原田泰造xコトブキツカサの<試写室噺(ばなし)>  vol. 8

Interview

原田泰造とコトブキツカサが、怖面白い韓国サスペンス『お嬢さん』『哭声/コクソン』を謎解き

原田泰造とコトブキツカサが、怖面白い韓国サスペンス『お嬢さん』『哭声/コクソン』を謎解き

ハリウッド進出も果たしたパク・チャヌク監督が韓国に戻って完成させた官能的なミステリー作『お嬢さん』。そして、『チェイサー』『哀しき獣』で鮮烈な印象を残したナ・ホンジン監督が新たに挑んだ衝撃作『哭声/コクソン』。世界中の映画祭などで話題を呼んできたパワフルな韓国映画2本が、奇しくも同時期に日本公開される。お互いに韓国映画はよく観ているという原田泰造さんとコトブキツカサさんに、才気あふれる監督とレベルの高い韓国俳優たちの演技を湛えつつ、じっくりと語り合っていただきました。


コトブキ 今月は強烈な韓国映画を2本立てで話していこうと思います。まずはパク・チャヌク監督の『お嬢さん』。僕と泰造さんにとって、パク・チャヌク監督の作品といえば『オールド・ボーイ』ですよね。一緒に観に行きましたから。

原田 『オールド・ボーイ』もそうだけど、『お嬢さん』も対談では話しにくい作品だよね。ストーリーにもキャラクターにも仕掛けがいろいろあるからまだ観てない人に対しては何も言えないね(笑)。ただ映像の雰囲気がとにかく凝っていて、江戸川乱歩の作品を映像化したような感じだよね。

コトブキ まさにそうですよね。美術や衣装だけでなく、ストーリーが二転三転するミステリー要素も含めて乱歩的だと思います。それに『イニシエーション・ラブ』のような、語り手によって話がどんどん変わっていくという映画的な楽しみがありますよね。

原田 観てて思わず騙されちゃうというのは、脚本がよく出来てるだけでなく、役者さんたちの演技も凄いからだと思う。このスッキ役のキム・テリは新人さんらしいけど、本当に頑張ってた。秀子お嬢様役のキム・ミニさんも、朗読会のシーンとか素晴らしかったよね。

コトブキ あのあたりはパク・チャヌク監督の考えるフェティシズムが爆発してますよね。すごい内容の本をお嬢様が朗読して、金持ちたちが見守っているっていう。

原田 あの朗読会、需要と供給がどうなってるのかよくわからないよ(笑)。でも画面がすごく濃密で凝ってるから見入ってしまうんだよね。作品を通してこういうフェティッシュな場面が多くて、直接的なベッドシーンじゃない何気ないシーンとかでもすごく官能的に撮ってる。それにちょっとコミカルな雰囲気もあるから、重くないんだよね。

コトブキ ビジュアルはオドロオドロしくて、先の読めないミステリーではありますけど、これはやっぱりコメディだと僕は思いますね。重厚でクセのあるトーンではありながらも、現場ではみんな笑って作ってる感じがするんですよ。パク・チャヌクを筆頭に「ここまでやったらギャグになっちゃう」っていうギリギリを狙っているような(笑)。

原田 日本統治下の朝鮮半島が舞台なので、韓国の俳優さんが日本語のセリフを話すんだけど、やっぱり僕らとしてはちょっと聞きづらい所もあって、それが違和感として残っちゃうっていうのもあるかもね。

コトブキ 日本人俳優がハリウッド映画に出て英語を喋るとき、向こうの人にはこんな感じで響いてるのかなって思いましたね。でも、今作のハン・ジョンウは、その日本語が拙い部分も含めて味にしちゃってる感じもあって良かったですね。

原田 すごい俳優さんだよね。迫力もあるし、哀愁もあって。とにかく『お嬢さん』は役者さんがみんな上手かった。次に話す『哭声/コクソン』もそうだけど、韓国の俳優さんはみんなレベルが高くて驚くよね。

コトブキ 『哭声/コクソン』はいかがでした?

原田 映画の情報をまったく入れない状態で観始めたんだけど、最初はゾンビ映画かなって思ったんだよね。

コトブキ なるほど。かなりホラーっぽい雰囲気もありますからね。

原田 國村隼さんの演技がすごいなとか思いながら観てたんだけど、途中で祈祷師役のファン・ジョンミンが出てきたときに「ココから闘いが始まるんだ!」ってすっごいワクワクした(笑)。僕が「いま海外で好きな役者さんは?」って聞かれたら、マーク・ラファロとファン・ジョンミン、この二人って答えるくらい好きなので。

コトブキ 泰造さんはファン・ジョンミンが主演した『国際市場で会いましょう』が大好きでしたよね。たぶん、今作のキャストではファン・ジョンミンが一番有名ですけど、中盤あたりでやっと出てくるんですよね。

原田 もう「待ってました!」っていうタイミングなんだよね。西部劇のヒーローの登場みたいに登場してさ、ヒューって口笛吹きながら呪いを察知したりしてカッコいいんだよ。でも、そこからまた話が二転三転していくんだけどね。

コトブキ ファン・ジョンミンは陽性のキャラクターなので、出てくるだけでちょっと雰囲気が変わるんですよね。だから今回はコメディリリーフ的な存在なのかと思ったんですよ。でも、そんな単純なことではなかった。これ、最初は『チェイサー』や『哀しき獣』の同じようなダーク路線のミステリーなのかと思うんですけど、もう最後は、そういう謎解きとかじゃない世界に入っていく。映画なんて、10人観たら10人の意見があるだろうけど、本当にこれは10通りに分かれるでしょうね。

原田 これほど人に薦めたいんだけど、でも自分の感じ方が伝わらないだろうなって思う映画はないよね(笑)。

コトブキ ワケわからないですからね(笑)。監督がいうには、どんな解釈でも間違いじゃないということですけど、でもヒントは散りばめられてはいるので、その細かい所を拾っていくしかないんでしょうね。

原田 正解は無いというのはわかったけど、ちょっとすり合わせしていい(笑)? 國村さんが演じた「よそもの」とファン・ジョンミンが演じたイルグァンはグルだったの?

コトブキ いやいやいや、そんな明確にグルだったっていうのはないでしょ?

原田 チョン・ウヒが演じたムミョンは?

コトブキ あれは、この世のものじゃないでしょうね。でも、ハッキリしてるのはイルグァンとムミョンは敵対してますよね。

原田 あの二人がすれ違うシーンは凄かったよね。ガーってすごい量で(笑)。ああいうシーンって、シチュエーションが大事じゃない? このあいだ観た『ネオン・デーモン』では、あえて綺麗なところで血を吐いたりするのね。でもこの映画は田舎の農家の前で何気なくやるじゃない(笑)。あそこは名シーンだと思う!

コトブキ 僕がオススメする名シーンは、トラックに武器を乗せて、行くぜっていうところですね。いろんな武器の中に、牛骨がポーンって出てくるんですよ! 牛骨といえば、『悲しき獣』のキム・ユンソクの武器なんで、観てて「牛骨キター!」って大興奮しましたね。

原田 この映画も、怖いシーンだけじゃなく、ちょっと笑えることを入れてくるよね。最初にムミョンが石投げてるシーン、あれも最初はちょっとしたギャグにみえるじゃない。でも、あの人、この世のものかもわからない役じゃない。あとであの時会ったのは夢だったとか、夢じゃないとか言い出して、ほんとに訳がわからなくなって怖くなってくるよね。

コトブキ 俳優たちの演技が本気なので確かなリアリティはあるんですけど、この世のモノなのかどうかもわからないですよね。

原田 これ、監督が役者一人ひとりにちゃんと見せ場を作ってるっていうか、役者として闘わせてるんだよね。僕が一番凄いなと思ったのが、娘役のキム・ファニ。あの演技が異常なくらいリアルなんだよ! もう何をみせて、どうやって演技をさせてるのかってことすら全く予想がつかない。演出なのか、それともキム・ファニが自分で考えてやってるのか、それすらもわからないぐらいの演技なんだよね!

コトブキ 思春期特有の、親父をちょっと毛嫌いするような間柄を見せたと思ったら、悪魔が取り憑いてすごい表情になったり。

原田 そう! たぶん監督はキム・ファニに全愛情を注いで演出したと思う。他の役者さんたちもすごいよね。國村さんの最後のシーンとか、震えなかった? あの場面を演じるのは役者冥利に尽きるよね。

コトブキ あそこで國村さんが「俺のことがどう見える?」って聞くんですよね。それは映画を観てる観客にも問われている。これは個人的な超空想的な解釈なんですけど、國村さんの「よそもの」と、ファン・ジョンミンのイルグァンは同一人物なのかなとも思うんですよ。

原田 なるほどね。

コトブキ それでこのムミョンっていうのが、一番悪いやつなんじゃないかと。あくまでも、僕はそう理解したって話ですよ。

原田 答えはないからね。でもこれ、例えばカップルで観に行くじゃない、そのあとどういう話をするんだろうね(笑)。

コトブキ そうやって人と話すことまで含めてこの映画ってことなんでしょうね。

原田 『コクソン』も『お嬢さん』も濃い部分があるから、万人にお薦めしますっていう作品ではないかもしれないけど、どっちも映画としてすごく面白いからぜひ多くの人に観て欲しいよね。

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鑑賞前後の二度読み必須。國村準出演・恐怖の韓国スリラー『哭声/コクソン』を紐解くティーチイン

映画『お嬢さん』

全国公開中

 

【監督】パク・チャヌク
【キャスト】
キム・ミニ キム・テリ ハ・ジョンウ チョ・ジヌン
【配給】ファントムフィルム

オフィシャルサイトhttp://ojosan.jp

映画『突声/コクソン』

2017年3月11日公開

 

【監督】ナ・ホンジン
【キャスト】
クァク・ドウォン ファン・ジョンミン 國村隼 チョン・ウヒ
【配給】クロックワークス

オフィシャルサイトhttp://kokuson.com

 

コトブキツカサ 原田泰造

原田泰造

1970年生まれ。“ネプチューン”のメンバーとして、バラエティ番組などで活躍。俳優としてもドラマ、映画、舞台などで高い評価を得ている。

コトブキツカサ

1973年生まれ。日本工学院専門学校放送・映画科非常勤講師。映画パーソナリティとしても注目を集め、コメンテーターやイベントMCなどで活躍。雑誌連載やテレビレギュラーも多数。

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