Interview

女王蜂、アヴちゃんが語る新作『Q』 の切なく美しい壮大な世界

女王蜂、アヴちゃんが語る新作『Q』 の切なく美しい壮大な世界

スタイリッシュなスーツに身を包んだ新たなヴィジュアルイメージと共にバンドの進化、変化をまさに伝えようとしている4人組バンド、女王蜂。前作から約2年ぶりの新作アルバム『Q』は、刹那い美しさと高揚感を併せ持ったダンスミュージックとバラードからなるサウンド面での大きな成長と深層心理に存在する少年的人格に気づいたヴォーカリスト、アヴちゃんのソングライターとしての覚醒をコンセプチュアルな作品に昇華した壮大なアルバムだ。無意識の領域を解放することで、表現者として新たな世界に通ずる扉を開けたアヴちゃんに、渦巻く謎や疑問にどうしようもなく惹きつけられるアルバムの全貌について話を訊いた。

文 / 小野田 雄 写真 / 板橋淳一


ライヴやクラブで遊びながら受けたインスピレーションと出会い

新作アルバム『Q』が完成した今、まずは前作アルバム『奇麗』から現在までの約2年間を振り返っていただけますか?

女王蜂は、楽器を始めてから1年半でデビューが決まって、ライヴがソールドアウトになったり、2011年公開の映画『モテキ』にも出演させてもらったんですけど、一瞬の輝きというか、「ヤバいバンドが出てきたけど、長く続かなそう」って思われるだろうなって。そうしたら、案の定、バンドの熱量がすごくて、メンバーが潰れてしまって、2012年に活動を休止したんです。そして、2014年にめでたく活動を再開することが出来たんですけど、再開ライヴに人は集まっても、その後、集まってくれるかどうかは自分たち次第のところがあったので、前作『奇麗』からの2年は自力を上げるべく、ひたすらライヴをやったり、音楽性を熟成させようと試行錯誤していましたね。

音楽性の熟成とは具体的にいうと?

(ライヴハウス)恵比寿LIQUIDROOMにひたすら通って、数多のライヴやクラブイベントで遊びながら、そこでインスピレーションを与えてくれた色んな人たちとの出会いがあって。女王蜂は、みんなでいる時に聴くのも楽しいんですけど、明るいだけ、激しいだけという、ベタッーと一面的な音楽はもうやり尽くしてしまったので、今は、例えば、夜独りの帰り道とか、終電、始発とか、そういうシチュエーションにも合う要素、切なさや美しさなんかもきちんと内包した多面的な音楽をやりたいと思ったんです。

クラブでの夜遊びの体験や人との出会いがダンスミュージックとバラードに振り切れた今回のアルバムに繋がったんですね。そして、女王蜂のダンスミュージックは脳天気なパーティミュージックではなく、光と陰、様々な感情を内包した多面的なものですよね。

ホントにパリピのバンドがダンスミュージックをやるのはいいんだけど、「これ、ちょっとイケるっしょ」っていう程度でクラブにも行ってない人たちが「今夜は踊り明かそう」って歌っても、「ホントに踊り明かしたことありますか?」って聞きたくなる。一方で、色んな人に言われて、なるほどなって思ったのは、女王蜂は(ドナ・サマーのダンスクラシックを引用して)ホントの意味での「I FEEL LOVE」というか、音のカオスの中心として、責任を取る覚悟が生まれながらに備わっていて、みんなはその点を感じ取って、女王蜂のことを評価してくれていたんだなって。だから、「DANCE DANCE DANCE」をはじめ、女王蜂にしか歌えない曲だらけの今回のアルバムではその部分を自覚的に押し出しましたね。

切なさ、美しさを内包した聴き手それぞれが解釈出来る音楽

そして、曲名から考えると通常は作品の最後に置かれるべき「アウトロダクション」で今回のアルバムは始まりますよね。

今までの女王蜂は作品の最後にバラードを持っていっていたので、今回は最初に持っていくことで、37分のアルバムが永遠に回るような、そんなイメージですね。そして、「アウトロダクション」、つまり、『Q』に対するA、アンサーからアルバムを始めるという意味でもあり、ここじゃないどこかへという曲からスタートすることによって、作品の導入としても美しいんじゃないかなって。

シングルで既発の2曲、2曲目の「金星」には新たにDAOKOさんをフィーチャーし、5曲目の「スリラ」は「超・スリラ」として、楽曲がアップデートされています。

DAOKOちゃんは、普通にチケットを買って女王蜂のライヴに遊びに来てくれていて。だから、DAOKOちゃんのライヴを観に行った時、絶対に彼女と連絡先を交換して、一緒に遊ばなきゃって思って、連絡先を交換して、速攻で遊びに行って、仲良くなったんです。そんな彼女と女王蜂が一緒にやるとなったら、カルチャーに根ざした曲をやるのは当たり前なんですけど、「雑貨屋でかかる曲を作っても仕方がないので、ドンキ行ってるギャルがアガる曲を作ろうよ」って。そう言ったら、最高なフロウのラップを上げてくれたんです。そして、「超・スリラ」に関しては、女王蜂でキーボードを弾いてくれているながしまみのりに「トレンディでいこう!」って言ったんです。原曲の「スリラ」は活動再開で行くぞ!っていうことで、チャイナ・ディスコティカなアレンジになっていたんですけど、「今回は高速ぶっ飛ばしてる時に聴きたいよね、免許持ってないけど」っていうアーバンなアレンジに仕上げました。

では、楽曲のアレンジに関しては、1曲ずつそれぞれの方向性を詰めて、極めていった、と。

そうですね。私たちの音楽は内包しているものが、切なさだったり、美しさだったり、喜びだったりするから、単純に楽しいとか、明るい暗いということではなく、色でいったら、藤色だったり、ピンクや水色、夕焼け、朝焼けの色だったり、聴き手それぞれが解釈出来る、そんな曲たちになりましたね。

ダンスミュージックは以前の女王蜂にも存在していた要素ですが、かつてはロックバンドによるダンスミュージックとしてアウトプットされていたのに対して、今回は打ち込みを交えつつ、ダンスバンドによるダンスミュージックになっていますよね。

私はステージに立って、人を踊らせるのが得意なんですよ。でも、そもそも、ダンスミュージックは、ドンドンドンドンって、4つ打ちだったり、そのリズムが終わらないというだけでなく、もっと多様性のあるものだと思っているし、活動再開後は取り入れようと意識したわけじゃなく、自然とダンスミュージックの要素が含まれた曲を書いたから、やっていただけなんですけど、前作から今回のアルバムにかけて、音楽性が洗練されてきたことも大きいのかもしれない。

無意識を解放して表れた少年性=イニシャル『Q』

音楽性の進化については、そこまで自覚的に実践したわけではないんですよね。

スーツを着るようになったことも影響は大きいのかも。年末に石野卓球さんにお会いした時に、「アヴちゃんの歩幅でいいから、やりたいと思ったことは全部やってみなよ」って、アドバイスしてもらって。じゃあ、まずはスーツ着てみようと思ったんです。そうしたら、すごく似合っちゃったので、その勢いで男の子バンドを色々聴いてみようと。私は今までビヨンセやレディー・ガガのようなディーヴァとか、ちあきなおみさんのような、替えがきかない音楽ばかりを聴いてきたので、今のシーンでイケてるとされている方々の歌を一通り聴いてみて、私だったらどうするかなって考えたりするうちに、「DANCE DANCE DANCE」の<BOY MEET GIRL / BOY MEET BOY / GIRL MEET GIRL>という歌詞の一節が生まれたり、自分のなかで色んな視点を持つことが出来たし、色んな人がきっかけをくれた点と点が線に繋がっていったんです。

つまり、卓球さんをはじめ、色んな人が与えてくれたアドバイスやきっかけもあって、自分の可能性を追求してみようという意識が芽生えたんですね。

そうですね。自分でも飼い慣らせないくらいすさまじいものだったので、これまでの自分にとって可能性はホントに怖いものだったんです。でも、今回は意図して無意識的にやってみたら、誰が書いたのか分からないような、そういうアルバムが出来た。例えば、家で寝落ちして、はっと気づいたら、2曲ぶんくらいの時間が過ぎてて、目の前にはうわーっと文字が書いてあって、それを読み上げたら、メロディが生まれて曲が出来たり。

無意識を解放したら、アヴちゃんのなかに眠る9重人格とでも言うべき9通りのストーリーが楽曲に投影された、と。

これまで曲を書くとき、自分のなかにはトライアングルがあって、アヴちゃんっていうイスラム教の名前を持った自分、それから仏教徒としての自分、そして、クリスマスというキリスト教のお祭りの日に生まれた自分がいて。その一方で、私は誰にも触らせたくないし、馬鹿にされたくもない少年性を自分の内面にずっと眠らせたまま、女王蜂の女王が表立って戦っていたんですけど、実はその少年の部分が寝ていたわけではなく、起きていて、すべてを見ていて、誰よりも色んなことを吸収して、強く膨れあがっていたという。その子のイニシャルが『Q』なんですけど、今回のアルバムでその子が矢面に立った時、無意識で強い音楽が生まれたんです。

セカンド・ヴァージンのタイミングで回り始めた女王蜂のエンジン

「雛市」と並ぶ、切なく美しいバラードであるアルバムタイトル曲「Q」は幼児虐待を想起させられる壮絶な詞世界が描かれています。

これが実体験なのかフィクションなのか。私が歌えば、そう考えると思うんですけど、この曲は良い悪いの曲じゃなく、全部引き受けたいし、聴く人それぞれの感想、アンサーが暴走してくれたら、自分としては成功だと思っているので。

禁断の恋について歌った「失楽園」やラストの「雛市」もそうですが、アルバム後半は善悪や倫理を越えた感情に迫っていますね。

私は論理的な人間だけど、人によっては倫理的な人間だと思われないんだなって。でも、この論理を通して、いずれ倫理にしていくことは戦えば出来るんじゃないかなって。戦うというのは中指を立てる戦いじゃなく、曲と向き合い続けるという意味なんですけどね。

無意識に生まれた曲に対して、表現者として責任を取り、落とし前を付けると。

意図しなかったという意味では、今回、その無意識な部分をヴィジュアルで表現しようと、ジャケット写真を撮ったら、すさまじいものが撮れてしまったんです。今までの女王蜂は自分のプランに沿って、「これ、どう? バッチリ素敵でしょ?」って感じでアウトプットしていたんですけど、今回は無意識的なものが溢れてしまったし、これからの自分の表現も溢れたものがアウトプットされるんだろうなって。ただ、自分の無意識の部分から何が出てくるかは分からないんだけど、絶対にいいっていう自信と周りのみんなを巻き込んでアガっていきたくて、そのために女王蜂が(80年代の伝説的クラブ)「ツバキハウス」や「GOLD」になればいいと思うし、とっぽい人たちが集まる遊び場として、女王蜂はレコード会社に発掘してもらったんだなって。

そんなアルバムの初回盤のブックレットはZINEのような体裁になっているとか。

今回、初回盤の歌詞カードを全部漫画にしたんですけど、人生で初めて漫画を描いてみたら描けちゃって。トータルで50ページあるんですけど、今回はあまりにあっという間に曲が出来上がったので、作品のプロモーターとして、自分の無意識を自分なりに解釈して絵にしたり、今回は私の敬愛する様々な方からコメントを寄せてもらったり、色んな人が力を貸してくれて、今、女王蜂はセカンド・ヴァージンのタイミングなんだと思います。女王蜂というのはエンジンがすごく巨大で、それゆえにエンジンを回すことが難しいし、ライヴも膨大なカロリーを消費する命がけのパフォーマンスをして、音源制作も勢いを封じ込めることで精一杯だったんですけど、その巨大なエンジンがようやく回り出したんだと思います。

女王蜂 DANCE DANCE DANCE(Full Ver.)

女王蜂 アルバム『Q』初回盤DVD収録、ライブティザー映像

ライブ情報

全国ツアー2017 「A」

4月6日(木)兵庫県・神戸VARIT.
4月8日(土)福岡県・DRUM LOGOS
4月14日(金)大阪府・なんばhatch
4月29日(土)広島県・広島セカンドクラッチ
4月30日(日)岡山県・岡山IMAGE
5月6日(土)北海道・札幌PENNY LANE 24
5月12日(金)埼玉県・HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
5月13日(土)千葉県・柏PALOOZA
5月25日(木)京都府・京都磔磔
5月27日(土)香川県・高松DIME
6月2日(金)宮城県・仙台darwin
6月3日(土)岩手県・盛岡CLUB CHANGE WAVE
6月11日(日)石川県・金沢AZ
6月25日(日)愛知県・名古屋BOTTOM LINE
7月2日(日)東京都・Zepp DiverCity TOKYO

女王蜂

2009年に結成され、2011年にメジャーデビュー。映画『モテキ』のテーマソング「デスコ」や、映画への出演が話題となり、2012年にはメジャー2ndアルバム『蛇姫様』を発表。2013年に活動を休止するも、2014年2月のSHIBUYA-AXで行われた単独公演「白熱戦」から活動を再開。2015年1月からはギター担当のひばりくんが正式にメンバーに加入。 同年2月に初のシングル「ヴィーナス」、3月には2年10カ月ぶりとなるアルバム『奇麗』を発表。2016年には女王蜂と、アヴちゃんがボーカルを務める別ユニット「獄門島一家」によるスプリットシングル「金星 / 死亡遊戯」をリリース。アヴちゃん(Vocal)、やしちゃん(Bass)、ルリちゃん(Drums)、ひばりくん(Guitar)の4人で精力的な活動を展開中。

オフィシャルサイトhttp://www.ziyoou-vachi.com/index02.html