Report

池袋が舞台のロマンポルノリブート「牝猫たち」が凱旋上映! 白石監督と牝猫たちによるトークイベント開催

池袋が舞台のロマンポルノリブート「牝猫たち」が凱旋上映! 白石監督と牝猫たちによるトークイベント開催

ロマンポルノ・リブート・プロジェクト――。それは、日活株式会社が1971年に製作を開始した「日活ロマンポルノ」が、生誕45周年を迎え、これを記念して新作製作とクラシック作品の活性化をあわせた横断的なプロジェクトだ。11月に第1弾として行定勲監督、板尾創路主演「ジムノペディに乱れる」が公開され、その後「風に濡れた女」(塩田明彦監督)、「牝猫たち」(白石和彌監督)、「アンチポルノ」(園子温監督)、「ホワイトリリー」(中田秀夫監督)と日本映画界を代表する5人の監督が完全オリジナル作品を製作し、5本の作品が公開された。

ロマンポルノリブート

その後も全国劇場でも後追い公開が相次ぎ、今も日本のどこかで上映されている中、池袋を舞台として、現代社会を逞しく生きる女性をジャーナリスティックな視点で捉えた作品「牝猫たち」が4月1日に池袋シネマ・ロサで上映された。
池袋のシネマ・ロサは昭和21年(1946年)にスタートした歴史ある映画館。ロードショー作品のみならず、企画上映も積極的に行われ、映画業界内にも多くのファンを持つ映画館である。
そのシネマ・ロサにて、4月1日より3週間にわたり、日替わりで今回のロマンポルノ・リブート作品が上映される。初日にプログラムされたのが、池袋を舞台とした「牝猫たち」だった。その初日に、今秋「彼女がその名前を知らない鳥たち」の公開を控えている白石和彌監督と、出演した女優の井端珠里、真上さつき、美知枝が駆け付け、本編上映前にトークイベントが行われた。

ロマンポルノリブート

本作は池袋が舞台となっていたことについて、白石監督は、「東京へ出てきて初めて住んだのが所沢で、池袋をターミナルステーションとして使い、良く遊んでいたんです。初めて行った風俗も池袋で(笑)。何物でもない僕を温かく包んでくれたのが池袋」と、青春時代を過ごした池袋への熱い想いと共に舞台に設定した意味を語ってくれた。
池袋での撮影エピソードを訊くと、井端は「池袋で何の撮影しているんだろうって、物珍しそうに見られました。」と語ると、白石監督が「ロマンポルノのルールで7日間で撮影を完了しなければならなかったんですが、衝撃だったのは、初日にラストシーンの池袋の路上シーンを撮ったんです。」と撮影秘話を披露。

ロマンポルノリブート

井端珠里、真上さつき、美知枝、3人のシーンで印象的なものとして、“極楽若奥様”というデリヘルの待合室のシーンがあるが、日々3人が心に抱えている澱も忘れてしまうような和気あいあいとしているシーンについて白石監督は「はじめ脚本を書いている時はブラックな待合室をイメージしてたんですが、居心地の良さそうなものになりました。」と答えると、井端も「だいぶかわいらしい室内になっていて、居心地が良かったです。」と一件暗くなりがちなシーンにもこだわりのある演出があったことがうかがえた。
デリヘル“極楽若奥様”の店長を演じた音尾琢真も映画に笑いとユーモアのエッセンスを加えているが、「昔のロマンポルノも、シリアスなところがありつつも、笑えるところも所々あるという印象が強かったので、少しずつ入れたかったんです。」と白石監督の偉大なるロマンポルノというブランドへの敬意が感じられた。

ロマンポルノリブート

左から 真上さつき 井端珠里 美知枝

この作品はロッテルダム国際映画祭にも招待され、現地に赴いた白石監督に上映の様子をうかがうと「ロマンポルノは10分に1回裸のシーンがあるとか必要な説明をしてからの上映だったんですが、上映開始後に最初の裸がでるや、“ウワッハッハ”と笑い出すお客がいて、アトラクションを楽しむような反応があって面白かったです。」というエピソードを披露してくれた。4月には韓国のチョンジュ映画祭にも招待されていて、現地に向かう井端は「どんな反応があるのか本当に楽しみです。」とこの作品が海外でも評価されていることに全力で臨んだ充実感を感じさせた。

ロマンポルノリブート

この映画が公開された後、真上さつきは「愚行録」、美知枝は「沈黙-サイレンス-」など大作への出演も果たしているが、「牝猫たち」での白石監督の演出について、美知枝は「監督は基本的に役者の好きなようにやらせてくれました。」と話すと、真上は「1週間くらい家を出ます。ワンちゃんがいます。餌をばぁーっておいて行く感じです!」と放置されたということをユニークな例えで回答し、監督も女優を信じている裏返しと思われるエピソードが訊けた。一方、井端はリハーサルで監督からは細かい演出を受けていたという。「リハーサルで郭さんとのラブシーンについて細かく演出していただきました。現場では、本番中に、“もっと喘いで!”“胸揉んで!”とか監督の声を聞きながら演じてました。」と、オールアフレコだった現場は井端本人にも新鮮だったという。

ロマンポルノリブート

本作の非常に印象に残る演出として、手持ちカメラでの撮影が多用されているが、そのことについて白石監督は「ドキュメンタリータッチで、手持ち感ある感じでやっていこうと思ってました」と明かした。その演出が、3人の牝猫たちの心情表現をよりリアルにしている。
そのドキュメンタリータッチの映像には、ワーキングプア、シングルマザー、不妊、虐待、高齢化など今この国で抱えている問題も織り込まれている点こそ注目すべきポイントで、より映画に深みを与えている。この映画について、美知枝は「3人の女性を中心として、それに関係する登場人物含めて、それぞれの生きていく上での不安とか葛藤とか希望とか、みなさんも日々持っている感情だと思うので、誰かしらに共感して観ていただけたらうれしいです。」と語るように、とにかく生々しく、痛々しくも、決して目をそむくことができないリアルがあり、登場人物が心の闇も抱えて前を向いて行く逞しさに勇気づけられる作品だ。

ロマンポルノリブート

最後に、白石監督は「旧作のロマンポルノは3本立てだったんですが、今回5本作られています。映画は1本1本違うんですけど、今回5本立てと思ってます。観ていない作品あれば、足を運んでほしいです。」と締めくくった。
「牝猫たち」の聖地、池袋はシネマ・ロサでは4月21日まで日替わりで5作品が上映される。観た人へなんらかの爪痕を残す個性豊かな作品ばかりなので、まだ観ていない作品があれば足を運んでほしい。

取材・文 / エンタメステーション編集部

池袋シネマ・ロサ

■ROMAN PORNO REBOOT 4月1日(土)~4月21日(金)
豪華監督陣による表現の祭典!日活ロマンポルノが再起動
※全5作品日替わり上映 
上映スケジュールはこちら…http://www.cinemarosa.net/rp_reboot.htm

映画『牝猫たち』

1月14日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

映画『牝猫たち』 ポスター

監督・脚本:白石和彌
キャスト:井端珠里 真上さつき 美知枝
音尾琢真 郭智博 村田秀亮(とろサーモン)・吉澤健 白川和子(特別出演)
松永拓野 吉村界人 米村亮太朗 ウダタカキ 野中隆光 山咲美花 天馬ハル 久保田和靖(とろサーモン)
2016/日本/84分/5.1ch/スコープサイズ/カラー/デジタル/R18+
©2016日活

池袋の風俗店「極楽若奥様」で働く3人“牝猫たち”。
呼び出された男たちと体を重ね、そして、また夜が明ける―ワーキングプア、シングルマザー、不妊症…それぞれの悩みを抱えながら、颯爽と現代を生き抜く女たちと、それを取り巻く男たちの物語。『凶悪』(14)、『日本で一番悪い奴ら』(16)に続き、白石和彌監督がオリジナル脚本で挑んだ初ロマンポルノ作品。現代社会を逞しく生きる女性のいまをジャーナリスティックな視点で捉え、名匠・田中登監督のロマンポルノ作品『牝猫たちの夜』(72) にオマージュを捧げている。
オフィシャルサイトhttp://www.nikkatsu-romanporno.com/reboot/


白石和彌監督作品
映画『凶悪』