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柄本時生、鈴木杏樹がコメディ舞台に初挑戦!「チケット代分笑わせる」という『わらいのまち』

柄本時生、鈴木杏樹がコメディ舞台に初挑戦!「チケット代分笑わせる」という『わらいのまち』

俳優のみならず脚本家/演出家として数々の作品を手がけてきた宅間孝行が主催する〈タクフェス〉。2013年から年1回の公演を行ってきた〈タクフェス〉は、あたたかな笑いと切ない涙で感動を呼ぶ作品に定評があるが、とことんコメディに振り切った演目を上演する新シリーズ〈タクフェス春のコメディ祭!〉が今春からスタート。その第1弾公演『わらいのまち』(東京グローブ座)が3月30日に初日を迎えた。前日には公開舞台稽古が行われ、宅間孝行、永井大、柄本時生、柴田理恵、鈴木杏樹が舞台稽古後に囲み取材に応じた。

取材・文 / 松浦靖恵 写真 / 齊木恵太


登場人物たちの“勘違い”と“行き違い”の連鎖が重要なポイント

〈タクフェス春のコメディ祭り!〉の記念すべき第1弾公演の演目に選ばれた『わらいのまち』は、もともと宅間孝行が主催していた“東京セレソンデラックス”第三回公演で上演した『JOKER』を、その後2011年に〈タクフェス〉で上演する際に『わらいのまち』と改題。今回が6年ぶりの再演となった。宅間が初めて書いた本格的なコメディ作品だけに、彼のコメディ作品の原点という点でも宅間には思い入れがあり、また今回の舞台チラシに「皆様、春には思いっきり笑っていただきます!」と書かれているほどの自信作だけに、新シリーズ〈タクフェス春のコメディ祭!〉の名にふさわしい演目であることは間違いない。

わらいのまち

『わらいのまち』の舞台は、何の名所も何の特産物もない寂れた町にある寂れた温泉旅館〈まつばら〉。明日から始まる町おこしイベントの視察のため、急遽、まつばらに国会議員の代議士が泊まりにくることになり、イベントの実行委員長を務めるまつばらの次男・信雄(永井大)、三男の板長・将雄(柄本時生)、仲居のくにゑ(柴田理恵)、真知子(鈴木杏樹)は好印象を与えようと張り切りまくるのだが、とにかくすべての登場人物たちの“勘違い”と“行き違い”によって物語が思いもよらぬ方向へとハイスピードで進んでいくのだ。

“真面目でしっかり者の信雄““どこか間の抜けている将雄”というキャラを観る者に印象付けたところに、家族や町の住人たちから“疫病神”と言われている長男・富雄(宅間孝行)がまつばらに帰って来たことで、この三兄弟のそれぞれの物語の中の立ち位置がより明確になっていくし、厄介者ではあるけれど人間味のある長男の存在が、この物語が後半に向かうにつれてどんどん愛おしく思えてきた。

わらいのまち

今作は「暗転なし」「転換なし」「ノンストップ」の舞台だけに、どのように15名の出演者が入れ代わりで登場し、そのひとつひとつの出入りの中にある台詞や設定が最終的にいったいどこへと向かっていくのかという流れに、観る者はどんどん引き込まれていく。台詞の中に、今ワイドショーなどで話題になっている人物の名前がふいに出てきたり、いきなりアドリブが放り込まれたり。舞台稽古ではアドリブに笑いをこらえている演者の姿もあったので、きっと毎公演ごとに演者たちもそのスリリングな即興を楽しみにしているに違いない。また写真OKタイムやお客さんを巻き込んだダンスタイムなど、〈タクフェス〉では恒例になっていることも〈タクフェス春のコメディ祭!〉は引継いでいるので、毎公演ごとのお客さんのノリの違いで、『わらいのまち』の空気感は変化するのだろう。

6年前の初演時に出演したのは宅間孝行と柴田理恵の2人のみだが、コメディの舞台は初挑戦の永井大と鈴木安樹、本格的なコメディ作品自体が初という柄本時生は、今回『わらいのまち』を体験したことで“コメディ”に目覚めてしまうんじゃないかと思えるほど、演者たちのあらたな一面を見ることができた。柴田理恵は日本を代表するコメディエンヌとしての力量を見事に『わらいのまち』でも発揮していたが、今作が2度目の舞台となった鈴木杏樹は、司会を務めている朝の情報番組などで見せる清楚で柔らかな大人の女性といった姿からはまったく想像できない姿を見せていた。とことん振り切りまくり、ぶっ飛んだキャラの真知子になりきっていた彼女は、コメディエンヌの素質十分! と思わせてくれた。

わらいのまち

ノンストップで突き進んでいく一幕もののシチュエーションコメディ『わらいのまち』は登場人物たちの“勘違い”と“行き違い”の連鎖が重要なポイントとなっており、その勘違いに次ぐ勘違い、行き違いに次ぐ行き違いが絶妙に組み合わさって、最後の最後にひとつの“真実”に行き着いたときのなんともいえない痛快さ、爽快さがあった。また、コメディでありながらも、この物語を書いた宅間自らに問いかけるような「笑うだけで人は幸せになれるのか」という台詞があったり、思わずほろりとする場面もあった『わらいのまち』は、新シリーズ〈タクフェス春のコメディ祭!〉にふさわしい演目だと改めて思う。すでに秋の〈タクフェス〉と来春の〈タクフェス春のコメディ祭!〉が開催されることがアナウンスされているが、秋に泣かせる人情ものの作品、来春に笑いに特化した作品をやるという棲み分けをきっちり作ることで、より多くの人たちに“タクフェス作品”の面白さを触れることができる機会が増えたことは、嬉しいかぎり。年2回となると脚本や演出を手がける宅間はかなり大変だろうが、彼の演劇に対する情熱はもちろんのこと、お客様に楽しんでもらいたい、みなさんに喜んでほしいという思いで“タクフェス”を立ち上げた主催者らしい熱い決断だと思った。

わらいのまち

■囲み取材でのキャストコメント

宅間孝行 うちの場合はお客さんががっつり泣かせてくれるんだろうと、膝にタオルを持って泣く気十分でいてくれるので、いつもはそういうプレッシャーがあるんですけど、コメディは泣かさなくてもいいので、泣かせなければいけないというプレッシャーを感じずにできますね(笑)。今回はとにかくお客さんに楽しんでいただきたいです。コメディはお客さんの反応があってこそなので、やればやるほどいろんなことが変わっていくと思います。稽古場で精一杯やっていたものが、毎公演ごとの芝居でどう変化していくのか楽しみです。誰かひとり欠けても成立しない物語なのでチームワークがすべてです。〈タクフェス春のコメディ祭!〉はイベントとしてお客さんに楽しんでいただきたいなと思っているので、チケット代8,000円というのは普通に考えれば安くない金額ですが、8,000円分楽しませるぞ!っていう想いだけは満々でいますので、ぜひ劇場に遊びにきていただけたらと思います。

柴田理恵 『わらいのまち』の一番の見どころは次から次へと舞台に人が出入りする展開の早さです。人が入って来ては出て行くというパズルのような展開の中で、ひとつの事柄がこっちからの捉え方とあっちからの捉え方で全部変わって、こんがらがって、最後の最後に集結していく妙味がある。大事な役割りを担っているひとりひとりの出入りや台詞で、鮮やかにこの物語を編んでいきたいです。コメディはお客さんがどういう反応をしてくださるかで、自分たちの芝居が変わってくるので、そこが勝負だと思っています。私は初演に出演していますけど、出演者が変わると芝居は当然変わるし、別物だと思っているので私も新鮮ですね。

鈴木杏樹 コメディの舞台が初めてなので、お客様の反応から何か生まれるものがあって、そこから演じる側が変化していくというのは未経験なのですが、その芝居が変化していく感じを楽しみにしています。人を笑わせるというのはこんなに難しいことなのかと日々実感していますが、なによりもこの作品に携わらせていただくことがとても楽しいです。〈真知子〉はかなり振り切ったキャラクターですし、最初は関西弁の台詞が心配だったんですけど、真知子さんになるとちゃんと関西弁に変換できているので、大丈夫っぽいです(笑)。

永井大 僕はイベントの実行委員長役なので、明日自分の町で大イベントがあるんだっていう楽しさをお客さんに届けられるような表現をできたらと思っていますね。間の取り方や言い方、テンポ感など、改めてコメディの難しさを感じていますが、考えれば考えるほど頭がかたくなっていくので、そこを取り除けたときに、自分たちが伝えたいものがお客様に伝えられるのかな、と。お客さんと一緒に千秋楽の最後まで走っていくことを、とても楽しみにしています。

柄本時生 稽古のときから、お笑いというもの、人を笑わせるということがどれだけ難しいものなのかを実感していて。稽古中も柴田さんや宅間さんに教わりながら、勉強させてもらいました。稽古が大変で、すごくつらかったんですけど(苦笑)、そのつらさも楽しいというか。つらくてもこうやって芝居が出来上がっていくのが楽しいもんなんだなって思うので、つら楽しいって感じですね。僕はコメディ作品に関わるのがほぼ初めてなので、お客さんがどういう反応をしてくれるのかわからないからめっちゃ怖いけれど、それが楽しいっていう感じです。

タクフェス春のコメディ祭! 『わらいのまち』

【東京公演】2017年3月30日(木)〜4月12日(水)東京グローブ座
【名古屋公演】2017年4月14日(金)〜4月16日(日)中日劇場
【兵庫公演】2017年4月18日(火)~4月23日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

わらいのまち

【作・演出】宅間孝行
【出演】宅間孝行 永井 大 柄本時生/辻本祐樹 尾関伸嗣 佐藤祐基 松本若菜 橋本真実 岡本 玲 土平ドンペイ 冨永 竜 ブル えまおゆう/柴田理恵 鈴木杏樹
【企画】タクフェス
【制作】関西テレビ放送

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