LIVE SHUTTLE  vol. 105

Report

SEKAI NO OWARIがライブ「タルカス」で実現した前代未聞のステージ

SEKAI NO OWARIがライブ「タルカス」で実現した前代未聞のステージ

SEKAI NO OWARI ドーム・スタジアムツアー2017「タルカス」
2017.1.23 さいたまスーパーアリーナ

「SEKAI NO OWARI ドーム・スタジアムツアー2017『タルカス』」、さいたまスーパーアリーナ(スタジアムモード)公演。セカオワのキャリアを代表する名曲たちをファンタジックな物語と生々しくリンクさせ、本質的なメッセージを深く刻み込みながら、ライブ全体をポップなエンターテインメントして成立させる。日本のアーティストとしては前代未聞と言っていい壮大な演出、舞台美術、ステージ構成を含め、まさに圧巻としか言いようがないライブだった。

会場に入った瞬間、アリーナ中央に置かれた巨大な木が目に入る。2013年の野外ライブ「炎と森のカーニバル」(富士急ハイランド)以来、セカオワのライブにとって“木”は重要なモチーフとなっているが、ここまで巨大な木は初めてだ。SEは風で木々が触れ合う音と鳥の鳴き声。スタッフは民族衣装風のコスチュームに身を包んでいる。

ライブのスタートを告げたのは、ストリングス、ホーンセクションなどを交えたオーケストラ。穏やかでクラシカルなサウンドが奏でられるなか、森の仲間であるオランウータンのウンババ、鳥のグリモン、象のラグーン、鹿のチャッキーが「タルカス」のストーリーを語り始まる。4つのキャラクターは映像ではなく、精巧に作られた動くオブジェ。木を取り囲むように置かれたウンババ、グリモン、ラグーン、チャッキーが身体を動かしながら会話を交わす光景は、まるでテーマパークのようだ。

物語の舞台は、とある王国。王様が国民を慕い、国民も王様を尊敬している平和な国で、タルカスは妻と娘とともに幸せに暮らしていた。ところがある夜、その国を凄まじい嵐が襲い、娘は倒れてきた壁の下敷きになってしまう——。

ここでオーケストラがオープニングの楽曲を奏でると、巨大な木の下の部分が左右に開き、SEKAI NO OWARIのメンバーが登場。4人はそれぞれ円形ステージの四方に分かれ、最初のナンバー「炎と森のカーニバル」を放つ。さらにNakajinのギター・アルペジオ、Saoriのシャープなピアノのフレーズに導かれた「Death Disco」へ。赤と青のライトが巨木に照射され、妖しい雰囲気が生まれる。そして「虹色の戦争」でライブは最初のピークを迎える。Fukaseの「歌える?」という言葉に対して、満員のオーディエンスが「青色の空に神様がきて願いを1つ叶えるなら/花や虫は何を願うのだろう」というフレーズを合唱。切実で普遍的なメッセージが共有される、美しい瞬間が生まれる。

ライブは“森の住人たちが語るストーリー”と“SEKAI NO OWARIのライブ”が交互に繰り返されながら進行する。災害に遭い、娘が壁の下敷きになってしまったタルカス。「王様の命令で兵隊さんが助けにきてくれるからね」と娘を励まし続けるが、3日後、ついに助けは来ず、娘は息絶えてしまう——。

シリアスな物語を受けてセカオワ(メンバーは時計周りに90度移動)が演奏したのは、「死の魔法」。「愛も憎悪も全てこんなに僕は好きなのに/どうして死んでしまうの?」という歌詞がタルカスの物語と深く重なり、豊かな感動が押し寄せてくる。祭囃子とEDMを融合させた「ムーンライトステーション」では、Nakajinが三味線、Saoriが大正琴を演奏。日本的な情緒とエッジ—なダンスビートが同時に響き渡り、オーディエンスの心と体を揺らす。SaoriのピアノとFukaseのボーカルから始まった「青い太陽」も絶品。深みのあるリズム、卓越した演奏センスと美しいコーラス、「世界の終わりに青い星が降る」というラインがもたらす豊かなビジョン。初期の代表曲として知られるこの曲は、いまも確実に進化を続けているようだ。

そして再び物語の世界へ。娘を失ってしまったタルカスは、兵隊がどうして助けにこなかったかを知るために城に向かう。城には大切な人を失った人たちが押し寄せていた。どうやら王様は災害におびえてしまい、兵隊に命令できなかったらしい。しかも国民の前に姿を現した王様は、眠そうな顔をしていた——。
続いてセカオワが演奏したのは、悲哀を感じさせるストリングス、憂いを帯びたピアノを中心にした「Never Ending World」。“終わりは悲しい。だけど僕たちは手を繋ごう”というメッセージが観客ひとりひとりの心にまっすぐに届いているのが手に取るようにわかる。ステージセット、コンセプトを含め、規格外のスケールを備えている今回のツアーだが“曲と言葉を丁寧に伝える”という軸はまったくブレていない。

NakajinとFukaseがメインボーカルを分け合う「マーメイドラプソディー」、ビッグバンド・ジャズのテイストを取り入れたサウンド、炎を使ったステージングが印象的だった「Monsoon Night」の後、物語の続きが語られる。「この一大事に王様は昼過ぎまで寝ていたのか」という声をきっかけに国民の不安は爆発、タルカスも怒りの声を上げる。さらに暴動は激しくなり、ついに王様は処刑されることに——。ここでライブ前半は終了。15分の休憩を挟み、ライブは後半へ。

ライブ後半の冒頭、タルカスの物語は大きく転換する。オランウータンのウンババの「さあ、ここからはサリー、君の知る物語“タルカス”を伝えてやってほしい!」という言葉とともに客席上方から巨大なクジラが姿を見せ、宙をゆったりと泳ぎはじめる。客席からどよめきにも似た歓声が上がるなかサリーは、違う視点からタルカスの物語を語りはじめる——。ここでセカオワが登場し、後半最初のナンバー「眠り姫」を披露。生のストリングスとFukaseのドラマティックなメロディ、4つ打ちのビートが美しく絡み合い、心地よい音楽世界が生まれる。続いては「Love the warz -rearranged-」。迫力あるホーンセクション、切ない情感を生み出すストリングス、生々しいバンドグルーヴが有機的に溶け合い、Fukaseのボーカルの熱量もさらにアップ。演出だけではなく、彼らの音楽の質そのものが大きく向上していることがはっきりと伝わってくる。

シングル「Hey Ho」に収録されたエレクトロ・テイストのナンバー「Error」を挟み、再びサリーがタルカスの物語を続ける。嵐が来たときに王様は、迷いのなかにいた。すぐにでも救出しにいきたい。だが、兵隊たちが死んでしまったら、その後の救出活動がさらに困難になる。寝ないで考え込んだ王様は「雨が止んだら、子供たちが多くいる場所から助けにいこう」と決意する——。

王様の視点から語られた物語を受けて披露されたのは、「天使と悪魔」。「僕らはいつも『答』で戦うけど/2つあって初めて『答』なんだよ」。いままでに何度も聴いてたはずのこのフレーズが、より深く、より強い意味を持って迫ってくる。

さらに物語は続く。王様は眠ることもなく、ひとりでも多くの国民を救出するための方法を考え続ける。しかし、朝になってみると被害は予想以上に大きいことがわかり、救助は思うように進まない。そんなとき、怒り狂った国民が城の前に集まる。国王は外に出るが、その顔は疲れ切っていった。国王の訴えは国民の怒りの声にかき消され、それは革命へとつながってしまう。ギロチン台に首を乗せた時、王様は悔しさのあまり涙を流す——

するとステ—ジは白いライトで包み込まれ、クラシカルなSaoriのピアノとともにFukaseが英語詞のナンバー「SOS」を歌い始める。「“SOS”に答えることは“自分は何の為に生きているんだろう?”という疑問に答えることなんだ」というメッセージを讃美歌のような美しさを持つメロディとともに描き出すこの曲は、今回のツアーの大きなハイライトだと思う。スパニッシュのスタイルを取り入れたNakajinのギターも本当に素晴らしい。

そして最新シングル「Hey Ho」が放たれる。アイリッシュ、カントリーの風味を感じさせるサウンドメイク、大らかな解放感を帯びたメロディラインに合わせ、すべてのオーディエンスが楽しそうに身体を揺らし、声を発する。国境と時代を気持ちよく超えていくこの曲は、既にセカオワのライブ・アンセムとして成立していた。Nakajinと肩を組みながら「歌おう!」と語りかけるFukaseも本当に楽しそうだ。

そして物語はエンディングを迎える。王様が処刑されたとき、タルカスが悔しさのあまり涙を流し、それをきっかけに国民全員が泣きはじめた。そのドラゴンの声のような人々の泣き声が響き渡った夜は、後に“竜夜と呼ばれ、どんな争いも一度休戦して、敵も味方も楽しくお祭りをする日となった——。

最後に演奏されたのはもちろん「Dragon Night」。「ドラゴンナイト 今宵、僕たちは友達のように歌うだろう」という大合唱が響き渡り、会場全体が祝祭のムードに包まれる。タルカスの物語を共有し、その一部になったオーディエンスが「Dragon Night」の華やかなビートとともに歓喜の声を上げる。それは今回のツアーの豊かなエンターテインメント性を強く証明していたと思う。

「Dragon Night」のメロディをオーケストラが奏でるなか、メンバー4人は木のなかに戻っていき、本編は終了。すぐさま「スターライトパレード」の大合唱が起こり、グリモンの「みなさんのアンコールの声が森の奥にも届いてきたよー!」の声を合図に再びメンバーが登場。大ヒット曲「RPG」によって圧倒的な一体感が生み出される。

ここで、この日初めてのMC。

Nakajin「アンコールありがとう! “タルカス”どうですか? 楽しんでますか? 新しいことづくめだからね」
DJ LOVE「NakajinとFukaseは動けるけどさ、僕とSaoriさんは動けないからね」
Fukase「そうだね(笑)。“タルカス”はもともと、絵本を描こうと思って作った話で。絵本がぜんぜん間に合わなくて、ライブが追い抜いちゃって」
Saori「今回は14人の音楽隊のみなさんが一緒に演奏してくれてます。その他にも1000人以上のスタッフが参加してくれているので、私たちの仲間にもぜひ拍手をください!」

最後は「インスタントラジオ」。疾走感のあるバンドサウンドとともにオーディエンスが全力で盛り上がり、ライブは終了した。SEKAI NO OWARIの楽曲のなかにある深遠なメッセージ性を“タルカス”という新たな物語とリンクさせた「SEKAI NO OWARI ドーム・スタジアムツアー2017 『タルカス』」。セカオワのエンターテインメントが信じられないほどの進化を遂げたことを示す、きわめて意義深いツアーだったと思う。

文 / 森朋之 撮影 / 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

SEKAI NO OWARI ドーム・スタジアムツアー2017「タルカス」
2017.1.23 (月) 埼玉県・さいたまスーパーアリーナ (スタジアムモード)セットリスト

01. 炎と森のカーニバル
02. Death Disco
03. 虹色の戦争
04. 死の魔法
05. ムーンライトステーション
06. 青い太陽
07. Never Ending World
08. マーメイドラプソディー
09. Monsoon Night
<休憩>
10. 眠り姫
11. Love the warz -rearranged-
12. Error
13. 天使と悪魔
14. SOS
15. Hey Ho
16. Dragon Night
<ENCORE>
01. RPG
02. インスタントラジオ

SEKAI NO OWARI

Fukase、Nakajin、Saori、DJ LOVE。2010年4月、1stアルバム「EARTH」をリリース後、2011年8月に「INORI」でメジャーデビュー。
2014年、全国9箇所15公演20万人動員の全国アリーナツアーを完遂。また、同年8月には、初の映画作品「TOKYO FANTASY」の公開。10月には、富士急ハイランドにて、「TOKYO FANTASY」と名付けた、6万人規模の野外ワンマンライブの開催。
圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感、テーマパークの様な世界観溢れるライブ演出で、子供から大人まで幅広いリスナーにアプローチ、「セカオワ現象」とも呼ばれる加速度的なスピード感で認知を拡大した。
2015年7月18日、19日には日本最大規模の会場日産スタジアムにて、「Twilight City」と銘打った14万人動員のライブを行ない、2016年、11箇所25公演25万人動員のツアー「The Dinner」を完遂。同年10月新曲「Hey Ho」をリリース。

オフィシャルサイトhttps://sekainoowari.jp/

この記事の写真一覧
vol.104
vol.105
vol.106