黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 1

Interview

日本ファルコム会長 加藤正幸氏が語る、新海誠の原点とは?

日本ファルコム会長 加藤正幸氏が語る、新海誠の原点とは?

永遠のアマチュア宣言

加藤 僕らは「永遠のアマチュア」でいいんです。僕も経営者としてはアマチュアです。70歳にもなってアマチュアってどうなのと言われそうですけどね(笑)。

Apple IIから始まったこの45年くらいを会長はどのように見ておられますか?

加藤 コンピューター的観点から言うと基本的にやっていることはあまり変わっていない気がするんですよね。ストアードプログラム方式(※5)ってコンピューターが出てきたときから変わっていないじゃないですか。これでどこが発展したんだと。

(※5)メモリに記憶させた命令(プログラム)を呼び出して実行する方式のこと。

_MG_9564_1_r

言われてみれば大して変わっていませんね。

加藤 もともと僕がコンピューターをやりたいと思ったのは中学生くらいのときに、安部公房さんの『第四間氷期』を読んだからなんです。第四氷河期が来るので、それに適応するために人間を改造して水の中でも生きられるようにしようみたいな話なのですが、その中に出てくるんですよ。アニメとかによくありますけど、頭に電極を刺すと脳内に映像が映るみたいなものが。それを読んで「コンピューターってすごいんだな」となったわけです。

なるほど、コンピューターに対してものすごくイメージが膨らんだわけですね。

加藤 ところが、今でも基本的にインプットはキーボードで、新しく出てきたものはたかだかマウスくらいでしょ? これもコンピューターが出てきた頃からほとんど変わっていないですよね。

50年やっても1年目の才能に負けることもある

スマートフォン向けのゲームについてはどのようにお考えですか?

 

加藤 新しいことが嫌いなわけじゃないです。できればやりたいけど、とりあえずできないからやらないといったところです。そういう新しいことはいつもやろうとするんですが、なかなか周りがついてきてくれないというか(笑)。僕自身は昔から新しいもの好きです。ツイッターもフェイスブックも社内で自分が最初に始めましたし、ホームページもそうです。

言われてみれば『戦国ソーサリアン』のダウンロード販売を20年以上も前に始められていますし、音源の自由化なども行われています。新しいことにいろいろチャレンジされているんですよね。

加藤 ただ、ひとつ言っておきたいのは、この仕事は経験が長いからできるわけじゃないということです。50年やっている人間がキャリア1、2年の者に負けたりするわけですから。そこは、僕もちゃんとわきまえています。絵の仕事が一番分かりやすいですよね。音楽もそうでしょう?

アイドル 杉本理恵さんと一緒に記念写真 1991年 キングレコード授賞式にて 1990年、『イースII』のヒロイン・リリアのイメージガールを探す「ミス・リリア・コンテスト」でグランプリを獲得。1990年7月21日、キングレコードのファルコムレーベルよりミニアルバム『LILIA』をリリース。

アイドル 杉本理恵さんと一緒に記念写真 1991年 キングレコード授賞式にて
1990年、『イースII』のヒロイン・リリアのイメージガールを探す「ミス・リリア・コンテスト」でグランプリを獲得。1990年7月21日、キングレコードのファルコムレーベルよりミニアルバム『LILIA』をリリース。


キング アイドルコレクションシリーズ

杉本理恵
2015年4月1日発売


自分たちが教えられることはない

おっしゃるようにすごい新人が出てくるということがありますからね。

加藤 かなわない人たちがたくさんいますからね。だから、自分ができる範囲内で精一杯やっていくしかない。ウチでみんなによく言っていることは「できないなら、やらなくていいよ」、「自分ができる範囲内でできることを精一杯やればいんだよ」です。

最後に、今の若い人もしくはクリエイターを目指す次世代の人へのメッセージをいただきたかったのですが、何かありますか?

加藤 う~ん、ないですね。自分たちが教えられるようなことはないもん(笑)。僕みたいなやり方をしたいのでしたら「無理をしないで手を抜くな」とか、そのくらいのアドバイスが関の山です。そのやり方がいいかどうかも分からないですし。無理をしないと飛躍はできないというのも事実ですからね。当たり前の話なんですよ。(ソフトバンクの)孫さんを見ろとね。あの人はいつも崖っぷちにいたから、あそこまで行けたんだろうと。だから、安全なところを歩いていたら、やっぱり大きく飛躍するってことは少ないわけです。見ているほうからすると自分みたいなのは面白くないと思いますよ。

 

いや、そんなことはないと思いますよ。

_MG_9397_1_r

加藤 だって、僕はよく『あしのたジョー』の話をするんだけど「あんなことはないからね。不可能を可能にするっていうけど、不可能って可能性がないっていうことでしょ? それが可能になるわけないだろう」みたいなことをいつも言っていますからね。宝くじも確率的に考えたら僕の感覚ではゼロですから、そんなの買うってありえないだろうみたいな話をよくします。「でも、当たる人もいるでしょう」って言うけど、隕石が降ってきて当たるヤツだっているだろうってね(笑)。

それはそうですけど、とことんシビアですね。

加藤 そう、ウチがやっている事業で赤字になっているものはほとんどないです。どんな小さなライブなんかでもすべて黒字なんですよ。そういうルールなんです。グッズ1個でもちゃんと計算書を出して赤字になったらもう2度とできないっていう仕組みですから。

それはすごいことだと思います。

加藤 そんなことやっていたら先に進まないよって言われると、まあその通りだろうとも思うんですけどね。


_MG_9629_1_r

撮影 / 北岡一浩 取材協力 / 仁志睦

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

< 1 2
vol.1
vol.2