Interview

B'zの稲葉浩志とスティーヴィー・サラスが挑んだ、はかり知れないグルーヴ感(後編)~アルバム全曲解説

B'zの稲葉浩志とスティーヴィー・サラスが挑んだ、はかり知れないグルーヴ感(後編)~アルバム全曲解説

“図太いグルーヴ”を獲得するための音紀行……今では、ほとんど人がやらなくなってしまったレコーディング行程に稲葉浩志とスティーヴィー・サラスが2016年の夏前から挑んだ。ロサンゼルス、オースティンからトロント郊外の内陸の街まで……踏破したあとに、できあがった作品は、聴く者の全身の毛穴を開かせていくような、とてつもないグルーヴ作品『CHUBBY GROOVE』だった。

インタビュー後編では稲葉浩志とスティーヴィー・サラスによる全曲解説をお届けする。

取材・文 / 佐伯明


僕はメロディを聴いたときに「これ、たぶん自分が歌詞を入れて歌ったらいいな」と思って

1.SAYONARA RIVER」

SALAS オールドスクール・ファンクと、オルタナティブミュージック、どちらに傾いているのではなく、それの融合みたいな。

すごいカッコイイと思います。稲葉さんは?

INABA これはデモのときの曲ナンバー1で、要するに本格的に取りかかった最初の曲。このプロジェクトをスタートした曲でもあるから、自分の中ではこれが一番印象的な、象徴してるっていう。

2.「OVERDRIVE」

SALAS 自分なりの解釈の、ロックしているモダンポップソング。

確かにポップなところはありますね。

INABA この曲だけはタイトルが最初からあって。もうホント寝てなくてボロボロで疲労の絶頂にあるんだけど、どんどん頭が冴えてハイになってくるっていう、まあ彼のライフスタイルみたいな(笑)。

どんどんね(笑)。

INABA 「寝ない寝ない寝ないハイ!」みたいな(笑)。

3.「WABISABI」

これもファンキーだねえ。

SALAS 80年代後半のヒップホップとロックンロールが赤ちゃんを2017年に産んだら、それがきっと「WABISABI」だろう。

INABA このノリは僕の今までやってきたものからは生まれない曲ですよね。リズムがけっこうストイックじゃないですか。

うん、ずーっとね。

INABA 僕がたとえばこういうのをやったら、2番ぐらいからドーンと何か行くはずなんですよ。

そうそう、何かね。別の展開みたいな(笑)。

INABA とにかくグルーヴをキープして、でも、たとえば2番終わったあととか、ギターのバッキングとかあれだけでしばらくやるところとか、そこが――

ね、そこが変わらないからね。

INABA あれがけっこう、味わいがすごいんですよ(笑)。

「ここ、何にもないんだ!」みたいな。

INABA でもそうすると他の楽器も、ギターの音色だったりとか、ベースがちょっと何かやってることとか、いろんなことが聞こえ始めて。

SALAS バイブを突き通すみたいな感じです。

INABA 聴いてると、なんか違う味わい方をする習慣がついてきました。

歌うのも、ちょっとストイックな高揚感というか。

INABA それはありますね。

4.「AISHI-AISARE」

これもポップじゃないですか。

SALAS SUPER-POP! 筋肉質なポップですね。

CHUBBYじゃないんだ(笑)。

SALAS CHUBBY POP!(笑)

稲葉さんは?

INABA これはそこそこもうできてた曲で、スティーヴィーが持ってて、それをアイディアとして「こういうのもあるけどどう?」って僕に聞いてきたわけですよ。で、彼はあんまり定かじゃなかったみたいで、たぶんポップ過ぎると思ったのかもしれないけど、僕はメロディを聴いたときに「これ、たぶん自分が歌詞を入れて歌ったらいいな」と思って、「やらせてくれ」って言ったんです。

すごく素の稲葉さんというか。歌詞の中でね。

INABA ああ、そうですかね。

ちょっと少年性のある稲葉さんが出ていて面白いです。

5.「シラセ」

これはブルースじゃないんですか?

SALAS これは、カリフォルニアのビーチでサーフィンをしているようなイメージが自分の中にあって、だからボブ・ディラン×チャーリー・セクストン的な、でも白人がブラックミュージックを試みてるような感じかな。だから、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ的な? 黒人じゃないんだけれども、白人がグルーヴしているような、ヒッピーファンク? でもメロディーはちょっとカルーソーとかロイ・オービソン的な、歌い込んでる感じで、レッチリではできないような……。

説明が難しすぎるね(笑)。

SALAS でも曲自体もすごく複雑なので。メロディがすごいんですよ。

なるほど。稲葉さんは?

INABA 難易度ナンバーワンでした。

やっぱり。

INABA こういうのが得意な人はたぶんいいと思うけど、僕はもう、デモのときから彼が「こういうのあるよ」って言って聴いたときにもう、ものすごくイヤな予感がしたから(笑)。ただ、このプロジェクトをやるにあたって、僕は自分の持っていないものを得るために――得るためというか、出すためにやるわけだから、基本的にはノーはなしっていうことで、これも始めたんですけれども、予想通りとっても時間が掛かって、歌い直しはすごかったです。

仮にリリックが書けたとしても、歌うのは相当難しいと思うんだよね。

INABA そうなんです。得意な人はいいと思うんですけど、僕のスタイルだとかなりなチャレンジでした。

6.「ERROR MESSAGE」

これもけっこうファンキーだね。

SALAS 87年に自分がロンドンに住んでいた頃の、ブリティッシュポップ・ダンスミュージック――まあ80年代のイメージというかフィーリングというか、そういうサウンドのモダンバージョン。ヒューマン・リーグだったりデュラン・デュランだったり、そういうフィーリングを。でもズバリそれをまとめてたわけじゃないんですよね。その時代にロンドンで自分もセッションミュージシャンとして参加してた頃のコード使いだったり曲の動きだったりとかを意識した曲です。

すると、シンセポップに近くなっちゃうんだ。

SALAS 80年代後半、ワズ・ノットワズのプロデューサーなんかもやってたときも、どちらかと言えばシンセじゃなくてギターを使っていたんですよね。ちょっとジョージ・クリントン的なものをミックスして。なので、80年代後半にロンドンに住んでた雰囲気のものの、今バージョンっていうことです。

っていうことなんですね。オッケー。

INABA 難しいですね(笑)。

すごい難易度の(笑)。

INABA これはすごくファンキーなグルーヴで、キレのある歌を、AメロとかBメロとか歌うんですけど、Bぐらいから少しその、リズムもファンキーなんだけど歌のメロディがけっこう雄大な感じで、その懐の深い感じを出すのにけっこう、まあいろいろリクエストがありましたね(苦笑)。

それは歌い方?

INABA 歌い方。あとリズムの取り方。

INABA / SALAS

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