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2017年のVRゲームは、“VR元年”を経てどうなっていくのか?

2017年のVRゲームは、“VR元年”を経てどうなっていくのか?

2012年、Oculus社が行った「Oculus Rift」のクラウドファンディングがきっかけとして始まったVRフィーバーは、4年の時を経て“VR元年”と呼ばれるほどにまで広がりました。本記事ではVRブームの中心となってきた“VRゲーム”の周辺を振り返りつつ、VR元年、そして2017年以降のVRゲームのこれからを考えてみたいと思います。

ゲームの世界の中に入れる!誰もが夢見たことが現実に

VRゲームの魅力は、今まで画面を通してしか見られなかったゲーム世界の中に入れることです。それを初めて可能にしたのがOculus社のVR向けヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)「Rift」でした。2013年、「DK1」(VR開発用キット)が完成し、いちはやく手に入れた人たちは、仮想空間の中に入れるという魅力のとりこになりました。

Oculus Rift

Windows PCに繋ぐVRHMD。「ポジショントラッキング」というVRHMDの位置を認識する機能があり、自分の向いている方向や角度だけを認識するスマホVRに比べて、より空間に存在するかのような没入感が得られる。動画は2016年3月に発売した際のローンチタイトルをまとめたトレイラー。アクション、シューティング、レース等のアクティブなゲームがラインナップ。

この動画は2012年にクラウドファンディングする際に用意したもの。キャッチフレーズは「Step Into the Game(ゲームの中に入り込め)」。VRHMDがまずゲームありきのハードウェアだったことがわかる。

DK1登場以降は世界的なVR開発ブームが起こります。個人のプログラマーやインディーズゲーム制作会社がこぞってVRゲームを作り始めました。この背景には、UnityやUnrealといったゲームエンジンでの開発が容易かつ安価(無料でも可能)だったのも大きいでしょう。
同時期、日本でもDK1を手に入れた有志たちがたくさんのVRデモを制作しています。さらにはVR専門のイベントが行われたりするなど、着実に新しモノ好きの間でVRは定着していきました。

VR業界にさまざまな企業が参入し、本格的なブーム到来の兆しが現れる

2014年には、OculusがFacebookに20億ドルで買収といったVR関連のビッグなニュースに加え、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現SIE)がPlayStation VR の前身となるVRHMD「Project Morpheus」を発表、Googleからもスマートフォンを装着して使用するダンボール製VRゴーグル「Google Cardboard」が発表され、VR関連ハードウェアも徐々に増えています。
2015年以降はVRへの投資ブームがやってきます。英投資銀行のDIGI-CAPITALによれば、2015年は約7億ドルがAR/VR業界に投資されたとのこと(http://www.digi-capital.com/news/2016/01/arvr-investment-in-2015-breaks-out-near-700-million/#.WHsuyGSLSeF)。これらのニュースは、VRがこれまで不発に終わった一時的なブームではないことを表しているといえました。

ダンボール製のゴーグルにスマホをセットして遊ぶカジュアルなゲームが増加

2016年初頭はまだハイエンドなVRHMDが一般向けに発売されていなかったため、一般の人が楽しめるものはGoogle CardboardなどのVRゴーグルで体験するVRゲームがほとんどでした。VRゴーグルは、基本的にクリックなどの操作ができないため、対象物を見つめることで選択し移動する、または見つめる方向に進んでいく、といった操作性を利用したゲームにせざるを得ず、VR空間に居るというよりは眺めるようなものが多数を占めていました。

InMind VR

脳の中に入り込んで、障害を起こす細胞を治療していくシューティングゲーム。赤く光っている細胞を注視することで消滅させながら進んでいく。エレクトロニックなサウンドと独特の浮遊感、視界に広がる神秘的なムードが合わさり、没入感あるプレイが可能だ。ヘッドホンでのプレイを推奨する。

こういった作品でも十分VRのおもしろさを感じられましたが、ハイエンドなVRHMDを使うことで体験できる質には及ばないもので、“本当のVRゲーム”を楽しむには、ハイエンドVRHMDの発売を待つしかありませんでした。

PCに繋いで使うハイエンドVRHMDの発売!VR空間を動き回る体験が可能に

2016年3月、Oculus社「Rift」が発売。続いて4月にはPCゲーム販売プラットフォーム「Steam」※1を有するValve社と台湾のスマホメーカーであるHTC Corporationが共同で開発したハイエンドVRHMD「HTC Vive」が発売されました。HTC Viveは、Riftのポジショントラッキングを一歩進めた「ルームスケール」※2機能を有し、対角上に最大で5mのVR空間内を自由に動き回れるように作られていました。

※1 Steam 全世界で1億人以上の会員を有するPCゲーム販売プラットフォーム。VRカテゴリだけでも1000を超える作品が用意されている(2017年1月現在)。
※2 ルームスケール機能は、のちにRiftでも追加の赤外線センサーを配置することで可能になった。

EVE: Valkyrie

宇宙空間で戦闘機のパイロットとなって闘うSFシューティング。宇宙空間の圧倒的なスケール感はVRでしか体験できないものだ。Oculus Riftを予約したユーザーに同梱された。

The Lab

HTC Vive用に無償配布されているチュートリアル的なデモソフト。シューティングやアクションなどルームスケールを活用したコンテンツ等が多数用意されている。動画では「The Lab」のコンテンツを体験している光景が見られる。

ハイエンドVRHMDの発売により、VRゲーム業界に大手企業がぞくぞくと参入してきました。ゲームもさらに増えていき、これで一般の人でもハイエンドなVRゲームが楽しめる環境が整いましたが、VRHMD本体とPCで約20万円以上の費用がかかることに加え、購入するためには海外のサイトで手続きする必要があったため日本での導入のハードルは高いままでした。
しかし、HTC Viveの登場はこのあと日本に起こるVRアミューズメント施設フィーバーへの布石となったのです。

Fly to KUMA MAKER

「白猫プロジェクト」などスマートフォン向けゲームで知られるコロプラがリリースしたアクションパズルゲーム。自分視点で操作するゲームが多い中、プレイヤー自身が神の手となって操作するゲームで、クマの行く手を助けてゴールに導いていくのが目的だ。Oculus Rift、HTC Vive対応。同社は国内外のVR関連企業を投資対象とするVR専門ファンド「Colopl VR Fund」を設立するなど、VR市場へいち早く舵を切っている。

Minecraft

2011年に発売され、日本はもちろん世界中で愛されている「Minecraft」もVRに対応。さまざまな正方形のブロックで構成されたワールドを探検したり、ブロックを配置して建造物を作ったりするゲームで、VRHMD越しにみる景色は一味ちがうスケール感がある。Oculus Rift対応。

より“濃い”VR体験ができるVR専用のアミューズメント施設の登場

4月、VRコンテンツのみを扱う常設スペースとして「VR ZONE Project i Can in お台場ダイバーシティ」がスタートしました。スタート当初のコンテンツは6種類で、そのうちHTC Viveを使ったものが5種類でした。こうなった理由に、HTC Viveの特徴であるルームスケールを活かしたゲームが広いスペースをとれるアミューズメント施設向きであったことや、発売元であるHTCがスマートフォンなどでハードウェア量産能力に長けていたため、開発機や製品の供給が早く安定していたため、ゲーム開発がしやすかったことが挙げられます。

Project i Can

Project i Canは、バンダイナムコのVRゲーム開発プロジェクトの総称。「VR ZONE Project i Can in お台場ダイバーシティ」は、コンテンツの実験施設として4月〜10月までの期間限定でオープンし、ホラー、スポーツ、SFシューティングなどどれもクオリティ高いVR体験ができた。現在は東海地方初のVR体験施設「VR NAGAKUTE」がオープン中(動画参照)。

ただ、開発しやすかったという理由だけでここまで早いタイミングでの出展とはならなかったはずです。なぜなら、当時爆発的に増え続けていたVRコンテンツの中には十分なクオリティに達していないものも多く存在し、それらを先にプレイすることで「VRはこんなものか」といった誤解を生む可能性も非常に高かったためです。一刻も早く最高のVR体験をしてもらうためには、常にクオリティの高いVRコンテンツができる場所を作らなければならないという使命感があったからこそ、このような素早いタイミングでオープンできたのではないでしょうか。
2016年11月以降は、渋谷の「VR PARK TOKYO」や「VR SPACE」、埼玉県のイオンレイクタウンmoriの「VR Center」など、怒涛のVRアミューズメント施設設立ラッシュが起こっています。今後も日本中にこういった施設が増えていくでしょう。

おすすめVRスポット

ZERO LATENCY VR

お台場の東京ジョイポリスにて7月にオープン。オーストラリアZERO LATENCY社が開発した、最大6人で同時にプレイできるフリーローム型のVRアトラクション。各プレイヤーは銃を持って、あらゆるところから出現するゾンビたちを協力しながら倒し、救出ヘリの到着まで持ちこたえるのが目的。広大なスペースを自由に歩き回れるのが他のアミューズメント施設には無い魅力。

VR PARK TOKYO

全国にアミューズメント施設を持つアドアーズが新たに提案するVR施設。渋谷にて12月にオープン。スポーツ、アクション、恐怖体験などさまざまなVRコンテンツが用意された。渋谷駅徒歩5分という好立地で、予約不要で気軽にVR体験ができる。

スマホVRでも十分鑑賞に耐える“萌え”に特化したコンテンツの登場

ハイエンドなVRHMDによるVRコンテンツがアミューズメント施設で花開いているころ、スマホで遊ぶVRゲームにも新たな兆候が出てきました。VRのおもしろさのひとつに、まるでゲームキャラクターが目の前にいるかのような距離感、リアリティが感じられる点があります。その特徴を活かして、可愛い娘が自分に語りかけてくる、いわゆる“萌え”を題材とした作品にもヒットが出てきたのです。VRと萌えコンテンツの融合によって、VRは新たなユーザーを獲得することに成功しています。

オルタナティブガールズ

「オルタナ」と呼ばれる少女たちとともに、夜獣(ナイトビースト)と闘っていくスマートフォン用3DRPG。「VRモード」ではストーリーなどを楽しむことができ、とにかくキャラクターたちはよく動いてよくしゃべる。VRゴーグルをつけてプレイすると、彼女たちとの距離の近さにおどろくだろう。

なごみの耳かきVR

従姉妹である”なごみ”ちゃんに、VR空間で耳かきをしてもらうことができる癒やし系のゲーム。VRゴーグルをつけて実際に寝転がって体験する。耳元でささやかれる体験はかなりリアルだ。

PlayStation®VRの発売で日本人ウケするタイトルが続々登場

2014年の発表から2年、10月にソニーから「PlayStation®VR」が発売されました。同社PlayStation®4の周辺機器で、ポジショントラッキング機能を有するVRHMD(ソニーはバーチャルリアリティーシステムと表記)です。連日のVR関連報道の過熱ぶりに加え、日本人に馴染みの深いゲームタイトルが多く発表されたこともあって発売と同時に完売、2017年1月現在も入荷待ちの状況が続いています。
2017年には「バイオハザード7 レジデント イービル」「ファイナルファンタジーXV」「鉄拳7」「グランツーリスモSPORT」など、日本のゲームユーザーがよく知るゲームがさらに出揃うことで、よりVRが身近になっていくと考えられます。

©Sony Interactive Entertainment Inc.All rights reserved.

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【PlayStation®VRで楽しめるタイトル】

PlayStation VR WORLDS

カーチェイスや銃撃戦が楽しめるハードボイルドな世界観の「The London Heist」、海に潜って深海の景色を探索する「Ocean Descent」など、現実で体験できない世界を味わえるコンテンツが5種類収録された作品集。PlayStation®VR最初の1作目におすすめ。

バイオハザード7 レジデント イービル

1月26日発売。ホラーゲームとVRの相性は良く数多くのゲームが作られてきたが、ついにバイオハザードの世界の中に入れる日が来た。自分視点で進むVRモードは通常の何倍も恐ろしい。なお本作はPlayStation®VRに完全対応しており、ゲームのすべてをVRでプレイできる。

アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション

アイドル育成ゲーム「アイドルマスター」から派生してできた、携帯端末専用のソーシャルゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」のキャラクターたちが歌って踊るライブを鑑賞するゲーム。実際にあるライブ会場を再現したリアルなステージや音響など、本当のライブを聴いている感覚になれる。追加コンテンツとして、あらたな楽曲やLIVEグッズなどを購入できる。

「サマーレッスン」シリーズ

夏休み中の家庭教師となって、宮本ひかりと対話しながら物語を進めていくコミュニケーションゲーム。「サマーレッスン:宮本ひかり セブンデイズルーム(基本ゲームパック)」を皮切りに、ケーキを食べさせ合うといったシチュエーションを追加した「セカンドフィール(追加体験パック)」、メイド服の宮本ひかりとコミュニケーションできる「エクストラシーン 喫茶店編(衣装&シチュエーション)」と、ぞくぞく追加コンテンツが登場。継続して楽しめる仕組みとなっている。

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ハード/ソフトともにこれからが勝負!?2017年のVRゲームはどうなる?

2016年12月にはOculus社より待望のVRコントローラー「Touch」が発売され、VR空間であたかも自分の手が存在するかのような体験ができるようになりました。先日行われた世界の家電見本市「CES」でも、触感センサーを持つVR用シューズ&コントローラ「Taclim」や、指の動きを感知するグローブ型コントローラー「captoglove」など、VR時代を見据えたコントロールインターフェースが続々発表されました。

Oculus Touch

両手にはめて使うコントローラーで、VR上で指の動きを表現できる。動画はローンチタイトルをまとめたもの。

VRHMDにおいても競争が激化しています。2016年末にGoogleが手に持つコントローラーつきの新たなVR機器「Daydream」を発表し、VRゴーグルの弱点だった操作性を克服してきました。1月に入ってからは日本のスタートアップFOVE社も、アイトラッキング機能※3のついたVRHMD「FOVE」の開発者板「FOVE 0」を出荷開始しました。また発売は未定ですが、パナソニックからは視野角220度(Riftは110度)という人間の左右の視野角をカバーできるVRHMDが発表されています。

※3 アイトラッキング機能…視線の動きを追跡できる機能で、VR空間上のどこを見ているのか認識する。

FOVE 0

世界初の家庭用視線追跡型VRHMD「FOVE」の開発者版「FOVE 0」のデモムービー。アイトラッキング機能がつくことで、例えばVR空間のキャラクターを見つめれば相手が気づいてくれたり、よそ見をしていたら注意されたりと、さらに一歩進んだVR体験が可能になる。

VR機器の進化によって、VRで表現できること、その可能性が増えています。触覚を感じることができるのであれば、人とのコミュニケーション方法に、“触る”という選択肢も出ますし、アイトラッキングを使ってより濃密な対話も可能になるでしょう。
こういった機器が家庭用として導入されるのには時間がかかると思いますが、最新の機器が前述のVRアミューズメント施設にいちはやく導入され、家庭用機ではできない刺激的なVRコンテンツがつぎつぎと生み出されていくことはおおいに期待できます。2017年も“VR元年”以上にVRから目が離せないのは間違いありません。

取材・文 / 上林将司