特集・進化するトライセラトップスという恐竜  vol. 10

Interview

宮沢和史×和田唱独占スペシャル対談。二人の音楽感が共鳴する理由(後編)

宮沢和史×和田唱独占スペシャル対談。二人の音楽感が共鳴する理由(後編)

2013年、トライセラトップスと宮沢和史はバンド“MIYATORA”を結成し、世間の度肝を抜いた。なにせ、最強のロックバンドとして活躍中の3人に、もう一人が加わって新たなバンドを作ることは前代未聞。だが、MIYATORAは新曲を作り、アルバムをレコーディングし、ワンマンライブまでやってのけた。押しも押されぬロックバンドとして、十全の活動をして音楽シーンを驚かせたのだった。
今回は宮沢とトライセラの和田に、当時のことを振り返って語ってもらうことにした。バンドメンバーとして深く関わった宮沢だからこそ見ることのできたトライセラトップスの姿は、非常に示唆に富んだものだった。それは、トライセラの未来と、日本のバンドシーンに関わること、さらには宮沢の今後にとっても実りのある内容となった。
去年から続けてきた“トライセラトップス特集”の締めくくりとなるこの異色の対談を、存分に楽しんでほしい。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 森崎純子


宮沢さんが「トライセラトップスに楽曲提供をする」みたいな感じのイメージでちょっと作ってみたって(和田)

宮沢和史 × 和田唱

そして二人で曲を作ってみたら?

和田 1曲の中でボーカルを分け合うっていう、これが良かったですね。男同士のデュエットって、僕、すごく好きというか、それをロックのフィールドでやることにすごく憧れてたので。しかも相手は宮沢さんという。これは贅沢ですねえ。

で、実際にレコーディングに入って。

和田 楽しかったです。

宮沢 楽しかったですねえ。

和田 他の音は入れずに、4人だけでやろうって言ったので。キーボードは入れずに、ホントに僕らだけの音っていう。

宮沢 だからMIYATORAの音は、ライブでそのまま再現できる。

和田 そうですね。シンプルに。 

宮沢 だいたい唱くんが引っ張って、「こういうリフはどうだろう」とかいう感じで。

唱くんが作るのは、ほとんどが“リフ”ありきの音楽じゃないですか。宮沢さんはそういう曲の作り方をするんですか?

宮沢 あんまりないですね。三線もリフといえばリフだから、ああいうのは作れるけど。

アルバム『MIYATORA』の1曲目の「STIMULATOR」は、完全にリフ・ミュージックでしたよね。あのリフは宮沢さんの作った曲に、唱くんがリフを付けたんですか?

和田 いや、宮沢さんがあのリフを作ってくれたんです。すごくトライセラっぽい曲なんですよ、これがまた。そしたら宮沢さんが「トライセラトップスに楽曲提供をする」みたいな感じのイメージでちょっと作ってみたっておっしゃられて。

宮沢 僕からは遠くないっていうか、ポリスがもしMIYATORAの中心にいるとしたら、半径は同じっていうぐらいの曲にしようっていうのが「STIMULATOR」でしたね。

和田 そういうことだったので、アレンジはなるだけクールにしたんです。これをリフものだからっていって熱くやっちゃうと、すごく熱い感じになっちゃうんで、そこはポリス的なというか、あくまでクールに、乾いたアレンジでやってみたんですよ。

確かにポリスのリフって、熱くはないよね。

和田 クールなんですよ。あれがいいんですよね。それは宮沢さんにもTHE BOOMにも感じる。ロックバンドでロックの人なのに、いわゆるロックバンドのロック的なところに行かなかった人だから。

宮沢 ははは!

和田 それが僕、すごく好きなんですよね。そこに非常に憧れを感じますねえ。だって、「風になりたい」とか日本中が知ってる名曲たちが、全然ロックのフォーマットではない。あれって、ベースが入ってないんですよね。それがバンドの代表曲になる。そういうところが、宮沢さんのいちばん面白いところだなと思うんですよ。

宮沢 僕がギターを弾いているだけで、あとは打楽器だけ。メンバーは演奏していない。そこがロックかなと思って(笑)。

和田 そうそう。ホントにやりたい音楽を追究していけば、全員が参加する必要なんてないわけだし、ある意味自然なことというか。そうやって、もっとバンドって自由でいいじゃんって思うんです。宮沢さんはもう、ずいぶん昔にすでにそれを実践している。これ、なかなかできないんですよね。やっぱどうしてもバンドのフォーマットにとらわれてる。僕らですら、まだどこかで縛られてますもんね。取っ払いたいなっていつも思ってるんですよ。そういう意味でとっても憧れがありますね。

リスペクトしているからこそ、フラットに付き合えるっていう感じがして、羨ましいなあと思った。すごくビックリしたなあ(宮沢)

宮沢和史 × 和田唱

世代間のギャップはなかったんですか?

和田 宮沢さんとは10才違うんですよ。もちろん大先輩なんですけど、ギリギリ一緒にやれる。それは宮沢さんが若いからっていうのがデカいかな、やっぱり。同じバンドのメンバーとして、違和感がない感じ。これが小田さんだったら、ちょっと不思議な感じになると思うんです(笑)。

宮沢 見たよ、小田さんとやった去年の“クリスマスの約束。

和田 ああ、ありがとうございます(笑)。

宮沢 感動しましたよ。もう、あの番組の中でいっちばん光ってましたよ。

和田 いやいやもう、そんなそんな(苦笑)。

宮沢 だって小田さんを操ってるんだもん。

和田 いやいやいや(笑)。

宮沢 誰もできないよ。

和田 はははは!

宮沢 リスペクトしているからこそ、フラットに付き合えるっていう感じがして、羨ましいなあと思った。すごくビックリしたなあ。久しぶりに音楽を聴いて感動した番組でした。

和田 ああ、ありがとうございます。嬉しい。

そしてMIYATORAは、まずライブをスタートさせた。

和田 うん、いちばん最初のステージが、“ライジングサン・ロックフェスティバル”ですよ。

おわっ! 大きいところですねえ!

和田 それまで僕らはトライセラトップスとして“ライジング”に出たことがなかったんですよ。MIYATORAとして初めて出た。お客さんがいっぱいで。

宮沢 すごかったねえ、あのときは。

和田 しかもいい盛り上がりだったんですよね、これが。

宮沢 「人が来るのかなあ」とか言ってたら、ねえ。

和田 「MIYATORAって誰だよ」っていう、ねえ(笑)。

宮沢 そしたらいっぱい人が来てくれて、嬉しかったなあ、あれ。

和田 嬉しかったですねえ。

宮沢 ライブもいいライブだったし。

和田 とっても手応えを感じたんですよね、うん。初めて安心して楽しめたライブだったかな。いつもは自分がフロントに晒されてて、「最後まで行けるのか」とか、つねにどこか不安と戦いながらライブってやってたんですけど、それがあんまりなかった。安心感の中で楽しみながらやれた。「ああ、これはいいぞ!」って思いましたね。

宮沢 その後、四国の “モンスターバッシュ”でやって。

和田 そしてついにワンマンを大阪と東京でやった。両方すごい良かったですねえ。

宮沢和史 × 和田唱

最初に沖縄料理屋で「バンドやらないか」って言ったときに思い描いたビジョンに近い展開だったんですか?

宮沢 たとえば「曲をどうする? 作る?」「よし、作りましょう」とか、「カバーどうする? やる?」とか話し合って。「ああ、じゃあワンマンできそうだなあ」とか。

和田 そうです、お互いの曲とカバーをやればワンマンができる。カバーはやっぱり、ポリスとU2ってすぐ宮沢さんがおっしゃって。

宮沢 Run-D.M.C.をやろうとかね。

和田 「WALK THIS WAY」ね!やらなかったけど。

宮沢 お互い方向を探りながら。

和田 U2の「WITH OR WITHOUT YOU」を正々堂々とカバーするバンドはいないと思います。

宮沢 いないよね。

宮沢和史 × 和田唱

楽しそうですね。またMIYATORAをやればいいのに。

和田 そうですね。MIYATORAには“フーテンのミヤトラ”っていうキャッチコピーが付いていて、いつどこで帰ってくるかわからない。

うんうん、なるほど(笑)。

和田 なので、そんなつもりでいるんですけどね。一度だけ再結成がありましたね。宮沢さんの渋谷公会堂のライブで復活した。

宮沢 うん。MIYATORAのワンマンのあと、俺は体調を壊して。公には言わなかったですけど、ずっと首のヘルニアと闘いながら、騙し騙し音楽をやってたんですけど、もうこれは無理だっていうことになって活動を休止した。その後に、MIYATORAにいくつかオファーが来たんですけど、それに俺が付き合えなくて断る形になっちゃったのが、非常に心残りで。ワンマンをやり終えた自信と、楽しかったから、「もう少しやりたいよな!」って思ってたので、弾き語りの復帰ライブを渋公でやるから、トライセラに来てもらって。

和田 MIYATORAアコースティック・バージョンでしたね。

宮沢さんの体調はいかがですか?

宮沢 よく休めたんで、最近は徐々に歌っていこうかなと思ってます。

今日はMIYATORAの話を中心に話をうかがってきましたが、いま思うとMIYATORAはどんな経験でしたか?

宮沢 僕はこの3人のトライアングルが好きなので、このトライアングルのまま付き合いたいなあっていうのはあります。このバンドと付き合って「すごいな」と思ったのは、良く見積もっても1+1+1で3ちょいになるっていうのが普通の計算ですよね。違う言い方をすれば3人で一つみたいな、1+1+1で一つの人格になる。でもこのバンドはね、6ぐらいになるんですよ。

和田 ははは、そうですか?

宮沢 それは何故かっていうと、まず唱くんがリフを弾きながら歌えるっていうこと。で、他の2人も、コーラスをうたえるんですよ。1人が2つできるっていう。しかも歌が上手いから、自分たちでどんどんハモってコーラスを作っちゃう。誰かが仕切って決めることを、それぞれがやれちゃうんで、6ぐらいになるんですよ。「これは美しいなあ!」って、すごく感動しました。ポリスですら、コーラスはここまでできない。特に、唱くん。リフを弾きながら歌えるって、ホントに希有な存在じゃないですか?

和田 僕もねえ、実はライブが終わると、身体のいろんなところが痛いんですよ、ホントに (苦笑)。でも、そのぐらいの気持ちでやらないとなかなか6にはならない。

宮沢 ヘトヘトだろうね。

和田 はい。痛いし、ヘトヘトだし。

宮沢 ただ、6になることができたときは、自分たちでも「あ、来てる!」っていう瞬間が最高でしょ? 

和田 そうですね。ライブの最中に「よし、来てるぞ!」っていう瞬間をなるだけ生み出したいなあと思ってますね。でも毎回、それを味わえるわけでもないので、そこに行ければいいんですけどね。「あそこに行けたら、もうこっちのもんだ」っていうか。 

俺はトライセラを“日本を代表するロックバンド”のひとつだと思ってるんで(宮沢)

宮沢和史 × 和田唱

ちなみにMIYATORAでは“来てる瞬間”を経験しましたか?

和田 MIYATORAは、いきなり“ライジング”から”来た”んですよね。

宮沢 そうそう。みんなMIYATORAを初めて聴くようなものなのに、盛り上がってましたねえ(笑)。

和田 そうですねえ。

宮沢 トライセラにはこれを続けてほしいし、もっともっと評価されないといけない。だって俺はトライセラを“日本を代表するロックバンド”のひとつだと思ってるんで、皆さんに「そうだよなあ」ってもっと思ってほしいですね。
トライセラがやってるロックって、「何かを叩き壊せ!」っていうことじゃなくて、「絶対に明日はいいことがあるし、面白いよ! 一緒に行こうよ、面白いところへ」っていうメッセージだと思う。それってパンクとはちょっと違う。やっぱりロックっていうか。
佐野(元春)さんが、「ロックは約束の音楽だ」って言ってたことがあって、まさにそれが僕の思ってるロックバンドのイメージなんですよね。約束したからには、裏切っちゃいけない。一回、音楽で約束しちゃうと、どんどん道は狭くなるんだけど、トライセラはそこに明るさがあるから、なんだか信じたくなる。俺は年上だけど、「あ、こいつらの言ってることを信じてみたいなあ、信じたくなるなあ」っていう。なんかそういう感じなんですよね。だから日本のロックシーンの中で、トライセラはもっともっと評価されるべきだと思う。

和田 ありがとうございます!

MIYATORAはもう、いつ帰ってくるかわからないから楽しみですよ(和田)

宮沢和史 × 和田唱

ありがたいねえ(笑)。

和田 ホントにありがたいんですよ、もう。

そういえば、唱くんは音楽ではなくて、宮沢さんに人生相談をしたことはないんですか? たとえば結婚したときとか?

和田 しなかったです。

宮沢 ホントに水くさいですよね。

和田 いやいや、わはははは! すいませんでした! なんか、照れくさいじゃないですか。

宮沢 まあでも、他のバンドにここまでドップリ入ってくっていうことはなかなかない。あっても「ちょっとボーカルで来てくれませんか」みたいなことで、スタジオにちょっとお邪魔するとかはありますけど。だからMIYATORAで、ギターケースの中身を全部見せてもらうっていうぐらいの感じは、すごくドキドキしたし、「へえー! このバンドはこういう感じで進んでいくんだ」とか、すごく新鮮だったし、面白かったねえ。

フーテンだから、是非また帰ってきてくださいよ。

和田 なんだか嬉しいなぁ。MIYATORAはもう、いつ帰ってくるかわからないから楽しみですよ。 

はい。ありがとうございました。

宮沢和史 × 和田唱

宮沢和史 

1966年生まれ。バンドTHE BOOMのボーカルとして89年にデビュー。2006年にバンドGANGA ZUMBAを結成。14年にTHE BOOMを解散、現在、音楽活動と共に沖縄芸術大学の非常勤講師、ナレーター、作家など様々なジャンルで活動中。『音の棲むところ』など著作多数。

オフィシャルサイトhttp://www.miyazawa-kazufumi.jp

和田唱

1975 年東京⽣まれ。トライセラトップスのボーカル、ギター、作詞作曲も担当。ポジティブなリリックとリフを基調とした楽曲、良質なメロディセンスとライブで培った圧倒的な演奏⼒が、国内屈指の3 ピースロックバンドとして評価されている。SMAP、藤井フミヤ、松たか⼦、Kis-My-Ft2、SCANDAL などへの作品提供も多数。現在、トライセラトップス初のアコースティックライヴツアーを実施中。全国各地SOLDOUT となり、追加公演を急遽12月30 日(金)に⾚坂BLITZ で開催する。昨年に引き続き⼩⽥和正さん主催の⾳楽テレビ番組「クリスマスの約束」(2016年12月23日 に放送)に出演した。

オフィシャルサイトhttp://triceratops.net

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