Interview

西沢幸奏が示した“運命を切り開く”ロック・サウンド

西沢幸奏が示した“運命を切り開く”ロック・サウンド

小さな体から発せられる、全身全霊のロック・サウンド。西沢幸奏の待望の1stアルバム『Break Your Fate』は、ほとばしる闘気が見えるほどの熱さをまとった一枚だ。デビューから早2年。積み重ねてきたシングルで固めた自身のイメージから一切のブレもなく、よりいっそう強固に「西沢幸奏らしさ」を突き詰めてきたこの一本気な作品は、聴く者の魂をきっと激しく揺さぶることだろう。ますます音楽ジャンルの多様化が進むアニメ音楽界にあって、ここまで強烈に自己を主張するアルバムも珍しい。まだ20歳になったばかりの新世代。これからの業界を引っ張っていくであろう逸材に、話を聞いた。

取材・文 / 西原史顕 撮影 / 山本哲也


「あなたの武器はなんですか?」と聞かれたら、
「ロックです」と答えます

アルバム完成おめでとうございます!

ありがとうございます! 今は達成感でいっぱいですね。ずっと作りたかった1stアルバムだったので、「できたーっ!」といううれしさと、「さあ、これを名刺代わりにライブで歌っていくぞ」っていう前向きな気持ちで溢れている感じです。

すべてロック・サウンドで揃えた全12曲。非常にパワフルな曲が多く、力強さを感じました。

このアルバムは「Break your fate」から作り始めたんですが、振り返ってみればこの曲が今作の方向性のすべてを決めたんだなと思います。当初はこれがそのままアルバムタイトルになるなんて想像していなかったんですが、「運命を切り開け」というテーマは、今の自分にぴったりな言葉だなと思って。

「Break your fate」

なぜそのように思ったのですか?

デビューしてからもう2年が経ちましたが、最近、自分自身が変わっていくことが楽しいんです。それと同時に人が変わる瞬間にもすごく興味を持っていて、そこにある情熱やエネルギーとか、運命を変える“何か”を見つけるのが楽しくて。だから1stアルバムもこういうことをテーマに制作していこうと決めたんですけど、それならばサウンドは絶対にロックだなと。

デビュー当初から西沢さんにはハードなデジタル・ロックの印象が強かったですけど、あえてここに焦点を絞った理由は?

いろんなメッセージやいろんなジャンルの音楽が入っているアルバムも大好きなんですけど、今回は初めてのアルバムなので、「これが西沢幸奏だ」と胸を張って言えるような作品にしたかったんです。やっぱり、私の中でも「あなたの武器はなんですか?」と聞かれたら、「ロックです」と答えますし、何よりライブで皆さんと一緒に盛り上がりたい。みんなに笑顔になってもらいたいというのが、今の私の活動のモチベーションになっているので。

そうですね。たしかに今作のサウンドは、ライブをかなり意識していますよね。

個人的には「Shark」や「Reason To Scream」みたいなタイプのドラムが大好きで。こういう力強いリズムはテンション上がりますよね。

曲ごとに歌い方をかなり変えているのも印象的でした。「Break your fate」ではより声が太く感じましたし、「Reason To Scream」では英語のシャウトが「外人か?」と(笑)。

そうですね。ロックはロックでも、いろいろな表現があるので。スクリーモみたいな「Reason To Scream」もあれば、スケール感を出した「Feel This Moment」みたいな楽曲もあって。

そう、「Feel This Moment」のサウンドにも驚きました。まるでNFLのハーフタイムショーで聴くような(笑)。

いいですね。そういうところでライブしてみたい!(笑)。「Feel This Moment」はまさしくスタジアムで歌っているような感覚をイメージして、翼を限りなく広げていったような一曲ですね。

その一方でご自身で作曲した「Goodbye Graffiti」は、爽やかなバンド・サウンドでまとめられていたり。

作曲は基本的にメロディから作っていくんですけど、気持ちのいいフレーズを繋げていったらこうなりました。私の中で「爽やか=青春」みたいな感覚があって、「こういう青春ロックにしたい」とドラムやベースの音も足して、デモのイメージを作っていきました。

作曲はギターで?

そうですね。コードを鳴らしながら作ってます。ゆくゆくはピアノでも作れるようになりたいし、ソフトウェアの勉強ももっとやりたいですね。

「Goodbye Graffiti」

ちなみに今回、新曲が7曲入っているのですが、作詞をすべてご自身で担当されていますね?

よく「そんなにたくさん書いたの!?」と驚かれますが、元々書きたいと思っていたので、その点に関して何か特別な感想みたいなものはないんです。ただ、いざ書いてみると「言葉ってこんなに出てこなくなるんだな……」というビックリはありました。

産みの苦しみはあった?

後半になればなるほど(笑)。

作詞はどのような手順で制作していったのですか?

上がってきた曲のサウンドやメロディからインスピレーションを受けながら、個人的に書きたいことを書き連ねていったという感じです。ただ、前提として「運命を切り開け」という大きなテーマは置きつつ。

むしろ今作の作詞は、そのワンテーマだけで書ききっていますよね。

自然と言葉のかぶりとかも出ているんですが、今回学んだのは、そんな細かいことは気にしなくてもいいなということ。それよりも伝えたいことを明確にすることのほうが大切だなと思いました(笑)。

ではその作詞において、印象的な曲はありましたか?

「Shark」を書いたときは、「え!? 魚?」とスタッフさんから驚かれましたね(笑)。私の中でこの曲はチャレンジで、ひとつのモチーフに自分自身を重ねることを試したつもりです。サメって、獰猛なイメージがあるじゃないですか。でもその獰猛さって、もしかすると臆病さの裏返しなんじゃないかと思ったんです。その虚勢を張っている感じが私と重なって、自分の弱さを受け入れながら、動き続けることが大切なんだというメッセージを書きました。

「Shark」

モチーフを使った作詞は、「Gemini」もそうですよね?

これは双子座のギリシャ神話を題材にしています。曲を聴いたときになんて壮大なんだろうと感じて、これには神様のお話とかがピッタリなんじゃないかなと思って選びました。神の力を受け継ぎ不死であるボルックス(弟)と、普通の人間であるカストル(兄)。神話の中でカストルは命を落としてしまうんですが、ボルックスはそれに対し、自分の不死の力の半分を与えてまで兄と一緒にいようとするんです。これってまさに「Break Your Fate」だなと思って。この決断の背景にあるエネルギーみたいなものを、私なりに書いたつもりです。

元々神話とかがお好きなんですか?

いや、思いつきです(笑)。でもこれを機にいろいろ勉強してみようかな。

「Gemini」

個人的な印象を言わせていただくと、「Reason To Scream」の“目まぐるしく変わる時代に 爪痕の残し方探している”というフレーズに、西沢さんらしさを感じたんですよね。

これは私の実体験ですね。特に1コーラス目は私のモヤモヤが描かれています。音楽を始めた頃の私は、ただただ楽器に合わせて声を出すのが楽しかったんですけど、だんだんそれだけではいられなくなってきて、壁に当たるんです。でもあるとき、叫んでみたら不思議とすっきりしたんですよ。そのときの爆発した感じ。その“ブレイク”を表現したいなと思って。

リアルに叫んでいたんですか?

叫んでいましたよ。

丘の上から?

そんな素敵なシチュエーションでは叫んでいないです(笑)。ひとりカラオケに行ってシャウトする感じです。カラオケでもガチで歌うタイプなんですよ、私(笑)。あとは自分が叫ばなくても、スクリーモ系の音楽を聴くだけでもスッキリしたり。だからこの曲は「どうして私たちは叫ぶんだろう?」 というのがテーマ。理由なんてなくて、本能で何かを残せっていうメッセージです。

「Reason To Scream」

たくさんの小さな幸せの積み重ね
それが私が夢を見続けてこられた理由

ここまでの激しい楽曲に対し、少しスピードを緩めた「Light and Shadow」に対するアプローチはどうだったんですか?

「運命を切り開け」というテーマからは離れていないんですが、こういう曲調だったので、少し毛色の違ったメッセージを書きました。これも実体験が元になっているんですが、夢を追いかける気持ちを描いています。私が音楽の道を歩むと決断してここまで辿り着いて、そのなかで感じた光と影を詰め込みました。

この曲で描かれているように、西沢さんも自分の夢に対して弱気になることがあった?

音楽に限らず、何かひとつのことを成し遂げるためには、いろんなものを犠牲にしなくてはならないと思うんです。だから思い悩むことはたくさんありました。じゃあ、どうして私はここまでこられたんだろう? そのことを考えていくと、両親が私の声をほめてくれたり、友達が応援してくれたり、そういう小さな幸せの積み重ねがあったことに行き着いたんですね。それが私が夢を見続けてこられた理由。夢って大きいからこそ意味があると思っていたんですけど、もっと身近で小さなものから始まっているんだと気づかされました。

「Light and Shadow」

「Goodbye Graffiti」も夢がテーマになっていますよね?

この曲は「大人になるってなんなんだろう?」というのがテーマですね。自分が20歳になったこともあって、最近よく考えるんです。私もいずれ、10代特有の気持ちを忘れていくんだろうな、いつかそれを懐かしむときが来るんだろうなとなんとなくわかるから、今鮮明に覚えているうちに音楽として残しておきたい。これは簡単に言ってしまえば卒業ソングですね。

まさに青春。

自分の高校時代を振り返ると、すごくキラキラしてたと思うんですよ。だから忘れたくないって気持ちも強いんです。

では「Feel This Moment」は? これは視点が自分自身ではなく、俯瞰になっていますよね?

この曲は最後に書いたので、すごく苦労しました(笑)。おっしゃるとおり視点が俯瞰になっているのは、曲のスケール感を最大限に出すため。大きく両手を広げて、みんなと大合唱したい。その光景をずっと思い浮かべながら書いた詞です。

「Feel This Moment」

いろんな意味で、今の西沢幸奏さんを振り絞ったアルバムになりましたね。

名刺代わりになったでしょうか? それを目指して作ったんですが……。とにかく今作は、サウンドも歌詞も「運命を切り開け」というテーマを軸にしながら、聴いたら必ずライブに行きたくなっちゃうような一枚にするのが目標でした。だから4月30日のライブ(@赤坂BLITZ)は絶対に成功させたい。今は早く歌いたいという気持ちと、しっかり準備しなきゃという気持ちの両方が渦巻いている感じです。これだけハードが曲がたくさんできたので、もっともっと体力をつけたいですね。より自分の体と向き合って、研究を重ねていかなくては……。

まるでアスリートのようですね(笑)。でもこのパワーとスピードのロックをライブでやり切ったら、フロアがすごいことになりそうです。

ぜひライブ会場で、今の「西沢幸奏」のすべてを感じてもらいたいですね。思い切って髪も切ったし、その髪を振り乱して、きっと激しいステージをお見せできると思います(笑)。

ライブ情報

1stアルバム「Break Your Fate」発売記念イベント
2017年3月19日(日)14時~
あべのキューズモール 3Fスカイコート(大阪)
2017年3月20日(祝)14時~
東京ドームシティ ラクーアガーデンステージ(東京)

SHIENA NISHIZAWA 1st LIVE“Break Your Fate”
4月30日(日)時間未定
赤坂BLITZ

西沢幸奏(にしざわしえな)

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