Interview

映画『サバイバルファミリー』泉澤祐希&葵わかな「僕たちに危険が多いほど監督は楽しんでいる!?」

映画『サバイバルファミリー』泉澤祐希&葵わかな「僕たちに危険が多いほど監督は楽しんでいる!?」

『ウォーターボーイズ』(01)、『スウィングガールズ』(04)などの話題作を手掛けてきた矢口史靖監督の待望の最新作『サバイバルファミリー』は、“ある日突然、電気がなくなったら!?”という突拍子もないテーマのもと展開する家族の再生物語。携帯電話、冷蔵庫、電車、ガス、水道、乾電池など生活の必需品が一気に使えなくなった時、人々は一体どうなるのか――。極限状態でのある家族のサバイバル生活をドキュメンタリーのように描いた本作について、一家の無口な兄〈賢司〉と、スマホ命の妹〈結衣〉を演じた、泉澤祐希葵わかなに話を聞いた。過酷な撮影の裏話や、監督とのエピソードは必読だ。

取材・文 / 吉田可奈 撮影 / 三橋優美子


映画『サバイバルファミリー』は、撮影が本当に大変だったんだろうなと思うほど、リアリティを追求した仕上がりになっていましたが、撮影中の雰囲気はどんなものでしたか?

泉澤 現場自体はすごく楽しかったよね。

 そうですね。

泉澤 シーンとしては大変なものが多かったので、「撮影中に楽しかった出来事を教えてください」と聞かれたらあまり出てこないんですけど……(笑)、雰囲気はすごく良かったんですよ。ただ、あまりに過酷で、休憩中は無言のことも多かったです……(笑)。

 たしかにそうでしたね(笑)。私は常に筋肉痛に悩んでいました。

サバイバルファミリー 場面

体力的に一番大変だったのは、どんなシーンでしたか?

 この映画では、自転車を含め、とにかく走るシーンが多かったんです。なかでも、一番「どうしよう!」と思ったのは、お兄ちゃんと一緒に田んぼを走り抜けていくシーン。撮影当時は9月くらいで、田んぼの稲刈りは終わっていたんです。だから、根元だけが田んぼに残っていて、走ると足に当たってすごく痛かったんですよ。

泉澤 ショートパンツに半袖だったもんね。あれは大変そうだったなぁ。

 痛かったのも辛かったんですが、何より、お兄ちゃんの走るスピードが速すぎて……! 最初にテストで、私なりに全力を出して走ったんですけど、それでも全然追いつけなくて、本番でさらに力を振り絞って走ったんですが、全然ダメで。そしたら監督に「もっと速く走ってみましょう」って言われたんです……。私としてはもうこれ以上は速く走れないから、内心すごく焦って、「本当にどうしよう……!?」って思ってたんです。

泉澤 言ってくれたらよかったのに!

 言える状態じゃなかった!(笑) もともと、お兄ちゃんとの運動能力の差が歴然としていたから、すでに限界だったんです。これには役者として力不足を感じましたね……。

泉澤祐希 葵わかな

まさか女優になって運動能力を試されようとは……。

 想像もしていませんでした(笑)。

泉澤 でも、僕もそんなに速いわけじゃないんだけどな……。遅すぎるんじゃない?

 え~! そうなのかな……(笑)。もともと、お兄ちゃんは文系の役なんです。なのに泉澤さん自身は運動能力がすごく高いから、そのギャップが大きかったんです。私はあらゆる動きについていけなかったですね……。

撮影当時、葵さんが走っている姿は確認していたんですか?

泉澤 僕は前を全速力で走っているので、後ろはまったく見えていなかったんですよ。

 お兄ちゃんは先に走ってたしね。でも、一緒に「ヨーイ、ドン!」で走っていても、追いつけるとは思わないですけど(笑)。

サバイバルファミリー 場面

実際に運動は好きなタイプですか?

泉澤 好きですね。とはいえ、この撮影はめちゃくちゃ辛かったですよ。

 いや、飄々としていましたよ?

泉澤 そうだった!?

 監督に無茶ぶりをされたときも「はい。わかりました」と言って、さらりとできちゃうんですよ。

泉澤 どのシーンだ? あ、崖を駆け降りるところか。

 そうそう! 私はすごく怖くて。崖を下るのが怖いって、普通の心理ですよね?

泉澤 俺も怖かったよ。でも、画面で観ると、そうでもないんですよね。上から見ると、本当に怖いんですよ。それが映像で伝わらないのが本当に悔しい!(笑)

泉澤祐希

たしかに、観ている以上に大変なシーンが多そうでしたね。

泉澤 家族4人で豚を捕まえるシーンは本当に大変でした。

 4人で捕まえようとしていた豚さんが、本当に大きくてとにかく怖くて!

泉澤 見たことのない大きさの豚なんですよ! ミニブタじゃなくて、「イノシシなのかな?」 と思うくらいに大きかったんです。

 身の危険を感じました……。でも、両親役の小日向(文世)さんも深津(絵里)さんも、躊躇なく豚さんにガンガン向かっていくから、私が怖気づいてしまってはダメだと思ったんです。もしこれが、野に一人で放たれて、「捕まえて来て」って言われても、出来なかったと思います。

サバイバルファミリー 場面

家族4人だったからこそ、乗り越えられたことが多かったんですね。

泉澤 本当にそうでした。それに、この映画を撮影したことによって、自分の家族のことをより考えるようになったんです。それからは、母親から送られてくるメールにも、いつもより多く言葉を添えたりしようと思うんですが、やっぱりちょっと照れ臭いんですよね。でも、そう思うようになっただけ、成長できたと思います。

 私が演じた〈結衣〉も、お父さんとお兄ちゃんに対して、ひどい言葉をかけていて……。でも、きっとそういう反抗期の女子高生って、すごく多いと思うんです。それに、どんなにひどいことをいっても、最終的に味方でいてくれるのって、やっぱり家族なんですよね。この作品では、窮地に追い込まれることで家族の大切さを痛感させられるんですが、結果としてそれが真実だと思います。そこで「家族って大事」って意識するだけで、これからの親子の関係は変わってくると思うので、ぜひ、〈結衣〉と同年代の子たちにも観てもらいたいですね。

泉澤 家族って、当たり前にいる存在だからこそ、いなくなるとわかるとすごく悲しいんですよね。家族は一番温かいものなんだということを感じられる作品になっていると思います。

葵わかな

この作品では、極限状態に陥った人々の姿が描かれていますが、だからこそ“人間らしさ”も炙り出されていますね。それを感じたシーンはありましたか?

 すごく苦しいサバイバルの道中で、この辛い環境を逆に楽しんでいるある家族に出会うんです。そこに、うちのお父さんはちょっとした見栄を張るんですよね。もし、私がお父さんの立場でも同じことをすると思うので、気持ちはすごくよくわかりました。

泉澤 その家族はエンジョイしているからこそ、食べ物も飲み物もしっかり確保できているんです。でも、僕らには絶対にくれないんですよ。そこがすごく人間らしいなと思いましたね。食べ物って生きるのに絶対に大事だし、水がなければ死んでしまうという状況下になれば、人間の必死さも怖さもたくさん見えてくる。でも、その反面、良い部分も見えてくると思うんです。その人間らしさが凝縮された作品になりました。

サバイバルファミリー 場面

初めて矢口史靖監督とお仕事をしてみて、いかがでしたか?

泉澤 めちゃくちゃ楽しかったです! でも、監督はたくさん指示を出してくださるんですが、基本的に自分でどうしていいかわからないことが多くて……。

 監督の中には確固たるイメージがあるんですが、そのイメージにどうしたら近づけるかというのは具体的に教えてくれないんです。なので、自分の〈結衣〉という役に馴染むまで時間がかかって、何度もリテイクになってしまって、たくさん迷惑をかけてしまったんです。でも、そのイメージしているものが最高に面白いということはわかるんですよ。だから、心臓が縮み上がる崖下りもやろうと思えたんです。どんな無茶ぶりでも、監督が言うなら間違いないと信じることができたんです。

泉澤 嫌がらせとは思わないしね(笑)。

 でも、川に入って撮影しながら「もっと顔を浸けてみようか」って言われた時はさすがにドキッとしました(笑)。川の流れは速いし、足もつかない、さらに撮影隊はどんどん岸の方に行っちゃうので、本当に生き延びるには自分の力を信じるしかなかったんです。

泉澤 あれは大変だったよね。でも、僕たちの危険が多ければ多いほど、監督は楽しんでいる風なんですよ(笑)。

 (笑)。でも、そういう辛いシーンは、本当に辛いからその表情がリアルに出ているんです。お芝居と現実がしっかり混ざっているから、ある意味演じやすかったのかもしれません。

サバイバルファミリー 場面

ありがとうございました。では最後に、お二人が思う本作の見どころを教えてください。

泉澤 家族がサバイバル生活のなかで成長していく物語を、ドキュメンタリーのように純粋に観ていただければ、ハラハラドキドキしていただけるんじゃないかなと思っています。さらに矢口監督の映画が好きな方は、随所にでてくるコメディ色や、個性の強いキャラクターを探すのも、面白いポイントだと思います。

 この映画は、しっかりとした深いテーマがもちろんあるんですが、基本的にはコメディなので、良い意味でもさらりと観ることができると思います。なので、いろんな世代の人に楽しんでもらえるんじゃないかな。ぜひ家族で観に来てもらいたいです。


泉澤祐希

泉澤祐希

1993年生まれ、千葉県出身。8歳から子役としてテレビを中心に活動後、モナコ赤十字賞、ニューヨークフェスティバル金賞を受賞したドラマ『東京が戦場になった日』(14/NHK)で主演を務める。近年の主な代表作に【映画】『過ぐる日のやまねこ』(14/鶴岡慧子 監督)、『極道大戦争』(15/三池崇史 監督)、『秘密 THE TOP SECRET』(16/大友啓史 監督)、【ドラマ】連続テレビ小説『マッサン』(15/NHK)、『表参道高校合唱部!』(15/TBS)など。今年は、映画『君と100回目の恋』(2月4日公開/月川翔 監督)と、連続テレビ小説『ひよっこ』(4月3日放送開始/NHK)が待機中。また本作のスピンオフ『サバイバルボーイ&ガール「東京砂漠」』が日本映画専門チャンネルで2月15日に放送予定。
泉澤祐希オフィシャルサイト

葵わかな

葵わかな

1998年生まれ、神奈川県出身。『陽だまりの彼女』(13/三木孝浩 監督)でヒロインの上野樹里の学生時代を演じて注目を集める。その後、映画、ドラマ、CM、バラエティ番組と幅広く活躍中。主な代表作に【映画】『瀬戸内海賊物語』(14/大森研一 監督)、『くちびるに歌を』(15/三木孝浩 監督)、『暗殺教室』(2015/羽住英一郎 監督)、『ホラーの天使』(16/長江俊和 監督)、【ドラマ】『翳りゆく夏』(15/WOWOW)、『表参道高校合唱部!』(15/TBS)、【アニメ】『GJ部』(13/NTV/声を担当)など。2月15日にはスピンオフ『サバイバルボーイ&ガール「スマホがない!」』が日本映画専門チャンネルでオンエアされる。
葵わかなオフィシャルサイト

映画『サバイバルファミリー』

2017年2月11日公開

映画『サバイバルファミリー』 ポスター

東京に暮らす平凡な一家、鈴木家。冴えないお父さん〈鈴木義之〉、天然な専業主婦のお母さん〈光恵〉、無口な息子〈賢司〉、スマホがすべての娘〈結衣〉。一緒にいるのになんだかバラバラな、ありふれたごく普通の家族。そんな鈴木家に、ある朝、緊急事態が発生! テレビや冷蔵庫、スマホにパソコンと言った電化製品ばかりか、電車、自動車、ガス、水道、乾電池に至るまで、電気を必要とするすべてのものが完全にストップしてしまう。ただの停電かと思っていたが、1週間経っても電気は戻らない。そんな中、父〈義之〉が一世一代の大決断を下す。それは“東京脱出”! しかし、家族を待ち受けていたのは、減っていく食料、高騰していく水、慣れない野宿……。果たしてサバイバル能力ゼロの平凡一家は、電気がなくなった世界で生き残ることができるのか!?

【原案・監督・脚本】矢口史靖
【出演】小日向文世 深津絵里 泉澤祐希 葵わかな
時任三郎 藤原紀香 大野拓朗 志尊淳/渡辺えり 宅麻伸 柄本明/大地康雄
菅原大吉 徳井優 桂雀々 森下能幸 田中要次 有福正志 左時枝 ミッキー・カーチス
【主題歌】SHANTI「Hard Times Come Again No More」(S.Foster)
【配給】東宝

オフィシャルサイトhttp://www.survivalfamily.jp/

©2017フジテレビジョン 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ

映画原作本 『サバイバルファミリー』

原作本 サバイバルファミリー
サバイバルファミリー

矢口史靖 (著)
集英社

ある日突然、電気がこの世界から消滅! 東京に暮らす4人家族(鈴木家)が直面する、超絶不自由生活! 次第に食料や水が乏しくなっていく中で、父は決断を下す。東京を脱出する! 何が起きているのか分からない状況下、果たして、鈴木一家は生き残れるのか。笑いあり涙あり、平凡な家族の感動の物語。同名映画、原作本。