Interview

藤原さくらが「Someday / 春の歌」に重ねた想い

藤原さくらが「Someday / 春の歌」に重ねた想い

初出演にしてヒロインに抜擢されたドラマ『ラヴソング』の主題歌として大ヒットした1stシングル「Soup」から約10ヵ月ぶりとなる2ndシングル「Someday / 春の歌」をリリースする藤原さくら。メジャー・デビュー2年目のシンガー・ソングライターとしては短くないタームではあるが、彼女はその間、数多くのライブを行ってきた。急遽、決まったドラマ出演のために延期されていたワンマンライブから全国ツアーへ。そして、ドラマ放送後に決まって即完した追加公演にスペシャル公演まで。ドラマ前は400人規模だったライブはこの10ヵ月で一気に2,000人規模まで拡大した。急激な変化による少しの戸惑いを経て、多くの観客の前で演奏できる喜びを実感できるまでに至った彼女が見つめていたものとは——。

取材・文 / 永堀アツオ ライブ写真 / 田中聖太郎


自分がここにいることや、誰かと出会ったことも、偶然じゃなく運命だったと思いたい

10ヵ月ぶりのリリースとなります。

だいぶ空きましたね(笑)。ドラマが終わってから、ミュージシャンとしての自分が作った曲をもっと聴いてもらいたいっていう想いがあって、たくさん曲を書いていて。その中から、今回のシングルを出すことになったんです。

曲作りと並行して、ライブもたくさんやっていましたよね。東京だけでも、渋谷PLEASURE PLEASURE(16年2月/「good morning」〜first verse〜)、恵比寿ザ・ガーデンホール(16年9月/「good morning」〜second verse〜)、六本木EX THEATER(16年11月/「good morning」〜second verse〜)、渋谷オーチャードホール(17年2月/Special Live)と、キャパシティがどんどん拡大していきました。

「Soup」のリリースイベントのときにはドラマを観てくれた若い女の子がすごく増えてて、いままでのギャップにそわそわしたところもあったんですけど(笑)。PLEASURE PLEASUREやザ・ガーデンホールはドラマに出る前から応援してくださっていた方がチケットを取ってくれていたライブだったので、「あぁ、いつもの感じだ」とホッとしました。追加公演のEX THEATERからはドラマ出演がきっかけで私のことを知ってライブに足を運んでくださった方も加わって、規模も大きくなったので、最初は自分もガチガチに緊張してしまいましたね。

藤原さくら ライブ

福岡でのインディーズ時代はカフェなどでもライブをしていましたし。

そうなんですよ。話せるくらいの距離でライブをしていたので、会場が大きくなったことでみんなの顔が前より遠くに感じて、どういう反応をしているのかわからなくなってしまって。でも、やりながらだんだん慣れていきました。あまり身構えずに、気楽にやっていいんだろうなって思うようになりましたし、ドラマ撮影中に早くライブをしたいという気持ちが強くなっていって。なので、やっとできた!っていう嬉しさもあったし、広い会場でどうパフォーマンスをすればいいのか考えることも楽しめるようになりました。

ライブや音楽に対する向き合い方も変わりました?

意識は変わったなって思いますね。いままでのライブは、自分へのご褒美みたいな感覚があったんですよ。それはそれでいいことだと思うんですけど、お客さんが増えて、会場も大きくなっていくにつれて、自分が楽しむだけじゃなく、楽しんでもらわなきゃいけないから、自己満足だけで終わっちゃいけない。それに、会場が大きくなると、できることも増えるじゃないですか。演出や照明だけでもお客さんの反応が全然違ってくるということも実際に感じられたし、もっとお客さんに楽しんでもらうためにどうしたらいいかっていうことを意識するようになりました。あとは、やっぱり、ファンの人の顔を見れたときが一番嬉しいんだなっていう自分にも気づきました。直に会って、拍手をもらったり、声をかけてもらったり、笑顔になってもらえることが嬉しいなって感じています。

藤原さくら ライブ

ニュー・シングルの1曲目「Someday」には、そんな心境の変化も表れていますか?

表れてると思います。まさに全国ツアー中に作った曲なんですけど、いままではAメロから順番に作っていたのに、この曲はサビのメロディから思いついたんですよ。インストアライブで若いファンが増えたのを見たり、ライブ後などにファンの人たちと直接会ったり、みんなはどういう曲を求めているんだろう?っていうところも意識し始めたのか、キャッチーなサビを書きたいなっていうふうに思うようになって。

鼻歌で一緒に歌いたくなるような愛らしいメロディになってますよね。歌詞は“出会い”がテーマになってて。

ドラマに出て、本当にたくさんの出会いがあったんですよ。共演者やスタッフの人たち、ドラマで知ってくれたファンの人たちとか。これまでは街中ですれ違ってもお互いに気づかなかったり、カフェで隣に座っても「久しぶり」って声を掛け合うような間柄でもなかった人たちとの出会いがたくさんあった一年で。この人たちに出会えて良かったなって思うことがいっぱいあったし、“出会い”ってすごいなって、ずっと考えていたんです。そんなことを考えながら、ドラマを撮り終えたあとに、ずっと帰れなかった福岡に帰省して。お父さんとお母さんが同じ高校の同級生だったことは知ってたんですけど、ふと、「ばあちゃんはじいちゃんとどうやって出会ったんだろう?」って思って……2年前にじいちゃんは亡くなっちゃったんですけど、ばあちゃんに馴れ初めを聞いてみたときに、「出会うべくして出会ったんだな」って感じたんですよ。じいちゃんは大阪の人で、ばあちゃんは福岡の人で、ばあちゃんが大阪に行ったときに出会ったそうなんですけど、あのときに、あの年に、ばあちゃんが大阪に行かなかったら、お父さんは生まれてなくて、お母さんと高校の同級生になることもなくて、私も生まれてなかったんだなって。それは、私だけじゃなくて、みんなの背景にあることで。今、ここにいることが当たり前じゃないんだと思ったら、ちょっと怖いなと感じてしまって。

藤原さくら ライブ

生まれてこなかったかもしれないっていう怖さをまず感じたんですね。

そうなんです。でも、ばあちゃんは「偶然ではなくて、じいちゃんとは出会うべくして出会ってるから、絶対にあなたも生まれた。だから大丈夫よ」っていうことを言ってくれて。そういうふうに考えられることもすごいなと思ったし、自分もいつか大切な人ができて、結婚して、子供が生まれて……ひとりだったのが2人になり、3人になったときに、「この子が生まれたのも、私が生まれたのも、すべて運命だったんだな」って思えるようになるんじゃないかなって。そんなふうに出会いについてたくさん考えていた時期でもあったので、この気持ちを歌詞にしたいなと思いました。

まだ見ぬ未来への願望も入ってますよね。「そう信じてるの」って自分に言い聞かせてるというか。

自分がこの歌詞を書いているときはまだ、「運命だ!」って言い切れるわけじゃなかったので、迷ってるというか、みんなに「そうだよね?」って確認している感じがありますね。でもやっぱり、ばあちゃんのような考え方をしたいなって思う。いろんな選択がされていったなかで、自分がここにいることや、ここで誰かと出会ったことも、偶然じゃなく運命だったと思いたい。たとえ出会いたくなかった人でも、その人と出会ったから感じることがあるっていう考え方もできるというか。自分の気持ちを歌ってるんですけど、聴いてくださるみなさんにも共感してもらえるような歌詞になったと思います。

藤原さくら ライブ

両A面シングルのもう一曲はスピッツ「春の歌」のカバーで、映画『3月のライオン』後編の主題歌になってます。

みんなが知ってる曲を歌うことはプレッシャーではありました。それに、もともと原作の大ファンだったので、まさか自分が歌うことになるとはっていう感じでした。映画も普通に観に行こうって思っていたくらいなので(笑)。

原作のどんなところに魅力を感じていました?

もともと、小学生のときに『ハチクロ(ハチミツとクローバー)』を読んで、絵もお話もかわいらしくて大好きになって。『3月のライオン』も、将棋を指したことがない私みたいな女子でも楽しめる話だなって思うんです。キャラクターひとりひとりの人間物語が丁寧に描かれていて、誰も憎めないというか……誰もが人間らしいなって思う。それで、「頑張れ!」って思いながら読んでると、こっちが時々ハッとさせられるくらい成長していたりもして。そんなふうにひとりひとりのことを大好きになれる作品だなと思っていました。

そんな大好きなコミックを原作にした実写映画の主題歌として「春の歌」をカバーすることになって、どんなアプローチを考えていました?

最初に、原作者の羽海野(チカ)さんが、この「春の歌」を聴いて、『3月のライオン』の世界を作り上げたっていうことを聞いたんですね。羽海野さんにとっても大切であろうこの曲を、女の子の声で歌ってほしいっていうリクエストだったので、どういうふうに歌えばいいんだろうっていうのは、すごく悩みました。それで、歌やアレンジは映画の後編を観させていただいてから考えたので、監督さんともいろいろお話をさせてもらって、映画の世界観に寄り添うように歌いましたね。

藤原さくら ライブ

監督からは具体的にどんなリクエストがあったんですか?

(主人公の桐山)零くんはひとりじゃないんだっていうことですね。孤独から開放され、たくさんの人に出会って、これからも仲間と生きていく喜びを得たことに対しての祝福みたいなものを込め、いい本を読んだあとの読後感みたいなものを歌に込めてほしいと言われたので、そこは意識しました。だから、ひとりじゃなく、スタッフのみんなにも歌ってもらったりして。映画を観終わったあと、零くんが前に歩んでいく感じが出せたんじゃないかなと思います。

ご自身の歌も乗った、完成した映画を観て、ご自身ではどう感じました?

すごく緊張したんですけど、観る前にまず監督が「すごくいいから」って言ってくださって。しかも、観終わったあとも「良かったでしょ?」って言ってくれたので(笑)、ホッとしました。それに、羽海野先生がどう思うのかなっていうことも気になってたんですけど、優しいコメントをくださって。すごく嬉しかったです。零くんは本当に不器用な男の子で、たくさんの過去や闇を抱えながら生きていて。でも、大切な人に出会って、仲間たちができて、これからも零くんの生活は続いていくんだなって思わせてくれる、すごくいい映画だなって思いました。

出会いの大切さという意味では「Someday」や、この一年間で藤原さんがずっと考えていたテーマとも共通してますよね。

そうですね、そう思います。繋がってるなと思います。

藤原さくら ライブ

さらに、本作にはライブ音源が3曲入っていて、初回限定盤にはライブ映像を収録したDVDも付いてます。

インディーズ時代の曲もアレンジが変わっているので、昔から聴いてくださっている方も楽しめると思いますし、新しく私を知ってくれた方には「こういう曲もあるよ」って聴いてもらいたいなっていうことで。

「Someday」のイントロにはライブ会場の歓声も聴こえますよね。

そこは、今回、初めてご一緒させてもらった永野亮さん(プロデューサー/元APOGEE)のアイデアですね。昔から聴いてくれている方やライブに来られなかった方も含めて、今、応援してくださっている人たちに「いいものができたよ」って手渡したいシングルになったなって思います。

今後の予定としてはどう考えてますか?

去年、いろんなことに挑戦できた一年だったので、今年もやったことのないことにどんどんチャレンジしたいなと思ってて。ライブでピアノを弾いたりしたんですけど、今度はピアノで曲を作ったりもしたいなと思ってます。あとは、とにかくたくさん曲を作っているので、早く皆さんに聴いてもらいたいですね!

「Someday」 (short ver.)

「春の歌」 (short ver.)

藤原さくら

1995年12月30日生まれ、福岡県福岡市出身。父の影響により10歳でギターを手にし、幼少の頃より洋邦問わず多様な音楽に親しむ。高校進学後、オリジナル曲の制作を始め、地元で音楽活動を開始。2014年に高校卒業と上京を機に、オリジナル・アルバム『full bloom』でインディーズ・デビュー。その後、日本テレビ『学校のカイダン』挿入歌など、テレビ・ドラマへの曲提供やCM出演での歌唱などが話題に。2015年3月にスピードスターレコーズよりミニ・アルバム『à la carte』でメジャー・デビュー。2016年2月には初のフル・アルバム『good morning』を発表。また、4月にオンエアされたフジテレビ系月9ドラマ『ラヴソング』にヒロインとしても出演。そのドラマ主題歌「Soup」を1stシングルとして6月にリリース。

オフィシャルサイト

藤原さくらワンマンツアー2017

2017年5月27日(土)埼玉 戸田市文化会館
2017年6月10日(土)広島 上野学園ホール
2017年6月16日(金)新潟 新潟市音楽文化会館
2017年6月18日(日)宮城 仙台市民会館大ホール
2017年6月25日(日)福岡 福岡市民会館
2017年6月29日(木)北海道 道新ホール
2017年7月1日(土)愛知 名古屋市民会館
2017年7月9日(日)大阪 オリックス劇場
2017年7月17日(月・祝)香川 サンポートホール高松
2017年7月21日(金)東京 中野サンプラザ
2017年7月22日(土)東京 中野サンプラザ