特集・進化するトライセラトップスという恐竜  vol. 9

Interview

宮沢和史×和田唱独占スペシャル対談。二人の音楽感が共鳴する理由(前編)

宮沢和史×和田唱独占スペシャル対談。二人の音楽感が共鳴する理由(前編)

2013年、トライセラトップスと宮沢和史はバンド“MIYATORA”を結成し、世間の度肝を抜いた。なにせ、最強のロックバンドとして活躍中の3人に、もう一人が加わって新たなバンドを作ることは前代未聞。だが、MIYATORAは新曲を作り、アルバムをレコーディングし、ワンマンライブまでやってのけた。押しも押されぬロックバンドとして、十全の活動をして音楽シーンを驚かせたのだった。
 今回は宮沢とトライセラの和田に、当時のことを振り返って語ってもらうことにした。バンドメンバーとして深く関わった宮沢だからこそ見ることのできたトライセラトップスの姿は、非常に示唆に富んだものだった。それは、トライセラの未来と、日本のバンドシーンに関わること、さらには宮沢の今後にとっても実りのある内容となった。
 去年から続けてきた“トライセラトップス特集”の締めくくりとなるこの異色の対談を、存分に楽しんでほしい。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 森崎純子


トライセラっていいなって思ってた。「このバンドいいよ」っていう評判も、ものすごくいっぱい聞こえてきてたから(宮沢)

宮沢さんと和田さんは、いつ頃、どこで、出会ったんですか?

和田 僕がデビューしたばっかりの頃に、あるフェスに宮沢さんがTHE BOOMとして出られていて、お会いしたことはあったんですけど、そのときはちゃんと「こんにちは」をしてないと思うんですよ。すみませんねえ。

宮沢 まったく、生意気ですよ!!

和田 わはは!

(一同笑い)

和田 生意気で言えば僕ら、デビューした頃は、イベントの最後によくやる“アンコール・セッション”に参加するのを「よし」としていなかったんですよ。

宮沢 ポリシーとして、そういうバンドもいるよね。まあ、僕もそうだったから。で、唱くんとは世代がちょっと違ってたんで、「イエーイ!」っていうわけにもいかなかったり、僕らが呼ばれるようなところにトライセラトップスはいるようでいなかった。

和田 そうだったかもしれないですね。

宮沢 ただ、すごく気になってました。ロックバンドってやっぱり、トリオがカッコイイですよね。それで、トライセラっていいなって思ってた。「このバンドいいよ」っていう評判も、ものすごくいっぱい聞こえてきてたから、一緒にならないもんかなあと思いつつ、ならないっていう。

「あ、宮沢さんが近くにいてくれたらちょっと安心かも!」みたいなシンパシーを感じてました(和田)

和田 初めて「こんにちは」って言ったのが、CHABOさんの還暦祝いのコンサートのZeppだった。

宮沢 うん。その後が、小田(和正)さんの“クリスマスの約束”の大メドレーのときかな。

和田 CHABOさんの還暦イベントから、そんなに間を開けずに“クリスマスの約束”があったんです。それで「ああ! この間はどうも!」っていう感じで挨拶ができて。で、メドレーのとき、ちょうど宮沢さんと僕はポジショニングが似ていた。いつもテレビに出てるソロシンガーの人たちがいっぱいいる中で、宮沢さんと僕はロックバンドのフロントマンっていう。「あ、宮沢さんが近くにいてくれたらちょっと安心かも!」みたいなシンパシーを感じてました。

宮沢 ものすごい数のソロのシンガーがそこにいて、バンドマンっていうと唱くんと俺と、あとはキヨサク(MONGOL800)がいたぐらいだもんですから。でもね、キヨサクはコーラスのパートが違ったんだよね。

和田 そうですね。

宮沢 だから、遠くにいるんですよ(笑)。

和田 で、僕と宮沢さんは一緒のパートで。楽屋でも、宮沢さんと僕は一緒のテーブルだったんですよね。

宮沢 そうそう。それで、「明るい男だなあ!」と思って。

ははは!

宮沢 「きっとこの男は、裏も表もない、真っ直ぐな人なんだろうな。清々しい人だなあ」と思ってた。楽屋でもホントに元気だし、練習してても元気だし、女子楽屋に行っても盛り上げて帰ってくるムードメーカーだし。

和田 わはは!

宮沢 クラスにそういう人っていたじゃない?

いたいたいた(笑)。

宮沢 ね? そういうタイプ。楽しかった、うん。もちろん、悩んだり落ち込んだりいろいろあるんでしょうけど、そういうのがあんまり感じられないのはカッコいいなと思いましたよね。

和田 CHABOさんがあって、小田さんがあって、次が……あ! 京都だ! 宮沢さんがひとりで回る、弾き語りの全国ツアーっていうのがあって、京都公演に僕が呼んでいただき、数曲を一緒にやったんですよ。

宮沢さんが、「皆さん…バンドやりませんか?」って言ってくれて。ちょっとビックリでしたね(和田)

宮沢 ゲストで来てくださって、唱くんひとりでも歌ってもらって、っていう。

和田 あれがかなり下地になったというか。

MIYATORAの下地に?

和田 そうですね。次は林もヨシフミも一緒に下北沢の沖縄料理屋さんでご飯を食べたとき、宮沢さんが、「皆さん…バンドやりませんか?」って言ってくれて。ちょっとビックリでしたね。もうバンドをやってるのに、「バンドやりませんか?」って言われたことなかったから(笑)。だからとっても新鮮でした。しかもその相手が宮沢さんという。

それって宮沢さんが最初に言ってた「かっこいいトリオのロックバンド」の中に、自分が入れたらいいなあっていうビジョンだったんですか?

宮沢 ザ・ポリスっていうバンドが僕、大好きなんですよ。いまだに好きなんです。80年代初頭っていうのは、パンクがあったり、同時期にボブ・マーリーが出てきたりして、もうホントに鍋をひっくり返したような時代で。
よく“ニューウェイブ”って一言で言うけど、とてもひとつに括れない。だってジャパンとかアート・オブ・ノイズとかも、あの範疇に入っちゃってるし、スペシャルズもポリスも入ってるわけでしょ? みんな新しいことをしようとしているときに、イギリスのあの時代のイライラ感とか若者の苛立ちを、ただ歌うんじゃなく、そこに何かわれわれの知らないサードワールドと呼ばれている国のリズムを取り入れて新しいものを作ろうというグルーブがいた。それがポリスだった。
ポリスはジャズの要素やジャマイカのスカやレゲエを取り入れたり、スペシャルズはもろにスカやレゲエをロックと融合させていた。そのひねくれ方が、僕にはすごくカッコよかった。僕はいまだにそういう美意識なんですけど、いろんな血の混ざってできてるものが好きなんですね。でも、意外にポリスを好きなバンド小僧って、周りにいそうでいなかったんですよね。でもって、たとえばギター小僧だったら、もっとギターメインのバンドが好きじゃないですか。

和田 ハードロックに行っちゃったりね。

宮沢 そうそう。あるいはテクニック志向に走ったり。意外とポリスのアンディ・サマーズに心酔してる人っていないんですよ。

和田 あんまり聞かないですね。

宮沢 U2のエッジにもそういうところがある。この二人のギタープレイって、すごい発明じゃないですか。誰も今までやったことのないことをやってる。

和田 近いですよね、あの2人は。

ちょっと“大人の不良”みたいなバンドを、一緒にやろうかって思ってました(宮沢)

宮沢 唱くんがそう言うのにも驚いた。周りに「そうだよな」って言える仲間が、今までいそうでいなかったんですよ(苦笑)。トライセラは絶対にポリスを好きだろうし、話は合うだろうなあって。だからちょっと“大人の不良”みたいなバンドを、一緒にやろうかって思ってました。

和田くんは、高校のときにポリスのコピーをやってたんだもんね。

和田 そうなんですよ。僕は完全に後追い世代で、僕が最初に聴いたのはスティングのソロだった。ただポリスっていうバンド名は知っていて、のちに結びついて「あ、スティングがいたバンドかあ!」っていう(笑)、そういう感じです。リアルタイムでは逃しちゃってるんですよ。だからそういう意味では、宮沢さんがとっても羨ましい。ポリスは宮沢さんが……?

宮沢 中学のとき。

和田 中学! ああ、とても羨ましいですねえ。僕らも3人編成で、とりあえず最低限3人いれば、ポリスやクリームがやってたことが一応できちゃうんだなと思って。そこまでのことをする自信はなかったですけど、でもお手本として確実にポリスっていうのはありましたね。「あんなことができたらカッコイイだろうなあ!」っていう。ポリスっていうお手本がなければ、たぶん3人のトライセラっていうのはまずあり得なかったでしょうね。 

宮沢 そして、さっきも言ったけど唱くんって明るいですから、エネルギーが自家発電みたいにどんどん湧いてくる。

和田 自家発電! じひひひひ。 

宮沢 (笑)俺にないところがいっぱいあって。2人とも曲を作るし、組んだら面白いんじゃないかなと。お互いが思い付かないようなものになるんじゃないかと思って、「じゃあ曲も作ろう」ってなって、2、3曲作ってみたら、そうなりました。

和田 なりましたねえ。すごく不思議な感じでしたね。やっぱり僕も、ビートルズがそうであるように、メインボーカリストが2人いるっていうのに、ずぅーっと憧れてたんで、いいことがいっぱいあるんですよね。声が違うからお客さんは飽きないし、2人ソングライターがいたら曲もバリエーションが出るし、あとは、使う力も半分でいいっていうね。

ははは!

和田 ライブで、いい意味で休めるじゃないですか。歌わないときはバッキングに徹するっていう、バッキングの楽しさを味わうこともできるし、ボーカルを取って表に出てワーって脚光を浴びることもできる。MIYATORAでフロントが2人いるっていうのを体験できたのは、すごく良かったですね。

宮沢和史 

1966年生まれ。バンドTHE BOOMのボーカルとして89年にデビュー。2006年にバンドGANGA ZUMBAを結成。14年にTHE BOOMを解散、現在、音楽活動と共に沖縄芸術大学の非常勤講師、ナレーター、作家など様々なジャンルで活動中。『音の棲むところ』など著作多数。

オフィシャルサイトhttp://www.miyazawa-kazufumi.jp

和田唱

1975 年東京⽣まれ。トライセラトップスのボーカル、ギター、作詞作曲も担当。ポジティブなリリックとリフを基調とした楽曲、良質なメロディセンスとライブで培った圧倒的な演奏⼒が、国内屈指の3 ピースロックバンドとして評価されている。SMAP、藤井フミヤ、松たか⼦、Kis-My-Ft2、SCANDAL などへの作品提供も多数。現在、トライセラトップス初のアコースティックライヴツアーを実施中。全国各地SOLDOUT となり、追加公演を急遽12月30 日(金)に⾚坂BLITZ で開催する。昨年に引き続き⼩⽥和正さん主催の⾳楽テレビ番組「クリスマスの約束」(2016年12月23日 に放送)に出演した。

オフィシャルサイトhttp://triceratops.net

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