黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 3

Interview

『Downwell』開発者が語るゲームと未来(中)世界的な評価を得た背景にあるインディーゲーム事情

『Downwell』開発者が語るゲームと未来(中)世界的な評価を得た背景にあるインディーゲーム事情

音楽、映画、ゲームなどを総称するエンタテインメントは、人類の歴史とともに生まれ、時代に愛され、変化と進化を遂げてきました。 そこには、それらを創り、育て、成熟へ導いた情熱に溢れた人々がいます。この偉人であり、異人たちにフォーカスしインタビュー形式で紹介するエンタメ異人伝。 今回のゲストは、日本国内だけでなく、アメリカなど海外からも高い評価を受けている『Downwell』の開発者、インディー・ゲームクリエイターのもっぴんこと麓 旺二郎氏です。 世界中から注目を受けているもっぴん氏がなぜインディーゲーム開発を行うことになったのか、影響を受けたゲーム、尊敬しているクリエイターなど、制作にまつわる様々なエピソードから、開発者としての思いまで、たっぷりと語っていただいた。

※本記事は3回にわたってお届けするインタビューの第2回です。第1回(上)はこちら

インタビュー取材・文 / 黒川文雄


「TOKYO INDIE MEETUP」への参加

もっぴん 黒川文雄 対談

それで、『Downwell』の開発に着手し始めて2014年12月の「TOKYO INDIE MEETUP」(注5)に出られたということでよろしいですか?

注5)個人のゲーム開発者で集まって、お互いのゲームを見せ合ったり意見交換したりするイベント。

もっぴん はい、そうですね。

吉祥寺のpico pico cafe(ピコピコカフェ)が会場なんですよね。僕もインディーゲーム開発に携わっていたことがあって、そのプレゼンテーションで参加したことがあります。「TOKYO INDIE MEETUP」に出ようと思ったきっかけは何だったのでしょう。
やはり、ツイッターとかで情報をアップしていて、これは発表したほうがいいとなったんですか?

もっぴん そのときはまだ僕のツイッターのフォロワーとかも全然いなくて、もうなんか無に投稿しているみたいな。誰も見ていないのに、ひたすら投稿みたいな感じだったんです。ちょうど「Game A Week」をやり終えた後で、それまでずーっと1人でひたすらやっていたので、さすがに寂しくなってきて。人に見せてみたいし、東京にコミュニティはないのかなと思って検索をかけたら「Picotachi(ピコたち)」という月イチの集まりみたいなのが見つかって、それで出てみることにしました。

自分から応募されたんですか?

もっぴん そうですね。ダメモトでしたし、すごく緊張もしましたがコミュニティがあるなら僕も影響を得たいし、話もしてみたいし。いろいろ勉強したかったというのがありましたね。

かなり反応は大きかったと思うのですが、そのメンバーと交流したり、支援の話が出たりしなかったんですか?

もっぴん いや、その場だけですね。もちろん、ツイッターで繋がったりしましたし、仲間意識というか励みになった部分はすごいありましたけど、そこからチームを組むとかはなかったですね。

もっぴん

「東京インディーフェス」(※)への出展やIGF(注6)にノミネートされたのはそのあとでしょうか?

(※2015年5月 秋葉原UDXで開催されたインディーズゲーム展示会)

もっぴん 確か2014年の6月に『Downwell』を作り始めて、2014年の年末にIGFに応募したんですね。僕はまったくいけるなんて思っていなかったんですけど、Devolver Digitalから「とりあえず応募してみたら?」みたいに言われて。それで、まだ学生だったので学生部門で応募したら受かって、2015年の3月のGDC(注7)にIGFの授賞式を兼ねて行ったんですよ。IGFでノミネートされるとGDCでブースを1個もらえるんです。それが初めて『Downwell』を公開展示した経験でした。そして2015年の10月に『Downwell』を発売しました。

注6)インディーゲームの祭典「Independent Games Festival」にて選出されるインディーゲームを対象としたアワード。
注7)世界各国のゲーム開発者を対象に開催される国際会議。正式名称は「Game Developers Conference」。

(写真提供 ファミ通.com)

(写真提供 ファミ通.com)

GDCアワードでHANDHELD/MOBILE game (携帯ゲーム機/モバイルゲーム賞)とBest Debut(デビュー賞)にノミネート。それらを経て、GDC2016では開発の経緯などのトークセッションをされましたね。

もっぴん はい、そうですね。遡ると、2015年は「BitSummit(ビットサミット)」(注8)とか、東京ゲームショウ2015にも出展しています。

ちなみに、IGFに出展されたときに「音がショボいからオレがやってやるよ」とJOONAS(ヨナス)さん(注9)たちが言ってくれたということですが、詳しい経緯を聞かせてもらえますか。

注8)毎年京都で開催されている日本最大のインディーゲームのイベント。
注9)「Nuclear Throne」などのサウンドを手掛けたフィンランドのサウンドデザイナーのJoonas Turner(ヨナス・ターナー)。

もっぴん サンフランシスコでDevolver Digital のパーティーがあったんです。そこでパブリッシャーの方がいろんな人に僕を紹介してくれたんですが、そのときにインディーゲーム界隈で効果音を作っている人とサウンドを作っている人に会わせてもらえて。どちらも僕がすっごく尊敬している人だったんですよ。で、「ちょっとゲームを見せてみろよ」みたいな感じになって、「マジすか?」と。まさか一緒に仕事をできるなんて思ってもみなかったので、めちゃめちゃうれしかったですね。

ちなみにその時のサウンド開発などに関しては「お金はいらないよ」みたいな感じだったわけですか?

黒川文雄

もっぴん いや。その場では言わなかっただけで、もちろんお金は発生するというのが前提だったと思います。無料で配信するゲームなら無償で提供してくれるという人は多いと思うんです。海外はゲームジャムの文化もけっこうありますから。ただ、やはり売るゲームとなると、さすがに「お金はいらないよ」にはならないと思います。


PS4版『Downwell』

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