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KERA最新作『陥没』。井上芳雄や小池栄子らが昭和のオリンピック目前の東京を生きる

KERA最新作『陥没』。井上芳雄や小池栄子らが昭和のオリンピック目前の東京を生きる

発表されたばかりの第24回読売演劇大賞 最優秀演出家賞(対象作『8月の家族たち August:Osage County』)決定をはじめ、第51回紀伊國屋演劇賞 個人賞(対象作『キネマと恋人』『ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~』)、第68回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞(『対象作『キネマと恋人』)、第4回ハヤカワ悲劇喜劇賞(対象作『キネマと恋人』)と、今年の演劇賞各賞を総なめにし、まさしく今、演劇界を牽引するケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)。そのKERAの最新作として注目が集まる『陥没』が、2月4日、Bunkamuraシアターコクーンで、幕を開けた。
本作は、KERAが昭和の東京をモチーフに様々な人々を描く、2009年上演の『東京月光魔曲』、2010年上演の『黴菌』に続く、昭和三部作の完結編となる。

撮影 / 細野晋司


一筋縄では行かない群像劇だが、どの人物も魅力に溢れどこか愛おしく、次の展開が気になって仕方がない

物語の始まりは、1961年。まさに56年後の今と同じ、オリンピックを3年後に控えた東京。東京は、世界的スポーツ祭典の開催都市となり、予算やインフラ整備など、国民の意識や生活の中にも開催が現実味を帯びてきた時期だった。十数年前まで、敗戦の苦しみの中にあり、焼け野原であった東京。そこから驚異的な復興と高度経済成長を遂げ、アジア初のオリンピック開催都市にまでなった。

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日本中が沸き立っていたその頃、着工目前の、複合施設(オリンピア・スターパーク)の敷地。若き専務・是晴(さだはる / 井上芳雄)と、その妻であり施設のオーナーの娘・瞳(小池栄子)は、父である社長の光作(山崎一)がこれから建つはずの施設に馳せる想いを聞いていた。これから立ってゆく建物と、2人の若夫婦の将来、高度経済成長の波に乗る人々の例に漏れず、彼らもその渦中にいるように見えた。

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2年後、オリンピックを翌年に控えた1963年。(オリンピア・スターパーク)はプレオープン・パーティを行ったが、それぞれの状況は様変わりを見せていた。

是晴と瞳は離婚、是晴は若い恋人・結(むすび / 松岡茉優)と婚約し、今は印刷会社に勤めていた。瞳は、亡き光作の事業を引き継いだ社員・大門(生瀬勝久)と再婚。それぞれが別の道を歩み、人生は、思わぬ展開を迎えていた。

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プレオープン・パーティ翌日の施設には、瞳の薦めで婚約パーティを施設で行なうことになった是晴と結、従業員の瞳と窓子(緒川たまき)、そして瞳の夫・大門、パーティの出演者である奇術師のツマ子(高橋惠子)やテレビタレントのユカリ(趣里)、ユカリのマネージャーの下倉(近藤公園)、是晴の母・鳩(犬山イヌコ)、結の恩師・八雲(山西惇)、是晴の風変わりな弟・清晴(瀬戸康史)、そして清晴に連れて来られた謎の男・船橋(山内圭哉)など、様々な理由で集った人々が次々と現れる。そして物語は、観客の予測を遥かに越える展開を見せてゆく。

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KERAが「チェーホフが『真夏の夜の夢』を演出したら」とも例えたが、奇妙であったり、不穏であったり、不可思議な人々ばかりの登場で、一筋縄では行かない群像劇だが、どの人物も魅力に溢れどこか愛おしく、次の展開が気になって仕方がない。

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昭和初期の『東京月光魔曲』(2009年)、終戦前夜を描いた『黴菌』(2010年)と、昭和を描き続け、時代のアウトサイダーたちを描いてきた、昭和三部作の完結編は、良い意味で、観客の予想を遥かに裏切る作品となったに違いない。

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井上芳雄、小池栄子、瀬戸康史、松岡茉優と、作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチは初日に向け、以下のように所感を語った。

井上芳雄 「KERAさんは、人物の造形や関係性を解き、繊細なヒントを与えてくださいました。今回の是晴役は、今までにやったことがないタイプの男。あらたなチャレンジになりそうですし、豪腕の共演のみなさんと共に、強いチームワークで、笑いながら、毎公演臨んでいきたいと思います」

小池栄子 「新しいことに挑戦させていただけるのはありがたいことですし、KERAさんは私に瞳ができると信じて書いてくださっているはずですので、諦めずもがき続けなければと思います」

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瀬戸康史 「清晴は、演じていて面白いけど、感情のコントロールが難しい役です。初参加の僕に普段求められるのとは違うキャラクターを任せてくださるKERAさんに心から感謝していますし、群像劇をしっかり支える存在のひとりにしなければと思っています」

松岡茉優 「これから私たちが確実に巻き込まれるであろう、東京オリンピックとそれに伴う様々な変化のうねり、56年前に味わった人々の右往左往を、この作品を通して、同世代の方々に知っていただけたらと思います。舞台はまだ2作目ですが、先輩方から多くを学び、少しずつでも前に進んでいきたいと思っています」

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ケラリーノ・サンドロヴィッチ 「この歳になっても危なっかしいところにいたい、という欲求が病気のようにあって、リスクが高いことをやりたくなるんです。まだ無邪気だった時代を背景に、妙な軽やかさを持った『バランスが良い作品ではなかなか残せない類の印象』を残すことを目指したいです」

シアターコクーン・オンレパートリー2017+キューブ20th,2017『陥没』

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【東京公演】
2017年2月4日(土)~26日(日)Bunkamuraシアターコクーン

主催:Bunkamura/キューブ
【大阪公演】
2017年3月3日(金)~6日(月)森ノ宮ピロティホール

主催:読売テレビ/サンライズプロモーション大阪
※公演は、前売り指定席は完売。立ち見券含め毎日当日券の発売を予定。

【作・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ
【出演】
井上芳雄 小池栄子 瀬戸康史 松岡茉優
山西惇 犬山イヌコ 山内圭哉 近藤公園 趣里
緒川たまき 山崎一 高橋惠子 生瀬勝久
【企画・製作】Bunkamura キューブ


【お問い合わせ】
<東京公演>
Bunkamura:03-3477-3244(10:00~19:00)http://www.bunkamura.co.jp
キューブ:03-5485-2252(平日12:00~18:00)http://www.cubeinc.co.jp
<大阪公演>
キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00~18:00)http://www.kyodo-osaka.co.jp/