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B'z稲葉浩志がスティーヴィー・サラスと共に開いた新しい扉

B'z稲葉浩志がスティーヴィー・サラスと共に開いた新しい扉

INABA / SALAS“CHUBBY GROOVE TOUR 2017”
2017.2.8 Zepp Tokyo

2月8日、Zepp Tokyoに響き渡る「SAYONARA RIVER」の重厚にして俊敏なグルーヴを享受した時、「ああ、稲葉浩志さんは新しい扉を開けたのだな」と思った。ファンキーかつポップなINABA / SALAS楽曲は、B’zとも稲葉ソロの“音感触”とも違う。この音感触は、稲葉さんがB’z以前から表現したかったものなのか、それともスティーヴィー・サラスと出会ったことにより顕在化したものなのか、それはわからない。どちらか一方に答えを求めるのは、よくないことかもしれない。

「ハズムセカイ」や「正面衝突」など、スティーヴィーと制作した楽曲をINABA / SALASという土俵で演奏されると、ずいぶんと違う楽曲のような印象を受けた。新しい扉の前で紆余曲折・試行錯誤していた状態と、扉の先に進んだところで発露するものとでは、おのずと“宿しているもの”が違うことは明らかだ。

さて、少し考察してみたいこととしては……バンド領域とソロ領域、それに特別なユニット領域の音楽的境界線はどこでどのように引かれるのだろうか? ということがある。

稲葉浩志に照らし合わせてみた場合、デフォルトであり古巣のB’zは、もともとは松本孝弘とのユニットであったけれども、2000年以降あたりからは、シェーン・ガラス(Ds)バリー・スパークス(B)など、ライブに欠くことのできぬメンバーをほとんど固定化したため、バンドと呼んでももはや差し支えないだろう。

B’zにおいては、もちろん、作曲は松本孝弘であり、作詞は稲葉浩志である。これが、稲葉さんのソロ領域となると、作詞と作曲の両方が稲葉さん自身のものとなる。2016年のソロ作品「羽」の時に感じたことは、アルバム『マグマ』のリリース時(1997年)から、ある意味で非常に“厳正に”B’zとの距離を測っていた稲葉さんが、厳正さはそのままに、B’zと己れが交じり合う部分を見つめてもいいのではないか? という判断を下したのではなかろうかと思わせる部分だった。

稲葉ソロ領域がB’zとは不可侵=交じり合うことのないまま存在するのは、人間的にも音楽的にも無理があると稲葉さんがジャッジメントしたのであれば、その判断は、大変に正しい。

こうした明晰さも込みで、稲葉ファンになっている人は、おそらく僕だけではないだろう。(個人的視点では)半ば、なし崩しの場当たり的な運動で回っている音楽業界において、“稲葉さんのジャッジ”は、一貫して厳正である。その判断が彼の音楽そのものを精神性として裏打ちしていると考えても無理はないだろうし、僕は稲葉さんの精神性に、大いに共鳴する人間である。

しかし、「羽」以降、稲葉さんはソロ領域を伸長させなかった。

そこで、登場したのがスティーヴィー・サラスとのユニット:INABA / SALASだった。「なにか新しいものを培った音楽性の中で…」と考えた稲葉さんも、輪をかけて聡明だと思う。僕らの音楽探求の旅は、繰り返しの中で疲弊するものではなく、繰り返しの中で増域するものであることを忘れてはいけないだろう。

「人に会って、新しい土地へ行き、グルーヴをつかむこと」が、INABA / SALASの大命題だったのである。

文 / 佐伯明

次回「故郷・岡山でB’z稲葉浩志が証明した圧倒的な音楽の幸福感」に続く
(3月4日公開予定)

INABA / SALAS“CHUBBY GROOVE TOUR 2017”
2017.2.8 Zepp Tokyo

セットリスト
1.SAYONARA RIVER
2.苦悩の果てのそれも答えのひとつ
3.ERROR MESSAGE
4.NISHI-HIGASHI
5.マイミライ
6.シラセ
7.ハズムセカイ
8.正面衝突
9.MOONAGE DAYDREAM
10.MY HEART YOUR HEART
11.WABISABI
12.OVERDRIVE
13.MARIE
14.AISHI-AISARE
アンコール
15.BLINK
16.POLICE ON MY BACK
17.TROPHY


INABA / SALAS
CHUBBY GROOVE
2017年1月18日発売
【初回限定盤 CD+DVD】
BMCV-8050 ¥3,700+tax

【通常盤 CD】
BMCV-8051 ¥2,800+tax

VERMILLION RECORDS


稲葉浩志

9月23日生まれ。岡山県出身。1988年、B’zでデビュー。ヴォーカル及び作詞を担当。1997年、全作詞・作曲・編曲を手掛けたソロとしての1stアルバム「マグマ」をリリース。2004年からはソロライブツアーも開催。2014年は4年ぶりのアルバム「Singing Bird」をリリースし、東京・品川ステラボールで10公演のライブを行った。2016年1月13日に約5年半ぶりのシングル「羽」を発表し、2016年1月~3月に全国アリーナツアー「Koshi Inaba LIVE 2016 ~enIII~」を開催。ツアーファイナルを日本武道館で行った。2016年8月24日には、配信シングル「YELLOW」発表。

稲葉浩志オフィシャルサイトhttp://en-zine.jp/
B’zオフィシャルサイトhttp://bz-vermillion.com


稲葉浩志の楽曲はこちら
B’zの楽曲はこちら

スティーヴィー・サラス / Stevie Salas

カリフォルニア州サンディエゴ出身。デビュー前からGeorge ClintonやRod Stewartのリードギタリスト、UKヒット曲のWas (Not Was)「Out Come the Freaks」の共同プロデュースなどで活動。デビュー作「Colorcode」はヨーロッパ諸国でカルト的なクラシック作品であり、日本では2作目の「Back from the Living」がThe Rolling StonesやAerosmith を抑え、ベストアルバムと評された。稲葉浩志の作品ではアルバム「Peace Of Mind」「Hadou」に参加している。

オフィシャルサイトhttp://www.steviesalas.com