『モンハン』で育む家族の絆  vol. 3

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『モンハン』の「対戦」で目覚める「ヒール」な息子!?

『モンハン』の「対戦」で目覚める「ヒール」な息子!?

公私ともに『モンスターハンター』(以下、『モンハン』)シリーズと歩んできたライターの父親。『モンスターハンター ストーリーズ』(以下、『MHST』)の「通信対戦」は、息子の成長を次々と父親に見せてくれる。勝つことにこだわってきた自分本位な息子が父親にもたらすアドバイスの数々。それは、他人の立場に立ってモノを考えられるようになってきたことの証だった(第2回)。そんな父親と息子のゲームセッションを、スナップ写真多めで語る本企画。今回は、父親の思いつきで予想もしない「親子対決」へと発展したバトルを振り返ります。

文 / wodnet


いつもの日曜日

冬らしい寒さが到来し始めた1月のとある日曜日。普段は遅寝遅起きのボクなのだが、日曜日だけはきっかり朝8時30分に起床……というか息子に叩き起こされる。アニメ『モンスターハンター ストーリーズ RIDE ON』の放送があるからだ。

▲真ん中が主人公のリュート。幼馴染のシュヴァル(右)とリリア(左)を交えたスリーショットの笑顔が眩しい

▲真ん中が主人公のリュート。幼馴染のシュヴァル(右)とリリア(左)を交えたスリーショットの笑顔が眩しい

第1回の記事でも少しだけ触れたけれど、ボクはこのアニメで脚本を書かせていただいた。担当したのは第14話、「立ち向かえ!黒の凶気!」。主人公・リュートを始めとするハクム村の若き見習いライダーたちが、村に大きな爪痕を残した凶気化ナルガクルガと対峙する内容で、ゲームでも序盤の山場となるアクション満載の話だ。これまで『モンハン』シリーズと共に歩んで得てきたものを、ボクなりに全力でシナリオに出し切ったつもりだ。今後も目が離せない展開の目白押しなので、ぜひアニメもご覧いただけたらうれしい。

ゲームでおなじみのオトモンをふ化させる「絆あわせの儀式ごっこ」のシーンもアニメでしっかり描かれている。ゲームとアニメを行き来しながら『MHST』の世界を楽しんでみてほしい

▲ゲームでおなじみのオトモンをふ化させる「絆あわせの儀式ごっこ」のシーンもアニメでしっかり描かれている。ゲームとアニメを行き来しながら『MHST』の世界を楽しんでみてほしい

さて、そんな『MHST』のアニメを毎週見終えると、「『ストーリーズ』遊びたくなっちゃったな~」と、思いっきり聞こえるトーンで独り言をつぶやくのが息子の恒例となっている。1週間、学校に宿題にとがんばってきたのだろう。日曜日くらいは好きなだけゲームを遊ばせてあげてもいいかな……なんて、ボクはつい息子に甘くなってしまうのだが、「そんなのおかしいでしょー!」と妻がストップをかける。それが我が家のいつもの日曜日だ。

妻という「敵」の攻略

妻は、ボクと息子の楽しい楽しいゲームライフを妨害する「敵」なのかと問われれば、答えはもちろん「ノー」だ。むしろ妻はボクの大事な狩友である。ボクと妻がいっしょに遊んだ『モンハン』で鮮烈に思い出されるのは『モンスターハンター3(トライ)』。Wiiで発売された本作は初めて水中狩猟が実装され、ハンターやモンスターの見せる動きや生態がより生き生きと進化したタイトルだ。操作方法も独特で、ボクも妻も最初から最後までWiiリモコン&ヌンチャクスタイルで遊びきった。まるで武器そのものを握っているような操作感がこれまでにない没入感を生み出し、直感的に遊べたことも妻にフィットした要因のひとつだろう。彼女が懸命にリモコンとヌンチャクを振る姿は、どこからどう見てもゲームにハマっている者のそれだった。

▲『モンハン3(トライ)』の水中狩猟。モンスターは本作のメインモンスター・ラギアクルスで、父の好きなモンスターだ

▲『モンハン3(トライ)』の水中狩猟。モンスターは本作のメインモンスター・ラギアクルスで、父の好きなモンスターだ

『モンハン』を通じてゲームへの理解を深めてくれた妻だけど、ゲームに対して極端に寛容になったわけではない。ボクと息子がほかのことをおろそかにしてしまうほどゲームに没頭していたら、妻は容赦なく声をかけてくる。それは一見、夢中で遊ぶ二人に水を差す「敵」のような存在に受け取れるかもしれない。けれど我が家にとって妻が果たすその役割は、生活をコントロールする上でとても重要なのだ。彼女は、ボクがゲームに没頭したいことも知っている。だからこそ、ボクや息子を現実に引き戻す「悪役」を、あえて引き受けてくれているのだろう……ということにしておこうか(笑)。ボクは日々、機嫌を損ねないように上手に妻を攻略しつつ、ゲームライフを満喫しようと努力している。

そんなわけで話を日曜日に戻そう。ボクと息子は妻と約束を交わした。午後の買い物から帰ったら、夕飯の時間までゲームで遊ぼうと。

リュート&リオレウス

 「ただいまー!」

買い物から帰ってくると、息子は早々にゲームの準備に取り掛かった。こういう時の子どものスピードは驚異的だ。ボクは大人の余裕を見せるが如く、ゆっくりと準備をする。「早くしてよ!」という息子からの催促もいつも通りだ。そこでボクは、こっそり買い物で手に入れた「あるモノ」を差し出すテクニック攻撃で息子のスピード攻撃に対応してみた。

▲『モンスターハンター ストーリーズ RIDE ON』シールウエハース。オトモンたちの描き下ろしイラストがシールになっているだけでなく、裏面の2次元コードを使って『MHST』内のアイテムを手に入れられる

▲『モンスターハンター ストーリーズ RIDE ON』シールウエハース。オトモンたちの描き下ろしイラストがシールになっているだけでなく、裏面の2次元コードを使って『MHST』内のアイテムを手に入れられる

お菓子コーナーに置いてあったのを偶然見かけ、何かに使えると思って息子に内緒で買ってみたシールウエハース。早速開封してみると、なんといきなり”リュート&リオレウス”のシールが出たっ! そこでボクは、思いつきの対戦企画を息子に提案してみた。

「アニメをゲームで再現してみない?」

「え?」

その反応もムリはない。再現するって言ったって、何をどうやって? といったキョトンとした表情だ。そんな息子にボクはたたみかける。

「リュートとシュヴァルとヒョロで、ナルガクルガと対決っていうのはどう?」

その瞬間、息子の目の色が変わり、口からは「いいね!」の声が飛び出した。ボクの提案はこうだ。アニメ『モンスターハンター ストーリーズ RIDE ON』の第14話を、擬似的ながらもゲームの中で再現する。一方はアニメの主人公たちのチームで、リュートの乗るレウス(リオレウス)、シュヴァルの乗るレイア(リオレイア)、ヒョロの乗るドスファンゴを使う。もう一方はリュートたちの村を襲った凶気化ナルガクルガを想定して、3頭のナルガクルガで迎え撃つ。アニメではいっしょに対峙したミルとアプトノスのコンビには、申し訳ないけどお休みしてもらう感じだ。

▲アニメ版の主人公・リュートとレウス、さらにナビルーの「ライドオン!」を彷彿とさせるゲームの印象的なシーン。このリュートたちに負けない対戦を再現できるか!?

▲アニメ版の主人公・リュートとレウス、さらにナビルーの「ライドオン!」を彷彿とさせるゲームの印象的なシーン。このリュートたちに負けない対戦を再現できるか!?

これまでの対戦では、父と息子はお互いに対等な立場のライダーとして「通信対戦」をしてきた。ところが今回は「ライダー役vsモンスター役」を想定する。もちろん『MHST』の対戦内容そのものに変化はないので、ナルガクルガといっしょにライダーも攻撃していい。オトモンに縛りがあるだけで、いつも通りの対戦が行われるだけなのだが、こうした背景を事前に用意するだけで趣向はガラリと変わってくるから不思議だ。これぞまさしく役割を演じることを楽しむ「ロールプレイング・ゲーム」そのもの。

ここで問題は、ボクがナルガクルガのオトモンを3頭も持っていたか、ということだった。厩舎を覗いてみると思った通り、ナルガクルガは1頭しかいない。「ごめん、ちょっとナルガ捕まえてくるわ……」とボクが言ったその時。

「え? もう、ナルガ3頭の準備してるけど……?」

それは息子の、さも当たり前といった様子の声だった。

息子が「ヒール」になった日

この記事が公開になるのは、ちょうど節分の頃だろうか。節分と言えば、「福は内! 鬼は外!」の掛け声で知られる豆まき。鬼役は決まって父の仕事だと思う。鬼の面を被り、家にとっての「鬼」、すなわち「悪役」となって一身に豆を引き受け、追い払われる役をこなす。ちゃんと悪い鬼になりきることがポイントだ。

息子は最初から、ナルガクルガ3頭の準備をしていた。いやいや、ここは常識的に考えて息子がリュートたち見習いライダーチームで、父であるボクが宿敵ナルガクルガでしょうよ! そう思って息子に聞いてみたら、淡々とこんな答えが返ってきた。

「とうちゃん、ナルガ3頭も持ってないでしょ」

むぅ、なんか悔しい、モーレツに悔しいのだが、でもよくわかってらっしゃる。前回の対戦で、息子がボクの立場に立って物事を考えられるようになっていることをうれしく思ったけど、ここまでボクのオトモン入手状況を正確に読みきらなくてもいいのにっ! と思ってしまった。でもすぐに対戦を楽しむにはこれが最良なのは間違いない。それに10歳の息子が見せる「ヒール(悪役)」にも、ちょっと興味があった。

▲息子の画面。ナルガクルガ3頭にいったいどんな仕掛けを施してきたのか、父としては気になるところだ

▲息子の画面。ナルガクルガ3頭にいったいどんな仕掛けを施してきたのか、父としては気になるところだ

いざ、対戦ルールを「MHX」(レベル70統一)に設定してアニメ再現対戦のスタート。すると「ヒュォォォォォォ!」と息子自身がナルガクルガの甲高い咆哮をくり出してきた。本気だ……ヤツ(息子)は本気である。その本気に父も応える。ハクム村のちょっと気弱な見習いライダー・ヒョロになりきり、「い、行け……! ドスファンゴ!」と叫ぶ父。これ以降もちょいちょいセリフの応酬がリビングに響き渡るのだが、あとは読者の皆さんのご想像にお任せして対戦の内容をお伝えしたい(笑)。

父は、トップバッターのドスファンゴにゲリョス亜種の「猛毒液」とドスバギィの「睡眠液」の絆遺伝子を伝承させ、猪突猛進と見せかけて状態異常で攻める。対する息子は、危険を察知するとまさにナルガクルガのようにすばしっこくオトモンを交代させ、なかなかチャンスを作らせない立ち回り。業を煮やした父は、リュートの幼馴染であるシュヴァルの気迫そのままにオトモンをレイア(リオレイア)と交代。ドスガレオスの「砂塵ブレス」、ケチャワチャ亜種の「粘炎液」、さらにレイア(リオレイア)自身が覚える「毒スパイク」を駆使して状態異常を狙いながら、「拡散炎ブレス」の全体攻撃でもたたみかける。だが、それでも息子のナルガクルガは力尽きず持ちこたえる。そこへ満を持して、お約束とばかりに、アニメの主人公・リュートの乗るレウス(リオレウス)を登場させる父。ゲームの中でも、ずっと主人公(プレイヤー)とともに成長してきたレウス(リオレウス)だけに、そのチカラは圧倒的で、父は息子のナルガクルガチームから2連勝をもぎとった。

その後も対戦は続き、時折息子が圧勝する展開があったものの、ドスファンゴとレイア(リオレイア)でじわじわと追い込み、レウス(リオレウス)の爆発力でライフポイントを奪う父の攻勢に息子は対応しきれないまま、アニメ再現対戦は終わりの時間となった。

▲手元にリュート&リオレウスのシールを置いて、奥のナルガクルガを見やる。アニメの世界に入り込む工夫だ。本当は父と息子で逆の立場を想定していたけれど……

▲手元にリュート&リオレウスのシールを置いて、奥のナルガクルガを見やる。アニメの世界に入り込む工夫だ。本当は父と息子で逆の立場を想定していたけれど……

▲父ライダーはリュートとは似ても似つかないピンクの髪型だが、ここはリュートになりきって「スカイハイフォォォォル!」

▲父ライダーはリュートとは似ても似つかないピンクの髪型だが、ここはリュートになりきって「スカイハイフォォォォル!」

▲上空から炎をまとった急降下で巨大な炎の柱を発生させるスカイハイフォール。息子のナルガクルガを何度も追い詰めた絆技だ

▲上空から炎をまとった急降下で巨大な炎の柱を発生させるスカイハイフォール。息子のナルガクルガを何度も追い詰めた絆技だ

対戦に負け越して悔しそうにする息子。その目の前で、父のボクは不思議な感情を抱いていた。リュートたち見習いライダーチームは、本当は息子に託したかった。この勝利は本来息子が手に入れるはずのもので、なんだか素直に喜べない……。

でも、凶気化ナルガクルガになりきろうとする息子に、よくわからないけれど、安心したのも事実だった。息子のナルガクルガの咆哮マネなんて、何年ぶりに聴いただろう。ゲームの中ではなく、ボクの目の前に凶気化したナルガクルガがまさにいたのだ。そんなに遠くない将来、息子が父親になって家庭を持つ日が来たら、その時は豆まきの鬼役がしっかり務まりそうだ。そんな安心を得たボクは、ちょっと変わっているかもしれない。

ボクはもちろん息子も妻も、これからの人生でまだまだ乗り越えるべき壁や困難がたくさん待ち受けていると思う。状況や流れ、空気が生み出す結果によっては、あるいは自分自身が誰かにとっての壁や困難そのものになってしまうこともあるかもしれない。そんな時にもしかしたら、ちゃんと「ヒール」になれること、必要な「悪役」になれることが求められるかもしれない。いつもボクの妄想は大げさになってしまうのだけど、この日の対戦で息子が経験したことが、これから何かの役に立てばうれしい。

「できることなら、そんなことにはなってほしくないけど」。

ボクはそんな本音を心の中で抱きながら、気づいたら息子の肩にそっと手を乗せていた。そんなボクに振り返って息子が言う。

「とうちゃん、悔しいからもう1回対戦したいよ」

よかった。まだしばらくは、そんな子どもらしい息子のままでいてほしいよ。

J

モンスターハンター ストーリーズオフィシャルサイトhttp://www.mh-stories.jp/

モンスターハンター ストーリーズ RIDE ONオフィシャルサイトhttp://www.mh-stories-rideon.jp/

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モンスターハンター ストーリーズ 公式ガイドブック【ダウンロード番号付き】

週刊ファミ通編集部 (編集)
KADOKAWA・DWANGO / エンターブレイン / カプコンファミ通

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