LIVE SHUTTLE  vol. 99

Report

アジカンの21年目が始まる! 音楽が伝える、ステージと客席の温かい交流

アジカンの21年目が始まる! 音楽が伝える、ステージと客席の温かい交流

ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2016-2017
「20th Anniversary Live」 2017.1.10 日本武道館

武道館で行なわれたASIAN KUNG-FU GENERATIONの“Tour2016-2017「20th Anniversary Live」は、芯から心が温まるライブだった。
結成から20年。ASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)は音楽的にも精神的にも、しっかりとその歩を進めてきた。バンド内部の葛藤を乗り越えることで音楽が進化し、現実世界で起こっている事象に対して発信することで彼らの精神が進化してきた。僕は彼らのほぼすべてのアルバムについてインタビューを行なってきたが、彼らはバンド活動の過程のすべてを、隠す事なく開示し続けてくれた。成功も悩みも含めて、“バンドの内実”を語ってくれた。

そして20周年記念ライブは、そうした彼らの姿勢そのままに、実にオープンなものになった。集まったオーディエンスに、ありのままのバンドの今を伝える。オープニングからアンコールまで、ステージと客席は信頼し合い、互いの“20周年”を祝ったのだった。その交流の温かさが会場全体を包む、感動的なライブになった。

ASIAN KUNG-FU GENERATION アジカン

2階席の最上段まで、びっしり満員の武道館だ。ステージは箱型の半透明のカーテンに包まれていて、中が見えない。灯りが落ちて真っ暗になったステージにピンスポットが当たり、そこにベースの山田貴洋の姿がカーテン越しに浮かび上がる。ベースのリフからライブがスタートする。すぐに後藤正文(vo&g)、喜多建介(g&vo)、伊地知潔(dr)がステージに忽然と現われ、演奏を開始。ちょっとしたイリュージョンに、客席はあっけに取られたように静まった後、歓声と拍手を爆発させたのだった。

1曲目は「遥か彼方」。アジカン初の正式音源『崩壊アンプリファー』(2002年)収録の曲だ。初めてアジカンのライブを観た頃のことを思い出す。ステージの四方を覆っているカーテンにさまざまな模様が映し出され、いつも以上に洗練された演出に目を奪われる。
続く「センスレス」は、3thアルバム『ファンクラブ』からの曲で、「元々ライブの始まりを告げるインストだったのをイントロにして、1曲に仕上げた」と発表当時のインタビューで後藤が嬉しそうに語っていたのを思い出す。

ASIAN KUNG-FU GENERATION アジカン

同時に、『ファンクラブ』での演奏とはまったくニュアンスが違うのに驚かされた。アジカンは2015年のアルバム『Wonder Future』をフー・ファイターズのスタジオで録音し、リズムの表現に画期的な進歩があった。そこで得た力強い8ビートが盛り込まれ、「センスレス」は最新型にアップデートされていたのだ。ただの“20周年振り返り”のライブではないことを、早くも思い知らされる。

オープニングの“思い出す”シリーズを締めくくるように、3曲目はメジャー・デビューアルバム『君繋ファイブエム』の「アンダースタンド」だ。会場の明りが全部ついて、ステージと客席の全貌が見える。おそらくアジカンのメンバーも、この凄い景色を目の当たりにしてテンションを上げているのだろう。

終わると後藤は「こんばんは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONです」とだけ言って、すぐ次の「アフターダーク」に入って行く。伊地知の変則的なドラムが始まると、客席から「オー!」っと声が上がったのだった。

「夜のコール」で僕は、ステージ背後のスクリーンに映し出されたテレビが山積みされた映像を見てまた思い出していた。そうだ、これは2012年に行なわれた“BEST HIT AKG”ツアーの舞台セットだ。この日は随所で、かつてアジカンが行なったツアーのセットのいくつかが、CGなどで再現されて映し出された。そのたびに、単なる振り返りではなく、記憶の深い部分を揺さぶられる。

ASIAN KUNG-FU GENERATION アジカン
ASIAN KUNG-FU GENERATION アジカン

アジカンはこれまで、クオリティの高いライブを行なってきた。よく練られたセットリストを基に演出が組み立てられ、舞台セットやライティングが決められる。プロジェクション・マッピングなどの最新テクノロジーを積極的に取り入れる姿勢が、日本のライブシーン屈指の内容を生んできた。演奏が年を経るにつれて豊かになって来たのはもちろんだが、アジカンのライブの優れているのは、演出のすべてが“アジカンの伝えたいこと”に焦点が絞られていることだ。ただ新しい技術を誇るのではなく、そのツアーのメッセージを伝えるのを効果的に補助する演出になっている。今回も単なる懐古ではなく、オーディエンスの記憶に訴えることで、アジカンの今を感じてもらう演出に徹していた。その上で、エンターテイメントとして楽しませてくれる。

「この前、オアシスの映画『スーパーソニック』を観たんだけど、めちゃくちゃ良くて。俺、10代のとき、ロックスターになりたかったんだってことを思い出した。オアシスに憧れてた頃に作った曲をやります」と後藤が言って初期の曲「E」が始まった。間奏でオアシスの「Live Forever」のギター・ソロが引用されている。オアシスへのリスペクトを堂々と語ってから演奏するのがアジカンらしい。この“情報開示”が、バンドの柔軟性を保っている一因でもある。

ASIAN KUNG-FU GENERATION アジカン
ASIAN KUNG-FU GENERATION アジカン

ドビュッシーの「月の光」を引用した「月光」が終わると、メンバーは後半に向けて一度、ステージを去った。その間、メンバーたちの昔の写真などが画面に映し出され、会場からは拍手や笑いが起こる。やがてメンバーがお揃いのシャツ姿で戻ってくると、スクリーンには巨大なスピーカーが映し出され、再レコーディングされたアルバム『ソルファ』の全曲演奏が始まった。

アジカンの名を世に知らしめた傑作を、アルバムの曲順どおりに再現する。20周年記念ライブの後半のすべてを『ソルファ』で構成するとは、思い切ったセットリストだ。1カ所だけ曲順が異なるのは、再録した新作『ソルファ』と同様にアルバムラストに収められていた「ループ&ループ」を「リライト」の次に持ってきた部分だった。
「リライト」では、いつもライブで演奏するように途中でコール&レスポンスを行なう。それがバンドとオーディエンスの歴史の一断面を表わしているようで、僕はなんだかくすぐったい気持ちになった。
続く「ループ&ループ」では、武道館の床が揺れる。この曲が発表されたばかりの頃のライブでは、“走り気味”の演奏が若々しかった。が、この日のどっしりしたグルーヴは、まさに20周年を迎えたバンドのそれだった。床が揺れることには変わりがないが、明らかにバンドもオーディエンスも成熟度を深めていた。

「このシャツ、ツアーでライブをやるたびにクリーニングに出してたら、縮んじゃった。今日から新しいシャツです。最近、イベントで若いバンドと一緒にやってビックリしたのは、『お前ら、かかってこいよ~!』って言う・・・わかるよ、気持ちは。でもここでは、みんな、かかってこなくていいよ(笑)。自分らしく聴いてくれたら、俺たちは嬉しいです」と後藤。
『ソルファ』の後半戦は、ミディアムテンポの「夜の向こう」から。アルバムの曲順どおりに進行して、ラストチューン「ループ&ループ」はもう演奏してしまっているから、ライブ本編の最後は「海岸通り」だった。
後藤が「海岸通り」の演奏前に「20年間、自分たちだけの力でやって来れたとは思ってなくて、これだけたくさんの人が『最高だぜ!』って言ってくれたからやれた。本当にありがとう」と感謝を述べる。すると、6人のストリングスがステージに入って来た。明るい曲調に弦の響きが加わると、より有機的なサウンドになる。この曲で幕を閉じたいために、曲順を少し変えたのだろう。その狙いが見事に当たって、とても明るい大団円となった。

ASIAN KUNG-FU GENERATION アジカン ASIAN KUNG-FU GENERATION アジカン

アンコールは、まず後藤が一人でアコギを抱えて登場。「転がる岩、君に朝が降る」と「Wonder Future」を弾き語る。後藤が去って、入れ替わりに喜多、山田、伊地知がステージに入ってきて、喜多をリードボーカルに「タイムトラベラー」と「嘘とワンダーランド」を演奏。そして4人が揃って、アルバム『マジックディスク』から「さよならロストジェネレイション」と「新世紀のラブソング」を歌ってライブは終わった。アジカンのバリエーションとメッセージが、いいバランスで聴けたアンコールだった。

僕は「新世紀のラブソング」を聴きながら、思うことがあった。この歌は♪ほら 君の涙 始まれ21st♪と歌う。曲のタイトルからすれば、21世紀のことを歌っているのだが、この日の僕には「アジカンの21年目が始まるよ」と言っているように聴こえたのだった。
終演後の楽屋挨拶で、後藤は「こういうバンドだから、歌わなきゃいけないことがある。でも大袈裟にならずに伝えていきたい」と語った。後藤が弾き語ったもう1曲の「転がる岩、君に朝が降る」は、♪出来れば世界を僕は塗り変えたい 戦争をなくすような大逸れたことじゃない だけどちょっと それもあるよな♪と歌う。このスタンスが、アジカンの今のすべてだと思う。それを音楽としてライブで届けた記念すべき夜だった。

文 / 平山雄一 撮影 / TEPPEI

ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2016-2017
「20th Anniversary Live」
2017.1.10 日本武道館 セットリスト

1.遙か彼方
2.センスレス
3.アンダースタンド
4.アフターダーク
5.夜のコール
6.粉雪
7.マーチングバンド
8.踵で愛を打ち鳴らせ
9.今を生きて
10.君という花
11.E
12.スタンダード
13.ブラッドサーキュレーター
14.月光
15.振動覚
16.リライト
17.ループ&ループ
18.君の街まで
19.マイワールド
20.夜の向こう
21.ラストシーン
22.サイレン
23.Re:Re:
24.24時
25.真夜中と真昼の夢
26.海岸通り
<アンコール>
En.1. 「転がる岩、君に朝が降る」
En.2. Wonder Future
En.3. タイムトラベラー
En.4. 嘘とワンダーランド
En.5. さよならロストジェネレイション
En.6. 新世紀のラブソング

ライブ情報

NO NUKES 2017

3月17日(金)・18日(土) 豊洲PIT
出演:17日Gotch
           18日ASIAN KUNG-FU GENERATION

VIVA LA ROCK 2017

5月3・4・5日(水祝、木祝、金祝) 
さいたまスーパーアリーナ
※Gotch & The Good New Timesでの出演(出演日後日発表)

rockin’on presents JAPAN JAM 2017

2017年5月4日(木・祝)・5日(金・祝)・6日(土)
千葉市蘇我スポーツ公園 (千葉市中央区)
※Gotch & The Good New Timesでの出演(出演日後日発表)

ASIAN KUNG-FU GENERATION

’96年結成。メンバーは後藤正文(Vo,Gt)、喜多建介(Gt,Vo)、山田貴洋(B,Vo)、伊地知潔(Dr)。’02年にインディーズで発表したミニアルバム「崩壊アンプリファー」をキューンミュージックから再リリースし’03年にメジャーデビュー。同年、“NANO-MUGEN FES. ”を新宿ロフトから立ち上げ、海外アーティストや若手の注目アーティストを招いた幅広いジャンルの音楽をファンに紹介する試みも積極的に行い、’06年からは横浜アリーナ2DAYSの開催と規模を拡大。デビュー10周年を迎えた’13年9月には、横浜スタジアム2DAYSライヴを開催。コンスタントな活動でこれまでに8枚のオリジナル・フル・アルバムの発表をはじめ、ライヴ盤や企画盤など多くの作品をリリース。’15年5月には、ロサンゼルスでレコーディングしたニューアルバム「Wonder Future 」を発表した。バンド結成20周年イヤーを迎えた昨年は、「Right Now」「Re:Re:」「ブラッドサーキュレーター」と、立て続けにシングルをリリース。11月30日には自身最大のヒットアルバム「ソルファ」の再レコーディング盤をリリースし、12月からは全国のアリーナをまわる20周年ツアーを開催した。4月7日公開のアニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』の主題歌を担当することが決定している。

オフィシャルサイトhttp://www.asiankung-fu.com

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