Interview

デビューから5年、家入レオが音楽と格闘し続けた季節を総括する

デビューから5年、家入レオが音楽と格闘し続けた季節を総括する

固い固い殻の裂け目からこぼれ出た繊細な心ともいうべきデビュー曲『サブリナ』。聴く人を、観る人を試すような楽曲で音楽シーンに踊り出てから5年。たった一人で音楽を目指して福岡から出てきた17歳の女の子は、自分にとっても窮屈になってきた殻を自力で脱ぎ捨て、音楽という名の大海を思うままに泳ぐようになった。
 家入レオ、22歳。一人の人として、女性として、そしてありあまる才を手にしたアーティストとして──。まさにこれからの“うた”に注目したい人の初期作品集『5th Anniversary Best』が、ここにまとめられた。

取材 / 文 前原雅子


5周年って自分のためじゃなくて、支えてくれたみんなのためにあるものだと思った

デビュー5周年を記念したベストアルバムのリリース、どんな気持ちですか。

来年は5周年だね、何をやろうかっていろいろ企画を考えていたとき、レコード会社の方がベスト盤の話を持って来てくださって。でも最初は5周年くらいでベストってどうなんだろうって気持ちが強かったんですね。ベスト盤があると、オリジナルアルバムを聴いてくれなくなるんじゃないかっていう気持ちもあって。だけど5周年って自分のためじゃなくて、支えてくれたみんなのためにあるものだと思ったので、リリースすることにしました。

5年でベストアルバムを出すのは早い気がした?

はい。それに、ベスト盤っていうものを自分があまり聴かないほうなので、それもあって。

「この人いいなぁ」と思った人がたくさん作品を出している場合は何から聴きます?

私、たいてい出会うきっかけがシングルなんですよ。ラジオや街中で何気なく聴いて「あ、いいな」って。でも作る側からすると、むしろカップリング曲やアルバム曲で自分のやりたいことをやってる場合があるから、オリジナルアルバムを聴くっていうのが自分のなかでのこだわりになってて。だから1stアルバムか最新アルバムから聴きますね。なので自分ではあんまりベスト盤は聴かないんですけど、出してほしいっていうお手紙とかメールはずっともらっていたので。ただ『WE』のツアー最終日に発表したとき、あんなにみんなが喜んでくれるとは思ってなかったから。すごく嬉しかった。

内容的には至ってシンプルなベスト盤になっていますね。

シングルと耳なじみのあるカップリング曲を入れた、わかりやすいものにしたいと思って。タイトルも変に重みがでない、シンプルなものにしました。

曲順は時を遡っていくようになっていますね。

1曲目を『サブリナ』にして時間軸に沿って並べてみたりもしたんです。だけどそれだと15歳のときのテイクを使った『サブリナ』が、あまりに「うわ~、幼い!」っていう印象になるんで。これは時間を巻き戻していくほうがいいね、ってことになって。

改めて全シングル曲を聴いてみるとどうですか。

最初から最後まで聴いたときに「この曲、出さなきゃよかったな」って思う曲が1曲もなくて。それが自分のなかですごく自信に繋がりましたね。

特に思い出深い曲ということだと?

……『Silly』ですかね。ドラマ(TBS系ドラマ『Nのために』)のお話をいただいて作った曲なんですけど、作った何曲かになかなかいい返事をもらえなくて。そういうなかで改めて制作についてすごく考えたし、この曲を作れてよかったなって思ったことを今でもよく覚えてますね。あとはやっぱり『サブリナ』。これはもう、デカいですね。

『僕たちの未来』は『WE』のツアーで明らかに歌い方が変わってきて、違う息吹を感じた曲

4thアルバム『WE』のツアーでも思ったんですけど、『サブリナ』ってどんどん変わってきていませんか?

違いますねぇ、育てられてますよね。あんなに拳を突き上げて、「みんな盛り上がろうよ!」っていうマインドで歌える曲になると思ってなかった。時間ってすごいなぁと思います。

また新たに録音された『僕たちの未来』のスペシャルバージョン、とってもいいですね。あのアレンジでも歌ってみたかった?

実はずっと、「なんで曲を作ったら最初にレコーディングしてからツアーで歌うのが当たり前になってるんだろう」っていう疑問があって。正直、ライブで歌い込んでからのほうが味も出てくるし、いいテイクが録れる可能性があがるじゃないですか。でもそうしないのは、きっと初期衝動がうまく歌に乗るからなんだろうなぁと思ってたんですね。ただ『僕たちの未来』は『WE』のツアーで明らかに歌い方が変わってきて、違う息吹を感じた曲だったんで。その変化を感じてもらいたくて本間(昭光)さんにお話したら、ああいう柔らかいアレンジが上がってきたんです。

そしてもう1曲、『I promise you』も新たに録音されたものですね。

これは13歳のときに初めて作った曲なんです。昔インタビューで話したことがあるので、ファンの方から、これまでにも問い合わせがあった曲。今回、5周年のスペシャル感を出すにはいいなと思ったのでギターで弾き語りをしたものを収録しました。だけどやっぱり照れ臭い、すごく。日記を見られてる感じがする(笑)。

人間の根本ってそう簡単には変えられないんだなぁって、すごい思った5年間だった

この曲を作ったときのこと、覚えています?

覚えてます。「夜回り先生」(水谷 修)のことを学校の道徳の授業かなんかで見たとき、自分とほとんど同じ歳の子の話を知ってウワーって思って。

エイズになってしまった女の子とか。

そう、援助交際とか。それを見るまでは、お金が欲しくてやってるんだろうなぁって思ってたんです。でもそうじゃなくて、お父さんもお母さんも家にいなくてホントのものがほしいんだって言ってるのを聞いて、「自分はなんてうがったものの見方をしてたんだろう」って思って書いた曲で……。この曲、なんか戻りますね、当時に。だから歌ってると、すごくきっつーくなってくる。歌ってる声も全然違うし。ミックスとかマスタリングしてるときにも思ったんですけど、もう発声の仕方がそもそも違っちゃうみたいですね、この曲歌うと。

そういったことも含めて、「ここが変わったな」っていうことでいうと。

……逆ですね。「変わんないんだ、こんなに」って思いました。もちろんいろいろ変わってるように見えるのかもしれないけど、人間の根本ってそう簡単には変えられないんだなぁって、すごい思った5年間だった。

例えば、どんなところが変わらない?

……直感、とか。「これは絶対に自分が書きたい」「これは絶対やりたくない」みたいに、何にしても最初のインスピレーションっていうのがすごい強烈にあって。周りの人が「この仕事はやったほうがいいよ」って言っても、まずヤダから始まることが多いんですよね。そういうとこ、絶対直したほうがいいなと思うけど、なかなか直らない。

そういうときは途中で「やろうかな」に変わったりもするんですか。

します、します。コロッと変わります。だから周りからすると、「あれだけ説得したのに…」って。「わかってたけどさ…。言ったじゃん、さんざん…」みたいな。しかも、そういう心変わりをケロッと言ったりするから。

不安材料が先に来るけれど。

「あれっ?」みたいな。「これ、やってよかったね~」みたいなことをケロッと。

ケロッと言ってる自覚はあるんですね?

あります。でも怒るからわかるんですよ。「これ、今、言っちゃいけなかったケロッと感……だった」って。なので謝りますけど、周り「ははぁ……」ってなるかも。

最初に「ノー」がくるっていうのは、用心深いからなのでしょうか。

そうだと思います。疑ってかかるとこがスタートだから。一時期それを頑張って直そうとしたけど、なかなかきついものがあって。だからもう最初から、それを言っちゃおうと思って。良く見せようとして隠したり偽ったりするから、お互い傷つくわけじゃないですか。だからバーンって全部を出して。そういうこともわかった5年間でした。今だからわかるってことがたくさんありますね。

その5年、どんな5年でしたか。

不思議な時間軸……でした。毎日がすごい早いけど、毎日がすごい遅い、みたいな。

東京に出てきたときは、ちょっと前まで中学生だったわけですもんね。

そう (笑)。それがね、も~びっくり。

音楽以外のもので違う景色を見るっていうのも、結果、音楽に返ってくることだし

歌う自分や音楽を作る自分ということでは、5年たった今、どう思いますか。

改めて、表現することが好きなんだなぁと思いますね。ホントにすごい確率じゃないですか、10代でデビューできて、自分の気持ちを歌で伝えられるって。だからこそ未来が大事に思えるんですね。これまでやって来たことを肯定して、それを自信にしてやっていきたいなぁって。そのためにはもっともっといろんな経験をしないと、と思います。それが自分の声や歌にも繋がってくるんだろうから。そう思うと、今までは歌うことの表現、歌詞を書くことの表現、メロディーの表現ってところで来たけど、ここからはそれにとらわれずにチャレンジしていってもいいんじゃないかなぁって気持ちが芽生えてきました。

具体的に何か思うところは?

例えば声優さんとかナレーションとかもやってみたいし。エッセイじゃないですけど、連載なんかもやってみたいと思いますし。

役者とかも?

機会があったらやりたいですね。なんかここにきて音楽以外のもので違う景色を見るっていうのも、結果、音楽に返ってくることだし面白いだろうなぁって思うようになって。例えば役者さんって、音楽でいったら歌う部分じゃないですか。歌詞を書いたり曲を作ったりはしない、みたいな。そこだけで表現するっていうのも、興味があるんですよね。

だとしたら詞も曲も書かないことも。

そうなんです。今まではそこにこだわってやってきたけど、いい曲があったらぜひ歌わせてくださいっていうスタンスでいいんじゃないかと思い始めて。作詞作曲を全部自分でやるのも、他の人に全部作ってもらうのも、共作するのもあっていいし。もう固定するのはやめようと思って。

ずいぶんと自由な感じに。

なりました。この1ヵ月とか、ほんと最近、かなり自由になりました。なんかね、勝手に自分で自分にロックしてた部分があったから、そこをちょっと解放できたなぁって。

自分でロックを外すって意外と大変ですよね。ロックしてる自覚がないから。

無意識にしてるから。「私、自由です」って言いながら何重にもガッチガッチにロックしてるっていう。私、そのタイプだから。しかも隣の芝生ばっかり見てた時期もあったし(笑)。そういったいろんなことから解放されたから。

一番楽しみにしてるのは30代。・・・いろんな経験をしたからこそ肩の力が抜けるのかなって

だったら、この先が楽しみなのでは。

めっちゃ楽しみ。

そういう予感が。

ありますね~。17歳のときには、この先の5年間なんて考えもしなかったのに。というか22歳になってる自分を想像できなかった。そんな先の話より、今の不安のほうが大きくて。このあと絶対に辛いだろうな、この道選んじゃったから……って。

逆に言うと、今は先のことを楽しみに思えるだけの余裕が出てきたのでしょうか。

この5年をやり切ったっていうのがあるから。ここからは楽しんでもいいんじゃないかなって、ちょっと自分で自分を許せるっていうか。でも今までは守られたなかでの痛みとかだったわけだけど、このあとは自分の手綱を自分で持って歩いていくから。すっごい楽しいぶん、すっごいきついだろうなぁとも思うんですね。だから一番楽しみにしてるのは30代。いろんなことを一通りやって、いろんな経験をしたからこそ肩の力が抜けるのかなって勝手に思ってるんですけど。そこへ向けて面白くしたいなぁって。

まずは何をやろうと?

まずはこの5周年を音楽で走りきる、っていうのが大前提で。そのあとにちょっとこう息抜きじゃないけど、音楽をちゃんと続けていくために、いろんな経験をしたいですね。プライベートでは、まずは車の免許を取りたいですね。で、取った暁にはSUV車に乗ると決めてます(笑)。

ライブ情報

家入レオ 5th Anniversary Live at 日本武道館
2017年4月30日 日本武道館

家入レオ

福岡出身。13歳で音楽塾ヴォイスの門を叩き、青春期ならではの叫び・葛藤を爆発させた「サブリナ」を完成させた15の時、 音楽の道で生きていくことを決意。翌年単身上京。都内の高校へ通いながら、2012年2月メジャー・デビューを果たし、1stアルバム「LEO」がオリコン2週連続2位を記録。
第54回日本レコード大賞最優秀新人賞他数多くの新人賞を受賞。翌1月より開催の初ワンマンツアーは全公演即日完売に。
翌2013年春高校を卒業。同年、5thシングル「太陽の女神」で第55回日本レコード大賞優秀作品賞受賞。
以降数多くのドラマ主題歌やCMソングなどを担当。昨年7月には、第30回日本ゴールドディスク大賞BEST 5 SONGS BY DOWNLOADを受賞した2度目の月9主題歌となる10thシングル「君がくれた夏」や日本テレビ系ドラマ主題歌「僕たちの未来」、ユニバーサル映画イメージソング「Brand New Tomorrow」などを収録した4thアルバム「WE」をリリースし、秋には初となる全ホールツアー”5th LIVE Tour 2016 ~WE|ME~”(全国20公演)を開催。
第95回全国高校サッカー選手権大会 応援歌を担当し、2月15日に迎える5周年を記念した初のベストアルバム「5th Anniversary Best」の発売と、4月には同じく初の日本武道館公演「5th Anniversary Live at 日本武道館」の開催も決定している。

オフィシャルサイトhttp://leo-ieiri.com/