LIVE SHUTTLE  vol. 107

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小田和正×岸田繁、おかんが聴いてた「愛を止めないで」カバー。世代超えるコラボ続々『森亀橋』ライブ・2日目

小田和正×岸田繁、おかんが聴いてた「愛を止めないで」カバー。世代超えるコラボ続々『森亀橋』ライブ・2日目

“森亀橋2017 presents Your Songs,Our Songs powered by FM COCOLO”は、10年前に第1回目が行われている。その時は、大阪城ホールで開催された。忙しい森亀橋(森俊之/亀田誠治/佐橋佳幸)の都合もあって、あっという間に10年が経ち、10年目こそはという意気込みで今年再演となったのだが、会場は日本最高峰の音響との呼び名も高いフェスティバルホールへと移った。

もちろんこの“引越し”には、森亀橋の意向が働いている。この日の楽屋で、佐橋は「いい音楽をいい音で聴いてもらうのがいちばん大事」と力説していた。同時に、「世代を超えて素晴らしい音楽を繋いでいきたい。音楽の楽しさを共有したい」というイベントのテーマを理解してくれるFM COCOLOとFM802のスタッフへの思いを込めて、「このイベントは、絶対に大阪限定!」と嬉しそうに語ってくれた。

実際、佐橋は前日のライブの終わりで、「マニアックなイベントだと自分は思っていたので、こんなにたくさんの人に見に来てもらえてありがたい限りです」とオーディエンスに感謝を述べたのだった。

Chara

Chara 撮影 / 三浦麻旅子

2日目はCharaから始まった。ステージに登場したCharaは、森亀橋バンドの繰り出す力強いビートをバックに、「鳥になるわよ~」と叫んで、ステージを歩き回りながら両手で羽ばたくマネをする。例によってぶっ飛んだパフォーマンスで沸かせる。かなり長い時間、鳥になって会場を温めた後、「やさしい気持ち」を歌い始めた。どうやら昨日に続いて楽しい夜になりそうだ。

佐藤千亜妃(きのこ帝国) 撮影 / 三浦麻旅子

そんなCharaが呼び込んだのは、きのこ帝国の佐藤千亜妃。「一緒に歌うのは初めてだよね。やさしくお願いします」とYEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」でコラボする。佐藤の真摯な歌いぶりからして、彼女がCharaを心からリスぺクトしていることが伝わってくる。

左から Chara、佐藤千亜妃(きのこ帝国) 撮影 / 三浦麻旅子

続いてコラボした荒井由実の「ひこうき雲」を歌う前に、Charaが「千亜妃ちゃんにピッタリだから、私、客席で聴きたい」と本気で語る。Charaも佐藤の声を愛していることが分かり、「世代を超えて素晴らしい音楽を繋いでいきたい」というイベントのテーマが目の前で実現されていることを実感する。

さかいゆう

さかいゆう 撮影 / 渡邉一生

2組目も楽しい組み合わせだった。森がさかいゆうを「次は、素晴らしいシンガー&ピアニストです!」と紹介する。さかいは“小さな手”の持ち主で、それゆえユニークなフレージングを生み出したピアニストなのだ。バックを務めるミュージシャンが、アーティストをよく理解しているからこその紹介に応えて、さかいはオリジナルの「僕と君の挽歌」を弾き語りで歌い出し、その声とピアノでオーディエンスの耳をわしづかみにする。

河村カースケ智康

河村“カースケ”智康 撮影 / 三浦麻旅子

するとカースケがさかいのプレイに反応して、いつも以上にタイトなドラムで歌をしっかり支えたのだった。
「僕の人生を狂わせた男を紹介します。田島先輩! 僕の人生を狂わせた歌を一緒に歌いましょう」とさかいが田島貴男を呼び込むと、田島は「なんも言えね~!」と答えたから、会場は大爆笑。「接吻」では、亀田のベースが2人のコラボをしっかり支えたのだった。

田島貴男(ORIGINAL LOVE) 撮影 / 渡邉一生

続く2人のセッションがスリリングだった。山下達郎は、さかいも先輩・田島も尊敬する大先輩。その山下の1976年のアルバム『CIRCUS TOWN』収録の「WINDY LADY」をカバーする。そんな2人の情熱が伝わって、森亀橋バンドが大いに盛り上がる。特に中盤の森のオルガン・ソロと、佐橋のギター・ソロは入神の域。オーディエンスから大拍手が巻き起こったのだった。

終わってすぐ、田島が「いいっすね、ギター」とポツリ。「宇宙に行ってきました」と佐橋。この会話に、さかいもメンバーもオーディエンスも笑いで応える。
「田島くんとは、すごく古い。昔、原宿にオタクの集まるレコード屋があって、そこでバイトしてたのが田島くん」
「領収書に“佐橋”と書いた記憶があります」
何気ない会話に“J-POPの歴史”が垣間見える。さらに田島が「僕の人生も、このフェスティバルホールで狂った。ここでポリスを見て、ヤラれました」と言うと、また会場は大笑い。

亀田、佐橋、河村の3人がいったん去って、残った森が話し出す。
「僕はこのフェスティバルホールで、バート・バカラック・オーケストラやサンタナを観ました。このいちばん響きのいいホールで、自分たちのイベントをできるなんて、感無量です。次はミュージシャンが全員リスペクトしている“日本の至宝”を紹介します。吉田美奈子!」。ピアノの背後から現われた美奈子は、森をハグして、「森くんのオルガンと二人で歌います」と「THE LIFE」が始まった。

吉田美奈子

左から 森俊之、吉田美奈子 撮影 / 渡邉一生

美奈子の最初のひと声が、僕の目の前で爆発する。それまでのシンガーの声とはまったく質が違う。僕は1階席の後ろの方に座って、それまでのシンガーたちの“響き”を楽しんでいたのだが、美奈子の声はホールの壁のすべてを震わせるパワーがあり、耳を直撃されたのだ。僕は今回、初めて改装されたフェスティバルホールを訪れたのだが、いきなり“このホール自身の音”を聴く幸運に恵まれた。会場のオーディエンスも同じことを感じたようで、大きな大きな拍手が起こる。森が“至宝”と形容したのは当たっている。戻って来た3人のメンバーも、美奈子の歌に拍手を贈ったのだった。

歌い終わった美奈子が、コラボ相手の中納良恵(EGO-WRAPPIN’)を紹介する。「小坂忠さんのライブで初めて聴いて、いつかご一緒できたらと思ってました」。「美奈子さんと歌わせてもらう光栄を、お墓まで持っていきます」と中納。

その言葉どおり二人の“至宝”が、美奈子のオリジナル「FUN!」で思いのたけをぶつけ合う。4人に戻った森亀橋バンドのヘビーなストンプ(足で床を踏み鳴らすタイプ)のリズムに乗って、二人が♪ウ~♪とフェイクするだけで、音楽の快感に満たされる。歌の熱がどんどん上昇していく。1コーラス目は美奈子、2コーラス目は中納。2人がハモると、これがまた凄い。

左から 吉田美奈子、中納良恵(EGO-WRAPPIN’) 撮影 / 渡邉一生

ここでまた不思議な現象が起こった。2人のボーカリストのバックの音が、消えてしまったのだ。滅多にあることではないが、ミュージシャンが歌のバッキングに徹し、さらに歌が完璧だと、“歌の核心”だけを残して他の音が消えてしまったように感じることがある。それは名人たちのパフォーマンスでしか起こらない。美奈子と中納の歌の美しい形が正確に切り取られ、力強い線を持つエッチングのように感じられる。これも“音楽の奇跡”の一つだ。僕は先ほどの“ホールの鳴り”に続いて、立て続けに二つの奇跡を体験することができたのだった。

中納良恵(EGO-WRAPPIN’) 撮影 / 渡邉一生

中納は美奈子を送り出した後、EGO-WRAPPIN’の「くちばしにチェリー」をパワフルに歌ってステージを終えた。

初日がトータスやTOSHI-LOW、CHABOなどが中心の “ロックナイト”だとしたら、2日目は田島や美奈子などが中心の“ソウルナイト”という印象だ。

「昨日に引き続き、凄いことになってますね」と佐橋。
「大阪のお客さんて、すごく熱くて幸せだなあ」と亀田。
「うん、バイブスがいいですよ」と森。

いよいよラスト8組目、くるりの岸田繁の登場だ。鉄道マニアらしく、「近鉄と京阪を乗り継いでここに来たのは、出演者の中で俺だけ?」と、笑わせる。1曲目はくるりの初期のシングル「春風」で、岸田は丁寧に歌った。
「僕の人生を狂わせた方、いちばん年上の友人でございます」と、岸田がさかいゆうのネタを引っ張って小田和正を紹介したので、会場からまた笑いが起こる。

岸田繁(くるり)

岸田繁(くるり) 撮影 / 三浦麻旅子

「いいメロ、書くよね」と小田。
「ほんまですか」と岸田。

二人が歌ったのは、くるりの名曲として誉れ高い「ばらの花」だった。2007年のくるり主催のイベント“京都音楽博覧会”で、この曲はくるりと小田、佐橋のコラボとして演奏されて、音源も発表されている。このコラボ・バージョンも人気が高く、数あるJ-POPのコラボ楽曲の中でも屈指のクオリティの高さを誇る1曲だ。それを森亀橋バンドがバックを務めて、小田と岸田が歌うのだから、期待を裏切るわけはない。この願ってもないコラボを、オーディエンスは静かに堪能する。

左から 小田和正、岸田繁(くるり) 撮影 / 三浦麻旅子

次はオフコースの「愛を止めないで」を2人で歌う。
「これはライブでいちばん数多くやってる曲。だけど、他の人とやるのは初めて」と小田が言うと、岸田が「おかんの車の中で聴いてました」と切り返す。

岸田がアコギ、小田がエレキ(テレキャスター)を持つという珍しい組み合わせで、まずは岸田が♪「やさしくしないで」君はあれから♪と歌い出す。サビで小田がハモを付ける。そのいちいちが、美しくてスリリングだ。聴いているオーディエンスの静かな歓びが、僕にも伝わってくる。それは森亀橋バンドも同じで、ここでもまた“バンドが消える”奇跡が起こった。大袈裟に言えば、「まったく、人生、こんなことってあるんだなあ」というところか。

2日間のイベントの最後は、小田がピアノを弾きながら「言葉にできない」を歌う。美奈子のときと同じように、フェスティバルホールのすべての壁が、小田の声に震える。小田は2コーラスをまるまる一人で歌い、♪ラララ♪のパートでバンドが入って来た。歌はじわじわと盛り上がっていく。感動的なエンディングとなった。

前日の最終曲はゲスト全員が出そろったが、この夜は、それはなし。曲やメンバーによって当然締め方は異なる。それを許すのもまた、このイベントの良さだろう。

「のべ36曲。この2日間で、覚えるのも早くなったけど、忘れるのも早くなった。4人のバンドの生身の演奏のみでお送りしました。楽しんでいただけましたでしょうか?」という最後の問い掛けに、森亀橋のプライドと愛を感じた締めくくりだった。

森亀橋

森亀橋 撮影 / 三浦麻旅子

3人が「次回は10年も空けずにやります」と繰り返し言っていたので、このイベントに近々また参加できるのが楽しみになった。本当に素晴らしい2日間だった。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 三浦麻旅子・渡邉一生


セットリスト

01.Chara「やさしい気持ち」
02.Chara×佐藤千亜妃(きのこ帝国)「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」(YEN TOWN BAND)
03.Chara×佐藤千亜妃(きのこ帝国)「ひこうき雲」(荒井由実)
04.佐藤千亜妃(きのこ帝国)「桜が咲く前に」
05.さかいゆう「君と僕の挽歌」
06.田島貴男(ORIGINAL LOVE)「接吻」
07.田島貴男(ORIGINAL LOVE)×さかいゆう「WINDY LADY」(山下達郎)
08.田島貴男(ORIGINAL LOVE)「ラヴァーマン」
09.吉田美奈子×森俊之(Pf)「THE LIFE」
10. 吉田美奈子×中納良恵(EGO−WRAPPIN’)「FUN!」
11.吉田美奈子×中納良恵(EGO−WRAPPIN’)+KIKO’S Choir「Oh Happy Day」  (Respect to Aretha Franklin&Mavis Staples)
12.中納良恵(EGO−WRAPPIN’)「くちばしにチェリー」
13.岸田繁(くるり)「春風」
14.小田和正×岸田繁(くるり)「ばらの花」
15.小田和正×岸田繁(くるり)「愛を止めないで」
16.小田和正×岸田繁(くるり)「ラブ・ストーリーは突然に」
17.小田和正「言葉にできない」

カバー曲の詳細についてはこちらでご覧いただけますhttps://cocolo.jp/ysos/

オンエア情報

この日のライブ音源とバックステージインタビューを2時間×2日=計4時間にわたってオンエア!

FM COCOLO SPECIAL PROGRAM
森亀橋2017 presents Your Songs,Our Songs
2月19日(日)/2月26日(日) 各日19:00-21:00
radikoで聴くにはこちらからhttp://radiko.jp/#CCL

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