Interview

田村淳の『日本人失格』。社会やテレビ業界への違和感を本音で語る

田村淳の『日本人失格』。社会やテレビ業界への違和感を本音で語る

テレビのバラエティ番組を中心に活躍しながら、政治や社会問題にも積極的に発言。さらにバンド活動や地方局の番組など、幅広い活動で注目を集め続けるロンドンブーツ1号2号の田村淳が、今感じていることや伝えたいメッセージを詰め込んだ新書『日本人失格』を刊行した。
「芸能界という“村社会”の息苦しさ」「僕はそもそも自分のことを“芸人だ”と思ってない」「売れない頃は7股もヒモ生活も経験した」「テレビの仕事に対する執着が薄れてきている」と、ネットニュースなら炎上必至の見出しが並び、Twitterの140文字では収まりきらない想いを書き記した今作。
現代の日本にどこか息苦しさや居心地の悪さを感じ、この社会でどう生きていけば良いか悩んでいる若者に、勇気とヒントを与えてくれる今作について話を聞く。

取材・文 / フジジュン 撮影 / 冨田望


礼儀礼節を持って話してくれるのであれば僕はいつでも話し合います

今回、書籍を出そうと思ったキッカケは?

世の中に対する理不尽なこととか、自分が生きてて窮屈だなと思うことをTwitterで呟いていたんですけど、140文字以内なんで、やっぱり誤解を招く表現をせざるを得ないとか、辛辣にならざるを得ないところがあって。それでも140文字の中で頑張って言葉を紡いでいたんですけど、真意は伝わらないなと思って。もっと噛み砕いて咀嚼して、口の中に入れて吐き出したいと思ったとき、本だと表現がしやすいと思ったんです。この一冊が僕の人格のようなものなので、ブログともまた違うし。ネットとは全然違うなと思いました。書き始めると「こんなことも書きたいな」「あんなことも書きたいな」というのが浮かんできて、次は“社会人失格”という本を出したいと思ってるんですけど(笑)。ホント失格だなと思っているので。

書籍だと、ネットとは全然違った気持ちで発言できた?

そうですね、Twitterの140文字とは表現の幅が違うんで。「だったらブログを書けばいいじゃないか」という人もいるんですけど、自分の考え方が本になるってところでは、チャレンジさせてもらえて良かったと思います。本の大切さも改めてわかったし、新書ってところでほかの人の新書も読み始めたりしたんで。いままでスマホから受け取ってた情報や誰かの考えを、本から読み解いていくというのは、実に意味のあることなんだなぁというのを改めて感じました。

淳さんがリスクも背負いながら、今考えてることをこれだけ詰め込んで、720円は安すぎますよね。

だいぶ安いですよ! 同じ日(2月17日)に出た2人の本(ASKAと千眼美子)はもうちょっと高いでしょう?(笑)それに比べたら手頃ですよ。

『日本人失格』ってタイトルに込めた思いは?

僕の思う“日本人合格”のラインは、自分の意見を押し殺して他人の意見に合わせて、同調して生きていくこと。それが「日本人合格なのかな?」と思っていて。だったら、僕は“日本人失格”で良いと思ったし、そんな日本なら住みたくないと思ったんです。本来、国って、みんなが住みよい空間を作るためにいろんな意見を言い合うはずなのに、その意見を言いにくくなってるというのは、不自然な国だなと思って。だから、だいぶ皮肉ってる感じですよね。このタイトルを目にした人は「俺は合格なのかな?」と考えて欲しいし、合格の人がいたらぜひ会って、なぜ合格なのかを聞いてみたいです(笑)。

この本を執筆することで、今、自分の言いたいことを何割くらい吐き出せました?

9割かな? 1割は自粛した部分があって、「もう本になるよ」って段階まで残していたんだけど、カットした部分もありますね。それは老害芸能人についてと、お笑い協定についての項目なんですけど(笑)。あまりにも誤解を招くというか、そこの文章だけがひとり歩きしてしまいそうなので、今回は省きました。僕が死を宣告されてるのなら、ぶちまけてたんですけど、まだ生きたいし、芸能界でやっていきたいんで、削りました(笑)。

淳さんが小さくまとまりたくないと思いながら、ちゃんと仕事が来ている要因ってどこにあると思いますか?

自分の能力とか実力とかをちゃんと自己分析してるつもりだし、自己発信みたいなことをちゃんとできてるからじゃないですかね。自分が「芸人じゃない」って真っ先に書いているのは、ネタを作って板の上に立って披露するのが芸人だと思ってるんで。僕は芸人じゃないので、面白いことを求められても……ってことなんですよね。お笑い芸人とかお笑いタレントとかってジャンルもありますけど、そういう細かいジャンルはどうでもよくて。俺が何を求められてきたかというと、デビューした当時にコギャルを殴りたいからって理由でやってた「BINTA」から始まって、女の浮気をチェックする「ガサ入れ」、男の性をチェックする「ブラックメール」、女の人を格付けする「格付けし合う女たち」と、とにかく自分のやりたいことをずっと提示し続けてきたところだと思うんです。だから、「そういうトゲトゲしたものは、今のテレビには必要ないですよ」となったら、トゲトゲしたものを表現できる場所を探すしかなくて。そこでたまたまBSスカパーさんと出会って、フルスイングできているんですが。やりたいことやメディアを通して伝えたいことって、20歳の頃から基本変わってなくて。いまだに大人になりきれてないし、“社会人失格”なんですけどね(笑)。

それでもテレビの可能性を信じてるというか、テレビにこだわる理由ってどんなところにありますか?

やっぱりテレビで育ってきてるし、僕は人数が少ないところに向けて何かをやりたいと思ったことはなくて。まずは多くの人に見てもらいたいと思うと、テレビで表現するっていうのが大前提だと思ってます。でも、今の閉塞的な世の中の状況もありますけど、ルールが多くなってきたところで表現ができなくなってくると、テレビ局自体も興味を持ってもらえなくなって、どんどん潰れていくと思うんですよね。だから、おじいちゃん、おばあちゃんに向けたテレビプログラムもあって良いとは思うんですけど、それだと若者が面白くない。でも、若者をターゲットにすると視聴率がとれない。という現状って、結局、政治にも繋がってるなと思うんです。つねに「若い人、本当にこれで良いですか?」と思ってるし、若者の文化を作れないメディアは衰退してなくなれとも思っている派なので。メディアは若者に向けて発信し続けなきゃいけないし、政治も若者に向けて、次の世代に継いでいくために何か作らないといけない。自分が死ぬまで生き延びられればいいと思ってやってたら、政治もテレビも芸能界も衰退していってしまうだろうなと思ってます。

『天才!たけしの元気が出るテレビ』や『ねるとん紅鯨団』にドキドキしていた、子供の頃の淳少年が今のテレビを観たとき、それでもテレビに出て世に出たいと思うと思いますか?

絶対目指してないです、YouTuberを目指してます(笑)。自分が疑問に思ったことを実験して、再生数稼いで、お金儲けてると思います。だから、若手芸人が「テレビをやりたい」とかいうのは、どの感覚で言ってんだとか思っちゃうんです。時代が読み取れてないなって。

じゃあ、今、自分が若手芸人だったら、どういう戦略を立てます?

まず、芸人という選択肢を選ばないですよね(笑)。でも芸人になるなら、板の上でずっとやり続けるっていう芸人を目指すと思います。僕はテレビに出たいと思って、芸人というものを踏んでいっただけの人間なので。「テレビに出たい!」だったら、YouTuberになって自分の表現方法を学ぶとか、違うアプローチを考えて、芸能界の大手事務所には所属しないで、個人事務所を設立して活動すると思います。だから、はじめしゃちょーとかHIKAKINとか、「スゲェ!」と思ってたんですけど、大手事務所にきちゃったときに「なんでこっちにきちゃったんだろ?」と思いましたよね。せっかく自由を手にしてたのに、なんで誰かと組まなきゃいけないのか?と。そこにも闇の深さを感じましたね(笑)。

書籍には「一隅を照らす」という言葉が出てきます。人の良いところを照らすとか、自分の個を磨くってなかなか難しいことで。いざ実践しようと思ったとき、意識や行動として何ができますか?

人って、他人のあら探しだけはできるっていう共通の能力を持ってるんですけど、人の良いところを探すという能力には欠けてると思うんです。僕も人と話すことでしか良いところを探すことができないので、情報だけで人のことを批評するんじゃなくて、その人と直接話して理解するってことが一番大事だと思うんです。その人の持ってる信念とか夢とか希望とか、ポジティブな何かを見つけてあげることができたら、その人の良いところ、一隅を照らしてあげられるんじゃないですかね。もし言葉にして表現することがヘタな人だったら、ほかの得意なもので表現してくださいで良いと思うんですよね。絵にするとか音にするとか、なんでもいいんですけど、何か表現されていることに目を向けてあげると、良いところを見つけられる気がします。

あと「直接会って話すこと」の重要さも書いていますよね。ネットだと汚い言葉が飛び交うこともあるし、淳さんも標的にされることが多いと思うのですが。それでもネットは続けていくべきだと思う?

思います。これだけ自己発信できるツールはなかなかないし、こんな便利なものが世の中に生まれてきてしまったので。僕はこれを良いほうに使うお手本になりたいなと思ってます。いままではTwitter上でケンカとかもしてたんですけど、全部DMにするようにしたんです。僕がその人を攻撃しちゃうと、僕を信じてる人もその人を攻撃してしまうので、それはフェアじゃないなと思って。「そんなに俺に言いたいことがあるんなら、直接話そう」ってすぐに電話番号を教えちゃうんです。昨日も3人くらいにDMを送って、ひとりは大学生だったんですけど、「電話番号を晒すのはイヤだ」って断られちゃいました(笑)。でも、最初は罵詈雑言だったのが、だんだん言葉が柔らかくなってきたりするんですよ。それと、52歳のおじさんと第二次世界大戦の解釈でモメたときは、電話をしてきてくれて、「たしかに僕の解釈は間違ってたかも知れないけど、あなたのネット上での言葉遣いは絶対におかしい」と言ったら、「それはすまなかった」と頭を下げてくれたり。今も第二次世界大戦でわからないことがあったときは「あのおじさんに電話しよう」と思って。助けてもらっています(笑)。今は罵詈雑言を言ってるヤツも味方にできると思いながら接してますね。それでも「ウルセェ」とか「死ね」ってヤツはブロックするようにはしてますけど、礼儀礼節を持って話してくれるのであれば僕はいつでも話し合います。普段は繋がれない人と繋がれるって意味ではこんな良いツールはないし、でも使い方ひとつで間違った方向にもいっちゃうので、ネットも良い使い方をしていきたいですね。

『日本人失格』

2017年2月17日発売
集英社新書 ¥720(税別)

田村淳

1973年生まれ、山口県出身。お笑いコンビ“ロンドンブーツ1号2号”として、バラエティ番組を中心に活躍。また、ヴィジュアル系バンド“jealkb”では、“haderu”としてボーカルを担当し、音楽活動も行う。