Interview

イケイケのインテリやくざ役で新たな魅力。佐々木蔵之介『破門』

イケイケのインテリやくざ役で新たな魅力。佐々木蔵之介『破門』

詐欺師に大金を持ち逃げされたイケイケやくざの〈桑原保彦〉と、口だけ達者でヘタレな〈二宮啓之〉の凸凹コンビが、ドタバタの追走劇を繰り広げながら、イチかバチかの大勝負に出る──。黒川博行原作の大人気シリーズ『疫病神』の第5作で、直木賞に輝いた『破門』が待望の初映画化。インテリ、イケイケ、イケメンという〈桑原〉を、時にドスが利いた声色で、時にコミカル&チャーミングに演じた佐々木蔵之介に、役柄や芝居について、そしてコンビとして共演した〈二宮〉役の横山裕とのエピソードなどをたっぷり聞いた。

取材・文 / 熊谷真由子 撮影 / 三橋優美子


僕は総合格闘技が好きで。アクションシーンはすごく面白かった

イケイケやくざの桑原役ですが、やくざならではの凄味や怖さが出ていて、最近の佐々木さんのイメージとはギャップがあるようで新鮮でした。

そうですか? 私は劇団(大学在学中に看板俳優として活躍した〈惑星ピスタチオ〉)時代に、悪役ばっかりやっていたんですよ。小学6年生の番長の役とか、ガン細胞の役とか、ずっと悪役。桑原は悪役というわけではないですけどね(笑)。

佐々木蔵之介

スマートなスーツなど、桑原は衣装もオシャレでした。

原作にもあるように、桑原はかなりこだわりのあるオシャレさんです。典型的なオラオラ系のダブルスーツではなく、イタリアンマフィアのようでありながら、大阪のやくざのテイストも入れたいという監督の意向がありました。スタイリッシュでありつつ、ド派手ではないけれど遊び心の入ったユニークな衣装になっています。毎シーン、何を着られるのかが楽しみでした。

破門 ふたりのヤクビョーガミ 場面写真

©2017「破門 ふたりのヤクビョーガミ」製作委員会

以前のインタビューで、「演じているときに役を掴んだと思ったことはない」とおっしゃっていましたが、今回の桑原役は佐々木さんにとって、どのくらい難しかったのでしょうか?

桑原という役にしても、医師役や刑事役にしても、すべて芝居であって自分ではないので、どの役がやりやすい、やりにくいということはなく、すべての役が難しいと思っています。やりやすいと思ってしまったら、それはもう役に向かっていないということなので。いつも演じるときは自分と違う面を考えながらキャラクターと向き合っているので、アプローチとしてはどんな役でも変わらないんですよね。以前のインタビューで「掴みきれない」と言ったのは、演じる役はあくまでも他人で、謎が多いに決まっているので、「掴んだ」と思ってしまったら、役に向かっていくエネルギーがなくなったということだと思うんです。だからカメラが回っている最中でも、つねに迷いながら演じています。役に向かっていくエネルギーが、役を作っていくことになるのだと僕なりに考えています。

破門 ふたりのヤクビョーガミ 場面写真

©2017「破門 ふたりのヤクビョーガミ」製作委員会

佐々木さんがこれまで出演されてきた時代劇や刑事ドラマなどのアクションとは違った、“ケンカアクション”も良かったです。事前準備はどんなことをされたのでしょうか?

僕は総合格闘技が好きで、わかりやすいところで言うと(プロレスラーの)前田日明さんやスーパータイガーさんといった、昔のプロレスのファンでしたし、格闘技関連の本を読むことも多かったので、アクションシーンはすごく面白かったです。映像では久しぶりだったかもしれないですけど、舞台でもこういうケンカアクションを演じたこともあるんです。刑事ドラマは捕り物ですし、こちらはケンカが絡む格闘なので違いはありますし、地上波のテレビドラマではなかなか見せられるものではないので、みなさんは意外に思うかもしれないですね(笑)。クランクイン初日が、玲美(橋本マナミ)のマンションでテーブルをひっくり返したり包丁を振り回す相手のヤクザと格闘する大きなアクションシーンで、2日目が小清水(橋爪功)の自宅に行ってチンピラ相手に車のボンネットから飛び蹴りしたりするシーンだったんですよ。リハーサルで段取りはしましたが、監督としてもまだ探り探りでしたし、自分のキャラクターを造形していくうえでどこまでやっていいのかと迷うところだったのですが、針が振り切れた状態で演じていたかもしれません。小説の中で、桑原はいきなり蹴りを入れたり目つぶしをしたりするんですが、勝つための方法とはいえ、わりと卑怯な手を使うんですよね(笑)。

破門 ふたりのヤクビョーガミ 場面写真

©2017「破門 ふたりのヤクビョーガミ」製作委員会

小林聖太郎監督は、一発撮りが多かったと伺っています。

初日から1週間くらいはわりとテイクを重ねていたかもしれません。でもアクションシーンに関しては、監督のOKと、アクション監督のOKもあるので、一概には言えないんですけどね。

小林監督の演出はいかがでしたか?

クランクイン前に本読みをしたときに、お互い関西人なので、(共演の横山裕と)間もテンポも良い具合に掛け合いのようにできてしまったんですが、監督はそれが逆に良くないかもしれないとおっしゃっていて。2人はコンビっぽく見えるけれど、金の面でしか繋がっていないので、できたらお互いがお互いを疫病神同士だと思っている状況を作りたいということで、最初の1週間はとても丁寧に撮っていたと思います。「あえて、この一瞬、微妙な間を置いて入ってみましょうか」とか、声の高さやセリフのイントネーション、リズム、間などを細やかに演出していただきました。

横山くん本人は確固たる自分ルールみたいなものを持っている人

横山さんが演じる二宮とのコンビぶりというか、2人のやり取りは本当に面白かったです。

お互いを「イヤなヤツ、喰えんなぁ」と思いながらも、ラストにはちょっとコンビっぽく見えるようにしたいという狙いはあったので、結局はコンビなんですけどね(笑)。

そうですね(笑)。横山さんと共演してみた印象を教えてください。

演出に関しては監督に完全に委ねていましたので、2人で「次のシーン、どうしようか」といった話はしなかったですが、自然と関係性を作れたと思います。桑原は映画を通してあまりキャラクターが変わらないですけど、横山くん演じる二宮に関しては、映画の冒頭と最後では成長というか、盛り上がりがあるので、丁寧に役作りしていたと思います。横山くんの二宮は、桑原に対して「こいつと関わり合いになるのは嫌やなぁ」という本音が要所要所に見えていて、こちらもついイラッときてしまう。すっごくいいんとちゃいますか(笑)。二宮はだらしないし、いつもひと言多いし、小っさな金のことを言うタイプですけど、横山くん本人は確固たる自分ルールみたいなものを持っている人。“目覚まし時計が鳴って10秒以内に起きなかったら死ぬ”みたいなルールがあるらしくて(笑)。だから「遅刻もしないし、今も生きてるんだ」って言ってました。あと、サウナに行っても、中の砂時計が落ち切るまでは絶対出ないらしいです。きっちりしていると思います。

破門 ふたりのヤクビョーガミ 場面写真

©2017「破門 ふたりのヤクビョーガミ」製作委員会

橋爪さん演じる小清水をいたぶるシーンでは、「もう止めてあげて!」と思いながら観ていましたが、演じる佐々木さんとしてはどんな気持ちだったんでしょうか?

とても楽しみにしているシーンのひとつでしたし、橋爪さんご自身も楽しみにしていたんじゃないか、と勝手に思っていました(笑)。むしろもっと欲しがってるんじゃないか? というリアクションの大きさだったので、橋爪さん、絶対笑らかしにかかってるなと思っていて。演劇の大先輩ですし、大好きな尊敬する方なので、手加減しては逆に失礼なので(笑)、本番ではリハーサルより少し力を入れました。カットがかかったあと「痛かったですか?」と聞いたら、「痛いに決まっとるやろ!」って怒ってはりました(笑)。でも本当に面白いシーンになったと思います。

破門 ふたりのヤクビョーガミ 場面写真

©2017「破門 ふたりのヤクビョーガミ」製作委員会

昨年は『超高速!参勤交代 リターンズ』が公開されて、そちらもコミカルなキャラクターでしたね。本作もコミカルな要素がある役どころですが、ご自身の中でどのように分けて演じていましたか?

作品ごとでの演じ分けはしていないですね。桑原はコミカルでチャーミングですよね。コワモテなときもあるけど、案外、かわいらしいところもあるという彼の中の多面的な部分を見せたいと思っていました。『超高速!~』は方言や所作、立ち回りもあって訓練しなくてはいけなかったので、ネイティブランゲージを使える『破門』に比べたら、ハードルが高かったというのはありましたね。

佐々木蔵之介

最後に、桑原を演じてみて、改めてどのような役だったと思いますか?

イケイケのやくざという、こんな面白く、魅力的な役に巡り逢えることはそうそうないので、すごく貴重で、最高にいとおしい役です。桑原はやくざではありますが、自分の中の正義を信じ、そこに向かってガムシャラに生きている。身近にいたらちょっと怖いけど、チャーミングなヤツだと思っていただけたら嬉しいですね。

佐々木蔵之介

1968年生まれ、京都府出身。大学在学中から劇団〈惑星ピスタチオ〉で看板俳優として活動。NHK連続テレビ小説『オードリー』(00)で注目され、以後、映画、ドラマ、舞台とフィールドを問わず幅広く活躍中。2005年には自らプロデュースを務める演劇ユニット〈Team申〉を立ち上げた。主な出演作に【映画】『間宮兄弟』(06/森田芳光 監督)、第38回日本アカデミー賞優秀主演男優賞に輝いた『超高速!参勤交代』(14/本木克英 監督)、『ソロモンの偽証 前篇・後篇』(15/成島出 監督)、『残穢 -住んではいけない部屋-』(16/中村義洋 監督)などがある。今年は本作のほか、『3月のライオン』(大友啓史 監督)、『美しい星』(吉田大八 監督)、『花戦さ』(篠原哲雄 監督)が公開待機中。

映画『破門 ふたりのヤクビョーガミ』

2017年1月28日公開

破門 ふたりのヤクビョーガミ

ぐうたらでいつも金に困っている建設コンサルタントの〈二宮啓之〉は、仕事で二蝶会のイケイケやくざ〈桑原保彦〉と知り合って以来のくされ縁。いとこの〈悠紀〉からは「本当は桑原のことが好きなんじゃないの?」とまで言われている。そんなあるとき、映画製作出資金を映画プロデューサー〈小清水〉が持ち逃げしたことが発覚。〈二宮〉と〈桑原〉は、愛人と共に行方をくらませた〈小清水〉の行方を必死に追い、大阪とマカオを奔走して金を回収しようとするのだが、のらりくらりとホラ話をする〈小清水〉に翻弄されるばかり。そのうち、ほかの組も巻き込んだ一大騒動に発展してしまい……!?

【監督】小林聖太郎
【原作】黒川博行(KADOKAWA刊)
【脚本】真辺克彦 小嶋健作 小林聖太郎
【出演】佐々木蔵之介 横山裕/北川景子 濵田崇裕、矢本悠馬 橋本マナミ 中村ゆり 木下ほうか キムラ緑子 宇崎竜童/國村隼 橋爪功
【音楽】後関好宏 會田茂一 きだしゅんすけ
【主題歌】「なぐりガキBEAT」関ジャニ∞
【配給】松竹

映画『破門 ふたりのヤクビョーガミ』オフィシャルサイト

©2017「破門 ふたりのヤクビョーガミ」製作委員会

原作本「破門」
破門 書影

著者:黒川博行
出版社:KADOKAWA/角川書店

映画製作への出資金を持ち逃げされた、ヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮。失踪したプロデューサーを追い、桑原は邪魔なゴロツキを病院送りにするが、なんと相手は本家筋の構成員だった。禁忌を犯した桑原は、組同士の込みあいとなった修羅場で、生き残りを賭けた大勝負に出るが――。第151回直木賞受賞作にして、エンターテインメント小説の最高峰「疫病神」シリーズ!