『FFXI』開発陣とプレイ&インタビュー  vol. 4

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『FFXI』開発陣がいまだから話すのXIのこと -前編-

『FFXI』開発陣がいまだから話すのXIのこと -前編-

今年の5月16日で15周年を迎える『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)。15年という決して短くはない年月を『FFXI』と走ってきたおふたりに、ヴァナ・ディールのこれまでとこれからを伺った。無敵のジョブアビリティ”あつかましい”を発動させた主婦プレイヤーが食い下がり、気がつけば2万字を超える大ボリュームのインタビューとなったため、『FFXI』にあやかり”XI”のチャプターで、前後編に分けてお届けする。ユタンガ大森林のように横道に逸れながら、懐かしい話、期待の情報、ここだけのシークレットをネットリと聞いてきたので、ぜひヴァナ・ディールの音楽をBGMにまったりと楽しんでいただきたい。

取材・文 / 大部美智子


▲プロデューサー・松井聡彦さん(右)とディレクター・藤戸洋司さん(左)

▲プロデューサー・松井聡彦さん(右)とディレクター・藤戸洋司さん(左)

Chapter I 三国の特色には理由がある

 『FFXI』開発陣のツートップへのインタビューは、いつも通りサルタバルタの日差しのように穏やかに始まった……。

松井 暖かいペットボトルのお茶は、目のまわりの温灸をするのにちょうどいいんですよね。

そうなんですか?

松井 お茶の温度が60度ぐらいあって、目のまわりをこうすると気持ちいいんですよ(ペットボトルで目のまわりを温める)。

目をよく使うゲーマー向けの知識ですね!

 

藤戸 ワンポイント。

さてさて、いきなりですが、私の人生はほとんど『FFXI』といっしょなんです。学生時代は『FFXI』部(という名の帰宅部)ですし、社会人になってオンラインゲーム雑誌の編集者になったのも『FFXI』がきっかけですし、そしていまもまさに『FFXI』のインタビューをさせていただいています。

藤戸 自分も開発者人生の中でいちばん長いですね。半分以上です。この業界に入って24年で、『FFXI』が今度15周年でしょ? そこに開発期間もプラスするでしょ? トータルで16、17年というところですよね。ということは、ほぼほぼ『FFXI』ですね……えらいこっちゃー(笑)。

えらいこっちゃー(笑)。

藤戸 『FFXI』以外何もできない人になっちゃう(笑)。

松井 『FFXI』だけできていればいいから、君は!(笑)。

末長~く続けてくださいね! 15年を経たいまだからこそ言えること、をお聞きしたいと思うんですが、まずはまったりと始めさせていただければなーと思います。ということで、好きなクエストやお気に入りの称号を教えてください。「この称号がお気に入りで、NPCに頼んで変えてもらうこともあるよ~」みたいなものはありますか?

藤戸 称号の変更を頼んだことはないですね。なるようになる、というスタンスで遊んでいたので。称号はわりと”ファング”だったりしますよ。

▲サンドリアクエスト”トラの牙”。クリアすると得られる称号からファングと呼ばれている。駆け出し冒険者の金策で利用されることが多かった

▲サンドリアクエスト”トラの牙”。クリアすると得られる称号からファングと呼ばれている。駆け出し冒険者の金策で利用されることが多かった

ファング! まさかいまもそれで金策を……?(笑)

藤戸 さすがに最近はファングしていないですけど(笑)。始めたころは確実にファングでしたね。

ファング率、高かったんですね。

藤戸 とにかく手に入るものはすべて捨てずに持っていて、これはあのクエストに使えるな、とか。その時はサンドリアが根城だったので……クエスト報酬でチャリチャリゲットでしたね。

頭に膨大なデータが入っていると便利ですね!

藤戸 最初のほうだけね。名声とか、ある程度のレベルが必要だとか、そういう前提条件が必要ないものはなんとなく覚えている程度です。コウモリの翼を2つずつ渡すやつとか、さっきのファングとか。そこを卒業したら今度はセルビナに行ってクエストをやったら名声が上がるな……というのを記憶だけを頼りにやりました。

松井 それはあれだよね、最近また、キャラをイチから作った時の話だよね。

藤戸 そうですね。

そうなんですか?

藤戸 いまの、イージスを作ろうと思って作ったキャラがそれです。『もぎたてヴァナ・ディール』とか『ですてにぃといっしょ』のキャラと見た目は違いますけど、同じジョブ構成の戦士/踊り子で育てていて、”ヴァナ・ディールの星唄”までクリアしました。

早い!

藤戸 ものすごくミッチリやりました。でも、子どもが産まれるまでの話で、子どもが産まれた後はびっくりするほど時間が取れなくて(笑)。

そうでしょうねぇ……!

藤戸 イージスを作ろうとしたキャラは、つぎにランペール金貨を渡すところまでは進んでいるんですけど、そこで停滞しています。そろそろどうにかしたい……。ええと、好きな称号の話でしたね(笑)。

そうでした! 松井さんの好きな称号はなんですか?

松井 称号は覚えてないんだけど……バケツを渡すとなにかもらえなかったっけ?

藤戸 バストゥークのクエストですね。

▲錆びたバケツを5個渡すと、300ギルと”バケツフィッシャー”の称号をもらえる。

▲錆びたバケツを5個渡すと、300ギルと”バケツフィッシャー”の称号をもらえる。

遠い昔にやった記憶があります!

松井 あれはたまに思いついた時に、倉庫にいっぱいあるバケツを「廃品回収に出すか~」って渡しに行きます。

月に2回の資源ごみ回収みたいな(笑)。

松井 ”小さな金属類”の回収をね(笑)。だから、それがいちばん多いんじゃないかな? 街にいる詩人さんNPCが称号を変えてくれるじゃないですか。昔、それで称号を変えたら、変えた称号と変えた人の名前を/sayで街行く人に聞かせたいってスタッフに言ったんだけど、「すごくコストがかかるからやめてください」って言われて……。たとえば誰かがバケツの称号に変えたとするじゃないですか、そうしたら「●●はバケツを釣って釣りまくった~♪ ららら~♪」みたいに/sayで歌うのおもしろくないかなって。

あれ? でも近いものが入ってますよね? 話しかけると直前に変えた人の称号を教えてくれたような……。

藤戸 最後に話しかけた人だけだったかな。若干、松井さんの野望が実現している状態ではあります。

以前、アドゥリンの詩人さんに話しかけたら”下級なでなで士“のことを歌っていて、そんな称号もあるのかと思いました(笑)。そこから、そのクエストに興味を持って始める人もいるかもしれませんね。

松井 なるほど。じゃあ大事だよ、やっぱり(笑)。

藤戸 そのへんはだいぶ考えましたからね。

松井 /sayでばらまきたい……。

藤戸 /sayで(笑)。なんで晒す方向に(笑)。

松井 えー、だってそのほうがいいじゃん。「●●が△△竜を倒したらしいよ」って……。

藤戸 すごいことならいいんですけどね、ファングがずっと/sayで言われるとか……。

松井 「牙を売りまくってるらしいよ~」とか。

藤戸 「あいつまたファングだわー」みたいな(笑)。

サンドリアのお手紙少年とか偵察任務で走っているNPCは時折/sayで喋っていますが、あれはコストがかかってるってことですか?

藤戸 あれはコストというか、最初に作る時に実験でいろいろやっていたんです。それで動きのあるNPCというか、生活感のあるNPCを当時の担当だった方がやってみて、あそこにずっと採用されている形です。めっちゃコストがかかるというわけではないですけど、どんなにシナリオが進んでもあれは動かせないというか挙動はいっしょのままなので、整合性の取れない内容になると困るため、あまり積極的には採用されていない挙動になります。

▲サンドリアの配達少年ことラミネール。昼夜を問わず走り続ける、健気な働きっぷり

▲サンドリアの配達少年ことラミネール。昼夜を問わず走り続ける、健気な働きっぷり

目的地に到着した時に喋るNPCってあんまりいないなと思って。サンドリアのふたり……ぐらい?

松井 サンドリア担当の人はそういう実験をしていました。バストゥーク担当の人は跳ね橋で、もうそれどころじゃなかった(笑)。

藤戸 跳ね橋は鬼門でしたね(笑)。

松井 跳ね橋でどうすれば取り残されずにうまくやれるか、とか。それできっと、それどころじゃなかったと思います。

藤戸 『FFXI』の動きだったりクエストだったりモンスターだったりを制御する専用のスクリプトがあるんですけど、作り初めのころはコマンド自体がまだまだ足りない状態で、「こういうことをやりたいので、そういうコマンドが欲しいです」ってプログラマーさんにお願いする形でした。でもそのプログラマーさんは、『FFXI』も開発初期に結構影響を受けている某オンラインゲームがあるんですが、それにものすごくはまった人で。

ものすごく!

藤戸 その人の姿が見えないな~って思うと、そっちのゲームにログインしていたり。かなり大変な時期がありましたね(笑)。

松井 我々が会社からそのゲームにログインして、ゲーム内で「会社に来て!」って伝えたりしましたね。

Oh……。

藤戸 いちばんコマンドのお願いをしに行っていたのは自分だった気がしますね。だいぶ無茶なお願いをしていました。

たとえば?

藤戸 パルブロ鉱山に舟があるじゃないですか。レバーをガチャッと引いたら動くやつ。

ありますね、アトラクションのように楽しいやつが。

藤戸 いまだったら絶対カットシーンになって、カットシーンの中だけでスーッと移動していくように作ると思うんですが、当時の自分の中で絶対に守らなきゃいけないルールがあって、それが「誰かが何かをやっているのは、ほかの人からも見えるようにしたい」というものでした。だから、「舟が動いているんだったらまわりの人からも動いているように見えてほしいし、乗っている人も同じように何かやったらまわりの人にはそれが見える」、というのが最も理想で、当時の自分は頑なに実現したいと思っていました。その時は舟に追従する仕組みがなかったので、舟が動いてもプレイヤーがそのまま空中に浮いているようなことが起きていたんです。舟が動いたらキャラクターも動くように作ってほしかったし、その時にモンスターが来て殴られたらイベントが中断して舟だけそのまま行ってしまうので、「舟に乗る時は、敵対心が適用されてもそのまま戦闘が始まらないようなルールが必要だよね」という話になり、無敵になる仕組みになりました。ミッションイベントとかもそうですね。

▲スイーッと水面を滑っていく舟。当時はそんな苦労が隠されているとも知らずに乗っていた

▲スイーッと水面を滑っていく舟。当時はそんな苦労が隠されているとも知らずに乗っていた

そういった仕組みやギミック、さっきの配達少年もそうですが、各地で個性が出ますね。

藤戸 初期の話だったらいくらでもできます(笑)。途中からは、分業が進んで自分も知らない部分がありますね。

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