LIVE SHUTTLE  vol. 103

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MISIAライブツアーファイナル!聖地・横浜アリーナに秘めた思い

MISIAライブツアーファイナル!聖地・横浜アリーナに秘めた思い

THE TOUR OF MISIA LOVE BEBOP all roads lead to you
2017.2.4 横浜アリーナ

シングル「つつみ込むように…」でMISIAがデビューした翌年の1999年に、第1回目の“THE TOUR OF MISIA”は行なわれた。

ツアーは通常、ニューアルバムを出した後に行なわれるものだが、当初“THE TOUR OF MISIA”は特定のアルバムを掲げたツアーではなかった。それだけに、アルバムに縛られず自由にセットリストを組むことができるので、MISIAのキラー・コンテンツである「歌を聴かせるパート」あり、MISIAの得意な「ダンサブルなコーナー」あり、バンドによる生演奏あり、コンピュータと同期したデジタル・サウンドあり、彼女の歌と音楽の魅力のすべてを堪能できるツアーとなっている。

今回の“THE TOUR OF MISIA”は5年ぶりで、数えて12回目。今回で“THE TOUR OF MISIA”シリーズは最後になるという。そんな思い入れもあってか、横浜アリーナに詰めかけたオーディエンスは開演前からざわついている。前回の“THE TOUR OF MISIA”以降、「星空のライヴ」や「Candle Night」など、じっくり聴かせるスタイルのライヴが続いていただけに、エネルギッシュに歌い踊るMISIAに対する期待感が、会場に充満している。そしてこの夜は、そんな期待を遥かに上回る一大エンターテイメントが用意されていたのだった。

オープニング・アクトのRYO(Little Black Dress)が、ニューカマーとは思えない堂々たる歌を聴かせた後、いよいよMISIAのライヴの幕が切って落とされる。

ステージの左右に潜んでいた巨大なゴールドのキングコブラのバルーンが、鎌首をもたげて会場を見渡すように立ち上がる。7人のバンドメンバーとDJ、6人の女性ダンサーが勢ぞろいしたところで、MISIAがステージ中央から輝くコスチュームをまとって現われた。

前置きなしの、いきなりド派手なオープニングだ。強烈なリズムと、真っ直ぐなメッセージを持つ「LOVE BEBOP」からライヴがスタートする。MISIAは最初から飛ばす、飛ばす。踊りながら、アリーナの最深部まで、楽々とその歌声を届かせる。切れ味のよいボーカルは、水を得た魚のようだ。待望の“ダンス全開”のMISIAに、オーディエンスは歓びを隠しきれない。その気持ちはMISIAも同じで、「もっと盛り上がれ~!!」と歌の途中でオーディエンスをさらに煽った。 

「LOVE BEBOP」のエンディングで、ステージ中央に陣取ったDJ Ta-Shiのスクラッチ・プレイがピックアップされる。そのとき、サプライズが起こった。スクラッチを決めるDJ Ta-Shiの“首”がガクッと前に落ちたのだ。このショッキングな“イリュージョン”に、オーディエンスは一瞬どよめいた後、大きな拍手を贈る。

エレガントな黒いドレスをまとった女性ダンサーがステージに現われ、MISIAと一緒に思い切りスウィングするグルーヴの「Butterfly Butterfly」に合わせて踊る。彼女たちをアシスタントにして、今度はMISIAがスティックを使ったマジックを披露。立て続けのサプライズに、観客はのっけから大喜びだ。

息つく間もなく、「ESCAPE 2016」。MISIAのヒップホップ・サイドを担うサウンド・プロデューサー“SAKOSHIN”の渾身のトラックが、アリーナを揺さぶる。2000年にリリースされたシングル「ESCAPE」をアップデートしたトラックは、オリジナルの何十倍もパワフルだ。「カモーン、アリーナ! 盛り上がっていくよ~!!」と叫ぶMISIAの気合いもハンパない。しょっぱなから爆発したライヴは、とどまることを知らないように上昇していく。

6曲目の「Change For Good」は、柔らかな16ビートが心地よい。MISIAは余裕を持って歌いながら、ダンサーたちと縦に並んだり横に広がったりして、フォーメーションを組みながら踊ってみせる。ヒップホップ、ラテン、スウィング、ハウスなど、序盤はさながらデジタルを駆使した“グルーヴの見本市”といった様相だ。

「みんな、“THE TOUR OF MISIA”、横浜アリーナにようこそ!」とMISIAが挨拶すると、そのままDJ Ta-Shiのショーが始まった。MISIAが日本一と言ってはばからないスクラッチ・プレイが見事だ。15000人を軽く越えるオーディエンスを、たった一人で相手にできるDJは滅多にいない。2台のターンテーブルを神がかった技で操る様子を、真上から狙うカメラがとらえ、その映像が舞台の左右にあるスクリーンに映し出されると大きな歓声が上がる。

バンドのメンバーも楽器を弾く手を休めて、DJ Ta-Shiのカミワザに聴き入っている。やがてミュージシャンたちがハンドクラップを始めると、オーディエンスもつられてクラップでDJ Ta-Shiの卓越したプレイに応えたのだった。

DJショーが終わると、いったん場内が暗くなる。するとステージセットの真ん中に置かれた大きな顔のオブジェの目が光る。その目の形が、どこか懐かしい。このオブジェの原画を手掛けたのは、90才を越えてもなお活躍している、影絵作家の藤城清治さんだ。MISIAは藤城作品が大好きだという。サウンドも舞台セットも、MISIAというアーティストを中心に組み立てられていて、クオリティの高いのエンターテイメントとして構築されている。

やっとひと息ついたのは、アコースティック・ギターをバックに歌われた「明日はもっと好きになる」だった。それも束の間、続く「真夜中のHIDE&SEEK」では、優雅な16ビートに悠々と乗ったMISIAが、バンドと火の出るようなアドリブ合戦を繰り広げたのだった。

暗転になり、オーディエンスが席に着くと、ピアノの前に座ったMISIAが話し始めた。

「こんばんは、みんな、最高! “THE TOUR OF MISIA”の“聖地”は、ここ、横浜アリーナだと思ってます。ここにはたくさんの思い出があります。仙台から始まった今回のツアーも、やっと聖地までたどり着くことができました。嬉しくって、心が破裂しそうです。次はバラードを歌います」。

MISIAはデビューアルバムに収められていた「キスして抱きしめて」を、自らピアノを弾きながら歌い出す。その素晴らしいこと。続いて弾き語った「流れ星」で、途中から弦一徹率いる4人のストリングスが加わると、場内はしーんと聴き入る。怒涛の盛り上がりの後、動から静への見事な場面転換だ。

映画『シン・ゴジラ』の音楽を担当した鷺巣詩郎が、MISIAに書きおろした傑作「オルフェンズの涙」までを、ストリングスと一緒に歌って、ライヴは終盤へ突入。

オレンジ色のドレスに着替えたMISIAは、今度は心の解放を歌った「FREEDOM」で楽しませてくれる。「もっと楽しもうよ」とMISIA。徹底的に楽しむことで開く心の扉があることを、MISIAはよく知っている。それが“LOVE BEBOP”の精神なのだ。ライヴ本編は、明るく楽しい「Oh Lovely Day」で一度、幕を閉じた。

アンコールでは一転して、再びド派手な世界へ。ステージ中央に設置された台の上に、真っ白なドレス姿のMISIAがいる。ステージの左端と右端の“手のひら”型の台の上にはDrag Queenがいる。合計6人のDrag Queenと、6人のダンサーが入り乱れてのハウス・ミュージックのオン・パレードだ。「INTO THE LIGHT」から始まって、「逢いたくていま」や「忘れない日々」がハウス・バージョンにアレンジされてメドレーで続く。

実は“THE TOUR OF MISIA”には隠れたテーマがある。それは「クラブ・カルチャーを日本に根付かせること」だ。MISIAがデビューした当時、日本ではヒップホップやハウスはまだアンダーグラウンドだった。同じくLGBTやDrag Queenなどの“多様性=ダイバーシティ”もマイノリティだった。それを多くの人に紹介し、共に楽しく生きる世界にしていこうという願いが、“THE TOUR OF MISIA”にこめられている。今やそれらは広く世に知られるようになったが、最終回を迎えた“THE TOUR OF MISIA”でその総集編を見ることができたのは、幸せだった。また、そのテーマをずっと貫いてきたMISIAのアーティスト・スピリットに感動した。そのスピリットを象徴するように、ハウス・メドレーのラストを飾ったのはなんと「Everything」だった。

MISIAが「あなたにスマイル:)」で東日本大震災や熊本・大分にエールを贈った後、ハプニングが起こった。

「すべてはここから始まりました。やっぱり聖地でこれを歌わなくちゃ」とMISIAはセットリストになかった「つつみ込むように…」を歌い始めたから、会場が熱く揺れる。デビュー曲だからこそ、MISIAの歌もバンドの演奏も、第1回目の“THE TOUR OF MISIA”とはケタ違いにスケールが大きくなっていることが実感できる。

ここで気付いたのは、目の前のダンサーたちの踊りが、第1回目のそれを彷彿とさせることだった。今回のツアーではダンサーを一新して若手が起用されているのだが、何と彼女たちはMISIAのダンサーに憧れて踊り始め、MISIAのダンサーを先生として踊りを習ってきたのだという。つまり、クラブ・カルチャーが世代を超えて、見事に受け継がれていたのだ。そんな思いがこみあげたのか、MISIAの声が嬉しさで震えているようにも聴こえたのだった。

「最高だね~! “THE TOUR OF MISIA”はこれでいったん終わります。私はまた、ここ、聖地の横浜アリーナから新しい何かを始めたいと思ってます。そう感じることができたのは、皆さんのお陰です。新しい種を見つけて、育てて、花を咲かせます。そんな歌を最後に歌わせてください」。

そうして歌った「花」は、この日、いちばん美しいエンディングで、“THE TOUR OF MISIA”シリーズの最後を飾ったのだった。

文 / 平山雄一 撮影 /  Masaya Tanaka, Santin Aki

THE TOUR OF MISIA LOVE BEBOP all roads lead to you 横浜アリーナ2/4 セットリスト

01. LOVE BEBOP
02. Butterfly Butterfly
03. Escape
04. BACK BLOCKS
05. Rhythm Reflection
06. Change For Good
07. Catch the Rainbow
08. 明日はもっと好きになる
09. 真夜中のHIDE-AND-SEEK
10.キスして抱きしめて
11. 流れ星
12. 白い季節
13. オルフェンズの涙
14. FREEDOM
15. SUPER RAINBOW
16. Oh Lovely Day
17. INTO THE LIGHT
18. sweetness
19. 逢いたくていま
20. Candle of Life
21. 忘れない日々
22. THE GLORY DAY 
23. Everything 
24. あなたにスマイル:)
25. つつみ込むように…
26. 花

ライブ情報

第33回JTB世界遺産劇場 鹿児島仙巌園世界遺産登録記念Misia Candle Night
3月25日(土)-26日(日) 鹿児島仙巌園野外特設ステージ

MISIA

長崎県出身。その小さな体から発する5オクターブの音域を誇る圧倒的な歌唱力を持ち、「Queen of Soul」と呼ばれる日本を代表する女性歌手。
MISIAの名前の由来にもなった、”ASIAの方々にも音楽を届けたい”との想いの通り、日本国内にとどまらず、その歌声はASIAを越え世界でも賞賛の声を浴びる。1998年のデビュー曲「つつみ込むように・・・」は日本の音楽シーンに強い影響を与え、ジャパニーズR&Bの先駆者と言われる。その後発表された1stアルバム「Mother Father Brother Sister」は新人ながら、300万枚の異例のセールスを記録。
以降、「Everything」「逢いたくていま」等、R&Bというジャンルにとらわれず、バラードの女王の名も確立させた。その実力は日本国内のみならず、アジア強いては世界からも認められる。デビュー18年目を迎えてなお 、年々音楽に対する追求心はとどまることを知らず、世界を舞台に様々な作品を発表。
さらに彼女は2004年に、女性ソロアーティストとして初の5大ドームツアーを成功させた。その4年後には日本をはじめ、台湾・上海・シンガポール・韓国・香港の5都市を含むアジアアリーナツアーを敢行。2009年から2010年にかけて行われたロングツアーを含め累計250万人以上の観客を動員し、日本の音楽シーンに衝撃を与えたといっても過言ではない。
2013年から2014年にかけて行った15周年記念ツアーでは、台湾・香港・アジアを含むMISIA史上初の全77公演を実施。ますます磨きのかかったパフォーマンスを披露し、多くの人々に感動を与えた。デビュー20周年に向け、更なる精力的な活動が期待される。

オフィシャルサイトhttp://www.misia.jp/

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