シミルボンの本棚  vol. 12

Interview

早大漫画研究会幹事長が推す漫画はやっぱりスゴかった!(後編)

早大漫画研究会幹事長が推す漫画はやっぱりスゴかった!(後編)

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早大漫研メンバー、時代とともに変わる?

作品の話になると話が尽きないようにみえる3人。しかし早大漫研のメンバーみながこうした「語りたがり」というわけではないよう。歴史ある早大漫研を構成する人たちも時代によって徐々に変わりつつあるというのだ。そしていろいろなオタクが集まることによる、コミュニケーションの難しさも。しかしその中でも、おすすめ漫画の紹介や貸し借りを通じた読書人の育成が進んでいる。

早大漫研メンバーの一推し漫画たち

早大漫研メンバーの一推し漫画たち

早大漫研のブログによると、現在のメンバーは80人程度で男女比が約1対2とのことですが、漫画を「読む人」が多いですか?それとも「描く人」?

犬飼 基本的にはなんでもOK。オタクならばライトからガチオタでも、描いても描かなくてもOKです。オタクサークル入りたい人がほんのりと集まってきて、結構最近大人数になっている感じはあります。

一番驚いたのが、人数比で女性のほうが多いこと。「若い人、変わったね」と実感したのですけれども。

犬飼 オタクのイメージというと「男」「シャツを着ている」「眼鏡」みたいな感じのイメージがありますけども。最近のオタクはそんな感じでもない気がしますね。

ところでみなさんは、どこで新しく読みたい作品を見つけていますか。部室にもたくさん漫画がありそうですよね?

犬飼 僕はわりと、タイトルに惹かれることが多くて、タイトル買いします。表紙買いもします。

向山 僕はタイトル買い、全然しないですね。表紙買いもしないです。僕、絶対一回読んでからじゃないと買うのが嫌なんですよ。

犬飼 マジで?まあ、確かに新品で買うときは600円払ってつまんないと少しがっかりする。ブックオフなら100円か高くても350円だから、表紙買いしてもいいかなっていう感じで、俺は買っちゃうけど。

向山 最近は漫研でみんなから「これいいよ」ってお薦めされたのを読みます。人によって好きな漫画にも個性があるんで、それが新鮮で。自分の読む作品の幅が広がった気がします。

犬飼 僕もそうですね。僕の上の代には「一体、何冊読んでんだよ?」っていう人たちが結構いて。そういう人たちと知り合ったから「俺もこれ読もう」と思うことが多かった。高校までは、知り合いの中で「俺が一番漫画詳しい」って思ってたんですけど、大学入ったら全然そんなことないわ、って。僕より漫画に詳しい人と知り合えたっていうのが、漫研に入ってよかったと思う理由ですね。

向山 僕も同じく。

織笠 僕はなんだろう。「2ちゃんまとめ」かな。

向山 まじか。

犬飼 僕も2ちゃんまとめの「おもしろいマンガあげるスレ」とか見ます。

織笠 スレに挙がる作品が知らないのばかりだと「知らねー!くやしー!」みたいな。逆に知っているのばっかりだと、「カスいな~、にわかだな~」って。あとはTwitterのオタクがつぶやいているやつはチェックします。「にゃるら」っていう人が参考になりますね。信頼の置けるオタクをフォローしているといい情報が仕入れられます。

向山犬飼 それはありますね。

織笠 僕は前幹事長や前々幹事長よりも入部が遅いんで、「オタクパンチ」(注2)をしてくれる先輩がみんな卒業していた。だから積極的に情報を得ていかないとだめ。受動的な状態でも漫画を与えてくれる環境が漫研にはあったんだなと思うとうらやましく思いますね。

(注2)一方的にオタクの知識や情報を提供すること。オタクは好きなことを話すとき、高速で大量に伝えようとするため聞いているほうはあたかもパンチを受けているような気になるため、とみられる。

今度は織笠さんが「オタクパンチ」をする側ですね。

織笠 僕の場合、ちょっと殴りが強すぎるみたいで、セーブしろってすぐ怒られます。

犬飼 「こういうマンガもあるよ」でなくて「おまえこれ読んでないの、ダサ」みたいな上からの発言をするから。「なんかこいつうぜえな」っていう扱いされるんだよ。

織笠 そうなんですよ。

犬飼 最近の漫研、ちょっとライト層が増えちゃって。例えば「週刊少年ジャンプ」で連載中の『ハイキュー!!』が好きとか。『ハイキュー!!』ってジャンプ買っていれば誰でも読んでいるんだから、わざわざ漫研こなくてもよくない?ってたまに思うんですよね。もっと漫画を読んでから漫研おいで、とたまに思うこともある。ただ、本当に面白いものは誰が読んでも面白い。読んだことがない人に、きちんとコミュニケーションをとりながら「これいいよ」って薦めると、読んでハマっていく人もいますね。


ハイキュー!!

ハイキュー!!

古舘 春一
集英社


これからの漫研に期待するものは?

犬飼 僕が入ったときは先輩たちがみんな斜に構えたオタクだったんです。アニメとかに対しても「ああ、おもしろかった」ぐらいのテンションで冷静に話していた。世間一般的な痛い感じのオタク、つまりテンションが高くて、「あああのアニメみた、めっちゃおもしろい!!!!」「なになにかわいい!!!!」ってギャーギャー騒ぐオタクが僕は苦手で。漫研に代々受け継がれている斜に構えたオタクが復活してほしいですね。

「ワクワク感」「人類補完計画」「非日常」・・・読書人が読書に求めることは?

最後に聞いたのは「彼らにとって読書とは何か」という大きなテーマ。頭を悩ませながらひねり出してくれたそれぞれの答えは、読書の本質をついていた。

「読書とは」を書いてもらうことに。なかなか苦戦?

「読書とは」を書いてもらうことに。なかなか苦戦?

まず、犬飼さん。犬飼さんにとっての「ワクワク」とは?

犬飼 具体的にどう表現すればいいのかわからなくて「ワクワク感」っていう言葉を使ってみました。僕、あまり日常漫画は好きじゃなくて。次が読みたくなるようなものが好きなんですよね。だから漫画だけでなくアニメやドラマも、次の週への“引き”が一番大切だと思っています。最後の引きで「あっ」と思って来週まで展開を想像するのが楽しい。読んでいる時も楽しいけど、読み終わった後に次を待つのも好きなんです。次の単行本を読みたいから、それまでは生きようとか、そういうエネルギーってあると思うんですよね。

織笠さんはどうですか?

織笠 今のところ、真の意味で人が考えている何かを、知ることができて、つながった気になれるものは読書しかないんじゃないかなと思っています。漫画なら描いている作者の、これを描こうっていう意欲だけは真実。読者は作品を通じて描いている人の頭の中を覗き、人の考えている真実を知ることができる。それはつまり人とつながれるということなんじゃないかと。で、人とつながるっていう意味でいうと、やっぱり「人類補完計画」(注3)かなと。アニメ版及び旧劇場版といわれる方の「人類補完計画」なのですが、作中では人間存在を形作る枠としてのA.T.フィールドがなくなり、人類は皆、エヴァンゲリオンの世界の生命の源であるLCLに還元され、それをリリス(キャラクターのひとり、綾波レイが巨大化した姿)が吸収。単一生命の中に全ての人類の情報が集積、補完される―これが人類補完計画なわけです。旧劇場版内では、綾波レイと結合というか融合というか、とにかく繋がっている主人公、碇シンジの描写で人と人が混ざり合った様子を表現。またアニメ版の最終回では、他者を拒絶し、自己も嫌悪していてシンジくんが他者に存在を肯定され、自分に自信を持つことでみんなの一員になった、という描写がされています。なので、人とのつながりを人類補完計画と形容しました。

(注3)庵野秀明監督が手がけたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する秘密計画。作中に登場する特務機関NERVが進める計画の一つ。「新世紀エヴァンゲリオン」は、最初にアニメ版が作られ、その後劇場版が作られた。物語の完結後、新たに「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」が製作された。

では最後に向山さん。

向山 僕は「日常では味わえない体験」と書きました。人生は絶対に一度きりじゃないですか。僕は子供のころから柔道しかしていなかったんで、漫画の中は、野球やサッカー、あとはファンタジーとか一度きりの人生だけでは味わえない体験をさせてくれる場所だと思っています。それを自分の中に蓄積していって将来に役立てていけたらな、と思います。

「早大漫研」といえば、漫画業界(?)のなかではエリート中のエリートの拠点のひとつ。お会いして、だめ出しされたらどうしようと思っていましたが、不躾な質問にも快く答えていただきました。犬飼さん、向山さん、織笠さん、お忙しい中協力いただきありがとうございました。「思い入れの一冊」「読書とは」はみなさんもお持ちだと思います。ぜひぜひ、シミルボン上で共有してください。

取材・文:bookish(マンガナイト)

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