Interview

スキマスイッチが挑んだ「コラボでの化学反応」と「ルーティーンの破壊」で開いた新しい扉

スキマスイッチが挑んだ「コラボでの化学反応」と「ルーティーンの破壊」で開いた新しい扉

スキマスイッチのニューアルバム『re:Action』はワクワクするアルバムだ。セルフプロデュースにこだわってきた2人が、既に発表されている代表曲にプロデューサーを立てて新たな楽曲として生まれ変わらせた。そのプロデューサーたるやスキマスイッチに影響を与えてきたであろう大物アーティストから、彼らが今気になるアーティストと、幅広いラインナップになった。そのコラボレーションから生まれた楽曲に新たに大橋が歌を入れ直し、全く新しい楽曲として楽しむことができる作品となった。
今回、大橋卓弥、常田真太郎の2人のこのアルバム制作に至る経緯から楽曲について取材を行った。非常に刺激的だった制作現場だったからこそ、傑作が産まれたのは必然だったと感じた。

取材・文 / 田中隆信 撮影 / 荻原大志


ルーティーンを一回壊した上で、次のオリジナルに還元

ニューアルバム『re:Action』は12組のアーティストがプロデュースをする作品ですが、こういった内容のアルバムを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

常田真太郎 デビューしてからは、シングルをリリースして、アルバムを作って、ツアーをするというルーティーンがあって、2008年以外はそういう流れで活動してきました。でも、いろいろと違うこともやっていきたいなと思って、2015年の春ぐらいに卓弥とディスカッションしたんです。やってみたいことがいろいろ出てきた時期でもあったので。その時の話し合いで出てきたのが、一つは“アルバムを引っさげないツアー”だったんです。それは2016年に「POPMAN’S CARNIVAL」というツアーを行って実現することができました。もう一つ“リアレンジをやっていく”という案も挙がったので、「じゃあ、このあたりで他の人にお願いする企画もやってみてはどうだろう?」と。

デビューの時からずっとセルフプロデュースにこだわってきたスキマスイッチとしてはかなり大きな決断ですね。

大橋卓弥 そうですね。自分たちの楽曲を自分たちでずっと作り続けてきて、試行錯誤を繰り返しながらスキマスイッチのカラーも作ってきたと思っています。でも、「制作を行う中で、もしここで自分たち以外の人が意見を言ったらどう変化するんだろう? どんな化学変化が起こるんだろう?」という思いがずっと頭の中にあったんです。かと言って、次のオリジナルアルバムを作るプロジェクトから「プロデューサーに入ってもらって3人で作りましょう」というのはやっぱり違うなって。だったら、企画的なものとして面白いものが出来たとしたら、ずっと持っていたその思いを消化できると言ったら変ですけど、ルーティーンを一回壊した上で、次のオリジナルに還元できるんじゃないかと思ったんです。

それで新曲ではなく、既発曲を新たにプロデュースしてもらうことにしたわけですか。

常田 はい。2015年の夏頃からオファーを始めて、年末には録り始めてました。今回、錚々たる方々に受けていただいたんですが、お願いして終わりではないというのが難しいところでしたね。リミックスやトリビュートではなく、今のスキマスイッチとして参加させていただいて、大橋卓弥がボーカルを入れるというのがコンセプトなので、スケジューリングとか、結構大変でした。

左:常田真太郎 右:大橋卓弥

小田和正さん、KANさん、奥田民生さんといった先輩アーティストから、SPECIAL OTHERSや澤野弘之さんなどの同世代のアーティスト、さらにはベニー・シングスまで。参加アーティストのジャンルも年齢層も幅広いんですが、どのようにオファーをしていったんですか?

大橋 人選に関してはシンタくんと二人で話し合って、オファーしたいアーティストのリストを作ってスタッフに渡して連絡を取ってもらいました。学生の頃から聴いていた憧れのアーティストだけだと先輩方ばかりになってしまうので、同世代のアーティストなど、バランスを考えたりしましたね。

常田 皆さん、快諾していただいてありがたいです。一緒に制作していく中で、受けていだたいだ方々もこの企画を面白がってくれてるのが伝わってきましたし、この方たちで良かったなって。完成が近づいてきた時は、「あぁ、このプロジェクト、終わっちゃうな」って寂しい気持ちにもなりました(笑)。

プロデュースしてもらう曲は相手に選んでもらったんですか? それともお二人から提案を?

常田 こちらから「この曲でお願いします」という感じで提案させてもらいました。曲の提案と「今回のアルバムでこういうことをやりたいんです」という趣旨説明をどうしても自分たちの口から伝えたいと思ったので、オファーしてOKをもらった後に顔合わせの時間をいただいて会いにいきました。そんなふうに始まったんですけど、デモが上がってくるのが楽しみでしょうがないって感じでしたね。例えば、奥田民生さんから届いたデモを聴くと、民生さんが「全力少年」を歌ってくれてるわけですよ。それだけで感動しましたし、他の方からのデモが届くたびに二人で「うわぁ、すごいなぁ!」「やっぱりすごいな!」っていう感動の連続でした。

最初に取り掛かった曲は?

常田 田島貴男さんとの「僕と傘と日曜日」でした。

大橋 「僕らが詞と曲を書いた楽曲を○○さんだったらどう料理してくれますか?」というのが今回の基本コンセプトなんです。もちろんリリースした楽曲なので、一つの形を答えとして一度出してるんですけど、それを全部取っ払って構いません、と。「ここのメロディーはこんな感じがいい」とか「歌詞のここはこう変えたい」とかも有り。要は完全にプロデューサー目線でやってくださいと丸投げしたんです。シンタくんが普段はピアノを弾いてますけど、今回のアレンジではシンタくんのピアノが必要ないってことであれば弾かないというスタイルも有りですと伝えました。ただ、「歌は今の僕らの作品にするために必要なので歌い直したいです」と伝えて、ボーカルのディレクションも含めてお願いしました。

常田 上がってきたアレンジに対して僕らが何かを言うことはなく、基本、受け入れていくという姿勢でした。まな板の上の鯉のように(笑)。

大橋 田島さんの場合、原曲よりもテンポが上がっていたので、デモをもらった時に「これ、歌えるかな?」って思ったんです。田島さんもそこは気を使ってくれて、「もし速くて歌えなかったら言ってね」って。それでチャレンジしたんですけど、やっぱり言葉数が多いので、そのテンポでは歌えなくて、相談してテンポを2つ落として歌いました。それでもギリギリで難しかったですね。

小田和正がプロデュースした『クリスマスの約束』で作った楽曲「君のとなり」

スキマスイッチの既発曲をプロデュースしてもらってますが、小田和正さんとKANさんは違いますね。小田さんは『クリスマスの約束』で作った楽曲を「君のとなり」に。

常田 最初は他の方と同じように、小田さんにも僕らの曲の何かをやっていただこうと思ってたんです。でも、小田さんから「せっかくの機会だから別のことやらない?」ってアイデアをいただきました。その時「あ、そんな方法もあったのか」って思って、小田さんプロデュースで「君のとなり」をレコーディングさせてもらうことにしたんです。元の曲がありましたし、そこからかけ離れたものにはなっていないので、こういう機会に形にすることができたのは本当に嬉しいです。

大橋 当時、どういう分け方だったか忘れましたけど、とにかく半分ずつ作ろうみたいな感じで始めました。小田さんと僕らで持ち寄った曲を再構築して仕上げていくというやり方で。小田さんは、思いついた瞬間に「これはどうだ?」って変化していくんです。歌詞に関してもメロディーに関しても、完成する数秒前までずっと向き合っている感じなんです。「もっとこうできるんじゃないか」って。なので、今回も、歌を録る時はギリギリまで何が起こるかわからないという気持ちでいようと思って、事前にイメージを固めたりせずにレコーディングに臨みました。それで当日、「どんな感じで歌うのがいいですかね?」と小田さんに訊いたら、「そんなに大きな声で叫ぶ歌じゃないな」って。他にも「そんなにビブラートをかけないほうがいい」とか、細かくディレクションしてくれました。

この曲は、松たか子さんがコーラスで参加してますが。

常田 これも小田さんのアイデアなんです。僕らがスタジオに行ったら、「今日、松さんが来るから」って。

大橋 ビックリしました(笑)。ちょうど舞台をされてる時期で、「今近くにいるみたいだけど、来れないかな?」って感じでお願いしてくれたらしいんです。快く引き受けて頂いて、舞台終わりでレコーディングに参加してもらいました。

そしてKANさんですが、「回奏パズル」という曲をプロデュースされていますね。最初、参加アーティストと曲目が発表された時、「こんな曲あったかな?」って一瞬考えてしまいました。

常田 なんかありそうなタイトルですからね(笑)。

大橋 他のアーティストさんには「僕らの曲、どれでもいいです」って言い方はちょっと乱暴というか無責任だと思ったので、「こんな曲はいかがですか?」とこちらから提案させてもらって、「大丈夫ですよ」って言ってもらえたら決定という感じで進めていったんですけど、KANさんの場合だけ違いました。KANさんは僕らの曲をたくさん聴いてもらっていたので、最初はKANさんに選んでもらおうと思ったんです。そうしたらKANさんが、「今回、僕はムーンライト(「ムーンライトで行こう」)をやりたいから、キープしといて」って言われて。KANさんは以前からこの曲が好きだって言ってくれてたんですよ。それで「あ、わかりました。でも、その曲はアルバム曲で、すごく隠れた…、隠れた名曲だと思ってますけど……、キープしなくても誰も取らないと思いますよ」ってその曲をキープしておいたわけですけど(笑)、その後でシンタくんと二人で話をしたんです。僕とシンタくんの共通認識として「KANさんってエンターテイメントの最終形態みたいな人」というのがあったので、そんな人にはちょっと違った面白いことをやってもらいたいねって。それで思いついたのが、KANさんはライブのアンコールで「今日のダイジェスト」って1曲目から順番にメドレーで演奏するんです。それが僕らもKANさんのライブを観にいく時の楽しみにもなっていて、だったら今までの僕たちの作品全部を使って、それを素材として使ってもらって新曲を一つ作ってもらうのはどうかな?って。

常田 それが「回奏パズル」なんです。使った曲は20曲以上。そのフレーズや断片を組み合わせて作ってもらいました。

聴いていくと馴染みのあるフレーズが次々と登場して、すごく楽しい曲だと思いました。でも、歌うのはかなり難しそうですね。自分たちが作った歌のフレーズが集まっているので、言葉の流れでついつい元の歌詞を歌ってしまいそうな気がするんですが。

大橋 そうなんですよ。それはKANさんにも事前に言われました。デモを送ってもらった時に「すごくいいものができましたよ。ただ、この歌を歌ってる次の瞬間には別の曲を口ずさむことになるから、いつもの口で歌うとその曲をそのまま歌いそうになると思う。なので、まずは歌詞を読み解いてもらって、新しい曲として覚えてください」と。ツアーまでにしっかりと頭に叩き込んでおかないといけないなって思ってます。

発表から13年経った「奏(かなで)」

12組のアーティストにプロデュースしてもらった12曲の他に、自分たちがリプロデュースした「奏(かなで)」が収録されていますが、今回新たにレコーディングするにあたって、どんなふうにしようと思いましたか?

常田 「奏(かなで)」に関しては、スキマスイッチが作った「奏(かなで)」をライブアレンジ含めて、今までいろいろやってきました。それらを全部考えた上で何ができるのかな?って考えましたね。最初は全然違うふうに作ってみたんです。でも、全然しっくりこなくて(笑)。やっぱりイントロはあれだなって。映画『一週間フレンズ』で主題歌に使ってもらえるという大きなきっかけもありましたし、13年前の「奏(かなで)」に対して、2017年の「奏(かなで)」というのを強く考えて、新しいものを見せることができたら面白いなって思いながら作りました。

大橋 このアルバムに入っているのは映画バージョンとも違ってるんですよ。

常田 うん。そうなんです。特に前半の部分は違いますし、テンポも違っているので、原曲と映画バージョンとこのバージョンをトライアングルとして見せられたら面白いなって。

アレンジをいろいろ試したみたいですが、歌はどうでしたか? これまでライブでもたくさん歌ってきた曲ですけどライブアルバムとは違って、スタジオ録音として新たに作品となるので、今のスキマスイッチが歌にも表れているとは思うんですが。

大橋 そうですね。「奏(かなで)」はライブで毎回ぐらい歌ってますけど、未だに正解が掴みきれてないというか、「これが正解だ!」って言えるものが見つかってないんです。自分で作った曲ですけど、その時その時で自分たちでも違って聞こえる曲なので。僕らの代表曲って言ってもらえることも多いですし、シンタくんがあのイントロを弾いて僕が歌い出せば「あの『奏(かなで)』だ」って思ってくれるかもしれないんですけど、僕の中では歌い出す瞬間まで何が起こるかわからないというか、歌い始めて「あ、今日はこうなったんだ」って思う不思議なところがこの曲にはあるんです。

以前にも「自分の曲は完成形が見えないので、人の曲をカラオケで歌う方が自分はうまく歌える」って言ってましたよね。

大橋 それは絶対にそうですね。僕が自分で一番好きなのは、カラオケでミスチル(Mr.Children)を歌ってる時の歌ですから(笑)。

去年の11月に豊洲PITで行った全曲カバーライブもすごく楽しそうに歌ってたのが印象的でした。

常田 あぁ、やっぱりわかっちゃいましたか(笑)。

大橋 カバーライブは楽しかったし、うまく歌えたと思います(笑)。まぁでも、この「奏(かなで)」もまだ完成形ではありませんが、今のスキマスイッチの「奏(かなで)」になったと思いますので、シンタくんが言ったように原曲、映画バージョンと聴き比べたりして楽しんでもらえたらいいなと思っています。

対バン形式での初のツアーが決定

さて、リリースの後には4月からツアーも行われます。どんなツアーになりそうですか?

大橋 今回のツアーに関しては、どんなのになるのかわからないです(笑)。

常田 セットリストからいつもとは違った感じになると思いますし、ジョイントライブ(ゲストを迎えての対バン形式)という形にさせてもらいましたので、ツアーのタイトルも『re:Action』なので、アルバム同様、ライブでも何か化学変化みたいなものが起こるんじゃないかと思いますし、僕らのリアクション、お客さんのリアクションも含めて、今までとは違った新しいツアーになるんじゃないかと楽しみにしています。「こんな感じになるんだろうな」ってファンの人たちが予想してることをいい意味で裏切っていきたいと思ってます。

アルバム『re:Action』だけでなく、1月にマイナビ転職のCM曲「さよならエスケープ」を配信リリースしたり、3月にはAnlyさんと一緒にリリースする「この闇を照らす光のむこうに」(ドラマ「視覚探偵 日暮旅人」エンディングテーマ)があったり、2017年に入ってから一気に動き出した感じですね。

常田 そうですね。去年は「POPMAN’S CANIVAL」ツアーだったり、全曲カバーライブだったり、ライブで新しいことに挑戦できた年になりました。一見すると、アウトプットしている感じに思われるかもしれませんが、新発見があったという意味ではインプットだったと思うので、今年はそれらが強く出て行くんじゃないかなって。

リアレンジした楽曲で構成される『re:Action』が2月にリリースされると聴いた時、「今はこういうモードだから、新曲は春以降、初夏あたりかな」と勝手に思っていました。

常田 きっと「新曲も作ってたんかい!?」って感じですよね(笑)。

大橋 CM曲やドラマ主題歌のコラボとか、すごくいい機会をいただいたのもあって、まさに一気に動き出してる感じです。

常田 まだまだ今年はいろんなことがある、かもしれないので(笑)、楽しみにしててください。


ライブ情報

スキマスイッチ初の全国対バンツアー決定!
スキマスイッチTOUR 2017“re:Action”
4/30(日)名古屋国際会議場センチュリーホール TRICERATOPS
5/16(火)高松festhalle  ORIGINAL LOVE
5/17(水)高知県立県民文化ホール オレンジホール フラワーカンパニーズ
5/23(火)オリックス劇場 KAN
5/30(火)中野サンプラザ フラワーカンパニーズ
6/12(月)東京エレクトロンホール宮城 RHYMESTER
6/20(火)Zepp DiverCity  澤野弘之
6/22(木)新潟LOTS  RHYMESTER
6/29(木)ニトリ文化ホール KAN
7/4(火)福岡サンパレスホール GRAPEVINE
7/5(水)福岡サンパレスホール 奥田民生
7/14(金)広島文化学園HBGホール 真心ブラザーズ
7/18(火)Zepp Nagoya  SPECIAL OTHERS

スキマスイッチ

大橋卓弥、常田真太郎のソングライター2人からなるユニット。1999年結成、2003年メジャーデビュー。大橋の温かく包み込むような唯一無二の歌声、それを支える常田の卓越したサウンドクリエイトで「奏(かなで)」「全力少年」などヒット曲を次々に生み出し、幅広い世代のリスナーから支持を得る。2013年7月9日にはデビュー満10周年を迎え、リリースした初のオールタイム・ベストアルバム『POPMAN’S WORLD~All Time Best 2003-2013~』がロングヒットを記録。2016年4月にはベスト盤と対をなす、アナザー・ベストアルバム『POPMAN’S ANOTHER WORLD』をリリース。同作を携えた新コンセプトの全国ツアー『POPMAN’S CARNIVAL』を大成功におさめる。10月には同ツアーの模様をおさめたライブ・アルバム、11月には映像作品がリリースされた。また、映像作品と同日、奥田民生プロデュースによるニュー・シングル「全力少年 produced by 奥田民生」をリリースし話題となる。2017年1月16日、「マイナビ転職」CMソングに起用されている新曲「さよならエスケープ」を着うた配信リリース。2月には音楽シーンを代表する12組のアーティストをプロデューサーに迎え制作された、リアレンジ・リプロデュースアルバム「re:Action」のリリースが決定。
オフィシャルサイトhttp://www.office-augusta.com/sukimaswitch/