Interview

高畑充希、『ひるね姫』を声と主題歌で世界作り上げる。〈ココネ〉が歌うエンドロールまでが一つの物語

高畑充希、『ひるね姫』を声と主題歌で世界作り上げる。〈ココネ〉が歌うエンドロールまでが一つの物語

『精霊の守り人』(07)、『東のエデン』(09)などの神山健治監督が、オリジナル脚本から手掛けた長編アニメ『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』。2020年の岡山県に暮らす平凡な女子高生の〈森川ココネ〉が、いつも見る“夢”。その世界では〈エンシェン〉という姫が大冒険を繰り広げていた。やがて、〈ココネ〉自身にも大事件が降りかかり、その夢と現実の世界は奇妙な一致を見せはじめる……。
長編アニメの声優は初挑戦となる高畑充希が、〈ココネ〉と〈エンシェン〉の二役、そして主題歌まで担当。実写の演技との違いや、難しかったポイントなどを伺った。

取材・文 / 大谷弦 撮影 / 三橋優美子


長編アニメーション映画の声優を務めるのは初めてですね。

最初は本当に手探りでした。私は、アニメは監督のものだと思ってるので、神山監督に身を任せて、できるだけ理想に添えるように頑張ろうって思いました。

難しかったところは?

声だけの演技は、きっと思ってる以上に抑揚をつけないといけないんだろうなとは思ったのですが、普段、気持ちが動いたときって意外と抑揚がつかなかったりするので、そこの帳尻合わせが難しかったです。〈ココネ〉はちょっとのんびりした性格なので、そんなにセリフに強弱をつけないほうが〈ココネ〉らしさが出るのかなって。〈エンシェン〉のときは、最初は意識して変えようと思ってたんですけど、どこかで〈ココネ〉と共通してたほうがいいかなとか、監督と相談しながら決めていきました。そこまで違いが出ないように、〈ココネ〉は丸い声、〈エンシェン〉はもうちょっと角をつけたようなイメージでやりました。

〈ココネ〉というキャラクターはいかがでしたか?

〈ココネ〉は岡山に住む平凡な女子高生なんですけど、いろんなことが起こっても、最初から最後まで全然変わらないんですよね。芯が強いというか、良い意味で人に影響されない。誰が現れようと、ずっと彼女のペースで進んでいくんです。

幼なじみの〈佐渡モリオ〉との関係も進展しませんよね。

もともと、恋愛要素が強いお話ではないというのもありますけど、〈モリオ〉は〈ココネ〉のことを意識してるけど、〈ココネ〉は〈モリオ〉のことを手下ぐらいにしか思ってないんじゃないかな?(笑)

〈ココネ〉のお父さんの〈モモタロー〉は飄々としたキャラクターですよね。

〈ココネ〉と〈モモタロー〉は一緒に住んでるのに、メールでやりとりするんです。「せっかくだから喋ろうよ」って思いますけど(笑)、ずっと二人で暮らしてきたから徐々にこういう距離になったのかなって。〈モモタロー〉は〈ココネ〉にとって、不器用なお父さんでもあり、息子でもあるような。永遠の少年のような人です。

〈モリオ〉役の満島真之介さん、〈モモタロー〉役の江口洋介さんとは、収録時に実際に共演されたんですか?

満島さんと一緒に収録する機会があったんですが、掛け合いで出来るっていうのが本当に嬉しかったです。ほとんどのシーンは一人でブースに篭って録っていたので、ずっと戸惑ってたんです。独りでテンションをあげるというのがなかなか出来なくて。〈ジョイ〉役の釘宮理恵さんともご一緒する機会があったんですけど、釘宮さんは録るタイミングでパン! とテンションがあがるから、声優さんすごい!って思いました。

〈ココネ〉のセリフは全編が方言でしたが、苦労されましたか?

岡山弁って、あまり耳なじみがなかったんですけど、私の出身地である関西の言葉と似てる部分もあるので、そのあたりが本当に難しかったですね。語尾の「~じゃろ」とか、濁音が多くて、ガンガンいくと強い印象になっちゃいそうだったので、〈ココネ〉っぽく柔らかく話すことを心がけました。それに方言としてもちゃんと伝わるように、先生に付きっきりになっていただいて、セリフ一つ喋るたびに、一言一句チェックしてもらいました。私もテレビで関西弁を聞くとたまに違和感を感じてしまうことがあるので、岡山の方が聞いても納得してもらえるようにしたいな、って。

声優としての初主演作となりましたが、ご自身の評価はいかがですか?

自分では声に特徴がありすぎると思っていて、声優をやると私の顔が出てきちゃうんじゃないかと思ってたんです。なので、オファーをいただいたときはすごくビックリしました。試写のときも、当たり前ですけど、ずっと自分の声が画面から出てくるので、冷静には観られなかったですね。

本作では〈森川ココネ〉名義で主題歌も担当されました。

最初は自分の関わった映画の主題歌を歌うことに対して、不安な気持ちはありました。「本編でずっと出てるのに、さらに歌うの?」って(笑)。監督とも相談させていただいたんですけど、監督はずっとこの『デイ・ドリーム・ビリーバー』を聴きながら製作していて、誰かにカバーしてもらってエンディングに使いたいという案をずっと持っていらっしゃったんです。それで、まず私が〈ココネ〉役をやらせていただくことが決まって、主題歌をどうするかという話になり、〈ココネ〉がそのまま歌えば上手く繋がるんじゃないか、ということで、それなら意味があると思ってやってみることにしたんです。もともと好きな曲ですし、映画の中で流れるとまた違った意味にも聞こえてくるんです。この曲が流れるエンドロールまで含めて、一本の物語として完結するんだなって思いました。

〈ココネ〉と〈エンシェン〉のように、夢と現実がリンクすることはありますか?

私はあまり良い夢を観ないんですよ。何かに追いかけられるとか、ずっと水を飲まされるとか、そういう夢ばかりで(笑)。でも、現実で舞台の稽古がハードなときに、役を降ろされる夢を観たりするので、リンクはしてるんだと思います。リアルすぎて夢が現実かわからなくなって、起きたときに夢で良かったって思ったりします。

夢から知らない自分を発見したりとかは?

夢ではないんですけど、私の場合はお芝居しているときに思うことはあります。ちょっとぶっ飛んだ役とかをやっているとき、そういう役のセリフって、脳を通らないというか、“思った”から“言う”までの距離が近くて、動物的な感覚になるんです。私は普段何かを喋るとき、一回頭で考えて、「これを言っていいのか」「この言葉がいまの気持ちに合ってるのかな」って考えちゃうんですけど、役では「あ、言っちゃうんだ」って。そんな自分に対して、こんな私もいるんだなって嬉しくなります。

『ひるね姫』は2020年というちょっと先の未来の物語ですが、その頃、高畑さん自身はどのようになっていたいですか?

どうなってるんだろう……。私自身、本当にここ1~2年の環境の変化が激しすぎて、全く予想もしていないような毎日だったので、さらに数年後は、本当にわからないです。でも、〈ココネ〉みたいに変わってないといいなって思います。自分のペースでいられたら幸せです。

仕事に対するスタンスとかも変わってきていますか?

仕事に対しては…… 毎回苦しみます(笑)。私の中では、常に新しいことをやらせていただいてるって思ってるんです。こんな感じの役やったな、とか、似たようなお仕事を選んだほうが楽なんですけど、せっかくだから毎回チャレンジしたいと思っていて。そのスタンスはずっと持っていたいなと思います。〈ココネ〉も何があっても変わらないところが素敵です。『ひるね姫』は、ちょっとずつ掛け違っていた何かが、最後に元に戻るお話なんです。いろんなことが起きても〈ココネ〉が変わらなかったから、周りの人たちが影響を受けて、それぞれが一歩を踏み出せる。ヒロインの成長物語じゃないところが、この作品の魅力だなって思います。

高畑充希(たかはたみつき)

1991年生まれ、大阪府出身。2005年に女優デビュー。2007年から2012年まで舞台『ピーターパン』で8代目ピーターパンを務め、連続テレビ小説『ごちそうさん』(13/NHK)で注目を集めた。2016年は連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK)、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(CX)、第40回日本アカデミー賞新人俳優賞に輝いた初主演映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(三木康一郎 監督)、『怒り』(李相日 監督)、『アズミ・ハルコは行方不明』(松居大悟 監督)、ミュージカル『わたしは真悟』と、多数の作品に出演して大躍進の年となった。今年は本作の他、映画『泥棒役者』(11月公開予定/西田征史 監督)、『DESTINY 鎌倉ものがたり』(12月9日公開予定/山崎貴 監督)が待機中で、4月からは主演舞台『エレクトラ』がスタートする。

オフィシャルサイトhttp://www.horipro.co.jp/takahatamitsuki/

映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』

2017年3月18日公開

岡山県倉敷市で父親と二人暮らしをしている〈森川ココネ〉。平凡な女子高生の〈ココネ〉は最近、同じ夢ばかり見るようになる。進路のこと、友達のこと、家族のこと……。考えなければいけないことがたくさんある彼女は寝てばかりもいられない。無口で無愛想な〈ココネ〉の父親は、そんな彼女の様子を知ってか知らずか、自動車の改造にばかり明け暮れている。2020年、東京オリンピックの3日前。突然父親が警察に逮捕されて東京に連行された。〈ココネ〉は次々と浮かび上がる謎を解決しようと、幼なじみの大学生〈モリオ〉を連れて東京に向かう決意をする。その道中で、彼女はいつも自分が見ている夢にこそ、事態を解決する鍵があることに気づく。たった一つの得意技である“昼寝”を武器に、〈ココネ〉は夢と現実をまたいだ不思議な旅に出る。

【原作・脚本・監督】神山健治
【声の出演】
高畑充希、満島真之介、古田新太、釘宮理恵、高木渉、前野朋哉、清水理沙、高橋英樹、江口洋介ほか

【音楽】下村陽子
【キャラクター原案】森川聡子
【作画監督】佐々木敦子、黄瀬和哉
【演出】堀元宣、河野利幸
【配給】ワーナー・ブラザース映画

オフィシャルサイトhttp://www.hirunehime.jp

主題歌

デイ・ドリーム・ビリーバー
森川ココネ

ワーナーミュージック・ジャパン

©2017 ひるね姫製作委員会


フォトギャラリー

原作本 「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」
神山健治 (著者)
KADOKAWA
メディアファクトリー
角川文庫

昼寝が得意な女子高生の森川ココネは最近、同じ夢ばかり見ていた。時は2020年、東京オリンピックの3日前。岡山でともに暮らす父親が、突然警察に東京へ連行される。ココネは父を助けようと、幼なじみのモリオと東京に向かうが、その道中は夢の世界とリアルをまたいだ不思議な旅となる。それは彼女にとって、“知らないワタシ”を見つける旅でもあった。アニメーション映画『ひるね姫』の、神山健治監督自らによる原作小説。

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