LIVE SHUTTLE  vol. 118

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ザ・コレクターズが30周年に日本武道館公演を実現。観客とバンド仲間の愛に包まれたステージ

ザ・コレクターズが30周年に日本武道館公演を実現。観客とバンド仲間の愛に包まれたステージ

メジャー・デビュー30周年を迎えたザ・コレクターズが3月1日に行った初の日本武道館公演〈”MARCH OF THE MODS” 30th Anniversary〉。この記念すべきライブについて、直前のインタビューで加藤ひさしと古市コータローは「サクセスストーリーみたいには映らないと思う」と語っていた。果たして、彼らはどんなパフォーマンスを見せたのだろうか?

武道館ライブ直前インタビューの記事はこちら

取材・文 / 青木優 写真 / 柴田恵理


まだまだ俺たちには行くところがあるんだよ

加藤ひさしの予告どおり。コレクターズのエキサイティングなロックンロールが武道館で炸裂した。本当に、最高の夜だった。

「ようやく身の丈に合った場所でライブできる……ああ~、30年かかった!」

加藤は感慨深そうに言った。自分の体調を気遣い、週末からの数日間は「引きこもり生活」を送ってきたとのことで、その成果か、声の伸びがいい。バンドの出音は野太く、音色は豊か。4人は自分たちの現在形を見事に見せてくれた。

武道館という場所ならではの演出も多彩だった。幕開けは、彼らの30年の歩みをコラージュした映像とDJ MIX的な音楽。舞台の真上に吊るされた円環状の巨大照明は色鮮やかで、特にそれが青・白・赤から成るモッズのターゲットマークを描いた瞬間にはスタッフの心意気を感じた。「青春ミラー」でのレーザー光線の乱射、本編ラスト「百億のキッスと千億の誓い」でのフラッシュライト。タフでロックな音響も素晴らしかった。

最も、バンドがやっていることはいつもどおりだった。例えばモータウン調のダンス・ナンバー「プ・ラ・モ・デ・ル」で加藤が「みんな、踊れるスペースはあるかい?」と前置きするのも、彼が古市コータローとライブハウスのトイレ事情についてくだけすぎのMCをしてしまうような流れも、そう。会場が大きくなってもコレクターズは自分たちのやり方を押し通した。それも良かったと思う。

とはいえ、バンド自体の変化はある。「加藤くんとは35年以上の付き合い」というベースの山森“JEFF”正之が加入したのは3年前のこと。そして昨年の後半から加わり、今年から正式メンバーとなったドラムスの古沢“cozi”岳之のビート感は、いままでのコレクターズからすると、ややアッパーだ。おかげでこの半年と少しの間にバンドが生まれ変わったかのような緊張感が生まれた。そのフレッシュ感はこの武道館においても4人の気持ちをピンと張らせる効果をもたらしているように思う。

昔から貫かれているものがある。そんななかで、変わっていっていることも、進化していることもある。そんな変化、あるいは成長こそが人間であり、バンドというものだ。ライブ中にそうした30年という時間の経過を感じる局面は多々あった。

最新アルバム『Roll Up The Collectors』からの「悪の天使と正義の悪魔」は、善悪という概念の狭間で揺れ動く想いを歌ったロックンロールである。「正しい答えなんてあんの???」。日々直面する現実はそう簡単ではないし、かといってあっさり割り切れる自分ではない。加藤ひさしはこうした内面の葛藤を……そう、後半に歌われた「NICK! NICK! NICK!」を筆頭に、一貫して歌ってきた。その“答え”は大人の年齢になった現在でも出ていないし、むしろ様々な現実を知ったぶん、張り裂けそうな感覚はいっそう深くなっているはず。年齢を重ねること、大人になることとは、大きな悩みや迷いを抱えながら、それでも生きていこうとすることなのだ。

また、中盤で歌われた「2065」は、まだ若かりし日の加藤が自分たちの未来を想像しながら描いたロック・オペラ的なバラード。こうした未来への感情は後年になってもいくつかの曲で示されていて、そのひとつがこの夜の終盤に差しかかるところに配された「未来のカタチ」だ。しかしこの歌が書かれたのも、もう12年前なのである。「ボクら夢みてた 未来とおんなじ景色かい?」……曲のエンディングに向かって熱を帯びていく演奏に浸りながら、昔のコレクターズに、昔の自分たちに、つい気持ちが及んでいく。

長年このバンドに接してきた者としては、どうしてもこんなふうに過去のことが頭をよぎってしまう。思い返したのは、彼らの周囲にいた人たちのことだ。例えばかつてのマネージャー氏のこと、あるいはTRIADレーベルのスタッフたち。コレクターズをなんとかヒットさせようと頑張っていたあの人たちのうちの何人かは、今ではもうこの世からいなくなってしまっている。きっと今夜は武道館の上空から見てるのかな、と思ったりした。この30年間、バンドに関わった中には、もう会えない人も、去って行ってしまった人も多いのだ。

その一方で、昔に比べると、コレクターズの周りにはずいぶんといろいろな人が増えたものだと思う。特に仲間と呼べるような連中の数の多さには驚くばかりである。

「ピロウズとかさ、怒髪天とかフラカン、それにスピッツやBRAHMANがここの何パーセントかを集めてくれたんだよ」

「ソールドアウトまであと7人!」とコータローが告げて湧いた客席を見渡しながら、加藤が言った。そう、この武道館に至るまでには、実に多くのアーティストたちが彼らに力を貸してきた。一昨年の〈ARABAKI ROCK FEST.〉での一大セッション、去年の「愛ある世界」新録版に参加した顔ぶれ。対バンの数々、今夜の告知をした友人たち。この武道館のカウントダウン特設サイトに、ミュージシャンを中心とした多くのクリエイターが顔を見せたのをご存じのファンも多いだろう。しかも今日は“ロックンロール互助会”と呼ばれるミュージシャン仲間(フラワーカンパニーズのグレートマエカワ、Scoobie DoのMOBY、the HIATUSのウエノコウジなどなど)が昼のうちから前祝いの杯を交わしたのちに乗り込んできたというし、ライブ前の会場正面では加藤が出演したCMの関係でBRAHMANのTOSHI-LOW、ストレイテナーのホリエアツシ、RHYMESTERのMummy-Dの“シーチキン兄弟”が漁師姿で大漁旗を掲げ、酒盛りをし、チケットのもぎりをしたとのことである。

ファンのほうも負けじと熱心で、ライブ前には渋谷から武道館までの間のスクーターランが行われた。まるでモッズ映画の聖典『さらば青春の光』の1シーンだ。加藤の出身地である埼玉・熊谷の八木橋百貨店は、この武道館へのバスツアーを企画。そして会場周辺では、まさに加藤の衣裳のようにユニオンジャックがデザインされた服や、モッズ系のスーツやコートに身を包んだ観客の姿が目立った。そうした光景はコレクターズのライブではいつものことだが、舞台が武道館だとスペシャル感が一層増す。どこを見ても、どの話を聞いても、コレクターズが本当に愛され、この武道館が心から祝福されているのがわかる。幸せなバンドだと思う。

ただ、ここまでの状況が出来上がるまでには、この30年という時間が必要だったのかな、とも感じる。というのは、かつてのコレクターズにはこうした交流はほとんどなかったからだ。

もちろんミュージシャン筋からの根強い支持はあったし、熱心なファンもいた。だけど印象としては、バンドのほうが横の繋がりを求めようとしない傾向があった気がする。自分たちの企画ライブは打つにしても、いわゆる対バンには消極的。彼らが日本のほかのバンドを褒めた記憶は皆無に近い。2000年代の前半頃までは、このバンドといい関係にあるミュージシャンは、加藤とユニットを組んだROLLYと、同じコロムビア傘下に所属したピチカート・ファイヴぐらいしか思い浮かばなかった。

それには、おそらく彼らのプライドがあったのだと思う。その背景に見えるのは音楽シーンへの違和感、もっといえば不信感。それは、そう、先だってのインタビューで2人が話してくれたとおりだ。

そこに僕は、洋楽ロックを原体験とする彼らの意識を感じる。しかもコレクターズの最大のルーツはモッズ・カルチャーだ。加藤はビートルズをバンドのひとつの理想像に挙げてはいるが、音楽面ではこの日の開演前にも場内に流れていたザ・フー、あるいはザ・ジャムやシークレット・アフェアーのようなモッズ・バンドからの影響のほうが多大である。

「誰かがレインボーブリッジを封鎖したおかげで、着れなくなっちゃったよ(笑)」

ライブの中盤、あえて15㎏のモッズコートを着た加藤のこの言葉の裏には、90年代、織田裕二主演の『踊る大捜査線』のヒットによって、この服が大量に出回った背景がある。他人と同じ服なんか着たくない! 当然だ。そしてここで演奏された「僕の時間機械」は、まさにモッズなビート・ナンバーである。このライブのタイトルである〈MARCH OF THE MODS〉は、モッズたちに親しまれ続けている言葉であり、今でも行われているイベントの名称なのだ。

こうしたモッズ発信のカルチャーに、ピンク・フロイドのようなサイケ指向、ザ・キンクスやXTCを経由したヒネくれた批評性などが備わりながら、コレクターズの土台は形成された。とはいえ今、こうした屈折感は読者に伝わりづらいだろうなとも思う。洋楽に興味がない音楽ファンには「そんなマニアックな話を」と思われるだろうし、それなりに知っているリスナーは逆に「そんなの昔のロックの王道じゃね?」と感じるだろう。しかし現実的には、当時のこうしたバンドは洋楽ロックによっぽど浸った者しか聴かないような音楽だった(なにしろザ・フーだって、そんなには知られていなかったのだ)。そうした音楽的な土壌から咀嚼/解釈したものを日本語詞で展開したからこそコレクターズは無二の個性を放っていたのだが……残念なことに、それが巷に理解されるまでには繋がらなかった。

だからコレクターズはいつも孤高だった。大勢になびかない頑なさ、貫こうとする自分たちの流儀、バンドとしての矜持。もっとも、マニアだけが喜ぶような音楽ならそれで済むのだが、加藤はポップ・メロディの名手であり、バンドの演奏だって開けてて、最高だ。さらにお互いくだらない話をやたらと面白く話してしまうコータローとのキャラ配分もあり、「一部の人気で済んでいいバンドじゃない!」という想いをいつも周囲に喚起させた。彼らはこうした要素が絡み合ったまま、ここまで来たのだ。

で、この気運が少しずつ変わり始めたのは、彼らをリスペクトするアーティストたちが曲を書き下ろした2006年のアルバム『ロック教室〜THE ROCK’N ROLL CULTURE SCHOOL〜』あたりからだろうか。2008年にはベスト盤『OH! MY MOD!』を大のコレクターズ・ファンであるthe pillowsの山中さわおが選曲。2009年からは例のPodcast番組『池袋交差点24時』がスタートし、このバンドのユーモラスな側面が知られ始める。2010年にはthe pillows主催の怒髪天、Theピーズ、TOMOVSKYと一緒に各地を廻る〈Born in the ‘60s Tour〉、通称“おっさんツアー”が敢行される。そういえばその年明け、2011年初めの東京公演では怒髪天の増子直純がバンドを呼び込むMC役を任されていた。

ちなみに加藤は武道館のステージで、こちらも6月に初の武道館公演を行うTheピーズを応援する旨を話したが、再び先日のインタビューの中で彼がバンド・ブームの時代に呆れていたバカロックとは、当時のTheピーズが呼ばれていたジャンルのことである。まったく、時間は巡るものだ。

こうした一連の中で、山中さわおのみならず、多くの同業者たちが「コレクターズ、最高です!」と意思表示をし、口にするようになった。中には「面白い大人たちだよね」みたいなのもあったが、その裏にはあくまで彼らの音楽が認められているのが前提だったということは特記しておきたい。それまで静かに交わされていた「コレクターズはいいバンド」という言い方が、2010年代に入り、ようやく音楽ファンの間で実体化されていったのだ。

そして今夜、加藤がアンコールで「何度も言うけど」と、そうしたミュージシャン仲間への謝辞を述べるのを見て、人は変わり、成長していくのだなという感慨を、僕は抱いた。

「まだまだ俺たちには行くところがあるんだよ。それは東京ドーム!」

アンコールの最後はバンドの代名詞「僕はコレクター」だった。客席にガムが飛び交う「CHEWING GUM」は、物を投げてはいけないという会場の規約のためセットリストからはずしているとあらかじめPodcastで告知されていたので、もうクライマックスである。この夜の「僕はコレクター」は間奏部分のパフォーマンスがいつもより長めで、その間、加藤とコータローは左右のスタンド席のそばまで歩み寄り、オーディエンスとタッチを交わし、すぐ目の前で演奏した。そのアリーナ会場ならではの光景に胸が熱くなる。僕がコレクターズが本当に武道館でやっているという事実を実感したのは、この瞬間だった。

「この光景を見るのが夢だった! みんなも、バンドをやってる連中も……絶対、できるから。何年かかっても、やってくれ!」

他人に対して夢や理想がどうこうなんてまったく言わなかった男が、この場でそう叫んだ。コレクターズの熱さの芯が見えた場面に、つい拳を握ってしまう。これもまた人間の成長と時間の経過を感じさせてくれた瞬間だった。

ダブルアンコールは「恋はヒートウェーヴ」。モッズが愛したモータウン・ナンバーの日本語カバーだ。2時間半のステージは、興奮はあったけど、涙はなし。4人が手を繋いでの礼やバンドと観客との記念撮影などもなく、サクッと終わった。これも彼ららしかったと思う。

帰路に着く頃、武道館の外は「夢見る君と僕」の歌詞のとおり、「雨降りの水曜日」だった。30年前、この歌で淋しさを歌っていた少年は今、「踏みつぶしてしまえ」と糾弾したはずの大人の年齢にとっくになっている。だけど彼は、きっと今は今で、また別の孤独感を抱えているのではないかと思う。それが人間ってやつで、生きるってことなのだ。

だけどあの少年は今夜ここで、たしかに“夢”をひとつ実現させた。信念を曲げることなく、たくさんの仲間たちに支えられながら。

そしてそこで鳴ったのは、本当に最高の、エキサイティングなロックンロールだった。


Roll Up The Collectors
THE COLLECTORS

2016年12月07日発売 全10曲


補足情報を見る

“MARCH OF THE MODS” 30th Anniversary 2017年3月1日@日本武道館

M01. 愛ある世界
M02. MILLION CROSSROADS ROCK
M03. TOUGH
M04. 夢見る君と僕
M05. たよれる男
M06. プ・ラ・モ・デ・ル
M07. 世界を止めて
M08. 悪の天使と正義の悪魔
M09. 2065
M10. ロックンロールバンド人生
M11. 僕は恐竜
M12. 未来のカタチ
M13. 僕の時間機械
M14. Dog race
M15. インスト(Space Alien)
M16. 青春ミラー(キミを想う長い午後)
M17. NICK! NICK! NICK!
M18. Tシャツレボリューション
M19. 百億のキッスと千億の誓い
EN01. ロマンチック・プラネット
EN02. TOO MUCH ROMANTIC!
EN03. 僕はコレクター
W-EN01. 恋はヒートウェーヴ

THE COLLECTORS 30th Anniversary TOUR “Roll Up The Collectors”

2017年6月10日(土)渋谷 CLUB QUATTRO
2017年6月16日(日)甲府 KAZOO HALL
2017年6月22日(木)大阪 Music Club JANUS
2017年6月24日(土)松阪 M’AXA
2017年7月1日(土)岡山 IMAGE
2017年7月2日(日)松江 AZTiC canova
2017年7月8日(土)岐阜 ants
2017年7月9日(日)浜松 FORCE
2017年7月14日(金)青森 Quarter
2017年7月16日(日)盛岡 CLUB CHANGE WAVE
2017年7月17日(月・祝)郡山 CLUB#9
2017年7月22日(土)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2017年7月23日(日)熊谷 HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1
2017年7月29日(土)鹿児島 SRホール
2017年7月30日(日)熊本 B.9 V1
2017年8月5日(土)神戸 VARIT.
2017年8月6日(日)京都 KYOTO MUSE
2017年8月13日(日)高崎 club FLEEZ
2017年9月15日(金)広島 セカンド・クラッチ
2017年9月16日(土)福岡 DRUM LOGOS
2017年9月18日(月・祝)名古屋 CLUB QUATTRO
2017年9月23日(土・祝)仙台 CLUB JUNK BOX
2017年9月24日(日)宇都宮 HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
2017年10月6日(金)札幌 cube garden
2017年10月8日(日)水戸 LIGHT HOUSE
2017年10月14日(土)沖縄 桜坂セントラル
2017年10月22日(日)長野 LIVE HOUSE J
2017年10月26日(木)大阪 BIGCAT
2017年10月28日(土)高松 MONSTER
2017年10月29日(日)高知 X-pt.
2017年11月3日(金・祝)中野サンプラザホール

ザ・コレクターズ

加藤ひさし(vocal)、古市コータロー(guitar)、山森“JEFF”正之(bass)、古沢“cozi” 岳之(drums)。1986年に加藤と古市が中心となって結成。1987年11月にアルバム『僕はコレクター』でメジャー・デビュー。1991年1月にリズム隊のメンバー・チェンジを行ない、小里誠(bass)と阿部耕作(drums)が加入。2014年3月末、ベースの小里が脱退、山森“JEFF”正之が加入。2016年4月に結成30周年に日比谷野外大音楽堂公演を開催。6月にドラムの阿部が脱退。9月には30周年記念CD BOX SET『MUCH TOO ROMANTIC!〜The Collectors 30th Annivasary CD/DVD Collection』とBEST ALBUM『Request Hits』、12月には22枚目となるオリジナル・アルバム『Roll Up The Collectors』を発表。

オフィシャルサイト

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