LIVE SHUTTLE  vol. 116

Report

くるり、優しさと頑固さでオーディエンスを包みこんだオールタイムベスト・ツアー最終公演

くるり、優しさと頑固さでオーディエンスを包みこんだオールタイムベスト・ツアー最終公演

『くるりの20回転』リリース記念ツアー「チミの名は。」
2017.2.27@Zepp Diver City TOKYO

昨年、結成20周年を機に初めてリリースされたオールタイム・ベスト『くるりの20回転』を携えてのツアー、その最終公演地である東京でのステージをレポート。複数のメンバー構成で、多彩な楽曲の魅力を自在に伝えるステージになった。

“名曲メーカー”のくるりが、デビュー20周年を迎えた。デビュー曲「東京」や「ロックンロール」、多くのアーティストがカバーしている「ばらの花」など、ロック界きってのソングライター岸田繁の活躍はご存知のとおり。そんな名曲を仕上げるにあたっては、佐藤征史のベースラインやボーカル・ハーモニーをはじめ、くるりに関わってきた多彩なメンバーのグルーヴやカウンター・メロディが大きな役割を果たしてきた。

今回の20周年を記念したツアー「チミの名は。」では、メンバーの一人であるファンファンが残念ながら産休しているが、その代わりに強力なサポート・メンバーたちを得て、代表曲をアップデートするライブが展開された。ただしセットリストに連なるのは、アニバーサリーとしてリリースされた全シングル収録の『くるりの20回転』からの曲は約半数で、一筋縄ではいかないところがくるりらしい。19時半というゆったりしたスタート時間が、詰めかけたファンとの長い時間を象徴している。

最初のセットは岸田と佐藤に加えて、ドラムはオリジナル・メンバーの森信行、ギターは山本幹宗、キーボードは野崎泰弘の5人。22枚目のシングル「愉快なピーナッツ」から演奏が始まる。続く8枚目のシングル「リバー」と、穏やかな明るさを持ったオープニングの2曲が会場を和ませる。

「めでたく21年目を迎えました。去年出したベスト・アルバムのツアーを今年やっとります。ということで、オリジナル・メンバーを連れて来ました」と岸田が森を紹介すると、会場からは大きな拍手が巻き起こる。「次はみんなに人気のない曲をやります」と、インディーズ時代の「夜行列車と烏瓜」に入る。シュールな歌詞とユニークなメロディを持つこの曲を、今回のツアーで披露したかったのだろう。人気があるのかないのかは分からないが、くるりの“原点”の一つを集まったファンに届けたいと言う思いが伝わってくる。ドラムの森がコーラスに参加している姿に、心が温かくなる。次の「尼崎の魚」では、初期のくるりのオリジナリティの高さを再確認したのだった。

ここでメンバーが、ドラムはクリフ・アーモンド、ギターは松本大樹に交代する。クリフは2005~6年にかけてくるりをサポートし、最近のアルバム再現ライブにも参加している。独特のグルーヴを持つドラマーで、人気アルバム『アンテナ』の「Morning Paper」でその特長を発揮。タイトなロックに貢献する。応えて岸田は、クリフの方を向いて爆発的なギターを弾き、オーディエンスが歓声を上げる。かと思うと、ジャズ風歌謡曲の「京都の大学生」では落ち着いた4ビートのドラムを提供。安定したリズムに乗って、ハンドマイクで気持ちよさそうに歌う岸田の思いをしっかりと受け止めていたのが印象的だった。

ここまで聴いてきて、くるりの曲のバリエーションの広さに改めて舌を巻く。軽快なカントリー調の曲もあれば、狂気をはらんだ実験的なロックもある。スタンダードとも言うべき、雄大なメロディの「Tonight Is The Night」を歌い終えると、岸田は「これはシングルになりませんね。内面のエモーショナルさが際立つ曲なんですが」と冗談めかして語っていたが、そこには自分の書いた“名曲”に対する自負がのぞいていて、このライブのもう一つの意味が垣間見えて興味深かった。

終盤は全員がステージに揃う。2ギター、2ドラムの迫力あるサウンドが炸裂する。25枚目のシングル「o.A.o」では松本と山本がミュートした音色で美しいギター・リフを刻み、クリフが難しいはずのテンポのリズムを正確に叩く。森はと言えば、メインのドラムをクリフに任せて、ハイハットだけを刻んでいる。総力を挙げてくるりの20周年を祝う演奏に、胸が熱くなる。

そんなサポート・メンバーの献身的なプレイを背に、岸田はさらに狂気を増して「Long Tall Sally」をアバンギャルドに歌う。もしかするとこのツアーは、信頼の置けるメンバーを揃えて、岸田がボーカリスト&ギタリストとして自分の名曲を楽しむために行なっているのではないかと思うほど、彼は楽しんでいた。

「Superstar」や「ロックンロール」、「HOW TO GO」などの人気曲をオーディエンスのために歌った後、岸田は「街」、「虹」という非常にパーソナルな歌でライブを締めた。京都の匂いが濃厚なこの2曲は、岸田そのものであり、オーディエンスは集中して聴き、大きな拍手と歓声を岸田に贈ったのだった。

アンコールに岸田はひとりで現われ、「やって欲しい曲があったら、弾き語りでやります」とオーディエンスのリクエストを募ったから驚いた。会場から様々な声が上がる。ひとしきりしたところで、「では、鹿児島の民謡を歌います。“鹿児島おはら節”」。なんのことはない、岸田は自分の歌いたい歌を歌うのだ。岸田はディープな民謡を、新しい和音解釈で歌う。そのタッチは矢野顕子のアプローチに似ている。ほがらかな歌だった。

そしてオーディエンスが聴きたいと思っている「Baby I Love You」を歌う。弾き語りでしか味わえない素晴らしい出来だった。

バンドが合流して「ばらの花」など、もう3曲。派手なお祭りではなかった。が、くるりの優しさと頑固さが、オーディエンスを充分に満足させた「チミの名は。」だった。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 岸田哲平

『くるりの20回転』リリース記念ツアー「チミの名は。」
2017年02月27日@Zepp Diver City TOKYO

セットリスト
1.愉快なピーナッツ
2.リバー
3.夜行列車と烏瓜
4.尼崎の魚
 *Dr:森信行/G:山本幹宗
5.BIRATHDAY
6.Bus To Finsbury
7.Morning Paper
8.Tonight Is The Night
9.琥珀色の街、上海蟹の朝
10.ふたつの世界
11.京都の大学生
 *Dr:クリフ・アーモンド/G:松本大樹
12.o.A.o
13.Long Tall Sally
14.Superstar
15.ロックンロール
16.Ring Ring Ring!
17.HOW TO GO
 *Dr:クリフ・アーモンド&森信行/G:松本大樹&山本幹宗
18.街
19.虹
 *Dr:クリフ・アーモンド/G:松本大樹&山本幹宗

EN1.鹿児島おはら節
EN2.Baby,I Love You
 *岸田弾き語り
EN3.ばらの花
 *Dr:森信行/G:山本幹宗
EN4.WORLD’S END SUPERNOVA
EN5.Liberty&Gravity
 *Dr:クリフ・アーモンド&森信行/G:松本大樹&山本幹宗


くるりの20回転
くるり

2016年9月14日発売
全38曲


くるり

メンバーは岸田繁(vo&g)、佐藤征史(b&vo)、ファンファン(tp&key&vo)。1996年9月頃、立命館大学(京都市北区)の音楽サークル「ロック・コミューン」にて結成。古今東西さまざまな音楽に影響されながら、旅を続けるロックバンド。98年、シングル「東京」でメジャー・デビュー。以来、これまで11枚のオリジナル・アルバムを発表。2016年9月に、初めてのオールタイム・ベスト『くるりの20回転』をリリースした。

オフィシャルサイトhttp://www.quruli.net

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