Interview

「テイ・トウワ」が放つ新作 『EMO』を彩る、豪華ゲスト陣

「テイ・トウワ」が放つ新作 『EMO』を彩る、豪華ゲスト陣

1990年にDeee-Liteで全米デビューし、1994年以降はソロで活躍を続けて来たテイ・トウワが、9枚目となるニューアルバム『EMO』をリリースする。昨年は、高橋幸宏、小山田圭吾、砂原良徳、Leo今井、ゴンドウトモヒコと共に結成したMETAFIVEとしても活躍し、その存在感を知らしめたが、METAFIVEのメンバーや多彩なゲストが参加した新作では精緻にしてポップ、かつ「エモい」作品に仕上げてきた。
テイ・トウワの洗練された音づくりとクールな佇まいからすれば、相反するような「エモ」というキーワード。これは気になる。ソロ・デビューから23年を迎え、今なお鮮烈な音を紡ぎ続ける異才の異才たるゆえんを探る。

文 / 佐野郷子 写真 / 板橋淳一
撮影協力 / INTERSECT BY LEXUS TOKYO


Deee-Lite以来のバンド、METAFIVEの想定外の活動

9枚目のオリジナル・アルバム『EMO』は、〈メタの合間につくりました〉とありますが、昨年はMETAFIVEで大活躍でしたね。

METAFIVEは元々、一夜限りのコンサートのために高橋幸宏さんを中心にしたライヴ限定ユニットとして始まったんですが、『攻殻機動隊 ARISE』のエンディング・テーマ「Split Spirit」と、僕のアルバムに入っている「RADIO」以外は、幸宏さんの曲や幸宏さんがいるからYMOの曲を臆面もなくできて(笑)、それはそれで楽しかったんですが、やっているうちに、やっぱりオリジナル・アルバムは要るよね、と。アルバム『META』をつくったら、夏フェスも含めてライブのスケジュールも決まり、Blu-ray『METALIVE』、ミニ・アルバム「METAHALF」と続いて、秋にはワンマンツアーまで。そうやって考えると2016年1月にMETAFIVEのアルバムが出てからの1年間は想定外でしたね。Deee-Lite以来、バンドもコンサートをやるとは思っていなかった僕にすれば。

METAFIVEの好評が想定外の活動になったということですよね。

そうですね。前作『CUTE』(2015年)の時はすでにMETAFIVEは始動していたし、『META』の前から自分のアルバムの制作は始めていたんです。ここ最近は、自分のソロはきっちり計画は立てずに、そろそろかなという時に出すというスタンスでやってきたんですが、草間彌生さんがジャケットを描いてくれた7枚目の『LUCKY』(2013年)の頃から自分の新章が始まった気がしますね。僕にとっては、バンドというのはDeee-Lite以来だし、最初で最後かもしれないけど、今回は「METAFIVEのテイ・トウワのソロ・アルバム」とも言える。

テイさんのアルバムに収録されていた幸宏さんがヴォーカルの「RADIO」(『LUCKY』)、「Luv Pandemic」(『CUTE』)は、METAFIVEのライブでも重要なナンバーになっていました。

幸宏さんは昔から好きな男性ヴォーカリストだったので、僕のアルバムでもお願いしたわけですが、自分はライブをやらないので、それがMETAという受け皿ができて、ライブで披露できたのはうれしかったですね。ライブを想定していたわけではない曲が、まさか肝になるとは思ってもみませんでしたが。

『EMO』もMETAFIVEのメンバーが随所で活躍して、バンドの動の部分が引き継がれていますね。

1曲目「Exformation」と2曲目の「Brand Nu Emo」は、METAFIVEのアルバムに入れてもいい曲なんですが、『META』が出来た時は、「濃いなぁ」と思ったし、その濃さはあの個性的なメンバーから成るバンドならではのものだと思うんです。自分のソロは、意図的にMETAと重なる部分もありつつ、もう少しインストの割合を増やし、METAは男性ツイン・ヴォーカルだったから、女の子のフレッシュな声が欲しくなってMIZUHARA SISTERSや、ゆるめるモ!のあのさんに参加してもらったり、新しい要素もありつつ、20年前につくった「GBI」のニューヴァージョンもあるというバランスなんですけどね。

表現の幅を広げた「エモ」というキーワード

アルバム・タイトルの『EMO』を「イーモ」ではなく、「エモ」と読ませるのは?

9枚目だから『9』も候補にあったんですが、ジャケットのアートワークをお願いした五木田(智央)くんに何曲か聴いてもらって、「どっちが描きやすい?」と聞いたら、「エモですかね、あえて」と。五木田くんの絵って、顔のない顔をよく描くからNo Faceと言われるらしいんですが、前からマスクやお面に惹かれるという話を聞いていたんです。それと、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に出てくるカイロ・レンって、ちょうちょいマスク外すじゃないですか? それを見た女の子たちが「エモいわ♥」みたいな反応をしたらしいんですよ。そうか。マスクを脱ぐのはエモいのか、と(笑)。僕はマスクをしているわけじゃないですけど、素顔を見せるようにもっと曲のエモーションを曝け出しちゃってもいいのかなと思うようになったんです。

何かきっかけはあったんですか?

例えば、「Xylocopa」という曲はクマンバチに刺されて死にかけた時の曲で、『LUCKY』の時にすでに出来ていたんですが、アンラッキーな経験だから「ラッキー」や「キュート」という枠には入らなかったんですよ。ただ、曲を完成するには何かしらのエモーションや思い入れが必要で、「エモ」という括りにしたら、表現の幅が広がった。例えば、映画なら不運な主人公の話でも観るし、現実に戻った時に小さな幸せを見つけられたりするじゃないですか? 以前は排除気味だったダークサイドや必要悪みたいなものも、「エモ」の中なら入れられるなと。「REM」という曲の原型も、2011年の震災の後、音楽が聴けない、作れないという時期を経てようやく出来た曲なんですが、あの頃なぜだか眠くてしょうがなかったことを思い出したり、そういうボツってた曲が今回は蘇ったんですね。

五木田智央さんがトランペットで参加した「TG」も今どきのジャズとも相通じる「エモ」さが新鮮ですね。

ヤバイな。砂原(良徳)くん、小山田(圭吾)くん、Leo今井くん、(石野)卓球くん、玄人はみんなこのインストが好きだって言いますね。これ以上音は減らせないというくらいの曲なのに。五木田くんには、METAFIVEでもジャケットをお願いしたんですが、トランペットもやっていたらしいから、「ちょっと吹いてみてよ」と大抜擢。本人は照れてたけどね。

UAから、ゆるめるモ!まで、技ありの女性ヴォーカリスト陣の配置

テイさんの女性ヴォーカリストをフィーチャーした曲には定評がありますが、今回はさらにジャンルを超えたバラエティに富んだ人選ですね。

UAは「Last Century Modern」(1999年)からの付き合いで、前作『CUTE』でも「SOUND OF MUSIC」という曲に参加してもらったし、良い関係がずっと続いているんです。「YOLO」でLeo今井くんとデュエットしてくれたイナラ・ジョージは会ったことはないんですが、ザ・バード&ザ・ビーが好きだったのでメールしたら「TOWA TEIやCorneliusのファンだから喜んで」という返事が来て。彼女、リトル・フィートのローウェル・ジョージの娘さんなんだってね。

脱力支援アイドルゆるめるモ!のあのさんの起用も意表を突かれました。

「REM」は、歌唱力云々ではなくアイドルの方が合うなと思って。彼女が芸人にいじられている動画を観て、彼女の声のトーンが可愛くて合いそうだなと思ったんですよ。長らくボツになった曲は滅多に浮上することはないし、しつこくこねくり回しても形にならないことがほとんどだけど、彼女の声で今までにないタイプの大人のテクノになりましたね。

今回は、MIZUHARA SISTERSとして参加している水原希子さん、佑果さん姉妹も、最近のテイさんとは縁が深いですね。

希子ちゃんは「The Burning Plain」(『SUNNY』2011年)で幸宏さんとデュエットして以来ですね。佑果ちゃんも「Luv Pandemic」やMETAFIVEのライヴにも参加してもらったし、僕と佑果ちゃんとでアナログしかかけないパーティも始めたり。今回は姉妹で何かやりたいというので、「Brand Nu Emo」をお願いしました。僕は玄人か素人しか起用しないことでも有名ですが(笑)、上手いのかもしれないけど器用すぎるスタジオ・ミュージシャンっぽい人にはまったく興味がないんですよ。だから、ギターも小山田くん、高野寛くん、シュガー吉永にお願いするし、その人にしか出せない音を求めているというか。今回は、五木田くんや、知り合いのカフェでコーヒーを入れていたオーストラリア人の女の子にも声で参加してもらったし。

そういうキュートなアクセントを効かせるところがテイさんらしく、リスナーの間口が広いところでもるのでは?

METAFIVEが男所帯だったのもありますが、美大でデザインを志した頃から、キュートでポップな要素がアートにある方が好きなんですね。乙女座だし、男気が足りないのかもしれないけど、女子がちょっとピコピコしたのが聴きたい時、聴きやすいというのはあるでしょうね。

『Sound Museum』(1998年)に収録されていたカイリー・ミノーグの「GBI」が今回、復活したのは?

「エモ」という括りで2曲が復活したので、2014年のベスト盤の時に入れられなかった「GBI」を4つ打ちではなくて、ポエトリー・リーディングでカイリーの表現力を生かせるようにアップデイトしたいなと思って。20年前のエモさがありありと浮かび上がってくるような感じになったんじゃないかと。

UAがヴォーカルの「Sugar」も、以前のアルバムに入っていてもおかしくない気がしました。

そうそう。「Sugar」は1988年くらいの、ソウル・II・ソウルが出て来た頃のUKソウルを少し意識したかな。レア・グルーヴDJがつくったようなブレイクビーツ系のビートというか。最近は、アルバム全体のその時なりのバランスが自分にとって新しければ、「良し」と思うようになってきたんですよ。必ずしもスクラップ&ビルドする必要はないなと。

どこのソサエティにも属さず、変化を楽しむ23年目の境地

精緻に作り込んだ音なのに、疲れない、聴きやすい「軽み」があるのも特徴ですね。

近年は僕のスタジオのある軽井沢でアルバムの音を仕上げていたんですが、今回はミックスを全曲、熱海在住のゴウ・ホトダさんにお願いしたんです。熱海で温泉入って、ミックスして、夕方には終えて、寿司喰って、バカ話して、というリラックス・モードが良かったんですよ。マスタリングも僕は行かずに砂原くんに任せたので、音的にはその組み合わせが功を奏したところもありますね。やっぱり、砂原くんも含め、信頼できる仲間ができたというのも大きいかな。

アルバムも9枚目。ソロ23年目を迎えて、今も音楽と新鮮に向かえる理由はどこにあると思いますか?

若い時は何の計画性もなかったし、Deee-Liteでデビューして、ソロになって、現場感が減っていく40歳くらいでフェイドアウトしていくのかな、と思っていたんですよ。僕の場合は、30代半ばで軽井沢にベースを移し、スタジオに行くような感覚で温泉に行ったり、上手いもの食べたり、日々心身をリフレッシュしていることも実は大きくて。自分がこんなに長く音楽を続けているとは思わなかったけど、音楽をつくるためには、なるべく気持ちよく過ごして、鼻歌が出て来るような状態になるようにとは心がけていますね。ストイックにジムに通って、ささみだけを食べるような生活はできない代わりに(笑)。
あと、最近、仕事で別府に行く機会が多いんですが、温泉地の音楽を何とかしたいですね。適当にジャズとかボサノヴァかけときゃいいってわけじゃないから(笑)。

別府の温泉ですか? 何やら気になりますね。

僕もDJを始めて30年になりますが、随分遠くに来たもんだな、と(笑)。Deee-Liteの時から、ハウスやヒップホップのソサエティにも歓迎されたけど、僕自身はどこかのソサエティに入りたいと思ったことはなくて、そのバランスの変化を自分なりに楽しみながらやってきて、2017年『EMO』に至ったわけです。僕は砂原くんと違って、至らなかった点を次は完璧にしたいというタイプではないけど、新しい曲をつくることを楽しめる限り、続けていけるかなと。

『EMO』特設サイトhttp://www.towatei.com/emo/

「Brand Nu Emo」
TOWA TEI as METAFIVE with MIZUHARA SISTERS

ライブ情報

RELEASE PARTY & RELEASE TOUR

【東京】records “EMO SPECIAL”
日時:3/24/2017 (Fri)  START 21:00 (26:00CLOSE)
会場:montoak(表参道)
http://www.montoak.com/
selector : TOWA TEI/水原佑果/山本宇一/オカモトレイジ/INO hidefumi

【東京】TOWA TEI “EMO” Release Party
日時: 4/01/2017 (Sat) OPEN 22:00
会場:SOUND MUSEUM VISION
http://www.vision-tokyo.com/
DJ :TOWA TEI/砂原良徳/SEKITOVA/Licaxxx/水原佑果and more…
LIVE:DOTAMA and more…

【京都】dj colaboy presents HOMESICK 32
TOWA TEI ~New Album 『EMO』 Release Party in KYOTO~
日時:4/21/2017 (Fri)OPEN/START 10:00pm 
会場:METRO
http://www.metro.ne.jp/
DJ:TOWA TEI/tofubeats/HALFBY/AFR/カロリーカット/dj colaboy/Dorian

【和歌山】TOWA TEI “EMO” Release Paty in WAKAYAMA
日時:4/22/2017(Sat)OPEN 19:00-
会場:Riche(ダイワロイネットホテル 1F)
http://www.montigre.jp/
DJ:TOWA TEI/Shuichiro Horiuchi/kj-s/CO2/DAIAN/FUYURI
VJ:JOE

【広島】TOWA TEI “EMO” Release Paty in HIROSHIMA
日時:5/02/2017 (Fri)START 20:00
会場:SUPER SUPPERCLUB
http://commercial-art.net/wp/hiroshima/super-supper-club/
DJ:TOWA TEI and more…

【福岡】TOWA TEI “EMO” Release Party in FUKUOKA
日時:5/04/2017(Thu) OPEN/START 21:00
会場:KIETH FLACK
http://www.kiethflack.net/
DJ:TOWA TEI and more…


【フェス出演情報】

GREENROOM FESTIVAL’17
日時:2017年5月20日(土)
会場:横浜赤レンガ地区野外特設会場
http://greenroom.jp/

森、道、市場
日時:2017年5月13日(土)
会場:愛知・蒲郡の大塚海浜緑地
http://mori-michi-ichiba.info/

TOWA TEI / テイ・トウワ

1990年にDeee-Liteのメンバーとして、アルバム『World Clique』で全米デビュー。その後は活動の拠点を日本に置き、1994年に初のソロ・アルバム『Future Listening!』をリリース。DJ、プロデューサーとしても活躍を続けながら、ソロ・アルバムをコンスタントに発表し、2005年からは『FLASH』『BIG FUN』『SUNNY』という3部作を制作。2013年には草間彌生がジャケットのアートワークを初めて手がけたことでも話題を呼んだ『LUCKY』、2015年には細野晴臣、METAFIVEなどが参加し、現代美術の世界で活躍する五木田智央がアートワークを担当した『CUTE』をリリース。2016年はMETAFIVEとしてライブやフェスでもその名を知らしめる。また、東京・青山の「INTERSECT BY LEXUS TOKYO」の店内音楽の監修など、活動の場を拡げている。

オフィシャルサイトhttp://www.towatei.com/