゃダメだ」って。それが受け持ちじゃなくても。

SALAS ザ・ローリング・ストーンズなんか、いまだにプロデューサーと一緒にメンバーで延々とスタジオの中で演奏して、っていうところですよね。でも、最近だと、バンドは数回演奏して、あとはエンジニアがコチョコチョってカットして編集して、みたいな形で。でもメタリカがリック・ルービンと一緒にアルバムを作ったときとかも、リック・ルービンが彼らに毎日8時間同じ部屋で演奏し続けさせてたんですよね。で、その中からようやくまとまりがある、すべてが上手くフィットした曲が生まれてくるので、っていうところで。もちろん最終的には編集はするんですけれども、でも継ぎ接ぎの編集をされた曲ではなくって、「これが完成形」のところにちょっとした編集を加えるっていう作り方なんですね。

そうね。だからやっぱり、スティーヴィーは曲の完成形が常に見えてるんじゃないかと思うんですよ。

INABA 目指してるところは見えてる。

ねえ。

INABA だから、それと違う状況にあるのがすごいフラストレーションで。

SALAS 努力して自分の完成形に近付けることを願うしかないんですよね。それで、さらにそれを超えたものができれば。

さらにね。

SALAS さらにはレコーディングが終わってもミックスでティム・パルマーに入ってもらったんですけれども、そこからも彼がいろいろな選択肢があって、いろんな方向に持って行けるんですよね。だからギターのEQに関してもそうだし、「ボイスにエコーを掛けないでよ、ドライにしたいんだから」って言ったりとか、「ああ、そうなんだ」って言ってまたそこを直してもらったりとか、元に戻してもらったりとか。なので、ミックスの段階でもいくらでも違える可能性はあるんです。

そうやってどんどん広がっていって収拾がつかなくなるというケースもあるのに、スティーヴィーの場合はいつも完成形に向かって、広がっていくんだけれどもちゃんと収束するっていうところがすごいなと。

SALAS ラッキーなのかなあ(笑)。

そんな(笑)。じゃあ、スティーヴィーの持ってる完成形を含めて、1曲ずつおふたりに一言ずつコメントをいただきたいんですけど。

ライブ情報

INABA / SALAS “CHUBBY GROOVE TOUR 2017” 

1/25(水) [名古屋] Zepp Nagoya
1/26(木) [大阪] Zepp Namba
1/27(金) [大阪] Zepp Namba
1/30(月) [札幌] Zepp Sapporo
2/1(水) [仙台] チームスマイル・仙台PIT 
2/3(金) [福岡] DRUM LOGOS 
2/4(土) [熊本] 熊本 B.9 V1
2/6(月) [東京] Zepp Tokyo
2/7(火) [東京] Zepp Tokyo
2/8(水) [東京] Zepp Tokyo
2/13(月)[大阪] なんばHatch
2/14(火)[広島] BLUE LIVE HIROSHIMA
2/15(水)[岡山] 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
2/17(金)[高松] 高松festhalle
2/20(月)[名古屋] ダイアモンドホール

稲葉浩志

9月23日生まれ。岡山県出身。1988年、B’zでデビュー。ヴォーカル及び作詞を担当。1997年、全作詞・作曲・編曲を手掛けたソロとしての1stアルバム「マグマ」をリリース。2004年からはソロライブツアーも開催。2014年は4年ぶりのアルバム「Singing Bird」をリリースし、東京・品川ステラボールで10公演のライブを行った。2016年1月13日に約5年半ぶりのシングル「羽」を発表し、2016年1月~3月に全国アリーナツアー「Koshi Inaba LIVE 2016 ~enIII~」を開催。ツアーファイナルを日本武道館で行った。2016年8月24日には、配信シングル「YELLOW」発表。

稲葉浩志オフィシャルサイトhttp://en-zine.jp/
B’zオフィシャルサイトhttp://bz-vermillion.com


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スティーヴィー・サラス / Stevie Salas

カリフォルニア州サンディエゴ出身。デビュー前からGeorge ClintonやRod Stewartのリードギタリスト、UKヒット曲のWas (Not Was)「Out Come the Freaks」の共同プロデュースなどで活動。デビュー作「Colorcode」はヨーロッパ諸国でカルト的なクラシック作品であり、日本では2作目の「Back from the Living」がThe Rolling StonesやAerosmith を抑え、ベストアルバムと評された。稲葉浩志の作品ではアルバム「Peace Of Mind」「Hadou」に参加している。

オフィシャルサイトhttp://www.steviesalas.com

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