特集・進化するトライセラトップスという恐竜  vol. 7

Interview

名プロデューサー・木崎賢治が惚れた、和田唱の才能とトライセラトップスの無限の可能性

名プロデューサー・木崎賢治が惚れた、和田唱の才能とトライセラトップスの無限の可能性

トライセラトップスの音楽を語るとき、絶対に外せないのが音楽プロデューサーの木崎賢治さんだ。歌詞やメロディやサウンドはもちろん、アーティスト・イメージについても関わるスタイルの木崎さんのプロデュースは、トライセラトップスのデビューから今に至るキャリアに大きな影響を及ぼしている。
木崎さんはこれまで、沢田研二、山下久美子、大沢誉志幸、吉川晃司、槇原敬之、BUMP OF CHICKENなどをプロデュースしてきた。どのアーティストも既成概念を打ち破る個性の持ち主で、かつ忘れられない名曲を数多く生み出している。
このトライセラトップス特集では、木崎さんに彼らと出会った頃のことを中心に聞いてみた。

取材・文 / 平山雄一


「あんな複雑なリフを自分で弾いて、自分で歌うって、唱くんは本当にすごいなぁ」と、心の底では感心してました

トライセラトップスとは、どのように出会ったんですか?

和田(唱)くんとは、彼が高3のときに会ってる。紹介してくれたのは当時の事務所の社長さんで、デモテープを最初に聴いたとき、声にすごく惹かれました。そのとき歌ってたのが、ビートルズがカバーしてヒットした「TILL THERE WAS YOU」っていう曲でした。ジャズ・トランぺッターのチェット・ベイカーっていう人が歌う声に似てました。力を抜いてて、ホワァ~っとした感じ。

ああ、和田くんもチェット・ベイカーが好きだって言ってました。

ああ、唱くんも好きだったんですね。

それが高3の唱くんだったわけですね。

はい。それで高校の文化祭があるからって観に行ったら、唱くんがギター&ボーカルで、やってた曲がポリスの「見つめていたい」と、クリームの「ホワイトルーム」と、「サンシャイン・オブ・ユア・ラブ」もやってたかもしれません。

60年代から80年代までの渋い曲を選んでますねえ(笑)。しかも高3で。

こういう音楽を好きな友だちはいないんじゃないかなぁ、と思ました。

(笑)。

それで、いろいろ話をして。そのときは「自分はメインボーカルじゃなくて、サイドボーカルをやりたいんだけど」みたいなことを言ってました。年に何回か会うようになって、曲も聴かせてくれるようになりました。俺は唱くんの声を聴いたときに、声がキレイだから、どんなハードなものをやってもいろんな人に届く音楽になるなって思いました。
一番最初に唱くんが作った曲は、なんかJ-POPっぽかったんです。唱くんが聴いてきた音楽はリフものが多かったので、「ギターのリフに、メロディを乗せてみたらかっこいいんじゃない」みたいなことを提案しました。唱くんはすぐに理解をしてくれました。
実は、ギターリフがAメロでサビがコードでっ、ていう作り方は、最初ビートルズで聞きました。それまでのアメリカの音楽には、ありませんでした。ビートルズはチャックベリーの作ったロックンロールのコード進行をAメロに、サビはポール・アンカとかニール・セダカの作ってたポップスのコード進行を混ぜて曲を作っていました。そこから僕が気付いたことは、「新しいものって世の中にはなくて、組み合わせで新しいものが生まれる」っていうことでした。例えば、それまで消しゴムもあったし、鉛筆もあったんだけど、それを合体させて消しゴム付き鉛筆を作った人がすごいなと思いましたし、尊敬もしてます。

それは“PPAP”と一緒だよね(笑)。アップルとペンでアッポーペン!

そうそうそう(笑)。だから中華ラーメンに味噌を入れて味噌ラーメンを作った人もすごいですね。
ある時、唱くんが、「もうひとりギターが欲しい」って言って紹介してくれたんだけど、あまり上手じゃなかったんで、「唱くんひとりでやれば」って言いました。

「トライセラだからメンバーは3人」って言ったのは後付けで、もうひとりボーカルが入る可能性もあったし、ギターが入る可能性もあったって和田くんが言ってました。

「唱くんがリフ弾きながら弾きながら歌ったほうがいいんじゃない」と言いました。

高3でポリスの「見つめていたい」を弾きながら歌ってたんだから、大丈夫でしょ。あれは相当難しいですもんね。

ギターを自分ひとりでやるようになったら、「木崎さん、歌いながらじゃ弾けないリフがあるんです」って言ってましたけど、僕は黙って聞いてました。そうするとだんだんできるようになるんですね。「あんな複雑なリフを自分で弾いて、自分で歌うって、唱くんは本当にすごいなぁ」と、心の底では感心してました。

ヒドい人ですね!(笑)。でも「大変だね」って言っちゃうと、本人が「ああ、これは大変なのか」って思っちゃいますからね。

人間の能力って、計り知れなくあるんだけど、周りがそういうことを意識させることでリミッターが掛かっちゃうことって多いんですよね。「もう何でもやってみればいいんだよ」って思うんです。だからレコーディングのやり方も教えてあげないほうがいいんですよね。歌の録り方でも何でも。そうすると、なんか変わった、面白いやり方を見つけてくるんですよね。

ははは!

そういうのって、いいなあと思います。オリジナリティで勝負する世界なんだから、みんな、独自のやり方でやればいいと思うんです。

うんうん。人と完全に違うものができますからね。

「コードに対してのメロディの関係」が、本当にセンスが良くて、外国の人が作ったようなメロディでした

大学生になったときに、唱くんから「ライブやりたい」って提案がありました。それで、「オリジナルがないと、ライブハウスはできないよ」と言いました。そのあたりから、最初の曲たちが出来てきました。唱くんが最初に作ってきた詞達は、「詞ってこういうものかな」みたいに書いていた気がします。デモテープを録っていろんなライヴハウスに人に聴いてもらいました。それがタワーレコードのバウンスレーベルからリリースされた楽曲達です。並行してレコード会社の人たちにも聴いてもらいました。聴かせてたときに、エピックソニーのディレクターの人から、久しぶりに電話が掛かってきたんだよね。「木崎さん、最近何やってるの?」「バンド、やってるよ」「ふーん、じゃあ、それ見させてよ」って言って、その何日か後にラ・ママであったトライセラのライブを見に来てくれました。気に入ってくれて、「ドリカムの男版みたいだね。やりたい!」って言ってくれたました。そのとき、このディレクターとやりたいなあって思いました。トライセラトップスっていう名前が覚えにくそうだったので、「ロゴを作ろう」って唱くんと相談しました。そして「デザイン専門学校の学生たちに作ってもてもらおう」ってことになって、あのブルーとピンクの最初のロゴが出来上がりました。ロックバンドで、可愛い感じで、色彩感覚がすごい面白くて。それをシールにして、ライブハウスのトイレとかいろんなところに貼りまくりました。あのマークだけ覚えてもらえればいいかなと思って。道にも貼ったり、雑誌の広告は、あのマークのシールが1ページに1枚だけ載ってたり

TRICERATOPS [ BOUNCE盤 ]

和田くんの歌詞についてはどうだったんですか?

最初の頃は、曲は作ってても、「歌詞で言いたいことはない」って言ってました。でもその頃から小沢健二さんやミスチルとか日本の音楽を聴いて気付いたことがあったんじゃないかなあと思います。急に詞が変わってきました。「ロケットに乗って」とか「オレンジライター」とか「Star Jet」とか「Milk」とか、急に生活感のあるリアルな詞になっってきました。僕はすごくいいなあと思いました。

たとえば歌詞のどんなところを「いいなあ」と思ったんですか?

例えばファースト・アルバムの「復刻ジーンズ」とか、詞の向こう側にあるストーリーがすごくいいんですよね。君と付き合ってて、色落ちさせるために穿いて穿いて、このジーンズがやっとカッコ良くなった頃には、もう君と別れちゃってて見せることができないね、みたいな。こういうストーリーにジーンときました。「なるべく詞は絵が見えるほうがいいよね」と唱くんと良く話し合ってました。
その頃のメロディに関して思い出すのは、「コードに対してのメロディの関係」が、本当にセンスが良くて、外国の人が作ったようなメロディでした。あとで楽譜集が出たときに「彼女のシニヨン」の譜面を観たら「このコードでこの音に行っちゃう」っていうのに感心しました。外国の曲の譜面を観ているようでした。唱くんの音楽的センスのすごさを再確認しました。

いつも新しい実験をアーティストとやってきた気がします。

初期の頃、ライブに関しては何かアドバイスをしたんですか?

ギターを弾きながら歌うのはもちろん大変なことなんですが、ライヴでも詞が伝わるように歌うことはすごく大切だと言っていたような気がします。

最近のトライセラに関して考えていることはありますか?

この前のアコースティックライブ(2016年)を観ていて、「あの歌い方は力が抜けてていいなあ」と感じました。「ちょっとアコースティックっぽいアルバムなんかもいいのかもなあ」とか、たとえばギターがひずんでなくて、ジャスティン・ビーバーのバンド版をやったらどうなのなあとか思いながら聴いてました。
それと、「アルフィー」って曲の前のMCも説得力がありました。僕も曲は好きだったんだけど、詞の内容を知らなくて、それを唱くんがちゃんと教えてくれて、「ああ、そうなんだあ」と思って聴いたらすごく感動しました。
それと、エンタメステーションの唱くんのインタビューを読ませてもらって、「今まで逃げてきたけど、男としてちゃんとしよう」って言ってたのを読んで。今度、そのことについて話したいなあと思いました。僕がいつも考えてるのは、ファンの人だけじゃない人に「いい」って言ってもらえるようにするのにはどうしたらいいかっていうことだけなんです。ライヴに行ったり記事を読んだりしているときもこれから先のどうやればいいかをいつも想像しています。こんなときが一番楽しいんです。ワクワクしてきます。

それは木崎さんの人生観でもあるんですか?

はい。この前、野球の松井選手のインタビューを読んでて、「毎回ヒットを打とうとしても3割しか打てない」って言ってました。だから僕も毎回ヒットを打とうと思って制作に携わっています。
音楽も野球と一緒だなと思って。もし「曲を作ったとき、売れると思いましたか?」って僕、よく聞かれるんですけど、それに答えるのは無意味だなって思ってます。いつも、よりよくするのにはどうしたらいいかって、それだけを考えています。
だから全力でやるってことは、新しい発見をすること。新しいアイデアを見つけることなんです。
新しいことをやらないとヒット曲は出来ないと思っています。そういう意味ではいつも新しい実験をアーティストとやってきた気がします。うまくいったら褒められたりもしましたけど、あんまりうれしいとは思わないんです。自分がイメージしたものが達成できた時が一番うれしいんです。

自分の中で自分がどれだけのことをやったかわかっていると。

そう、その満足感でトライセラともずっとやってきました。そうすると「次、こうやればもっと良くなるんじゃないかな」ってアイデアが出てくるんです。だからあんまり煮詰まることはないですね。自分から「もうダメだ」と思ったことは一度もないんです。

はははは! ありがとうございます(笑)。

木崎賢治(きさき・けんじ)

音楽プロデューサー
ブリッジ代表
1946年東京都生まれ。中学生の頃から音楽に興味を持つ。1969年東京外語大学卒業後、1970年渡辺音楽出版に入社し、沢田研二、アグネス・チャン、山下久美子、大澤誉志幸、吉川晃司らを手がける。1986年フリーになってからも、槇原敬之、TRICERATOPS、BUMP OF CHICKEN等、新しい才能を世に送り続けている。1988年に個人事務所キーズカンパニーを、1994年には音楽出版社ブリッジを設立。

ライブ情報

TRICERATOPS ”20TH ANNIVERSARY TOUR”


5⽉13⽇(⼟)  神奈川県 クラブチッタ川崎   一般券売日:3/25(土) 
5⽉20⽇(⼟)  福島県 郡⼭#9  一般券売日:3/18(土)
5⽉26⽇(⾦)  ⼤阪府 ⼤阪BIGCAT 一般券売日:3/18(土)
5⽉28⽇(⽇)  熊本県 熊本Django 一般券売日:3/25(土)
6⽉3⽇(⼟)  埼⽟県 HEAVEN’S ROCKさいたま新都⼼ 一般券売日:3/25(土)
6⽉4⽇(⽇)  静岡県 浜松窓枠 一般券売日:3/25(土)
6⽉10⽇(⼟)  千葉県 柏PALOOZA 一般券売日:3/25(土)
6⽉17⽇(⼟)  北海道 札幌cube garden 一般券売日:4/8(土)
6⽉24⽇(⼟)  新潟県 新潟LOTS 一般券売日:4/8(土)
6⽉25⽇(⽇)  ⽯川県 ⾦沢EIGHT HALL 一般券売日:4/8(土)
7⽉2⽇(⽇)  宮城県 仙台Darwin 一般券売日:4/15(土)
7⽉8⽇(⼟)  広島県 広島クアトロ 一般券売日:4/22(土)
7⽉9⽇(⽇)  福岡県 福岡イムズホール 一般券売日:5/13(土)
7⽉17⽇(祝・⽉)  愛知県 名古屋club QUATTRO 一般券売日:4/22(土)
 【ツアーファイナル】
7⽉21⽇(⾦)  東京都 豊洲PIT 一般券売日:4/8(土)

チケット:オールスタンディング ¥4,950-(※就学児以上有料/会場により別途ドリンク代必要)

詳細はこちらhttp://triceratops.net/tour

トライセラトップス

和田唱(Vo&G)、林幸治(B)、吉田佳史(Dr)により結成。1997 年、シングル「Raspberry」でメジャーデビュー。胸を締め付けるラヴソング、ロックの苦悩に刃向かうようなポジティブなリリック、そしてたった 3人で演奏しているとは思えないサウンドと、リフを基調とした楽曲は、 良質なメロディセンスとライブで培った演奏力により、唯一無二の存在感で新たな可能性を拡げ続けてい る。多くのミュージシャンにもリスペクトされている国内屈指の3ピース・ロックバンドである。また Vo&G の和田唱は、SMAP、藤井フミヤ、松たか子、Kis-My-Ft2、SCANDAL などへの作品提供も多数あり、ソン グライターとしても評価を集めている。来年 2017 年、メジャーデビュー 20 周年のアニバーサリーイヤーに突入する。

オフィシャルサイトhttp://triceratops.net

トライセラトップスの楽曲はこちら
vol.6
vol.7
vol.8

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