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B'z松本孝弘とダニエル・ホー。彼らは素晴らしいライブの境地を創った

B'z松本孝弘とダニエル・ホー。彼らは素晴らしいライブの境地を創った

Tak Matsumoto & Daniel Ho Live! 2017
-Electric Island, Acoustic Sea-
2017年3月12日 BLUE NOTE TOKYO

Electric IslandとAcoustic Seaが紡ぎ合い、そして見えたものは、Instrumental Skyだった

島、あるいは島国にとって、他所との境目となるものは、海である。
もっと簡略化して記せば“陸地が海に接するところ”となろう。

徒歩で行くことのできない、たいへん明確な自然に依拠する境界=ラインが、陸と海の接する場所だ。
これが、島、あるいは島国ではない場合だと、自然的ではなく、かなり人為的となる。
例えば大陸や半島=陸地の、言わば地図上に境界線を設定し、その国の領域を確保し、国境の前後何キロメートルかは“非緩衝地帯”などという、どちらの領域でもない一種の空(から)の域が存在する場合もある。

こうした人為的な境界は、もともとはヒト・コト・モノの往来があったであろう土地に、民族的・政治的・宗教的な境目を作った点において、私見ではすこぶる曖昧な境界線だと思う。

Tak Matsumoto
Daniel Ho

ひるがえって、植物や動物の固有種を判定する場合、その島にのみ生息する植物や動物の固有種は、とても多い。なぜなのかは、前記してきたことからすでにお判りだろう。そう、海によって、ある意味で隔絶されるからである。境界としての海は、とても強い=断定的なものと言えよう。

もちろん、太古から海運、つまり船という移動手段は存在し、島と島、島と大陸の間においても、ヒト・コト・モノの往来=交易はあった。

「ライブ評なのに、佐伯は何を書いているのだ?」と訝(いぶか)しく思っている読者諸氏も多いだろうが、今回、松本孝弘とダニエル・ホーとの共同作品『Electric Island, Acoustic Sea』において、この“固有種と交易”は着眼点として、外せないポイントなのである。

Tak Matsumoto & Daniel Ho Live! 2017 Tak Matsumoto & Daniel Ho Live! 2017 Tak Matsumoto & Daniel Ho Live! 2017

日本とハワイ、かたや国であり、かたやUSの一州という違いはあれど、固有の民族音楽もあれば、交易してきた先に融合した音楽もある。スラックキー・ギターなる複雑なオープン・チューニングから独自のものを編み出したダニエルさんの立ち位置と、TAK TONEへ練磨してきた松本さんの立ち位置は、境界を海で隔てられた島の“固有種と交易”なる見方を投影した場合、驚くほど似ている、と感じられはしまいか?

今回のライブは、2人のプレイヤーの独創性と親和力に着目しつつ、3月12日、BLUE NOTE TOKYOにておこなわれた2nd Showを視察する幸運に恵まれた。

Tak Matsumoto

アルバムの1曲目に収録されている「Soaring on Dreams」でライブはスタートした。ここから3曲、ダニエルさんはキーボードの前に座り、松本さんはエレクトリック・ギターを肩から掛ける。TAK TONEのナチュラル進化系と呼べるサウンドが、会場を満たしていく。

6曲目の「Sunny Tuesday」でガット・ギターを手にしたダニエルさんは、ふくよかなフレージングを、いとも自然に繰り出す。

Daniel Ho

9曲目は、ダニエルさんが19歳の時に作曲したという「Pineapple Mango」。ダニエルさんはウクレレを持ち、小野塚晃氏はシンセからスティール・パンの音を出すため、勢い、南洋の島の音世界が繰り広げられる。「わかりやすい」と形容してしまえばそれまでだが、打ち出すべき自分たちの音楽がわかりやすい伝統を吸収した音楽に依拠しているのは、なんと素晴らしいことか。

Tak Matsumoto & Daniel Ho Live! 2017

本編ラスト「Wander Blues」で、ダニエルさんはエレアコギター、松本さんはレス・ポール〜ゴールド・トップを持ち、松本さんは、この日もっとも、ピックアップ・スウィッチを細かく操作した。ライブのスタート時からそこまで、ピックアップは、ほぼフロントに固定されていた。つまり、「Wander Blues」の演奏で松本さんは、培ってきた技を凝縮して出したと言える。イントロで鳴るダニエルさんのピッキング・ハーモニクスを含む技巧的なギター・リフと松本さんの技が相乗していたのである。

Tak Matsumoto

アンコール1曲目の「Lia」は、松本さんとダニエルさん2人だけの“ギター共存空間”。松本さんのエレクトリック・ギターの音圧が極力押さえられ、ダニエルさんのガット・ギターと響き合う、つかの間の時間の流れは、至福であった。

続く「華 -HANA-」では、ダニエルさんもギター・ソロを取り、会場を沸かせる。ハワイ出身のダニエルさんが持つウクレレ三線の音に彩られてライブは終了したのだが、終わってみれば、松本さんがエレクトリック・ギター以外の楽器を手にすることはなかった。アルバム・タイトルになぞらえれば、Electric Islandという領域を松本さんは守ったのでもあるし、音の増幅はあったけれどもAcoustic Seaという領域を守ったのは、ダニエルさんであった。

Daniel Ho

研ぎ澄まされた楽器の音を聴くのは、音楽ファンであれば、最上の時だろう。それが、多くの人が知るラリー・カールトン氏との紡ぎ合いではなく、ダニエル・ホー氏という新しい〜しかしながら島国というキーワードを投影すれば近いかもしれない〜プレイヤーと紡ぎ合う松本孝弘氏の“最新影”を見ることができたのは、まことに有意義だった。

Tak Matsumoto & Daniel Ho Live! 2017

Electric IslandとAcoustic Seaが紡ぎ合い、僕の胸内に聴覚映像として見えたものは、どちらの島にも通ずるInstrumental Skyだったのである。

文 / 佐伯 明

Tak Matsumoto & Daniel Ho Live! 2017
-Electric Island, Acoustic Sea-
2017年3月12日 BLUE NOTE TOKYO

セットリスト

1.Soaring on Dreams
2.Infinite Escapade
3.Magokoro (True Heart)
4.Adrenaline UP!
5.Rain
6.Sunny Tuesday
7.Omotesando
8.Island of peace
9.Pineapple Mango
10.Faithfully
11.Wander Blues
Encore
1.Lia
2.華 -HANA-
3.Fujiyama Highway

Tak Matsumoto

高校入学と同時にギターを始め、既に学生時代から音楽コンテスト、ライブハウス、学園祭などに出演。
その後、通っていたギター・スクールの講師に実践での演奏を勧められ、同時期に作成していたデモテープが音楽プロデューサーの目に留まったことがきっかけで、セッション・ギタリストとしてプロ活動をスタート。 数多くのミュージシャンのスタジオワークに参加しながら、次第にスタジオ以外にも活躍の場を広げていく。
複数のコンサートでサポート・ギターを務めながら、1988年5月にソロギタリストとしてアルバムをリリース。 ギタリストとしての知名度を高めていく一方、兼ねてからの目標であったバンドでの活動をスタート。
同年9月、B’zでバンドデビューを果たす。

オフィシャルサイトhttp://bz-vermillion.com

↓プロフィール詳細↓

1999年6月、世界ナンバーワンのギターメーカーGibson社から、世界で5人目、日本人として初のLes Paul “シグネチュア・アーティスト” に選ばれる。卓越したギタープレイとサウンドは、ファンのみならず、数多くのアーティスト、ギター・プレイヤーを魅了。
B’zのギタリストとして、バンドでの創作・ライブ活動を行なう傍ら、精力的にソロ作品のリリースや、他アーティストへの楽曲提供・ギター演奏の参加も行なっている。
2004年はTMG(Tak Matsumoto Group)として、ソロプロジェクトを始動。
11月24日には、松本自身がギタリストを中心とした弦楽器奏者のためのレーベル “House Of Strings” を立ち上げ、同年7月にクラシックの殿堂・サントリーホールで行われた東京都交響楽団とのコラボレーションライブでの演奏曲を新たにスタジオレコーディングしたアルバム「House Of Strings」を発表。
ギターとオーケストラによる繊細かつ雄大な、“弦”-Strings- が生み出す音世界を体感できる本作に続き、2005年10月には、レーベル第2弾「Theatre Of Strings」をリリース。
この作品は日本を代表するギタープレイヤー、春畑道哉(TUBE)、増崎孝司(DIMENSION)らが参加した豪華ギター・オムニバス・アルバムで、タイトルが示すとおり、それぞれが、名作映画のテーマ曲や主題歌をギターで奏でる全13曲を収録。
ハイ・クオリティなプレイはもちろん、美しいメロディーラインを個性豊かに、情感溢れる“弦”の魅力をあます事なく堪能できる作品に仕上がっている。
2010年、ジャズ・フュージョン界の名匠、ラリー・カールトンとの共作アルバム「TAKE YOUR PICK」を発表。作曲家としても比類なき日米を代表するトップ・ギタリストの共演は、世界的に高い評価を得て、第53回グラミー賞 “最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム” 受賞という栄誉に輝いた。

松本孝弘の楽曲はこちら

ダニエル・ホー

ハワイ出身、ロサンゼルス在住のマルチ・ミュージシャン。
音楽への目覚めは3才の時。母親からプレゼントされたおもちゃのピアノがきっかけとなる。以来中学校を卒業するまでに、オルガン、ウクレレ、クラシック・ギター、エレキ・ギター、ピアノ、ベース、ドラム、ヴォーカルとありとあらゆる楽器を習得。高校時代はサーフィンと音楽の両方に夢中になっていたが、その重きは次第に音楽の世界へと傾いていく。ダニエルの音楽の才能はこの頃から一気に開花し、高校3年の時にミシガン州で開催された国際ピアノコンクールで準優勝を受賞する。

高校時代の恩師の勧めもあり、卒業後は単身ロサンゼルスへ移住。音楽専門校、グローブ・スクール・オブ・ミュージックへ入学し、作曲・編曲を専攻する。ここで学んだ音楽理論と作曲学が、マルチ・ミュージシャンとして活躍する現在のダニエル・ホーを生んだといっても過言ではない。
プロデビューは1990年。当時人気のあったスムーズジャズのバンド、キラウエアのリーダとしてまたキーボード奏者として7年間活躍、米ビルボード誌のトップ10にチャートインした実績をもつ。バンド解散後はソロとなり、現在までに、スムーズジャズから宗教音楽まで実に幅広いジャンルのアルバムを18枚リリースしている。2004年にリリースしたアルバム『シンプル・アズ・ア・サンライズ』では、ヴォーカルを全面にフィーチャーし、オーガニックなロックサウンドを聞かせている。またソロになってからは、自らの原点となるハワイの伝統的な音楽スタイルにも注目し、ハワイアン・スラック・キー・ギターを本格的に始める。独自のスタイルを取り入れたスラック・キー・チューニングは、”キラウエア・チューニング”と呼ばれ、オリジナリティー溢れる独創的な世界を作り上げている。近年は自らのレコードレーベル、ダニエル・ホー・クリエーションズを立ち上げ、レコード・プロデューサーとしても活躍。すでに40枚以上のアルバムをリリースしている。自らプロデュースしたスラックキー・ギターのコンピレーションアルバムで、アメリカ音楽界の最高峰グラミー賞のハワイ音楽部門ベストアルバム賞を、2006年、2007年と2年連続して受賞している。

オフィシャルサイトhttp://www.danielho.jp