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『人喰いの大鷲トリコ』待ち望まれた新たな物語の魅力とは?(後編)

『人喰いの大鷲トリコ』待ち望まれた新たな物語の魅力とは?(後編)

長期の制作期間を乗り越え、2016年12月に無事リリースされた『人喰いの大鷲トリコ』(以下、『トリコ』)。発売からずいぶんと時間は経っているが、時間で風化しない魅力を備えた作品だ。前編の記事に引き続き、ここでは筆者の主観を交えて本作の魅力ポイントをピックアップしてみたい。

ただ、いちプレイヤーとしては、本作はできるだけまっさらな状態、予備知識やネタバレなしに触れてみてほしい作品というのも本音である。動画視聴というエンタメも確立された今、「ゲームは自分で操作してこそ!」と声を荒げるつもりは(少ししか)ないが、『トリコにはとくに、”プレイヤー自身が世界を解き明かしていく楽しみ”のためのこだわりが随所に見られるからだ。本記事では極力、その楽しみを奪わないように配慮したつもりだが、厳密に言えば、『トリコ』におけるあらゆる具体情報はネタバレの範疇に含まれるので、未プレイの人はご注意いただきたい。

文 / 遠藤栄慧


人喰いの大鷲トリコ® ダウンロード版

巨大な獣と戯れる体験

閉ざされた洞窟で出会った少年と巨獣が、不思議な絆を育みながら神秘的な巨大遺跡を冒険していく『トリコ』の物語。その架空の世界を強烈に印象付け、唯一無二のゲーム体験を生み出しているのが、画面の中で生き生きと躍動するトリコの存在だ。

猛禽類のような口元や鉤爪、羽毛にトラかライオンのような体躯が合わさった姿はパっと見、西洋ファンタジーによく出てくる幻獣のグリフォンなどを想起させるが、トリコには何というか、もっと生々しい生き物としての雰囲気がある。主人公の少年は”大鷲”として認識しているようだが、しなやかな身のこなしや、くるくると変わる目の様子は猫のようでもあるし、少年の後を従順についてきたリ、後ろ足で体を掻く仕草などは犬そのものにも見える。それら同様、ふと目を向けると思わぬ行動を取っていることもあり、つい気になって見てしまう存在感を発しているのだ。

▲キミはいつの間にそんな場所に……! と驚かされることもしばしば。狭い足場に器用に乗っている姿はかなり猫っぽい?

▲入ってこられない建物に顔だけ潜り込ませて、ほっこりさせてくれたり……

▲好物らしい謎の樽を目にした途端、文字どおり目の色が怪しく変わってドキっとさせられたり

そして、何といってもその巨大さである。前回の記事でも触れたが、ゲームプレイを通して触れるトリコは写真などで見る以上に大きく感じられる。本作のスタッフが手掛けた『ワンダと巨像』に出てくる巨像たちも凄まじいサイズだったが、あちらが”動くフィールド”といった印象も強かったのに対し、トリコは常に側にいる”キャラクター”であり、その感じかたはかなり別物だ。

ビデオゲームの楽しみとして、日々進化するテクノロジーを楽しむという側面もひとつあると思うが、このトリコのスケール感――この大きさのキャラクターが自然に動き回り、それをリアルタイムに引き連れて冒険できる新鮮さは、ゲームファンであれば、いま、リアルタイムで体験しておきたい重要なポイントである。

▲フィールドをダイナミックに駆けるトリコを激写。空気感のある映像や動きの演出と相まって、この巨大な架空生物が自然にそこに存在しているかのような不思議さが味わえる

▲動いているトリコの上は当然揺れる。振り落とされないようにつかまったり、乗る位置を感覚的に調整したりといった臨場感のあるアクションが世界への没入感を高める

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