Interview

YUKI、10代の頃の希望や思春期の儚さを切りとったアルバム『まばたき』について彼女に問う

YUKI、10代の頃の希望や思春期の儚さを切りとったアルバム『まばたき』について彼女に問う

ソロ・デビュー15周年を迎えたYUKIが、前作『FLY』以来、約2年半ぶりのオリジナル・アルバム『まばたき』をリリース。最新シングル「さよならバイスタンダー」(TVアニメ『3月のライオン』第2クールオープニングテーマ)、「ポストに声を投げ入れて」(映画「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z『ボルケニオンと機巧のマギアナ』」主題歌)、「tonight」(映画『グラスホッパー』主題歌)を含む全13曲が収録された今作は、“YUKIはYUKIでしかない”という唯一無二の存在を鮮やかに浮かび上がらせている。これからも続いていくYUKIの音楽人生や歌手人生においても重要な機軸になるであろう『まばたき』には、完全無敵なYUKIがいる。


取材・文 / 松浦靖恵


白黒はっきり付けたがる私の極端な部分を、以前はきれいにまとめがちだったのも、きっとカッコつけていたからだと思うんですけど、もうそういう自分じゃないぞ! と思いました(笑)

2017年第一弾シングル「さよならバイスタンダー」発売時のインタビューで、YUKIさんは新しいアルバムについて「暴れたいでも暴れているでもなく、暴れたがっている私がいるアルバムです」と言っていましたが、『まばたき』はその思いを象徴するかのような「暴れたがっている」から始まりますね。

「暴れたがっている」の歌詞を書いていたときに、“あがいてたら 振り出しに戻ってた”の部分が最初に出てきて。うわっ、これはまさに今の私だ!と思いました(笑)。私には人としての理想像があって、そこに近づきたくて詞を書いたり、普段の生活の中でも気をつけたりしているんです。でも、そうやってなりたい自分になりたくてやっていたはずのことが、いつのまにか自分を不自由にもさせているのかもしれないと気づいてしまったんでしょうね(苦笑)。自分で自分になんとなく言い聞かせていたことを、はっきりさせたくなってしまったんです。なので『まばたき』は、まず自分の言いたいことをとにかく優先している衝動的なアルバムになりました。

「暴れたがっている」で、YUKIは久しぶりに“あたし”と歌っていますね。

1stソロアルバム『PRISMIC』にも“あたし”で歌っていた曲がありましたけど、今となっては、なぜ“わたし”と歌うようになったのか、その理由がよくわからないんですよね(笑)。バンドでデビューしてからの24年間で、自分のやり方というのがそれなりにできてきたんですけど、それに対して何かしら疑問を持つというのはすごく当たり前のことだと思います。自分の中に蓄積した固定観念や自分に対する決まりごとを、自分自身が楽しいと思えなくなったら潔くやめればいいんです。自分で決めたことを衝動的にやめるということも、時には必要ですよね。それによって何かが起きても、自分をとことん信じて、自分で責任を負うんだという私の中の覚悟が、この“あたし”の部分にも表れているのかもしれないですね。

“私ソング”であっても、みんなが喜ぶことや楽しんでもらえるものをやりたいというYUKIさんの思いは、今作にもしっかり入っています。

私の中では、音楽は娯楽なんだという思いは変わっていません。見たことのないものを見たい、やったことがない事をしたい、同じところにとどまっているわけにはいかないと、いつも思っています。例えば「暴れたがっている」で“モテないのはごめんだ”と歌っていますけど、少なくとも私はそう思っているので、自分が出せる限りの自分のアイデアや自分が今持っている力を惜しみなく全力で出します。自分を出していくことを恐れないでいたいと思いました。それは独りよがりの自己満足ではなく、自分が最高だと思うことを提示して、それが誰かからできないと言われるようなことだったとしても、思い切って何度でも飛び込めばいいんです。何をやるのかというのはいつでも自分が決めることであって、自分以外の誰にも決められないんですよね。白黒はっきり付けたがる私の極端な部分を、以前はきれいにまとめがちだったのも、きっとカッコつけていたからだと思うんですけど、もうそういう自分じゃないぞ! と思いました(笑)。

前回のインタビューで、YUKIさんは今の自分の心の奥底で生まれたこの熱い感じを、また思春期が蘇ってきたみたいだったと言っていましたが、今の自分と10代の思春期の頃の自分とは、何がいちばん違っていると思いますか?

10代の頃の私は思い込みが激しくて、私はこんなもんじゃない! と自分を過大評価していましたし、こんなところにとどまっているわけにはいかない! と、いつもどこかに行きたがっていました。自分に対しても周りの人にも、自分がいる環境にも満足することができなかったから、まるでひとりで生きてきたかのような感覚になっていたけれど、大人になるにつれて当然、自分は一人で生きていたわけではないことを知るんですよね。「さよならバイスタンダー」の歌詞にも書きましたけど、慎ましさや孤独、空しさ、優しさを知っていくから自分が愛されていたことも知る。函館から東京に来てからも、いろいろな方たちにお世話になって、支えられて今の私があるんです。誰かと一緒にいるからこそ気づけたことが、私にはたくさんありました。地元から一緒に上京してきた友人たちの中にはデビューできなくて帰った子や東京にいるけれど音楽活動ができなくなってしまった子もいて。そういう人たちからも私は力をもらっていたのに、あの頃の私は自分本位で、人に対して失礼なことをたくさんしてきたという後ろめたさを感じていました。そんな彼らにも幸せでいてほしいという気持ちと、自分本位は私の強みでもあったから、そこをもっと取り戻したいという思いの両方を「こんにちはニューワールド」の歌詞に書くことができてすごく嬉しかったです。

函館で少しの間だけバスガイドをしていた頃のことやデビューを目指して東京に出てきたばかりのころのことなど、今作の歌詞の中には“あの頃”のYUKIさんが、あちこちに散らばっています。

そうですね。「こんにちはニューワールド」の歌詞には上京した頃の自分が登場していますね(笑)。函館から東京に出てきて初めて暮らしたアパートで、私は窓を開けてよく歌の練習をしていたので、隣の部屋の人に壁を蹴られたり、1階の八百屋さんに怒られたり(苦笑)。

歌詞に書いてあることは実話だったんですね!

はい(笑)。近くに神社があって、なぜか大きな声で歌っても大丈夫かなと思って窓を全開にして歌っていたんです(苦笑)。この曲の歌詞は、最初は“なんでもできると思ってたでしょ?”と歌っていたんですけど、当時のことを歌っているのになんだかスカしている自分がいるなと思って(笑)、函館弁で歌い直しました。“せば”は、函館にいた頃、帰るときとかに“せばね~”“せば、あとでね~”と言っていました。

歌詞を書きながら、様々な時代の自分が蘇ってきてしまったんですね。

そうですね。“あの頃の私”も、しっかりと今の私の中に存在しているんですよね。私は詞を書くときに、自分の中にある箱の蓋がパカッと開くような感覚があって。箱の中身は無意識なことだったり、いつのまにか記憶の片隅に置いてきてしまったかつての自分、いつか見た風景だったりするんですけど、自分でもどの蓋が開くのか、なぜその蓋が開いたのかはよくわからないんです。意識的にあの頃のことを思い出そうとしなくても出てきてしまう。でも、あの頃の感覚や記憶を自分の中で消してしまったら、それはもうきっと私ではなくなってしまうんでしょうね。

私が10代の頃に経験した思春期は、今思えばほんの一瞬の出来事のように思えるんですね。その、すぐに消えてしまう儚い感じが、まるで“まばたき”のようだなと思って、アルバムのタイトルにしました

『まばたき』には、打ち込みで作っているのに生音で演奏しているかのようなバンド感のある楽曲が何曲も収録されています。全体的に音数が少ないですよね?

最近はわりと音数の少ない曲やアレンジが好きですね。2015年にシングルとしてリリースした「tonight」は少ない音数の生音に反応しながら、今の自分の声や歌を活かしていく面白さ、楽しさを知ることができた楽曲でしたし、「tonight」で勉強したことが、今作のサウンド作りに確実に繋がっていると思います。それは以前は、この曲は生音がいい、これは打ち込みにしたいと、ざっくり自分の感覚的な部分で判断していたけれど、今回のレコーディングでは何の音を生音にして何の音を打ち込みにすれば音や曲が活きるのかということが、これまでの経験によって少し細かくわかるようになってきていたので、作っていてより面白かったです。さらに私は、毎日歌うことがとても楽しくて、スタジオでずっと歌っていたいくらいでした。まだいける、もっとできる、もっとこれをやりたい、という感じで。あのままずっと続けていたら、もしかするとこのアルバムは延々と出なかったかもしれないです(笑)。

“私にしか歌えない歌があるんだ”というゆるぎない決意を歌っている「聞き間違い」がアルバムのラストを飾るかと思いきや、最後に「トワイライト」を収録したのはなぜでしょう。

ソロ・デビュー10周年のとき、東京ドームでライブをやるのに「プレイボール」という曲を作ったことを思い出して、15周年の記念でも何か曲を作りたいなと思って取り掛かった曲だったんです。トワイライトって何となく曖昧で、昼でも夜でもない、夕方のわずかな時間、マジックタイムにしか見ることができない景色や、その時間帯が私はとても好きなんですね。白黒はっきりつけたがる自分の極端さも好きですけど、私の歌手としての可能性や自分が辿り着くべきところを、私は自分で決めつけずにやっていきたいと思ってるんです。曖昧でも、じつは静かに起きている気持ちのスタートラインだったり、その瞬間をきちんと見逃さないようにしようという思いを忘れないためにも、自分に手紙を書くというイメージで歌詞を書きました。

アルバムのタイトルを『まばたき』に決めた理由は何ですか? このタイトルに込めた思いは?

歌詞を書くという作業の中で自分自身と向き合ったとき、私が10代の頃に経験した思春期は、今思えばほんの一瞬の出来事のように思えるんですね。その、すぐに消えてしまう儚い感じが、まるで“まばたき”のようだなと思って、アルバムのタイトルを『まばたき』にしました。

4月末からスタートする「YUKI concert tour “Blink Blink”2017」はどんなツアーになりますか。

今回はアリーナ・ツアーですけど、アリーナ・ツアーだからこんなメニューにしようというような自分の中にいつのまにか生まれていた固定観念を壊すことができたので、これまでとはまた違うステージをお見せできると思います。私はみなさんへ歌やパフォーマンスで感謝の気持ちを伝えるので、みなさんにはそれと、体感する生の音楽と今のYUKIを楽しんでもらえたら嬉しいです。

ライブ情報

YUKI concert tour“Blink Blink”2017
4月29日(土)[広島]広島グリーンアリーナ
5月13日(土)[福岡]福岡マリンメッセ
5月14日(日)[福岡]福岡マリンメッセ
5月20日(土)[宮城]宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)
6月7日(水)[愛知]日本ガイシホール
6月8日(木)[愛知]日本ガイシホール
6月24日(土)[新潟]朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
7月1日(土)[神奈川]横浜アリーナ
7月2日(日)[神奈川]横浜アリーナ
7月8日(土)[大阪]大阪城ホール
7月9日(日)[大阪]大阪城ホール
7月22日(土)[北海道]函館アリーナ
7月23日(日)[北海道]函館アリーナ

YUKI

1993年にJUDY AND MARYのボーカリストとしてデビュー。2001年のバンド解散後、2002年にシングル「the end of shite」でソロ活動を開始した。
2012年5月にはソロ活動10周年を記念して東京・東京ドーム公演「YUKI LIVE “SOUNDS OF TEN”」を開催し、約5万人を動員。
JUDY AND MARY時代にも東京ドームでライブを行っていることから、バンドとソロの両方で東京ドーム公演を行った初の女性ボーカリストとなる。
2014年9月に7枚目となるオリジナル・アルバム『FLY』をリリース。
2017年2月にはソロ・デビュー15周年を迎え、テレビアニメ「3月のライオン」のオープニングテーマを表題曲としたニュー・シングル「さよならバイスタンダー」を2月1日に発売した。

YUKI 15th Anniversary Special Sitehttp://yuki15th.net/
 『まばたき』特設サイトhttp://www.yukiweb.net/mabataki/
オフィシャルサイトhttp://www.yukiweb.net