Interview

「道なき道」を切り開き、ノー・ボーダーの感覚を手に入れたスカパラの現在地

「道なき道」を切り開き、ノー・ボーダーの感覚を手に入れたスカパラの現在地

東京スカパラダイスオーケストラが通算20枚目となるオリジナル・アルバム『Paradise Has NO BORDER』を3月8日にリリースする。
1989年のデビュー以来、スカパラの愛称で親しまれ、スカをベースにあらゆる音楽を旺盛に取り込みながら日本のみならず世界を熱狂させてきた彼ら。3年ぶりとなる本作は、尾崎世界観(クリープハイプ)、片平里菜、さかなクン、Ken Yokoyamaとのコラボレーションによる強力シングルに加え、Ken Yokoyamaとの新曲や10-FEETのTAKUMAも緊急参加。また、メンバー渾身のインスト・ナンバー6曲も、スカパラならではのオリジナリティに溢れた充実の出来映えで、その飽くなき探究心とほとばしる熱量はデビュー28年目にして留まることを知らない。メンバーの谷中敦(Baritone sax)、加藤隆志(Guitar) 茂木欣一(Drums)の3人に、今のスカパラの充実の理由を探ってみた。

文 / 佐野郷子 写真 / 柴田和彦


ヴォーカリストのバックグラウンドや音楽の作り方まで巻き込んだコラボ

アルバムのキャッチコピーは「このアルバム、〇〇すぎる。」ですが?

加藤 ここに当てはまるのは何だと思いますか?

うーん、「濃すぎる。」ですかね?

加藤 おう。俺もそうだなぁ。

オリジナル・アルバムとしては約3年ぶり、スカパラにしては少し間が空いた気がします。

茂木 これくらい空いたからこそ、濃すぎる内容になったんじゃないかな。

加藤 25周年以降は、アルバムにとらわれないで、その時々に思いついたことを好きにやろうと、先ず尾崎(世界観/クリープハイプ)くんとのコラボから始まったんだけど、それがもう2年前だからね。

尾崎さんの起用は、加藤さんがクリープハイプに注目していたからとか?

加藤 今のあの世代のバンドでは、いちばんブルースを感じるというか、他のバンドとは一線を画す骨の太さがあると思ったんですよ。尾崎くんにはフェスで僕から声をかけたんだけど、それも作品が素晴らしかったからだし、谷中さんと彼が共作した歌詞を聴いてみたかったというのもありましたね。それにクリープハイプのフォークロック的な指向と、沖(祐市/keyboards)さんのつくる曲は相性が良いんじゃないかと思った。

ヴォーカリストの起用を考える時は、あらかじめそういった相性も想定するんですか。

加藤 そうですね。一緒にやってみたらどうなるのか想像するのが面白い人にお願いすることがほとんどかな。

谷中 彼にはフォークの匂いと同時にパンクの匂いもあって、さっき加藤が言ったブルース・フィーリングもある。その混ざり具合が絶妙な上に毒がある。

茂木 うん。(忌野)清志郎さんにも通じる毒とユーモアを感じるよね。

谷中 「めくったオレンジ」の1行目、〈長い間お世話になりました〉の歌詞が彼からラインで来たときは、ショックでした。これは俺には絶対思いつかない。

歌詞の共作は、ラインでやりとりしながら?

谷中 ラインだと作業が途中になっても続きがやりやすいんですよ。尾崎くんとは今まででいちばんしっかりやりとりしながら歌詞をつくったかな。

加藤 「めくったオレンジ」もそうだけど、彼の女性の視点の歌は、なぜか男が泣けるんだよね。俺は谷中さんの書いた2番の歌詞も好きだけど。

谷中 尾崎くんは歌詞を書くとき主人公がどこに住んでいて、どんな仕事をしているか、とかまで設定するらしくて、フィクションをしっかり書く人。僕は自分が経験したことしか書けない方なので、小説家気質の彼からはかなり刺激を受けましたね。

加藤 今までのスカパラは、そのヴォーカリストの声を借りるという感じだったんだけど、今回はそのヴォーカリストのバックグラウンドや音楽の作り方まで巻き込んで一緒に出来たことが良かったね。

女性目線で書いたフィクションに滲む「谷中恋愛観」

唯一の女性ヴォーカリストである片平里菜さんをフィーチャーした「嘘をつく唇」には、どこか昭和歌謡のテイストもありますね。

谷中 彼女が昭和っぽい人というわけではなくて、GAMOさんの書いてきた曲の仮タイトルが「Night Life」だったんで(笑)、その時点で昭和を連想してしまって。あっ、この曲は俺、フィクションが書けているかもしれない。

加藤 そうだよ。谷中恋愛観がよく出ているよ。

谷中 尾崎世界観に対して、俺は谷中恋愛観で書こうと。

茂木 いっそ作詞するときは、名前も谷中恋愛観にしたら?(笑)

加藤 この歌詞も僕はすごく好きだな。絵が浮かぶし、やるせなくて。

谷中 それは嬉しい。女性目線の方がフィクションを好きに書けるところがあって、男だとどうしても歌う人のことや自分自身の人生についても考えてしまうんでね。Ken Yokoyamaくんとの「道なき道、反骨の。」は、彼の人生を語りつつ、そこにスカパラの歩みも投影させたくて、やり甲斐はある反面難しいところもあったけど、女の子だとそこから自由になれるんだろうね。

茂木 彼女の個性とはまた違う一面をスカパラで出せたら、という狙いではあったよね。〈忘れさせてよ。〉って言わせちゃう感じとかね。

谷中 彼女も「この曲の中では東京の女になってみました」って。

自分では言えないことを、スカパラでは女優のように役に徹して言えるところがあるんでしょうか。

谷中 そうだね。EGO-WRAPPIN’の中納良恵ちゃんもそういうところがあったね。曲によって自分の性格を変えられる表現力は女性ヴォーカリストならではかもしれない。

「道なき道」を切り開いたKen Yokoyamaとの必然的な出会い

アルバムにはKen Yokoyamaさんが参加した曲が、新曲「遠い空、宇宙の果て。」を含めて3曲収録されていますが、以前から交流はあったんですか?

谷中 大昔に連絡先を交換していて、たまに僕が書いた詩をメールで送ったりしていたんですよ。2015年の彼のアルバム『Sentimental Trash』の時にバリトンサックスで呼んでくれて、そこでぐっと距離が近づいたのかな。ある日、僕が送ったある詩を読んでくれて、「もし、スカパラで歌うことがあったら、こういう詩の世界を歌ってみたい」という返事が来て。

それは、どんな詩だったんですか?

谷中 「俺は世界を知っている。世界は俺を知っているのか」みたいな長い詩で、もちろん日本語。おっ、これはヴォーカリストに立候補か? と、嬉しくなってすぐに連絡しました。

スカパラもHi-STANDARDも、共に同時代に切磋琢磨してきたバンドではありますが、90年代はそれほど近いシーンにいたわけではないですよね。

加藤 そうですね。ただ、あれから十数年を経て、互いにそれぞれの道を歩みながら徐々にクロスオーバーしていく状況になっていった。Kenさんとのコラボはその象徴的な出来事だと思う。

茂木 お互いに、「切り開いてきたよね」という気持ちがあるからさ。だから、交わるときに、また何か切り開くことが出来たらという思いはKenさんも強かったんじゃないかな。しかも、日本語で歌うというのは、Kenさんの中では相当センセーショナルなことだったと思うよ。

ファンにとってもかなり衝撃だったはずですよね。

茂木 Kenさんが初めて日本語で歌う曲がスカパラというのも嬉しいよね。

加藤 ハイスタはインディーズで頂点を極め、僕らは僕らで、独自の道を切り開きながら時を重ねて、その間には道半ばでいなくなったバンドも沢山あったりしたけど、こうして出会えたのも何か必然的だったような……。だから、Kenさんがスカパラで歌ってくれると決まった時はけっこう感動しましたよ。

谷中 ライブでは SIONさんの曲を歌ったりすることはあったようだけど、オリジナルの曲を日本語で歌うのは初めてだから、歌詞はけっこう考えましたね。彼もスカパラも、お互いに「道なき道」を歩んで来たという思いがあるから、あの歌詞になったんですけどね。

茂木 「道なき道、反骨の。」は、「、反骨の。」という部分が重要なんだって谷中さんは押していたよね。俺たち、収まりの良い活動をしてきたわけじゃないから「、」も「。」も付けて「反骨」も入れないとなって。

谷中 若い子たちに「反骨精神」といっても、「あんたの時代とは違うよ」と言うのかもしれないけど、〈俺たちの時代も未来は見えなかった〉よと。今は道の歩き方についてお互い言い合うようなところがあるけど、「道なき道」でも自分の選んだ道を進んでいこう、と。

ある種、素朴というか飾り気のないKenさんのヴォーカルが、スカパラの熱い演奏とともに歌に込めた思いを際立たせていますね。

茂木 譜割りも小学生の子供たちが合唱できるようなところがあるし、それがピュアな味にもなっているよね。Kenさんにとって初めての日本語の歌という初々しさも含めて。

さらに、「さよならホテル」のようなラブソングまで歌うとは!

加藤 最初は「道なき道、反骨の。」1曲だけをお願いする予定だったのが、Kenさんが自ら「こっちも歌いたい」と言ってくれたのが「さよならホテル」だったから、お互いに新鮮だったね。

谷中 スカパラで歌ってもらうからには、お互いにとって新しい刺激がないと面白くないというのはいつもあるんだけど、今回はさらにあのKen Yokoyamaにラブソングを歌ってもらうというチャレンジをしてもらった。

茂木 大胆といえば大胆だよね。きれいに歌おうと思えば歌える曲を、イノセンスの塊のようなKenさんが歌う味を噛みしめてほしいね。

歌ものに負けないインストへの拘りと、ノー・ボーダーの感覚

シングルとして発表されたコラボ曲以外に、スカパラがスカパラたる所以のインストが今回は6曲。音楽的にも非常に興味深いものになっていますね。

加藤 インストも歌ものに負けないような曲にするために、ハードルはどんどん高くなっているんですよ。アルバムでインストを飛ばされるわけにはいかない! という気合いがいつにも増してあったかな。

さかなクンと共演した「Paradise Has No Border」にも驚かされました。

加藤 あの曲が、久しぶりのインストのヒットナンバーになったし、スカパラのインストの力を発揮できたという手応えがあったから、それに負けないポテンシャルを持った曲しか今回は残らなかった。

茂木 インストも、今まで知らなかった道に踏み出せるようなアレンジを施せるものにしたいと思ったし、「何だコレ!?」と思わせるくらい引っかかる曲でいきたかった。だから、アルバムの完成は気にしないで、1曲1曲トライを重ねて、そこでまだ新しい道を切り開いていなかったら、アルバムは出来ていなかったと思う。それくらい濃いものにしたかった。

谷中 1月に久しぶりに合宿して、皆でアイディアを出し合ったのが良かったね。

加藤 合宿で休憩も取らずに夜中まであーでもないこーでもないってアレンジを煮詰めていって、夜中の1時頃に飲み始めて、明け方に寝て、朝起きてまた始めるというその集中力がすごかった。

昨年のブラジル遠征の影響も「Believer」に表れていますね。

茂木 ブラジルは大きかったね。僕としては25年来の夢が叶ったわけだからね。

加藤 去年は2ヶ月で2回も行ったけど、ドアトゥドアで36時間。さすがに遠かったけど得るものはあったね。

茂木 あの遠さが良いんだって。簡単に行けないところもまた魅力なんだよ。

ブラジルのヒップホップ・アーティスト(エミシーダ)とのコラボなど、現行のブラジル音楽に直接触れたのは大きかった?

谷中 そう。今のブラジル音楽の息吹を肌で感じることでブラジルの深みと凄みを思い知ったし、ミュージシャンのレベルがすごく高いんですよ。クラシックとポップミュージックの境目がないというのも、彼らがボーダーレスな感覚を培ってきた要因なのかなと思った。

茂木 確かにあの想像を超えるアレンジの能力は、カテゴライズとは無縁のものだよね。まさにノー・ボーダー。

加藤 欧米の音楽を取り入れながら、ブラジル独自のカラーを生み出そうとしているところは、日本人にも通じるものを僕は感じたな。

茂木 ボサノヴァがこんなに日常的に流れているのは日本だけだし、サウダージの感覚とか、どこか響き合うものがあるんだろうね。

旅で培われた知恵とスピリット、世界で体感したスカの進化

今回のアルバムでは「天空橋」のような、日本の風土でしか生まれない曲も世界を股にかけて活動をするスカパラの真骨頂といえるのでは?

加藤 作曲者のNARGOも言ってたけど、「和」を出すことに抵抗を感じていた時期もあって、ツアーで海外に行くようになってからは、日本をフラットに捉えられるようになってきた、と。日本のロックのガラパゴス的な個性も、向こうではむしろ面白いものとして受けとめられていたりするしね。スカをこれだけ長く続けているバンドも世界でそう多くはないし、スカをさらに進化させ、未来に繋げていくには、こういうアプローチもアリだと思う。

「Samurai Dreamers <サビレルナ和ヨ>feat.TAKUMA(10-FEET)」にも、そんなスピリットが息づいていますね。

谷中 そうだね。僕らも日本中、世界のあちこち旅することによって、現実の素晴らしさを認識することが増えて、これって幸せなことなんだ、誇らしいことなんだ、と物事を肯定的に捉えるようになった。「天空橋」のようなオリジナリティがある曲が生まれたのも、色々旅した経験値と知恵があってこそだし、これからもそういう目利きではいたいと思う。

ジャマイカで生まれたスカを、世界でプレイしてきたスカパラだからこそ身についた知恵と価値観ということですね。

谷中 ジャマイカ本国では数年しか続かなかった音楽を、27年も続けているわけだからね。今、ラテン・アメリカ圏ではスカをベースにしているバンドは沢山いるし、アルゼンチンのロス・ファブロス・キャデラックスなんてメキシコで7万人を集客しているし、実際、進化し続けているんですよ。

加藤 今度、ザ・スペシャルズの来日公演でサポートアクトを務めることになったんですが、先輩方も復活を遂げてブイブイいわしてますから、まだまだ負けるわけにはいかない。

茂木 でも、スカパラは1回も活動を休止していないからね。

加藤 ザ・スペシャルズのメンバーやフィッシュボーンのアンジェロもアメリカのツアーを観に来て、先輩も「オマエら、ずっと続けてきたのか!」って感激してくれたよね。休まず、進化を止めず、現役でい続けることがやっぱり大事なんですよ。

谷中 「このアルバム、〇〇すぎる。」は、「現役すぎる。」にしようか?

加藤 ちょっと先輩感強すぎかな(笑)。

茂木 俺は「無邪気すぎる。」だな。だって、30周年も近づいているというのに、いまも無邪気に音楽を楽しめているんだよ。

加藤 そんな無邪気な姿を今後も若い世代に見せていきたいですね。


東京スカパラダイスオーケストラ 「遠い空、宇宙の果て。」MV-Short Ver.-

東京スカパラダイスオーケストラ 「Girl On Saxophone X」MV-Short Ver.-

ライブ情報

2017全国ホールツアー「TOKYO SKA Has No Border」

5月13 日(土)埼玉・川口総合文化センターリリア メインホール
5月21日(日)滋賀・滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
5月23日(火)大阪・フェスティバルホール
5月28日(日)北海道・わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)
5月30日(火)北海道・名寄市民文化センター EN-RAY-HALL
6月  2日(金)新潟・新潟テルサ
6月  4日(日)福井・フェニックス・プラザ
6月  6日(火)長野・長野県伊那文化会館
6月10 日(土)香川・観音寺市民会館
6月11日(日)高知・高知市文化プラザかるぽーと
6月14日(水)東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
6月17日(土)千葉・市川市文化会館
6月18日(日)神奈川・厚木市文化会館
6月23日(金)鳥取・米子市公会堂
6月24日(土)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
6月28 日(水)岩手・北上市文化交流センター さくらホール
6月30 日(金)静岡・静岡市民文化会館 中ホール  
7月  2日(日)鹿児島・宝山ホール(鹿児島県文化センター)
7月11日(火)東京・中野サンプラザホール
7月14日(金)愛知・日本特殊陶業市民会館フォレストホール
7月15日(土)広島・広島上野学園ホール
7月16日(日)福岡・福岡市民会館
7月20日(木)大阪・オリックス劇場
7月22日(土)和歌山・紀南文化会館
7月23日(日)京都・ロームシアター京都
7月27日(木)宮城・東京エレクトロンホール宮城

東京スカパラダイスオーケストラ

1989年、『TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA』でインディーズ・デビュー。1990年、シングル「MONSTER ROCK」、アルバム『スカパラ登場』でメジャー・デビュー。スカをベースに、ジャンルにとらわれない音楽性と、圧倒的なライブ・パフォーマンスで幅広い人気を獲得。2001年からはゲスト・ヴォーカリストを迎え、「めくれたオレンジ」「美しく燃える森」などのビッグヒットを放ち、アルバム『Stompin’ On DOWN BEAT ALLEY』は初登場1位を記録。以降も様々なゲスト・ヴォーカルとのコラボを行い、これまでにオリジナル・アルバム19枚をリリース。2000年からはヨーロッパ、北中米、アジアなど世界でツアーを敢行。昨年はブラジルでのライブを記念して、ブラジル向けのベスト盤をリリース。2009年にはスカパラ主催フェス“トーキョースカジャンボリー”を開催。進化を続けるスカのリーダー・バンドとして活躍中。

オフィシャルサイトhttp://www.tokyoska.net/