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中川晃教、AKB48田野優花、古田一紀らが日常の小さなハピネスを舞台で表現『チャーリー・ブラウン』

中川晃教、AKB48田野優花、古田一紀らが日常の小さなハピネスを舞台で表現『チャーリー・ブラウン』

原作のチャールズ・М・シュルツの『ピーナッツ』は、アメリカのとある町に住む、8歳のチャーリー・ブラウンと、その飼い犬スヌーピー、そして脇を支える個性豊かなキャラクターたちが活躍する4コマ漫画。世界中で約3億5500万人に愛読され、1950年の連載開始から今日まで読み継がれている名作だ。この作品が舞台化されたのは、50年前の1967年ブロードウェイ。それ以降、再演を繰り返した歴史ある作品が、50周年を記念し、シアタークリエで装いも新たに上演される。

チャーリー・ブラウン役には、ミュージカルで活躍、『RENT』では主役を務め、ますます注目の集まる村井良大。ルーシー役に声優ユニット“スフィア”に所属する高垣彩陽。サリー役にAKB48で抜群の歌唱力を誇る田野優花。ライナス役には、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンで8代目越前リョーマを務めた古田一紀。シュローダー役に人気ボーカルユニット“Honey L Days”の東山光明。そしてスヌーピー役には、先ごろ栄えある第24回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞したばかりの勢いにのる中川晃教。ゴージャスな俳優が揃い、伝統ある作品を届ける。


子どもたちの「あるある」エピソードをリアルに表現

可愛らしくてカラフル、まるでシュルツに敬意を払った4コマ漫画を思わせる松井るみの舞台装置が目を見張る。そして、ジャズ、タンゴ、フラメンコ、クラシック、アップテンポなダンスミュージックが奏でる色とりどりの音楽。シュルツが愛したジャズ・ピアニストのヴィンス・ガラルディ(アニメ版ではベートーベンと彼の作曲したジャズしか流れないのだ)そのままに、テンポよくリズミカルに、アメリカのとある田舎町の子ども達の日常が繰り広げられていく。目の前で起きている、ちょっとした子ども達の「あるある」エピソードをリアルに表現する、ダンス、歌、セリフに目と耳を傾けるだけで、誰にでも楽しめる内容となっている。

野球は下手、大好きな凧揚げもまともにできない。それでいて野球チームの監督として、8歳児のお兄ちゃん的なプライドはある。だけど時には自信をなくしてルーシーにお金を払って相談することもあるのは、同い年でクラスの赤毛の女の子に振り向いて欲しいのに、フラれるのが怖くて話しかけられないから。彼女と友達になりたいし、みんなにだって愛されたいから、みんなを思いっきり愛そうとする。みんなが悩んでいるのが嫌で、失敗したって、友達を悲しませないように頑張るチャーリー・ブラウン。

村井良大はチャーリーのコロコロ変わる心模様を、ダンスに、歌で、セリフで、情感たっぷり、しかもコミカルに表現。好きな赤毛の女の子の手紙が来ないかとポストの前でヤキモキして、我慢ができずに蓋を開けてしまい、手紙が見つからずに悲しくて、頭をポストに突っ込む有名なシーンでは、爆笑の渦に包まれるキレのある演技を見せ、誰にでも感情移入されるキャラクターをしっかりと演じていた。

チャーリーの妹で、縄跳びが大嫌いだし、縄跳びのある世界も絶望的に嫌い。頼りないお兄ちゃんだってダメ。そのくせ学校の宿題の成績はいつだってC以下。でも、それは大嫌いな先生のせいだから気にしない。大嫌いなことしかないから、大好きな男の子に自分の気持ちをどう表現したら良いかわからず、好きなライナスに「愛しのバブー」と上から目線になってしまうキャラのルーシー。AKB48で活躍する田野優花が、ブレない伸びのあるファルセットとリズミカルなダンスで魅せて感動的。しかも、要所で決めるお茶目な表情がいい。

口うるさくて怒りっぽいけど、芸術家肌のシュローダーが大好き。でも、嫌われたらと思うと不安で、自分へのアンケートをとっては思った通りの結果にならずに落ち込む。だけど不安なんて宇宙のかなたにぶっ飛ばそうと振る舞う元気一杯の楽天家・ルーシー。高垣彩陽が彼女の気持ちを高らかに歌う姿は清々しい。「女の子至上主義宣言」のような堂に入った歌い方をされると男子は頭が上がらないだろう。原作でも私は世界の女王になれると意気込む姿が小憎たらしいのだが、どこかキッチュで憎めない。そんな存在を一心不乱に演じていた。

ベートーベンを愛してやまず、おもちゃのピアノで彼の曲を弾いている以外は、野球で勝つこととルーシーの求愛を断ることに命をかけるシュローダー。東山光明は、『Honey L Days』のミュージシャンらしくピアノを弾けば、「女の子だけが主役じゃないさ」と励ましているようで、男の子は彼を応援したくなってしまうだろう。彼がタクトを振って、公園に集めてみんなに合唱させるシーンは、すぐに女の子たちが喧嘩して、みんないなくなってしまうのだけど、スヌーピーに代役を務めてもらってワンワンと歌わせる。シュルツのように「芸術」の力を信じる勇ましい男の子っぷりの演技が素晴らしい。

ルーシーの弟で、知的で哲学的なのに、なぜかおしゃぶりをやめられないし、愛しの水色の毛布がないといても立ってもいられない。ルーシーは口うるさいから苦手だけど、ときどき一人で泣いているのを知っているから、やっぱり放っておけないライナス。古田一紀はテニミュで鍛え上げた演技力をそのままに、優しくて思慮深い役所をこなしながら、舞台を所狭しと走って激しく踊る。彼の舞台の奥まで響かせる声量のあるバリトンの声も見逃せないだろう。

そして最後にスヌーピー。人間の言葉(舞台上の人間には意味がわからない犬語)を喋るし、甘えん坊で、夢想家で、時には闘牛士になって荒ぶる牛をなぎ倒しながらフラメンコを踊る強い男の子なのに、実際は閉所恐怖症で犬小屋には入らず屋根に登って寝てばかりいる。でも、夢想家の彼には犬小屋はいつだって第一次世界大戦で活躍する戦闘機だ。ライバルのレッド・バロンと激しくドッグファイトを繰り広げ、ちょっとピンチになると、どういうわけか都合よく現実に戻って、チャーリーに夕食を出すのが遅いと嘆く。中川晃教は、シニカルで、都合が良くて、ちょっとおバカで、カッコつけたがりの、世界中の人が愛するスヌーピーそのものだった。ワンと吠えてコミカルに犬を演じたかと思えば、歌にダンスと大活躍。彼のソロが聴けるナンバー『サバー・タイム』では、アップテンポな曲と共に、ようやく夕食にありつけたハピネスを繊細でいて大胆に表現していた。

日常を彩る些細なエピソードのいくつかには、ペーソスがあるけれど、泣いてばかりいられないから、笑いに変えていくポジティブなエネルギーが満ちている。誰だって幸せになりたいのは、誰だって幸せになれるチャンスがあるから。そんな平等主義を貫いたシュルツの意思が子供達に託されて舞台上にみなぎっているようだった。たとえ、スヌーピーのことを知らなくても、大人も子供だって、身近な小さな幸せが大切だと笑って帰ることのできる舞台。ここに堂々の開演だ。

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取材・文・撮影 / 竹下力

キャスト陣、公演前の心境は?

村井良大【チャーリー・ブラウン】

久しぶりに短パンを履いて演技をするので若返ったような気分です。黄色は元気な色なので、元気がもらえる衣装だねと話しています。『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』は観るだけで、心があたたくなるような、明日への元気をもらえるミュージカルになっています。

中川晃教【スヌーピー】

チラシの衣装から軽量化され、シースルーになって風通しがよくなりました。二足歩行ではなく、四足歩行のシーンもあって、膝にはニーパッドが入って、機能性に優れているのですが、ただ熱い! 汗がナイアガラフォールにならないように(笑)。読売演劇大賞を受賞した後、第1作目が犬(笑)ですが、スヌーピーですから、文句はないです。最初は、演技のイメージが湧かなかったのですが、僕だったらどう演じられるか妄想を膨らませて今日に臨みます。今回のお話をいただけなければ、50年前に初演された、伝統のある舞台と知らなかったので、演じられるだけで嬉しいですね。6名というミニマム体制だけど、パワー全開でなんでもないハピネスをステージに表現できるカンパニーです。素晴らしい音楽、ダンス、シュルツさんのイキイキとしたキャラクターをお届けできるように頑張りたいです。足を運ばなきゃ損だワン!

高垣彩陽【ルーシー】

稽古場は稽古着でしたから気持ちが変わりますね。舞台もポップなセットで、このカラフルな衣装でやらせていただいたら、元気がプラスされます。みんな目が醒めるような色使いの衣装なので、ステージ上で並んで立つと、待ち時間に客席にいたスタッフさんたちが「かわいい」と言ってくださった。舞台を思いっきり飛び回りたいと思っています。

田野優花(AKB48)【サリー】

私が出てないシーンを客席から見ていると、みんなのシルエットが子供そのものですね。そんな衣装を作ってくださった有村淳さんの“Peanuts”愛を感じます。普段は暗い色の服しか着ないから、ピンクは恥ずかしいけれど、6歳の女の子なので、この衣装の力を借りて個性を出していきたいです。

古田一紀【ライナス】

衣装を着て舞台の上に立つと、いよいよ始まるんだとドキドキしています。ラッキーなことに赤が好きなんです。アニメのライナスは、水色の時もあるのですが、赤をチョイスしていただいて嬉しいです。

東山光明【シュローダー】

生まれて初めてこんなに明るい髪の毛にしました。最後の段階で、衣装を着て、足まで綺麗にシュローダーになりました。気合い入っています。

ブロードウェイミュージカル『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』

【東京公演】シアタークリエ
2017年4月9日(日)~4月25日(火)
※チケット発売中 10,800円(全席指定・税込)
【福岡公演】キャナルシティ
2017年4月29日(土)
【大阪公演】サンケイホールブリーゼ
2017年5月6日(土)~5月7日(日)
【愛知公演】ビレッジホール
2017年5月9日(火)~5月10日(水) 

【原作】チャールズ・M・シュルツ
【脚本・音楽・作詞】クラーク・ゲスナー
【追加脚本】マイケル・メイヤー
【追加音楽・作詞】アンドリュー・リッパ
【訳詞・演出】小林香

【キャスト】
チャーリー・ブラウン:村井良大 ルーシー役:高垣彩陽 サリー役:田野優花(AKB48) ライナス:古田一紀 シュローダー役:東山光明 スヌーピー:中川晃教 (声の出演)大和悠河 

オフィシャルサイトhttp://www.tohostage.com/charlie/

関連書籍

SNOOPY COMIC SELECTION

著者 :チャールズ・M・シュルツ 
訳者: 谷川俊太郎
出版社 :KADOKAWA / メディアファクトリー