女だらけの新生ロマンポルノ  vol. 6

Interview

飛鳥凛「もっとこうして…」女同士、全感覚を研ぎ澄ましたラブシーン ロマンポルノ『ホワイトリリー』

飛鳥凛「もっとこうして…」女同士、全感覚を研ぎ澄ましたラブシーン ロマンポルノ『ホワイトリリー』

日活ロマンポルノの生誕45周年を記念して、クラシック作品の活性化と並行し、5人の映画監督がオリジナル新作を撮り下ろす「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」。昨年11月からスタートした本プロジェクトの最終作品として公開されるのが、『リング』などホラー映画の名匠・中田秀夫監督による『ホワイトリリー』だ。

互いに過去の傷を慰めあうように暮らしてきた二人の女の前に一人の男が現れたことで、それぞれの愛が暴走して ゆく様を、これぞロマンポルノ!というべき、官能的なエロスと情念にみちた世界観で描いた本作において、 ヒロイン・はるかを演じたのが飛鳥凛さん。
濃密なラブシーンにも体当たりで挑み、愛の美しさと恐ろしさ、ひとりの女性が変わり、成長してゆくさまを生々しく演じてみせた彼女に「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」と自身の出演作について、話を聞いた。

取材・文 / 井口啓子 撮影 / 森崎純子


“これでも私を愛せる?”と試す女性の激しさ

『ホワイトリリー』は女性同士の愛憎を描いた、レズビアンものという側面もある作品で、官能的なシーンも多いだけに、女優としてはチャレンジな作品になったと思うのですが……。

そうですね。私自身、当初はロマンポルノがどういうものかは明確には把握できてなかったのですが、中田監督は大好きな監督だったので、中田監督に主演として撮っていただける機会は、これを逃せば無いと思い、「絶対にやりたい!」と。裸を晒すことに抵抗がなかったといえば嘘になりますが、この作品を純粋なラブストーリーとして見た時に、絡みのシーンは大切なシーンだと思いましたし、ひとりの女性の人生を描くという意味でも、性的な描写は避けては通れないと思ったので、覚悟を決めて挑みました。

飛鳥さんが演じられた<はるか>は<先生>のすべてを受け入れると誓いながらも、目の前で、先生が男性に体を寄せる様を見せつけられて、秘かに苦悩します。こういった二人の関係性についてはどのように感じられましたか?

<はるか>にとって先生は、初めて自分に手を差し伸べてくれた人で、それが本当に愛情なのかはわからないけれど、この人がいないと自分は生きていけないと思い込んでいる。先生にしても、<はるか>に男性との関係を見せつけて、“これでも私を愛せる?”と試しているところがあって。そういう激しさは私自身にはないけれど、なにか心の拠り所が欲しいという不安定な気持ちみたいなものは、同じ女性として理解できたし、女同士というだけで特殊な関係に思われるかもしれないけれど、私自身はすごく純粋で濃密なラブストーリーだと思ったし、特に構えることなく演じることができました。

レズビアンものというジャンルには、女二人の間に男が現れて…… という構図が多いんですが、『ホワイトリリー』は三つ巴のシーンでも女同士の濃密な愛憎に男性が振り回されてアタフタしているのが可笑しかったです。

完全に男性が異物になってますよね(笑)。実際、女同士の濡れ場はすごくやりやすかったんです。たまに女友達でも酔っぱらうとキスしてくる人がいますが……(笑)。先生役の山口さんとの濡れ場はリラックスして演じることができました。私がラブシーン自体、初めてだったので、男性だと緊張してしまうところがあって……。女性同士だと友達とじゃれあう延長のような感じで抵抗もなく、お芝居から絡みへとスムーズに入っていけました。

『ホワイトリリー』の濡れ場は、男女のそれと比べるとアクションが少ないというか、繊細かつ抽象的なだけに逆にすごくエロティックで……。まさに「官能的」という言葉がぴったりでした。

お芝居ではあるんですけど、“触っている感じ”も実際に触らないとわからないので、どういうふうにやったら気持ちよく見えるのか……実際に現場で、「もっとこうした方がいいですか?」とお互い探りながら撮っていただいたような感じでした。わかりやすいセリフがない状況で、二人の絡みのやりとりを作り上げないといけないので、すごく難しかったです。山口さんとの呼吸が少しでもズレるとダメなので、周囲の存在をシャットダウンして、必死で感覚を研ぎ澄まして……。
撮影は陶芸教室の部屋の中とか、白色が背景のシーンが多くて、現場にも日常とは遮断された幻想的な雰囲気が漂っていたので、本当に自分と山口さんだけの世界に監督の声が入ってきて、それにつき動かされているような……。中田監督の空想の中で生きていたような、濃密な体験でしたね。

湿り気のある比喩的なエロス表現は、今の時代には逆に新鮮

今回のリブート5作品は、作風も違えば、エロスの形も様々なんですが、『ホワイトリリー』は百合の花弁を舐めたり、陶芸でろくろをまわしている時の濡れた指先でアップで捉えたり。昭和のロマンポルノにも通じる、湿り気のある比喩的なエロス表現が多くて、それが今の時代にはすごく新鮮で艶めかしく感じました。

そうですよね。あの百合のシーンも撮ったときはどんなふうになるのか全然想像できなくて、出来上がった映像を見て、「うわ~、キレイ!」と嬉しくて驚きました。陶芸のシーンを演じているときはちょっとでも気を反らすと粘土が崩れてしまうので、本当につくることに集中していて、だからこそ自然に指先に緊張感が漂っていたのかもしれないですが、そこをこんなふうにアップで切り取られるとこんなにセクシーに見えるんだと未知の色っぽさに気付かされましたね。

©2016日活

©2016日活

そこは日本的な情緒あふれるエロスがお得意な中田監督ならではですね。<はるか>は普段は感情を抑えている役柄なだけに、ラブシーンではそれが一気に解放されるようなカタルシスもあって。豹変する女の情念的な怖さを感じさせる辺りも、さすがの中田ワールドでした。

<はるか>は表面的な言葉や動きは少ないんですが、内側の感情は常に大きく揺れ動いている役だったので、その揺らぎをちゃんと感じてもらえるように心掛けました。完成したものを自分で見ても、何かが起こるんじゃないか?とずっとドキドキしっぱなしで。中田監督のドロドロとした世界観が好きなので、すごく嬉しかったですね。
『ホワイトリリー』は、すごく情念的で怖いけど、同時に<はるか>の心と体の解放の物語でもある。私自身、<はるか>という女性を演じてすごく成長できたし、<はるか>と共に新しい一歩を踏み出せた気がします。

ロマンポルノのヒロインを演じてみて、飛鳥さん自身、なにか感じたことはありますか?

一般映画だと、いわゆる濡れ場は省かれることが多いので、その前と後の感情の繋がりみたいなものも、想像で演じるしかなかったんですが、ラブシーンの前後も自分で実際に演じるので感情が途切れないし、すごくスムーズに演じることができたし、見ていただく方にとっても、リアルでわかりやすいんじゃないかと感じました。
ロマンポルノって、生々しい部分もしっかり描くからこそ、テーマやストーリーもしっかりと伝えられるし、リアルだと思うんです。ひとりの人間の美しい部分も醜い部分も露わに表現されるから、その人の人生をより生々しく感じられる。そういう作品が今だからこそ偏見なく、なんら包み隠すことなく映画という括りで、女性にも届けられるということは素晴らしいと思います。

『ホワイトリリー』は往年のロマンポルノらしい雰囲気が残りつつ、ラブシーンひとつひとつにちゃんと意味があるので、女性から見ても噓っぽくなく、入り込める作品だと思います。実際、女友達からの反響が大きくて、「素晴らしい作品で主演できてよかったね」という反応と、「若いうちに綺麗な映像を残せてよかったね」みたいな反応もあって。いろんな面で本当に演らせていただけてよかったなと感謝しています。

飛鳥凛

1991年3月28日生まれ。大阪府出身。映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。近年の主な出演作は、EX「仮面ライダーW」シリーズ、TBS「劇場霊からの招待状」(15)、EX「警視庁捜査一課9係」(16)、NTV「そして、誰もいなくなった」(16)、舞台「BIOHAZARDTHE STAGE」(15)、「サイコメ;ステージ」(16)、「実は私は」(16)、「SANZ」(16)など

映画『ホワイトリリー』

2017年2月11日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

傷ついた過去を慰めあうように寄り添い生きてきた二人の女。彼女たちの秘密に踏み込んできた男によって、それぞれの愛が暴走をはじめる……。
ロマンポルノの名匠・小沼勝監督の元で助監督として学んだ中田秀夫監督が、初めてのロマンポルノでレズビアンの世界に挑み、歪んだ愛の果てにある女同士の究極の純愛を描く。

監督:中田秀夫
脚本:加藤淳也 三宅隆太
キャスト:飛鳥凛 山口香緖里
町井祥真 西川カナコ 三上市朗 鎌倉太郎  伊藤こうこ 榎本由希 松山 尚子 はやしだみき

企画製作・配給:日活
2016/日本/80分/5.1ch/ビスタ/カラー/デジタル/R18+
©2016日活

オフィシャルサイトhttp://www.nikkatsu-romanporno.com/reboot/whitelily/


中田秀夫監督作品
MONSTERZ モンスターズ
劇場霊
vol.5
vol.6

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