モリコメンド 一本釣り  vol. 4

Column

あまりにも魅力的な女子バンド、The Wisely Brothers。際立つ才能に脱帽

あまりにも魅力的な女子バンド、The Wisely Brothers。際立つ才能に脱帽

80年代のネオアコ、90年代のオルタナ、00年代以降のインディーロックのテイストをナチュラルに反映させながら、いまの東京の雰囲気をたっぷりと感じさせてくれる音楽へと導く。cero、Suchmos、never young beachといった同時代のバンドともシンクロしつつ、女子ならではのシャープな感性を備えた、きわめて魅力的なガールズバンドである。

真舘晴子(G/V)、和久利泉(Ba)、渡辺朱音(Dr)による3ピースバンドThe Wisely Brothers。キリンジ、クラムボン、The Pastels、My Bloody Valentineなどを好んで聴いていたという真舘が和久利、渡辺が出会ったのは、都内の高校の軽音楽部。チャットモンチーのコピーからスタートした3人はすぐにオリジナル曲を作りはじめ、2012年頃から新宿、下北沢を中心にライブ活動を展開。2014年に発表した1stミニアルバム「ファミリー・ミニアルバム」によって耳の早いリスナーの注目を集め、2016年6月にはシャムキャッツの主催イベントにキリンジやGREAT3とともに出演するなど、活動の範囲を少しずつ広げてきた。さらに2016年7月に2ndミニアルバム「シーサイド81」をリリース。ローファイなインディーギターバンドという印象もあった「ファミリー・ミニアルバム」をさらに前進させ、しなやかで骨太なロックミュージックを体現した本作は、彼女たちの潜在能力の高さを明確に示したのだった。

このバンドの際立ったポップセンスの源はやはり、メインソングライターである真舘の感性だろう。デザイナー、装丁家の真舘嘉浩を父に持つ彼女は(The Wisely Brothersというバンド名も父親が提案だとか)、幼少の頃から古今東西の優れた音楽、映画、小説などに親しみながら育ったという。そのなかで無意識的に育まれたセンスはまちがいなく、そのままThe Wisely Brothersの音楽へとつながっている。単なる引用とかオマージュではなく、幅広いカルチャーからの影響が信じられないほど自然に浸透しているのだ。その価値観、美意識はもちろんメンバーとも共有され、3人の関係性のなかでさらに独創的なポップネスへと帰結。楽曲から伝わってくるあまりにも豊かなカルチャーの蓄積は、2010年代以降に登場してきたバンドのなかでも明らかに際立っている。

2017年1月に発表された7inchアナログ「メイプルカナダ」に続く1st EP「HEMMING EP」(プロデューサーはGREAT3の片寄明人、エンジニアはceroなどを手がける得能直也、マスタリングはBjork、Sigur Rossなどの作品を手がけたMandy Parnell)からも、このバンドの聴き手の予想を遙かに超えるスピードで進化を続けていることが感じられる。まずリードトラックの「サウザンド・ビネガー」はドラムの渡辺の作詞作曲によるミディアムナンバー。天然のオルタナティブ感としか言いようがないバンドアンサンブル、耳なじみのいいメロディライン、そして、好きな男の子との接し方にあれこれ悩み、「私センスなし子ですか」と呟く歌詞がひとつになったこの曲には、The Wisely Brothersの魅力がバランスよく詰っている。特に印象的なのが、サビに向かって大きく広がる楽曲の展開。恋愛のドキドキ感とリアルタイムで重なっていくような手触りは、このバンド特有のものだろう。

思わず口ずさみたくなるような歌、気持ちよく体を揺らしたくなるリズムを軸にした「アニエスべー」は、体に馴染んだシャツのように、リスナーの日常を彩ってくれるポップチューン。何気ない日々のなかにあるちょっと素敵なこと、気分が良くなるアイテムをピックアップしながら、それを素直に歌のなかに取り込んでいく。そんなスタンスもまた、彼女たちの優れたポップ感覚に結びついているのだと思う。

ロックバンドとしてのダイナミズムを体感できるのが、3曲目の「Thursday」。初めて使ったというファズによって甘美なノイズを描き出すギター、そして、生々しい感情と重なるように進んでいくリズムセクション。愛の在り方とモチーフにした歌とエッジ—なサウンドが響き渡るこの曲は、今後のライブでも大きな武器になりそうだ。

そして「waltz」とタイトルされた4曲目は、じつは“ワルツ(3拍子)”でははない。ギター、ベース、ドラムがそれぞれの感性と閃きを放ち、3つの音が重なり合うことで生まれる、彼女たちだけのワルツなのだ。シックな美しさをたたえたメロディからも、このバンドの音楽性が確実に深みを増していることが伝わってくる。

3月14日にはNYのシンガーソングライター、フランキー・コスモスの初来日公演に参加。そして4月には東名阪ツアー「HEMMING UP! TOUR」も決定(4月26日の東京・TSUTAYA o-nestはワンマンライブ!)。膨大な情報、膨大なアートが溢れて、誰もが混乱の渦に巻き込まれている現在において、自分たちが好きなもの、素敵だと感じるものを素直に表現するThe Wisely Brothersの存在はきわめて貴重。本当に愛すべきバンドだと思う。

文 / 森朋之

ライブ情報

HEMMING UP! TOUR
4月5日(水) 大阪Pangea
w/Special Favorite Music/and more!
4月6日(木) 名古屋K・D ハポン
w/THE FULL TEENZ/and more!
4月26日(水) 東京TSUTAYA o-nest
One Man Show!


The Wisely Brothers / メイプルカナダ【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

The Wisely Brothers 鉄道【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

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