黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 1

Interview

日本のゲーム産業はApple IIの衝撃から始まった 日本ファルコム創業会長 加藤正幸氏(上)

日本のゲーム産業はApple IIの衝撃から始まった 日本ファルコム創業会長 加藤正幸氏(上)

音楽、映画、ゲームなどを総称するエンタテインメントは、人類の歴史とともに生まれ、時代に愛され、変化と進化を遂げてきました。

そこには、それらを創り、育て、成熟へ導いた情熱に溢れた人々がいます。この偉人であり、異人たちにフォーカスしインタビュー形式で紹介するエンタメ異人伝。

記念すべき第1回目は、日本のパソコンゲームの黎明期から現在に至るビデオゲームのパイオニア的存在である、株式会社日本ファルコム 創業会長 加藤正幸氏です。コンピューターを愛し、サラリーマン時代を経て、ソフト販売のショップを開店、ソフト開発を行い、日本におけるパソコンゲームの市場を開拓してきました。今まであまり語られることのなかった加藤氏の半生を追いました。

※本記事は3回にわたってお届けするインタビューの第1回です。

インタビュー取材・文 / 黒川文雄


サラリーマンを経て起業 その背景とは

加藤正幸会長

加藤正幸会長

加藤会長は日本のゲームの歴史を作ってきた方の1人です。そのあたりのお話や今にいたるご苦労などをお聞きしたいのですが、最初はパソコンショップから始められたのですよね?

加藤 ショップをやりたいという夢はありましたが、お金がまったくなかったんですよ。僕はその前の10数年間、自動車会社で大型汎用コンピューターのSEをやっていまして、あの頃のSEは10年以上経験のある人間じゃないと出来ないという時代でした。それで、僕が退社したときに「こんな仕事をやりませんか」というお話をいただきまして、その仕事で得たお金でショップを開いたんです。

もともとはプログラムやシステム作りなどをされていたのですか?

加藤 そうです。かなり原始的でしたが、その頃からオンラインを導入していたんですよ。テレックス(※1)はご存知ですか? テレックスって50ボーなんですよ。50ボーとは50bpsのことです。もう、めちゃくちゃ遅い(笑)。回線に信号がきているかどうかクリスタルイヤホン(※2)を使って音で確認するとか、そういう時代です。

(※1)電動機械式タイプライターで、有線・無線通信回線を通じて印字電文の電信(電気通信)に用いられた機材。
(※2)鉱石ラジオやゲルマニウムラジオに使われていたイヤホン。無電源で使用できるのが特徴。

今から45年くらい前の話ですよね?

加藤 そうそう。ただ、自動車会社っていうのは当時すでにテレックス網を世界に張り巡らしていたので、まずはそのテレックス網を使って国内オーダーエントリーみたいなものをやろうとしたんですよね。各営業所や販売店やモータープールなどに、いつ、どこに、どういう車がいくかなどの配車計画などから始めました。多分、僕は日本でそういうオンライン的なことをやった草分けだと思います。

時代を先駆けていたのですね。

起業に大きな影響を与えたタイ駐在員時代

加藤 辞める3、4年くらい前は駐在員としてタイのバンコクにいました。何もないところに人を集めて部署を作ってね。新聞広告で技術者を募集して面接したんです。それが起業にはとても役に立ちました。

会社を辞めて起業しようと思う、きっかけのようなものがあったのでしょうか?

_MG_9521_1_r

加藤 タイではかなり自分の裁量権が広かったのですが、戻ってきたらそうではなくなったわけです。まず、そのカルチャーショックはありました。それから、僕は入社以来コンピューター部門一筋でやってきたのですが、ちょうどその頃に経理部門に配置転換になったんですね。自分は経理でも同じような仕事をやるんだろうと思っていて、さほど抵抗はなかったのですが、そのことを知った同僚や後輩が5人くらい僕のところに来て「加藤さん辞めるんでしょ?、だったら一緒にやりたいんだけど」みたいなことを言ってきたんです。これが、きっかけといえばきっかけかなあ。

その方たちと独立して起業されたわけですか。

加藤 いや、最初は「え?」となりました。「いや、そう言ってくれるのはありがたいけれど、ちょっと待って」と。でも、いろいろ言われているうちにその気になってね。「やっぱり、辞めようかな」となったわけです。でも僕は慎重なので、会社を辞める前に、まずはみんなの仕事を見つけることから始めました。もっとも、一緒にやろうと言ってきた人たちも、いざとなったら上司に1人1人懐柔説得されていって最後には1人か2人しか残らなかったんですけどね(笑)。

なるほど、そうだったのですか。

1981年創業当時のファルコムショップ内の風景

1981年創業当時のファルコムショップ内の風景

vol.1

編集部のおすすめ