Interview

新体制になって初、デビューから10年のニューアルバムで、Base Ball Bearが「青春を歌うこと」に戻れた理由

新体制になって初、デビューから10年のニューアルバムで、Base Ball Bearが「青春を歌うこと」に戻れた理由

上のタイトルに「Base Ball Bearが『青春を歌うこと』に戻れた理由」と書いたが、正しく言うと戻ったわけではない。1年前のギター湯浅将平の脱退により、メンバーは3人、ライブはサポート・ギターを加えて4人という新体制になってから最初のアルバムになる『光源』。一周回って元の位置にさしかかったら、前より高いところに立っていた、というのはこの手の比喩でよく使われる言い回しだが、まさにその最良の例と言えるものになっている、本作収録の8曲は。このアルバムを作りながら2016年11月から3月までかけて計36本のツアーを行い、4月12日にこのアルバムをリリースして6月からまた30本のツアーに出る(しかもその間に9/30の日比谷野音ワンマンや各地のフェス/イベント出演等もある)、と、ちょっと心配になるほど精力的に動き続ける現在とこれまでについて、小出祐介に訊いた。

取材・文 / 兵庫慎司 撮影 / 荻原大志


3人になって制約が消えた

3人になって初めてのアルバムですけれども、そうすると制作のしかたも変わりますよね。何かが新しくなったりとか。

新しくなったというよりか、自分たちがフレッシュだと思うことをやりたい!っていうのが、突き抜けていちばん大きかったんですよ。サウンドがどうとか、中身がどうとかいうのはあとからで、まずは自分たちがおもしろいと思ってることをやりたいっていう。

でも、これまでも、自分たちがおもしろいと思ってることをやってなかったわけではないですよね。今回はどう違ったんしょうか。

それを言語化するのがすごく難しいんですけど。バンドの3人の……内輪な部分ですけど、要は「ウケる」ってことだと思うんですよね。自分たちがめっちゃウケることをやりたい、たとえばギター・ソロ、こんな音色でこんなフレーズ弾いてるのめっちゃおもしろい!とか。ギタリストがいなくなって、今の体制になると……今まで音を入れる時に、ギター2本、ドラム、ベースっていうふうに置き換えなきゃいけなかったことって、やっぱりたくさんあって。それらを置き換えないでいいってことになって、エレピ入れたりブラス入れたりするのも全然ありになって。自分たちのおもしろいと思うポイント、ウケるポイントを突きやすくなって。楽しかったです、作っていて。

「こうでなければいけない」とか「こうあるべきだ」っていう条件を自分に出して作っていく感じは、以前はありました?

ああ……まあ、あったと思いますね。「これはやらない」とか「これは違うと思う」っていう制約を作っていくことで、ギター2本・ドラム・ベースっていう編成がどんどん研ぎ澄まされていくって思ってたし、その制約があったから、変なことをやりながらもポップなあり方で曲を成立させることができたんじゃないかなと思うんですけど。だけど3人になったら、制約とかどうでもいいというか。「フレッシュなことやりたい!」っていう方につっ走ったのかな、っていう。

挫折を味わった日本武道館ワンマン

今回のアルバムのテーマは、青春だと思っていいんでしょうか。

そうです。前作は、全体のテイストとしてはとげとげしいし、言葉がワーッと詰まってる曲が多い、現実的なアルバムだったと思うんですけど。でもそういう中で、「不思議な夜」って曲とか、「どうしよう」って曲とかは……「なんで今もう一回、青春っぽいことを書こうと思ってんのかな、俺?」っていう曲が出てきたのが不思議だったんです。『新呼吸』『二十九歳』っていうアルバムで、自己探求的な、現実的な歌詞になっていって、青春っぽい感じがなくなっていってたんですけど、なぜまた青春っぽくなったのかな?っていう。
で、今回、その謎についてもう一回考えてみたんですよね。そしたら……青春感から遠ざかってたここ5~6年は、それについて歌いたくなくなってたんです。そのきっかけは、2010年の頭に(日本)武道館やってるんですけど、あれがすごい挫折を味わった出来事で。僕的には、武道館でライブやったのに全然達成感がなくて。あの大舞台で、自分の地肩の弱さを急に感じちゃって、ライブ中にも何度か折れそうになって。終わってからも……表面的には打ち上がってましたけど、煮え切らないものを持って帰ったライブだったんですね。自分たちを応援してくれてる人たちを前にして、「なんで俺、こんなに地肩が弱いんだろう?」「俺の思ってるバンドの伝わり方してんのかな?」みたいなことを思ったんです。
それは今思うと……うちのバンドは、中学の時から一緒に楽器やってたり、っていうところから始まってるんですけど、ずーっと万能感というか、全能感みたいなものに突き動かされてきたところがあって。僕、中高6年間一貫の学校なんですけど、中1の時に友達が0人になって。シカトされてて、いじめられてるのかどうかもよくわかんないみたいな、いちばんイヤな状態になったんですね。それで、ひとりコソコソ楽器を始めて、コソコソ仲よくなったメンバーとバンドを始めて。高2で結成して、学校の外でライブをやるようになって、大人の人たちと会ったりするようになる中で、自分がいじめられてた意味が全然わかんねえというか。「俺、こんなに大人の人に認めてもらって、やっぱ才能あんじゃん!」みたいに、たぶん思ったんでしょうね。間違いなく俺は人と違う!みたいな万能感、全能感があったんですよ、根拠のない。
そのエネルギーを持ってバンドをやって、デビューして、大っ嫌いな学校の人たちと絶対違う人生を歩んでやるとか思ってたんですけど。まあ、呪いのエネルギーですよね。それに突き動かされて、あと運もよかったと思うんですけど、その結果武道館っていう、自分たちの大舞台になった時に、それがプツンて途切れて。「あれ? なんだろうこれ? 俺、しょぼい」みたいに思ったところで、自分の青春感が潰えたんですよね。

再び青春感を歌うようになった理由

そのあと自己探求みたいなタームに入って行くにつれて、青春感を遠ざけたいっていう気持ちが強くなっていったから、さっき言ったような作品の流れになっていくんですけど。近年徐々に、自分たちの思うような演奏ができるようになってきたり、自分たちの考えていることを作品にできるようになってきたりして……それが極まって『C2』っていうアルバムができたら、もう一回青春感を歌おうとしていた。「なんだろう? これ」って思ったんですね。
で、考えた結果、今回思ったのは、高校卒業から15年ぐらい時間が経って、やっと自分の青春時代を対象化できたからなんだろうな、と気付いたんです。初期は万能感が渦巻いてたっていうのも、当事者の時はわかんなかった。時間が空いて「あの時は全能感があったからああいう感じになってたんだな」ってわかったし。
あと、何回もまた青春にアクセスしようとするのは、やっぱり当時の、中高6年間が未解決事件っていうのがでかいからかなあ、と思ってて。もう一生解決しないですよね。当時嫌いだった人たちと、今「いやあ、あの時はさあ」って酒を酌み交わしても絶対解決されない何かがあるし。だから何回も中高6年間のあの時期に触れようとしたがるというか、未解決ゆえにブラックボックスになっていて、無尽蔵に歌いたいことが湧いて出てくるっていう感じなんですね。っていう意味で『光源』っていうアルバムタイトルにしたんですけど。

無根拠な万能感が武道館で消えたあと、5~6年かけて根拠がついてきたという。

たぶんそうだと思いますね。メジャーデビューして最初の3年間ぐらいで、だんだんまわりに大人の人たちも増えてきて、自分たちのお客さんも増えていく中で……あと、プロデューサーの玉井(健二)さんとずっと一緒にやっていく中で、曲もだんだんよくなっていくし。でもなんか、自分でコントロールできてないものもたくさんある感じだったと思うんですよね。たとえば判断の半分を玉井さんが持ってくれていて、「もっとこうしたらいいんじゃない?」「あ、じゃあそうしよう」とか。もっと主体性を持っていたいのに、自然とまわりに逃げようとしてた。自分から「これ、どう思います?」とか訊いて、大事な判断を誰かと一緒にしてきたっていうのが、武道館の時に全部露呈したと思ったんですよね。
これはもう一回鍛え直さなきゃいけないと思って、作品の0から100まで全部自分たちでできるようにする、っていうあたりまえのことから始めて。それで試行錯誤を重ねて、自分たちなりの作品の作り方とか、ライブのやり方とか、周りの人たちとの関係性だったりとかを、やっと構築できて。それが自信につながったんじゃないかなあと思うんですけど。
要は当時、ちょっとズルしてるなって思ってたんですよ。0から0.01になるのって、創作という意味では大きな1歩じゃないですか? それをズルしてたところがあるというか。曲の始まりを……たとえば「こういうのをやってみたらいいんじゃない?」「ああ、いいねえ」みたいに、自分が考えてない大喜利の答えをフリップに書いてるみたいな気持ちというか。「それじゃあ俺、まわりに誰かがいないとロクな作品が作れない人になっちゃうんじゃないか?」と。だから一回玉井さんとも離れて、曲作りを鍛え直すことから始めて。それで、自分たちから提案して、玉井さんに「あ、それだったらもっとこうしたらいいんじゃない?」っていう順番でできるようになれればいいなと。
まず種をもらうところから始めるのは……ポップスとしてはありかもしんないけど、バンドマンとしてそれでいいのかな? っていうところだと思いますけどね。今回も玉井さんに監修で入ってもらってるんですけど、自分たちだけだとマニアックになりすぎるかもしれないのを、よりポップにするにはどうしたらいいのかっていう力を借りるためで。今は自分の思う、いい関係性になれてるんじゃないかなと思います。

本当のテーマは「時間」

そしたらテーマが「青春」に戻ったと。

でも、今回の本当のテーマは「時間」なんです。青春っていうブラックボックスを使うことによって、僕が今興味がある「時間」っていうテーマにアクセスできるなと思って。青春時代があって、そこから15年ぐらいの距離があって、今があるわけですけど、この15年っていう時間がないと、当時のことを対象化できなかったと思うし。この時間の中で、自分たちがよかれと思っていろんな積み重ねをやってきたんだけど、湯浅が脱けるっていうことが待ってたりとか。それはもう完全に自分たちのコントロール外の出来事だったので。「やっといい感じになってきたのに、ここでそんなことあるか?」みたいな。だけど、その上に積み重ねていくしかないわけなんですけど。っていう、自分が触れない時間というもの、自分たちがいる時間という箱、それ自体が神様みたいだなと思って。
これを表現するにはどうしたらいいのかっていう時に、青春っていう未解決事件の6年間……フタされた時期なんですよ。そのフタされた時間を描写して、今との対象化を作品の中ですることで、時間について歌えるんじゃないかなと思った。っていうのが、今回の本当のテーマで。だから、青春が対象化されたことで、……青春の当事者としての歌じゃなくて、青春を使って表現するっていうところに今いる、っていうことなんですけどね。

ライブ情報

Base Ball Bear Tour「日比谷ノンフィクションⅥ~光源~」
2017年9月30日(土) 日比谷野外大音楽堂

Base Ball Bear Tour「光源」
全公演サポートギター:弓木英梨乃(KIRINJI)
2017年
06月11日(日) Live House浜松 窓枠
06月13日(火) 四日市CLUB CHAOS
06月15日(木) 京都 磔磔

06月17日(土) 金沢AZ
06月25日(日) 仙台 Rensa
10月06日(金) 旭川CASINO DRIVE
10月07日(土) 札幌ペニーレーン24
10月09日(月・祝) 函館 club COCOA
10月14日(土) 青森Quarter
10月15日(日) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
10月21日(土) 山口LIVE rise SHUNAN
10月22日(日) 広島Cave-Be
10月27日(金) 千葉LOOK
10月28日(土) 水戸LIGHT HOUSE
11月03日(金・祝) 甲府CONVICTION
11月23日(木・祝) 米子 AZTiC laughs
11月25日(土) 岡山IMAGE
12月02日(土) 高崎 club FLEEZ
12月03日(日) HEAVEN’S ROCK Utsunomiya
12月09日(土) 新潟LOTS
12月10日(日) 松本Sound Hall a.C
12月16日(土) HEAVEN’S ROCK さいたま新都心
12月17日(日) 横浜BAY HALL
12月23日(土・祝) 高松MONSTER
12月24日(日) 高知X-pt.
2018年
01月06日(土) なんばHatch
01月14日(日) 名古屋ダイアモンドホール
01月20日(土) 宮崎SR-BOX
01月21日(日) 福岡DRUM LOGOS

Base Ball Bear

左から、堀之内大介(Dr,Cho)1985年1月17日生まれ、小出祐介(Vo.Gt)1984年12月9日生まれ、関根史織(Ba,Cho)1985年12月8日生まれ。
2001年、同じ高校に通っていたメンバーが、学園祭に出演するためにバンドを結成したことがきっかけとなり、高校在学中から都内のライブハウスに出演。
その高い音楽性と演奏力が大きな話題を呼び、東芝EMI(現 UNIVERSAL MUSIC JAPAN)より、Mini Album『GIRL FRIEND』でメジャーデビュー。
これまで2度に渡り、日本武道館でのワンマン公演を成功させる。
2016年3月、結成当初からのメンバーであった湯浅将平(G)が脱退。
同年同月から、サポートギターにフルカワユタカ(ex.DOPING PANDA)を迎え、Tour「LIVE BY THE C2」を開催。
ファイナルの「日比谷ノンフィクションⅤ」では、フルカワユタカの他に石毛輝(lovefilm, the telephones) / 田渕ひさ子(toddle, LAMA) / ハヤシ(POLYSICS)という豪華ギタリストを迎え、3人体制となって初のシリーズライブを成功に終える。
現在、サポートギターに弓木英梨乃(KIRINJI)を迎え、全36公演に及ぶTour「バンドBのすべて 2016-2017」を開催中。
2017年4月12日、新体制後初となる7th Full Album『光源』をリリースした。
オフィシャルサイトhttp://www.baseballbear.com/

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