LIVE SHUTTLE  vol. 104

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中野サンプラザに鳴り響いたチャラン・ポ・ランタンのスピード感に溢れるライブ

中野サンプラザに鳴り響いたチャラン・ポ・ランタンのスピード感に溢れるライブ

チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカンツアー2016-17
「大衆音楽の手引き」中野ファイナル Ver.
1月21日 東京・中野サンプラザ

 アコーディオンの小春と、ボーカルのももの姉妹ユニット“チャラン・ポ・ランタン”のライブのスタイルは多岐にわたる。2人だけで行なう場合もあれば、リズム・セクションやブラス・セクションを音楽に応じてセレクトし、独自の編成を組んでライブに臨む。

しかし、どちらにしてもチャラン・ポ・ランタンのライブの最大の特徴は、ギターがいないことだ。これは今のライブシーンでは大変珍しい。サウンド面だけではなく、ビジュアル面でもギタリストはライブに欠かせない存在となっている今、ギタリスト抜きでダイナミックなステージを展開するチャラン・ポ・ランタンは注目に値するユニットだ。しかもメンバーは全員、女性となっている。

チャラン・ポ・ランタンは今回の「チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカンツアー2016-2017“大衆音楽の手引き”」に、最大人数の編成で挑んだ。曲によって編成を使い分け、すべてのスタイルを見せる構成だ。ラーメンで言えば“全部のせ”。一体、そのファイナルはどのようなものになっているのか、期待して中野サンプラザに足を運んだ。

開演を告げるのは、ボーカルのももによる、フライト・インフォメーションを模したナレーションだ。芝居っ気たっぷりのチャラン・ポ・ランタンのライブは、いつも趣向を凝らした演出で始まる。それが終わると、メンバーが次々にステージに入ってくる。ドラム、ベース、ブラスが3人、ヴァイオリン、そしてアコーディオンの小春の総勢7人。“全部のせ”編成の「カンカン・ブルースセッション」でライブがスタート。続く「ブルースブラザーズのテーマ」で、ボーカルのももがブラックスーツにサングラスをかけた“ブルブラ”仕様で、いつものブタの縫いぐるみを小脇にはさんで登場したから、会場は否が応でも盛り上がる。

歌い終わるとももはスーツを脱ぎ捨て、PUFFYのカバー「アジアの純真」へ。小春のアコーディオンが例のイントロのフレーズを奏でるのだが、PUFFYのそれがELO風なのに、小春はハチャトゥリアンの「剣の舞」風に演奏する。このあたりがチャラン・ポ・ランタンらしくて笑わせてくれる。

4曲目でようやくオリジナルの「この先のシナリオはあなた次第」。ドラムの“ふーちん”を初めとする女性ミュージシャンたちの高い集中力によって、生楽器のアンサンブルのダイナミクスが炸裂。おそらく今のJ-POPシーンで最高の女性バンドのひとつと言っていい。ハイクオリティの演奏に会場が一体となる。

その凄さは、次のフリッパーズ・ギターのカバー「恋とマシンガン」で決定的なものとなった。軽快にスウィングする4ビートを、この特異な編成のバンドは実にキュートに表現する。小春はアコーディオンで、まるでギターのようにリズムを刻む。磯部舞子のバイオリン・ソロは、フランスのジャズ・バイオリニストのステファン・グラッペリのようだ。それに応えて、ももはフレンチ・ポップスのように歌う。フリッパーズ・ギターはこの曲を、フレンチ・ポップスのネオ・アコ的解釈として作ったと思われるが、その本質を“女性バンド”としてやってのけるコンセプトの素晴らしさには脱帽するしかない。

「千秋楽~!」と小春が声を張り上げる。「今日になって『チケット、ありませんか?』とか言ってる奴がいる・・・お前はバカかぁ!」と早くも毒をまき散らす。だが、小春の口調からは満員売切れの歓びがこぼれ出していて、“バカ”といいながら嬉しそうだ。

イスラエルの男女デュオ“ヘドバとダビデ”の大ヒット(1970年)「ナオミの夢」をカバーした後、痛烈なオリジナル「男のサガ」を畳み込むように歌う。昨年、出したカバーアルバム『借りもの協奏』からの曲とオリジナル曲の混ぜ具合が絶妙で、スピーディーにライブが進む。

中盤からは、このライブのつい3日前にリリースされたニューアルバム『トリトメナシ』の曲も混じってくる。

ニューアルバムでコラボした片平里菜とReiがスペシャル・ゲストとして登場すると、大きな拍手が起こる。「女4人で作った曲。男の人は胸を痛めながら、女の人は共感しながら聴いて」と紹介して「夢ばっかり」を歌う。ちょっとハスキーな片平の声と、何よりReiの弾く“ギター”の音が新鮮だった。

ライブはこのあたりから佳境に入っていく。サウンド全体を把握した小春のアコーディオンも、正確さと説得力を増したもものボーカルも、前回のバンド・ツアー“女の120分”をはるかに上回るスキルとスケールがある。

テレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』のオープニング・テーマ「進め、たまに逃げても」からライブは一気にピークへと向かう。続く「71億ピースのパズルゲーム」も大迫力だ。この“迫力”が、ユニークなのだ。それこそ今のライブでは、ギターをはじめとする“歪んだ音色”で迫力を出すバンドがほとんどなのに、チャラン・ポ・ランタンは全員が歪みなしのクリアトーン。それでいてこれだけ迫力があるのは、最初にも書いたがミュージシャンたちの集中力が生む“アンサンブルの力”なのだ。それを大いに楽しんでいる客席を見渡すと、オーディエンスの年齢層が実にさまざまなことに気付く。チャラン・ポ・ランタンは“歪み好き”の若いオーディエンスだけを相手にしているのではない。音楽好きなら老若男女を問わず一緒に楽しもうとしているのが、このユニットの個性であり、存在価値なのだ。チャラン・ポ・ランタンは会場中を巻き込んで、ラストの「ただ、それだけ」まで突っ走った。

サプライズはアンコールに待っていた。少し長めの準備時間だったので、「何かやるな」とは思っていたが、アンコールでシルエットに浮かび上がったのは、めちゃカッコいい男9人とチャラン・ポ・ランタンの2人。東京スカパラダイスオーケストラの参戦に、会場は「ウォーッ!」という歓声を上げての大騒ぎ。この日、初めての男性出演者がスカパラとは驚いた。どよめきと喜びが交錯して、オーディエンスは興奮の極致。スカパラの代表曲「ぺドラーズ」と、チャラン・ポ・ランタンとのコラボ曲「雄叫び」を怒涛のように演奏して去っていった。後で聞いた話によると、この日のサンプラザの楽屋は“女部屋”と“男部屋”に分かれて、てんやわんやだったらしい。

ダブル・アンコールは、小春ともものたった2人で登場。
「“ネクスト・ブレイク”と言われて、5年経つの」とももが言えば、「去年、私は“優しい人たち”とツアーしまして、いろんなことを感じられたのは人生の中で大きかった。レコーディングしたら、そのことを忘れられないかなって」と小春。小春がツアーに参加した“ヒカリノアトリエ”(Mr.Childrenのツアー・バンド名)とのコラボ曲「かなしみ」を、2人きりで演奏して歌う。場内はしーんと、聴き入る。終わってからしばらくの間、小春は客席に背を向ける。もしかすると感極まっていたのかもしれない。「忘れられない」どころか、スカパラと対照的なこの内面的パフォーマンスは、きっと永くオーディエンスたちの心に残るだろう。

 間もなくバンドが合流して、女性8人のアカペラで「ムスタファ」をハモリまくる。このアカペラは今後、チャラン・ポ・ランタンの大きな武器になる。それ以上に、芝居っ気が先行していたチャラン・ポ・ランタンが、素直に心を開いて音楽を届けることが出来たこの夜は、彼女たちの一大転機となるに違いない。

ラスト・ナンバーの「メビウスの行き止まり」は♪あなたの心で仮面はとける 見つけてくれてありがとう♪と歌う。この熱いフレーズが、2017年のチャラン・ポ・ランタンのキーワードとしてサンプラザに鳴り響いたのだった。

文 / 平山雄一

チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカンツアー2016-17

「大衆音楽の手引き」中野ファイナル Ver.
1月21日 東京・中野サンプラザ セットリスト

1. カンカン・ブルースセッション
2. ブルースブラザーズのテーマ
3.アジアの純真
4. この先のシナリオはあなだ次第
5. 恋とマシンガン
6. ナオミの夢
7. 男のサガ
8. 潮時
9. 入院トラブル
10. ちゃんとやってるもーん
11. まゆげダンス
12. ワーカホリック
13. 夢ばっかりw/片平里菜、Rei
14. カモナマイハウス w/片平里菜、Rei
15. 美しさと若さ
16. 欲
17. サンバジャ
18. Shangri-La
19. 月
20. 進め、たまに逃げても
21. 71億ピースのパズルゲーム
22. ハバナギラ
23. ただ、それだけ
En1. ペドラーズ w/東京スカパラダイスオーケストラ
En2. 雄叫び w/東京スカパラダイスオーケストラ
En3. かなしみ
En4. ムスタファ
En5. メビウスの行き止まり

 ライブ情報

◉チャラン・ポ・ランタン小春のひとりライヴ
『人生、伸びたり縮んだり』

【会場】中野・劇場MOMO  http://www.pocketsquare.jp/momo/ 
 【開催日】3/15(水) 14:30 open / 15:00 start ※チャランポ王国(ファンクラブ)貴族会員限定公演 3/17(金) 18:30 open / 19:00 start
【出演】小春(チャラン・ポ・ランタン)

◉チャラン・ポ・ランタンもものひとり芝居
『あのさ、生まれ変わったら』

【会場】東京・中野 劇場MOMO  http://www.pocketsquare.jp/momo/
【開催日時】
3/14(火)18:30open / 19:00start
 3/15(水)18:30open / 19:00start
 3/16(木)①14:30open / 15:00start ※チャランポ王国(ファンクラブ)貴族限会員定公演 ②18:30open / 19:00start
 3/18(土)①14:30open / 15:00start ②18:30open / 19:00start
 3/19(日)①14:30open / 15:00start ②18:30open / 19:00start
 3/20(月祝)14:30open / 15:00start
【出演】もも(チャラン・ポ・ランタン)

◉チャラン・ポ・ランタンpresents“ブタ音楽祭2017”

【日程】4月16日(日)
【会場】上野恩賜公園野外ステージ
【時間】OPEN / START 15:00 / 16:00
【料金】前売り4,200円 税込み / ※全席指定 / 3歳以上または座席が必要な場合はチケット必要
【出演】チャラン・ポ・ランタン他

◉チャラン・ポ・ランタン ホールツアー2017“唄とアコーディオンの姉妹劇場”

6月3日(土)千葉・印西市文化ホール 16:30/17:00 【問】ホットスタッフ TEL: 03-5720-9999
 6月13日(火)神奈川・海老名市文化会館 小ホール 18:30/19:00 【問】ホットスタッフ TEL: 03-5720-9999
6月16日(金)北海道・札幌 サンプラザホール 18:30/19:00 【問】マウントアライヴ TEL: 011-623-5555
 6月24日(土)愛知・名古屋市芸術創造センター 16:30/17:00 【問】ジェイルハウスTEL: 052-936-6041
6月25日(日)福岡・都久志会館 16:30/17:00 【問】キョードー西日本TEL: 092-714-0159
 7月2日(日)東京・日本橋三井ホール 16:15/17:00 【問】ホットスタッフ TEL: 03-5720-9999
 7月9日(日)大阪・大阪市中央公会堂 16:15/17:00 【問】キョードーインフォメーションTEL: 0570-200-888

チャラン・ポ・ランタン

もも(唄/ 平成生まれの妹)と小春(アコーディオン/ 昭和生まれの姉)による姉妹ユニット。 ’09年に結成、2014年にエイベックスよりメジャーデビュー。 お笑い芸人・アイドル・女優、映画/ ドラマへの楽曲提供、演技・CM・声優・イラスト・執筆・フェス出演、小春のMr.Childrenツアーサポート・レコーディング参加、もものドラマ出演など日々ボーダレスな活動を行っている。過去にPINK FLOYDのデイヴ・ギルモアから共演のオファーされるなど海外でも注目を集める。大人気ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』OP曲「進め、たまに逃げても」、Mr.Children、東京スカパラダイスオーケストラがアレンジ・演奏した曲、『NHKみんなのうた』などを収録した“ほぼ”フルアルバム『トリトメナシ』が発売中。

オフィシャルサイトhttp://www.charanporantan.net

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