Interview

デーモン閣下に、純邦楽器も取り入れた約5年ぶりに発売となるソロ作品の全貌を訊く

デーモン閣下に、純邦楽器も取り入れた約5年ぶりに発売となるソロ作品の全貌を訊く

デーモン閣下の、約5年ぶりとなるソロアルバム『EXISTENCE』がリリースされた。
魔暦17 (2015)年、聖飢魔IIは地球デビュー30周年を記念し期間限定にて再集結、その間に行った2本の大黒ミサツアーと武道館2DAYSファイナル公演は「全公演満員札止め」という大成功を収め、解散後にしてなお増大し続ける絶大なるパワーを見せつけられたのも記憶に新しい。
聖飢魔Ⅱは魔暦18(2016)年2月に期間限定活動を終え魔界に帰還したが、本年2017年にデーモン閣下の魅力を十分に発揮するHM/HRを基調とするアルバムが完成。盟友であるスウェーデン人サウンド・プロデューサー、アンダース・リドホルム氏と制作され、デーモン閣下書下ろし新曲に加え、今回は豪華ゲストが参加している。聖飢魔Ⅱの熱狂的な信者であり、30周年再集結にて関係が深まった芥川賞作家・羽田圭介氏、コラムニスト・ブルボン小林氏、「テラフォーマーズ」(コミックス・アニメ)原作者・貴家悠氏が作詞を担当している。
収録された全ての楽曲がそれぞれに個性的で、高揚感がある楽曲の数々に打ちのめされる。日本語の表現方法を突き詰めた歌詞へのこだわりも非常に感じられる興味深い取材となった。

取材・文 / 田中隆信 撮影 / 荻原大志


羽田圭介氏、ブルボン小林氏、貴家悠氏が作詞で参加した『EXISTENCE』の制作過程

5年ぶりのソロアルバムになりますが、いつ頃から制作を始められたのですか?

昨年の春、聖飢魔IIの活動が終わった頃に「(ソロアルバムを)1年後ぐらいに出そうか」という感じで始まって、最初は「どんなアルバムにしようか」というところからだね。アルバムを作ることは決定したんだけども、夏から秋にかけていろんな種類のライブ、コラボレーションが既に予定に入っていて、それぞれ練習してはライブ、練習してはライブという中で、ちょこちょこ隙間を見つけては準備をしていったので、本格的に制作やレコーディングが始まったのはそれらが一段落した秋だったね。

12曲収録されていますが、作った時期というのは。

3曲目の「Forest of Rocks」は5年前の仮面ライダー映画の主題歌だったから、前に出したアルバム(MYTHOLOGY)と同じ年の冬にシングルとしてリリースした曲なのでもう随分古い曲になる。それと、最後の「Heavy Metal Strikes Back –血まみれの救世主たち-」も似たような時期にKAMEN RIDER GIRLSに提供した曲なので。それ以外の曲は去年の秋以降に作った最近の曲だね。

どういうテーマやコンセプトで作られたアルバムなんですか?

作り始める時に「どんなアルバムにしようかな」という音楽的な骨子となるものは決めていたけれども、タイトルにも繋がるような言葉の上での共通項みたいなものは特に決めずに。アルバムタイトルの『EXISTENCE』も最後の曲の歌のレコーディングをするぐらいの段階で決まったのだ。「そろそろ決めないと」という感じで(笑)。まぁでも、貴家悠氏(「テラフォーマーズ」原作者)、ブルボン小林氏(コラムニスト)、羽田圭介氏(第153回芥川賞作家)の3人に外注で歌詞を書いてもらったというのが大きな特徴になっているね。ある種、冒険でもあったが。

3人それぞれの個性が歌詞にすごく出ていますね。

3人には全くメロディーがない状態で、ただ歌詞を書いてほしいというリクエストをした。「それでいい?」って訊いたら皆「はい、それでいいです」って言ったんで。場合によっては、メロディーがあったほうが作りやすいっていう人もいるじゃないか。でも、作詞経験のない人がメロディーに乗せて書こうとすると、ものすごい字余りになったりしがちなので、何もない状態で書いてもらったほうがやりやすいんじゃないかと。3人とも文筆に従事している人なので、文字を書くことに関してはプロだからね。

メロディーがあったほうが書きやすそうに思いましたが、逆にメロディーに囚われて自由に言葉が書けないという可能性も。

そう。1番の歌詞はそれなりに言葉を乗っけたりして作れるかもしれないけれども、2番とか3番とかが難しいのだ。1番と関連したり、しなかったりを考えないといけないし、だいたいは同じような展開をしていかなきゃいけない。そういうところが、メロディーが先にある時の難しさかな。

歌詞にも3人の個性が感じられます。貴家さんが書いた「地球へ道づれ!」では“地球”や“地獄”を「ところ」、“人類”を「オレら」、“不可”や“不知”を「できない」「しらない」と読ませるあたりが、漫画のセリフみたいな感じがありますし。

耳から入ってくる言葉の響きと、視覚で感じる漢字の使い方はまさしくそういうことだと思うな。羽田くんが書いてくれたのが「Stolen Face」というタイトルなんだが、以前に「盗まれた顔」という小説を書いたことがあるらしい。この歌の内容とは全然違ったみたいなんだが、たまたまそこにいたブルボン小林氏に「昔、『盗まれた顔』って小説を書いてるよね?」って言われて、「あ、そう言われれば。でも、全然そんなつもりはなくて」と。本人は無意識に書いてたらしいんだけども、潜在的に顔が盗まれるということに対して何かあるんだろうね(笑)。結果的に、打ち合わせをしたのか?と思うぐらいタイプが違う3つの歌詞が出来上がってきて、どれも我輩が今は書かないだろうっていう内容になっているし、このアルバム全体のテイストを非常に深めることに貢献してくれた。

歌詞といえば、デーモン閣下が書かれた歌詞も、日本語を大切にしているというか、読み方を含めて、日本語の奥深さを感じさせてくれます。

日本語の特徴を生かしてこだわったのが「Just Being –ここにいる そこにいる-」という曲。日本語って、一人称と二人称の表現が世界で最も多いんだな。俺、ぼく、私、わし、うち、拙者、余、麻呂、あちきとか方言も含めるとかなりの数になる。一人称を言っただけで立場がわかるのも日本語の特徴なわけ。それをわざと曲の中に散りばめてみたのだが、これは英語では表現できないよね。

確かに、この曲を英語訳してしまうと、主語がIとYouだけになってしまって、すごくシンプルになってしまいます。

我輩が書いた歌詞は、曲が先にあって、そこに言葉を乗せたわけだが、3人には歌詞を先に書いてもらって、そこに曲をつけるという逆の順序だったので、3人の歌詞が先に出来上がってきたんだけど、彼らの歌詞を見て触発されたところはあるね。

純邦楽器の持ち味を発揮した大作「深山幻想記 –能 Rock-」

歌詞もバリエーション豊かな内容になっていますが、サウンド面の振り幅も広いですよね。1曲目の「深山幻想曲 序曲」がアルバム全体の序曲のようにも感じられますし。

実は、その曲は9曲目の「深山幻想記 –能 Rock-」の頭の部分だったのだ。もともと「深山幻想記」は長い曲で、仰々しく始まるので、その仰々しい部分をアレンジを変えて頭に持ってくると面白いんじゃないかと思って、今回のサウンド・プロデュースをしてくれたアンダース・リドホルムというスウェーデン人に「こういうの、どう思う?」と相談したら「面白いね」って答えてくれたので、そこだけ分離して序曲として1曲目に持ってきたのだ。このアルバムは劇的な作品ですよっていう意思表明みたいな曲だよね。今作はドラマティック感をウリにしているので、いい役割を果たしているんじゃないかな。

今、お話に出てきた9曲目の「深山幻想記 –能 Rock-」ですが、使われている楽器の音色をはじめ、ジャンルを超越した作品になっていますね。

いわゆる日本の純邦楽器に関しては、基本的にはステージだけど、もう30年近く定期的にコラボレーションをやっているので、その辺の人たちよりも詳しいんだけども、最近、邦楽器の音色をポップスに取り入れた曲というのが世の中にたくさん出てきているね。でも、我輩の場合、楽曲の中にそういった『邦楽器の音が入っています』というだけではつまらないという思いがあって。それぞれの楽器にはそれぞれの空気感があるし、邦楽器はおおむね音の立ち上がりが遅いのだが、その遅さを生かすとか、楽器の持ち味をいかにうまく現代のポップスやロックにコラボレーションさせていけるかが大事だと思っているのだ。それもテーマの一つではあるのだが、こういう感じの曲を作るのは相当なエネルギーが必要で、1曲作るのにも結構な時間が掛かる。本当は3〜4曲、こういうタイプの曲を入れたかったんだけども、今回は時間的に1曲だけになった。

後半に向けて、高揚感がどんどん加速してくる感覚が。

そうそう。この曲は、曲の中で曲のテンポが変わっていっているのだ。現代のロックやポップスでは、いわゆるドンカマと呼ばれるメトロノームを聴きながら、曲を通して一定のリズムで演奏していくというのが当たり前なんだけども、能楽では後半に行くに従って加速して行って盛り上げるというのが伝統的な手法なわけ。その伝統的な手法をロックにどう融合させるかが難しくて。行き着いたところが、ドンカマは使うけれど、途中でドンカマのテンポを早めるというやり方だったのだ。ドラマーはかなり苦労したはず(笑)。西洋のクラシックにも同じフレーズを繰り返しながらもテンポを上げて行くというスタイルがあるんだけど、日本の伝統音楽にもそれがあって、その醍醐味をこの曲にも生かそうと試みたのだ。それを表現するには技術と知識が必要なんだけどね。

曲の長さもそうですが、歌詞の内容も含めて、大作という言葉が相応しい曲だと思いました。

ハハハハ。音楽的にも言葉的にも、このアルバムの中でも異彩を放っているよね。今回、我輩のアルバムとしてはポップスが多めになっているので、だからこそこういう曲との落差を楽しんでもらえるんじゃないかと。10分ぐらいある長い曲な上に、一聴では何を歌っているのかわからない歌詞だし。

サウンド的には、2曲目の「ゴールはみえた」のアコギ始まりっていうのも意外性がありました。

あぁ、これね。ちょっと考えたのだ。序曲がなくて、いきなりアコギから始まるっていうのも我輩のアルバムにしては意外性があって面白いんじゃないかなって。この曲はアンダースが書いたんだけども、なかなか日本人じゃ書けないタイプの曲だなって。

「Shibuya Scrambled Crossing」に浮かぶストーリー性

曲の構成を含め、個性的というか複雑なものもあったりしますし、サウンドもすごく聴きごたえがあります。

時代と空間をかなり超越しているよね、全体に。アルバム用に新しく作った曲に関しては、日本人じゃないミュージシャンがほぼ演奏している。ミュージシャンクレジットを見てもらうと「こんな人が演奏してるんだ!?」っていう感じだよ。実は、前作ではスティーヴ・ルカサー(TOTO)が参加していたし、今回の「Shibuya Scrambled Crossing」のギターソロはジェイ・グレイドンが弾いてたりするからね。

え? そうなんですか!

ジョン・グレイドンが弾いてるってことは、我輩もレコーディングが終わるまで知らなくてね。マスタリング作業の時期に、CDのクレジットを書かなきゃならないというんで「今回のレコーディングに関わったミュージシャンのリストを送ってくれ」とアンダースに言って、送ってくれたリストの中にグレイドンの名前があって(笑)。

ジョン・グレイドンが渋谷を歌った曲でギターを弾いてるっていうのもすごいですね。

確かに(笑)。あぁ、そう言えば、我輩の曲で街の名前がタイトルになったことは…今までなかったなぁ。「日本」はあったけど。これまで、魔界とか地獄とか歌ってたのに、渋谷かよ!って感じだね(笑)。
今回は、日本のプロデューサーと話している時に「1曲1曲がショートムービーを観たような感覚にさせられるような、ストーリー性があったり、風景が見えるようなものにして行くのがいいんじゃない」って話になり、それぞれの歌詞を書き始める時にイメージしたわけ。この曲の時は、地方から大きな夢を抱いて出てきた若者が上京してきて、自分の想像していたものと全然違う現実を目の当たりにして、挫折し、孤独を味わい、雑踏の中でどうしようかと悩んでいる。まさにそういうストーリーにしようと思った時に、渋谷って単語があって、歌詞を書き始めてみると「渋谷…スクランブル……クロッ…シング…って歌詞に合う!」って(笑)。六本木とか赤坂とか、街の名前を入れてしまうと下手したら演歌になってしまうところだけども。

でも、渋谷って東京のイメージの一つだと思いますし。

象徴する場所だよね。

渋谷のスクランブル交差点では、外国からの観光客の方たちがムービーを撮ったりしているのをよく見かけます。

とあるアメリカの専門雑誌が取った統計によると、日本に行って訪れたい場所ベスト5に渋谷のスクランブル交差点が入ってるんだって。信号が青になるとあれだけの歩行者が全部の方向から行き交う場所っていうのは世界的にないらしくて、「あんなにたくさんの人がいっぺんに渡っててぶつからないのが不思議だ」って。細かく見ると、ぶつかってるんだけどね(笑)。でも、アメイジングらしいよ。

歌詞にもサウンドにも注目して聴き直してみます。

うん、まずは聴いてもらいたいね。コメンテーターだったり、相撲の解説者だったり、そういう姿は知っていても歌を歌ってるってことすら知らない人が今やいるから(笑)。

4月からは全国ツアーも楽しみですが、どんなツアーになりそうですか?

いつもは、新しいアルバムが出ても必ずしもそのアルバムの曲を中心にセットリストを組むということはないんだが、今回はライブで聴いてもらいたいという曲がたくさんあるので、今までと比べれば、新曲をたくさんやるステージになりそうかな。

ライブ情報

魔暦(D.C.)19年コンサート
「DEMON‘S ROCK ”EXISTENCE“ TOUR, DC19」


4月21日(金) Zepp Osaka Bayside
4月30日(日) 豊洲PIT
5月06日(土) 福岡電気ビルみらいホール
5月07日(日) 広島市南区民文化センター
5月19日(金) 仙台PIT
5月25日(木) Zepp Sapporo
6月01日(木) Zepp Tokyo
6月08日(木) Zepp Nagoya

デーモン閣下

悪魔。「表現者」「音楽・娯楽の創作と演出」等アーティスト活動のみならずバラエティー、スポーツ、報道、教育、芸術、環境、国際、CM、選挙特番など遍く媒体で「ご意見番」として蔓延る。 *魔暦前17(1982)年、ロックバンドの姿を借りた悪魔集団「聖飢魔Ⅱ」の歌唱・説法方として現世に侵寇。魔暦前10(’89)年、大教典「WORST」はオリコンALチャート第1位を記録、「NHK紅白歌合戦」に出場(共にHM/HRでは史上初)。
*魔暦前5(’94)年、CNNラリーキングLive(全世界・英語生放送)に日本で活動する音楽家では初の出演。富士写真フイルム「写ルンです」CMでは大賞等を受賞。
*魔暦9(’07)年、女性Vo.のカヴァー「GIRLS’ ROCK」がi-tunesロック部門年間ALチャート第1位。
*和の伝統芸能との共作活動は約30年間展開中。純邦楽器と朗読劇の新機軸追求シリーズ「邦楽維新Collaboration」は17年間で公演数71回、上海万博では「文化交流大使」も執務。
*魔暦10(‘08)年、初監督映画「コナ・ニシテ・フゥ」発表。
*魔暦18(‘16)年、NHK-ETV「ニュースで英会話」(月に一回出演)の番組主題曲作曲)、演劇「ママと僕たち~たたかえ!!泣き虫BABYS」に出演、書籍「悪魔的歌唱論」を発刊。
*出された食べ物を残すことと、ゆき過ぎた冷暖房の使用、むやみに単語を省略させる風潮を忌み嫌う。
*広島県がん検診啓発特使、早大相撲部特別参与(共に5期目)。
*レギュラー番組:TBS-TV「ひるおび!」(毎水)、NHK-ETV「しまった!~情報活用スキルアップ」(毎木or火)、CS放送 歌謡ポップスチャンネル「しゃべくりDJ★デーモン閣下のミュージックアワー!」(月に一回)。
オフィシャルサイトhttp://demon-kakka.jp/index.php

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