LIVE SHUTTLE  vol. 122

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ステージと客席の境界がほとんどない、水曜日のカンパネラ初の武道館ライブ

ステージと客席の境界がほとんどない、水曜日のカンパネラ初の武道館ライブ

水曜日のカンパネラ 日本武道館公演~八角宇宙~
2017.3.8 日本武道館

2017年3月8日水曜日。水曜日のカンパネラがついに日本武道館のステージに立った。快進撃が始まってから、休憩なしに拡大の一途を突っ走ってきた水カンが、最大規模の会場“武道館”に上陸。そこで一体、何をやるのか…… もちろんライブをやるに決まってはいるのだが…… どれだけ既成のライブをぶっ壊してくれるのかという期待が、開演前の武道館には渦巻いていたのだった。

アリーナのど真ん中に、八角形のステージがしつらえられている。それを取り囲んで、アリーナ・フロアには8つに区切られたスタンディング・エリアがあり、それぞれに“朱雀神”など中国天文学にちなんだ名前が付けられている。武道館は建物そのものが八角形であると共に、内部の天井も八角形の層を少しずつずらして積み上げられた構造になっており、そのことが水カンのフロントであるコムアイに大きなインスピレーションを与えたようだ。センターステージを八方から見下ろすスタンドは、360°の全てが客席になっている。

開演時間を少し過ぎた頃、場内の灯りが全部消え、レーザー光線が飛び交う。すると筋斗雲をかたどった神輿に乗ったコムアイが、客席の奥から現われた。コスチュームは「西遊記」の三蔵法師のようでもあり、ゴールドのアクセサリーはエジプトの神像のようでもあり、エキゾティック趣味のコムアイにとても似合っている。

たなびく雲を、ポールに付けた透き通る布地が表わしていて、それを捧げ持つスタッフは嬉しそうに振っている。そう、水カンのライブは、いつもどこかに手作り感を伴っている。筋斗雲にしても、油圧で動かしているのではなく、スタッフが担いで歩いている。

1曲目「猪八戒」のイントロのキックドラムの音がドーンと響くと、歓声が上がる。コムアイは微笑みながらラップを始める。とても落ち着いているようだ。アリーナを一周しながら歌い終わると、神輿の脇にアルミの“脚立”が立てられ、コムアイは自ら脚立に降り立ち、ステージに移動する。昨年夏のライジングサンの時も、コムアイが脚立の上でパフォーマンスしていたことを思い出すシーンだった。手作りというか、どこか学園祭を彷彿とさせるような演出だ。それが、武道館であっても“いつもの水カン”であることを認識させてくれたのだった。

八角形のステージを覆う真っ白なシートにカラフルな模様が映し出される中で、コムアイは2曲目「シャクシャイン」を独特のダンスを踊りながら歌う。ステージの周りに並べられたウーファー・スピーカーが、水カンの音楽のキモである重低音を増幅させる。

「武道館へ、ようこそ! こんなにいっぱい人が来るんですね、水曜日のカンパネラって。どこを向いてもお客さんがいるところでライブをやったことない。普通だとステージがあって、その片面にお客さんがいる。私はいろんな方向から見てもらうのが好きで、いつもお客さんの中に入っていくから、この武道館はピッタリ!」。

今まで武道館でこんなMCを聞いたことがない。センターステージを選択したコムアイは、まるで水を得た魚のように振る舞う。

「次、“ディアブロ”、行きましょう」とコムアイが言って、♪いー湯だね いー湯だね♪と歌うと、客席から♪手の指の皮がふやけるね♪と返ってくる。すかさずコムアイは、「こんな歌詞ですみません」と謝る。こんな内容のコール&レスポンスも前代未聞だ。

ここで会場を見回してみると、アリーナのオーディエンスはコムアイのパフォーマンスにぴったりとついていっているが、スタンドの方は“掟破り”のライブにあっけにとられているようだ。おそらく初めて水カンのライブに来た人も多いのだろう。それでも「次はみんな知ってる曲ですよ。昔話の歌」と言って「桃太郎」が始まると、スタンドのオーディエンスも♪きびきびだーん♪と返して、次第にコムアイの世界に引き込まれていく。

さらに最新アルバム『SUPERMAN』の「アマノウズメ」を歌う前に「みなさーん、今日は撮影OKですよ。フラッシュはダメ。みんなスマホのライト付けて」とコムアイがお願いすると、ほとんどのオーディエンスが点灯。照明をすべて消してもコムアイが見える状態になる。これも武道館で初めて観る光景だった。

中盤の「バク」では、円筒形のカーテンが降りてきてステージをすっぽりと覆う。そこに映像が映され、コムアイはシルエットでパフォーマンスする。コムアイの衣装も含めて、まるでバリ島の影絵“ワヤン・クリ”を見ているような気分になる。すると幻想的な雰囲気に耐えかねたように、子供のオーディエンスから「早く出てきて~」と声が上がり、会場から笑いが起こった。水カンのライブでは、いつもこうした“素直なお客さんの声”が期せずしてムードを和ませる。最先端の過激なハウス・ミュージックを奏でながら、老若男女に愛されるコムアイのマジックは、武道館でも健在だった。

その後も数十人のダンサーが登場したり、光るLEDポイを使ったパフォーマンスがあったり、ライブは次々と風変りな演出が繰り出される。パフォーマンス自体はインスピレーションに富んでいるが、振り付けなどは個々に任せているようで、統制のゆるさが特徴だ。これまでも水カンは、東京キネマ倶楽部などの小規模ライブでも、あふれかえるアイデアの一方で、それを段取りよく“こなす”ようなやり方はしてこなかった。それが水カン独特の雰囲気を作ってきたのだが、この武道館でもそれは変わらない。この“学園祭”風の作りこそ、誰でも出入り自由な“水曜日のカンパネラ”ワールドを現出させているのかもしれない。

最大の演出は、“フライング・コムアイ”だった。終盤の「世阿弥」でハーネスを着けたコムアイが吊り上げられ、宙に舞う。前後左右に加えて、上下からもコムアイが見える。まさに彼女が言っていた“いろんな方向から見てほしい”という願望が実現した瞬間だった。そのアクロバティックな姿を見て、僕はなぜか渋谷のライブハウス“ミルキーウェイ”で水カンを初めて見た時のことを思い出していた。ステージからフロアに降りて、小さなテーブルの上でオーディエンスに乾杯を“強要”していたコムアイは、とにかくオーディエンスに強かった。客がいようがいまいが、彼女は思い描いたパフォーマンスを実行する。他人からどう見られようと、おかまいなし。ひたすら「見てもらうこと」に集中する。通常のプロ意識やアマ意識とは別モノの何かが、コムアイを突き動かしている。迷いのない宙吊りに、そんなことが僕の頭をよぎった。

コムアイは宙吊りのまま、しゃべり始める。

「どうも、お世話になってま~す。この状態でのMCは、武道館で初めてじゃない?(笑) とにかく(このライブに)お金がかかってるのはわかります? 予算全部、使い切ってます。よかったら物販、買っていってください」。ここまでくると学園祭の焼きそばとグッズが同義語になっていて、ある種の爽快感があった。

その後、水カンのライブの“常連”であるキャラ“カレーメシくん”が客席から登場してコムアイとステージで合流し、“天空のコムアイ”を追い回す。曲はもちろん「ラー」だ。ラストは、出演者全員が再登場して「一休さん」を踊って盛り上がった。ダンサーたちは、まるでこの日のオーディエンスの代表するように、気の向くままに踊っていたのが印象的だった。

アンコールは「ドラキュラ」。普段は黒子に徹しているトラックメーカーのケンモチヒデフミと、マネージャー兼ディレクターのDir.Fを呼び込んで、♪ちーすーたろか 我がしもべとなるがいい♪と歌ってライブは終わった。

水曜日のカンパネラのライブは、ステージと客席の境界がほとんどないと改めて感じたライブだった。コムアイは自分の思う面白いことをやってみせ、それを自由に観客が楽しむ。コムアイは特に自分の歌やダンスを自慢するわけではない。前後左右上下に“面白いこと”をぶちまけ、すべてを見る人たちにゆだねる。その原則を貫いた武道館だった。

最後に6月から8月まで16カ所にわたるツアーを発表。今まで裏方に徹してきた2人を紹介し、通常の形式のツアーに出る水曜日のカンパネラは、今後、普通のアーティストになっていくのだろうか。水カンの未来は、誰にもわからない。

文 / 平山雄一 撮影 / Yukitaka Amemiya

水曜日のカンパネラ 日本武道館公演~八角宇宙~
2017.3.8.日本武道館

セットリスト
1. 猪八戒
2. シャクシャイン
3. ディアブロ
4. 雪男イエティ
5. アラジン
6. 桃太郎
7. アマノウズメ
8. ライト兄弟
9. ツイッギー
10. ウランちゃん
11. バク
12. ユタ
13. ネロ
14. ユニコ
15. カメハメハ大王
16. ツチノコ
17. マッチ売りの少女
18. ナポレオン
19. ミツコ
20. 坂本龍馬
21. 世阿弥
22. ラー
23. 一休さん
24. ドラキュラ

ライブ情報

水曜日のカンパネラ ワンマンライブツアー2017 〜IN THE BOX〜
6月7日(水) 札幌 PENNY LANE24
6月9日(金) 函館 金森ホール 
6月10日(土) 青森Quarter
6月14日(水) 仙台 Rensa 
6月16日(金) 静岡 SOUND SHOWER ark
6月24日(土) 福井 響のホール 
6月25日(日) 新潟 新潟studio NEXS 
7月7日(金) 愛知 DIAMOND HALL
7月9日(日) 高松 festhalle
7月11日(火) 福岡 DRUM LOGOS
7月13日(木) 鹿児島 CAPARVO HALL 
7月16日(日) 岡山 YEBISU YA PRO
7月17日(月祝) 広島 CLUB QUATTRO
7月19日(水) 大阪 Zepp Osaka Bayside
7月26日(水) 東京 新木場STUDIO COAST 
8月18日(金) 沖縄 ミュージックタウン音市場 

水曜日のカンパネラ

2012年、夏。初のデモ音源「オズ」「空海」をYouTubeに配信し始動。「水曜日のカンパネラ」の語源は、水曜日に打合せが多かったから・・・と言う理由と、それ以外にも、様々な説がある。当初グループを予定して名付けられていたが、現在ステージとしてはコムアイのみが担当。それ以降、ボーカルのコムアイを中心とした、暢気でマイペースな音楽や様々な活動がスタートしている。
コムアイ 担当:主演 / 歌唱 1992年7月22日生まれ。神奈川県出身。成人しても未だ「クロール」と「逆上がり」ができないという弱点を持つ。高校生時代には、いくつかのNGOやNPOに関わり活発に動き回る。サルサダンスに毒され、キューバへ旅し、同世代100人のチェキスナップとインタビューを敢行。その後は、畑の暮らしを体験したり、たまに海外へ。最近は、鹿の解体を習得中。
“サウンドプロデュース”にケンモチヒデフミ。その他、“何でも屋”のDir.F。などが、活動を支えるメンバーとして所属。

オフィシャルサイトhttp://www.wed-camp.com

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