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市川海老蔵&寺島しのぶが挑む、リリー・フランキーの新解釈『座頭市』

市川海老蔵&寺島しのぶが挑む、リリー・フランキーの新解釈『座頭市』

「六本木歌舞伎」第2弾公演『座頭市』(東京EXシアター六本木)が、2月4日に初日を迎えた。リリー・フランキーが脚本を手がけ、映画監督・三池崇史が演出をし、主演を約22年ぶりに共演する歌舞伎俳優・市川海老蔵と名女優・寺島しのぶが務めると明かされ、大きな話題を呼んでいた本公演。初日前日には公開舞台稽古が行われ、海老蔵と寺島は舞台稽古後に囲み取材にも応じた。

取材・文 / 松浦靖恵


“伝統”と“新解釈”。あらたな”エンターテインメント歌舞伎”を見事に成立

市川海老蔵、寺島しのぶ、リリー・フランキー、三池崇史。誰もが認める才能と強烈な個性を持つこの4人が集結すると、いったいどんな化学反応が生まれるのか。彼らは”座頭市”という時代劇史上に残る名作を、日本の伝統芸能である“歌舞伎”にどう落とし込んでいくのか。盲目の座頭〈市〉を演じる海老蔵は、自分の代名詞とも言える”眼力”を封印して演じなければいけないだろうし、歌舞伎の家に生まれても女性であるがゆえに歌舞伎の舞台を踏むことのなかった女優・寺島しのぶは、歌舞伎という演劇の中でいったいどんな姿を見せるのだろう。

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多くの人たちが“座頭市”や“歌舞伎”に対して抱いているであろう固定概念に切り込んでいく「六本木歌舞伎『座頭市』」は、歌舞伎役者が代々受け継いできた“伝統”と“新解釈”という痛快な裏切りがそこここに散りばめられ、あらたな”エンターテインメント歌舞伎”を見事に成立させたといっても過言ではないだろう。

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歌舞伎ではお馴染みの定式幕が開くと、舞台の両サイドに設えた黒御簾からは三味線や笛や太鼓が奏でる音色が歌舞伎ならではの空気感を作り上げていく。かと思えば、「I want you I need you」と、三味線奏者がラップを披露しながら舞台上に出てきたり、演者たちが軽快なダンスを披露したり、”歌舞伎風コール&レスポンス”があったりと、江戸の六本木温泉宿場町と現代の日本が時空を超えて舞台上で交差するような場面がいくつも作られていた。

本来の歌舞伎でも演目によっては歌舞伎役者たちがアドリブや時代を捕らえた言葉を入れ込むことが多々あるが、『座頭市』にも“君の名は”“ネット”“不倫”など、時世を反映させた言葉がさらりと台詞に投入されていたり、劇中での海老蔵と寺島の艶っぽいやりとりが実はアドリブだったりと、歌舞伎を観たことがある人ならば、歌舞伎を踏襲したそれらの演出に思わずニヤリとしてしまうだろう。

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また、盲目の女中見習い〈おすず〉と花魁の〈薄霧〉の一人ニ役を演じた寺島の早替わり、海老蔵の“にらみ”(成田屋に代々伝わる芸)などを演出に取り入れ、歌舞伎初心者にもわかりやすく、歌舞伎ならではの艶やかな雰囲気と演出の面白さを感じてもらえる舞台を作り上げていた。

諸国を旅する盲目の座頭〈市〉が辿り着いた六本木温泉宿場町の煌びやかな表の顔と怪しい裏の顔。その町で〈市〉が出会った〈おすず〉と〈薄霧〉との切なくも愛おしい恋の行方。見どころが満載の舞台の中で、町を牛耳る組の親分(片岡市蔵)や片腕の剣の達人(市川右團次)との対峙や10人以上の組員たちに囲まれた〈市〉が仕込み杖のみで切り込んでいく、そこで見せる海老蔵の鋭さと豪快さと美しさを併せ持った立ち回りは、彼が盲目という役どころであることを忘れてしまうほど圧巻だった。

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リリー・フランキーが書き下ろした『座頭市』には、かつて“座頭市”を長く演じてきた勝新太郎版『座頭市』のキメ台詞のひとつである「いやな渡世だねえ」が出てくる。江戸の町に栄えた六本木温泉宿場町で繰り広げられる人間同士の争い。繁栄と混沌が渦巻く世界に漂う不穏な空気。どんなにあがいても払拭されることない悲しみと怒りの連鎖。海老蔵が演じる〈市〉が発した「いやな渡世だねえ」は、まさに現在の日本、今の世界と重なり合い、今この世界に生きている私たちに鳴らした警鐘のようにも思えた台詞だった。

『座頭市』で描いた歌舞伎本来の面白味と新解釈を融合させた世界を、ぜひ劇場に足を運んで体感してほしい。きっと歌舞伎が好きになる。そして、「六本木歌舞伎」だからこそ魅せられる舞台、「六本木歌舞伎」の未来がますます楽しみになるはずだ。

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公開稽古終了後に行われた囲み取材で主演の2人はこのように感想を述べている。

市川海老蔵 「僕の中では(寺島しのぶは)音羽屋のお嬢さんですから、歌舞伎という名目の舞台で、ご一緒できるのはいろんな意味で感慨深いですね。白塗りをして、歌舞伎役者のように早替りを見せたり、花魁道中を見せたり。もし(寺島が)男だったら……という目で見てしまいますね」

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寺島しのぶ 「(共演者たちは)みなさん歌舞伎のプロなので、私が入ることで異物が入っているように見えなければいいなと思いながら演じています。(体力的には)本当に大変ですが、歌舞伎の要素をこんなにやらせてもらえて感謝しています。私は歌舞伎のことが好きだったんだなと改めて思いました」

六本木歌舞伎『座頭市』

2017年2月4日(土)~2月20日(月)EXシアター六本木

【脚本】リリー・フランキー
【演出】三池崇史
【出演】市川海老蔵 寺島しのぶ
【お問合せ】Zen-A(ゼンエイ)TEL:03-3538-2300(平日11:00-19:00)
【製作】松竹株式会社
【主催】株式会社3Top/テレビ朝日/博報堂DY Map/KDDI/読売新聞社
オフィシャルサイトhttp://www.roppongikabuki2.com/